一撃に全てを賭け過ぎた男、パーティーを追放される

空見 大

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始まりの章

一撃に全てを込める

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 剣による斬撃、ハンマーによる殴打、銃による銃撃、槍による刺突etc。
 この世界では様々な相手を倒すための手段が存在し、その手段を用いることで人々は敵を倒す。

 英雄譚においても最後の一撃は何にも変え難いほどの花であり、それがあるからこそ物語は大きく盛り上がると言っても過言ではない。
 そんな最強の一撃に憧れて、羨望し、夢に見て、そしてその結果その力を完全に習得した男がいた。
 男の名前はグランベルト・グラリアン。

 数多の武器において最強とされる技を覚え、あらゆる状況において一撃必殺の力を手に入れた最高位冒険者────

「グランベルトさん。貴方は今月限りで契約打ち切りとさせていただきます」

 ──のはずだった。
 ガシャガシャと白銀の全身鎧フルプレートを鳴らしながら街の中を歩くのは、最高位冒険者パーティーエルドラドの一員であったグランベルトだ。

 黒い髪に黒い目、年齢は四十に届かない程度だろうか。
 腕はまるで大木のように太く、肩幅は熊よりも広い。
 隆起した大胸筋はまるで山のようであり、どっしりと構えられた重心は山を幻視させる程だ。
 見ればわかるほどの超級の武術の使い手、しかも身長は180を超えており体重も100は優に超えているほどの大男ともなれば普通冒険者として声がかからないということはほとんどありえない。

 だが先程一員だった、とされた通りにこの男はいま除隊通知を受け取っている身だった。
 グランベルトの実力に関して文句をつける人間は大陸を探してもそう多くはいないはずだ。

 なにせグランベルトはその二つ名を極撃と言われるほどの一撃の使い手であり、実際単騎で、それも一撃で龍を屠ったのは後にも先にもきっと彼しかいないことだろう。
 そんな彼が冒険者パーティーを追放されたのにはもちろん訳があった。

「まさかパーティーの主戦場が迷宮になるとはなぁ。そりゃあ俺をパーティーに入れておくことは難しいだろうが……」

 いままでグランベルトが所属していたチームは、平野や山脈、海や空など様々な場所に生息する魔物と呼ばれる動物達を討伐することが主目的であった。

 これらの魔物退治と呼ばれる仕事はそれなりに金になる上に名声も稼ぎやすく、基本的にどこのパーティーもこの業務を怠ることはない。
 だがエルドラドはその名声稼ぎを遂に終えて、迷宮攻略へと乗り出したのである。
 迷宮攻略というのは世界各地に存在する迷宮と呼ばれる魔物達の住処を撃破していくことで、人々の安全を守りつつそこに蓄えられた宝を手にれようという仕事だ。

 ある程度力を持った冒険者が外で狩りをする冒険者から迷宮専用の冒険者である探索者へと変わることはそう珍しくない話であり、エルドラドもその例にもれなかったのだが問題は迷宮という場所が決まって狭いということだ。
 狭いと言ってももちろん人一人しか入れないというわけではなく、大人が100人入っても大丈夫な部屋から子供三人くらいがギリギリの部屋まで様々ある。
 ただグランベルトが使用する力のことを考えると、たとえ最大級に広い部屋だろうが全くもって広さが足りていないのだ。

 その結果先日の迷宮攻略では迷宮上部を丸ごと吹き飛ばすという大失態を犯し、能力の制限を究極まで絞っても迷宮を壊してしまうことが判明したグランベルトは解雇宣言を出されていた。
 グランベルトはエルドラドメンバーの中でも途中から入った中堅的なメンバーであり、毎月の更新をしていた契約型のメンバーだったので契約を打ち切られること自体に不満というものは存在しない。
 ただあるのは次の仕事先をどうしようかという考えと、自分の派手で力強い一撃が要求されなくなる時代が来るのではないかという漠然とした不安だ。

 軽い送別会が行われ、そこでパーティーメンバーの証を返却し、完全にパーティーとは関係のなくなったエルドラドが向かった先は海だ。
 潮風が頬を撫でると必然的に潮の香りが鼻の奥をくすぐり、なんとも言えない香りにグランベルトは目を細める。

「この剣を振るうのも最後になるのかね……」

 腰から取り出した剣を見てみれば、数多の技に耐えてきたからか致命的なひび割れが始まっているその長剣はまさにいまのグランベルトのようである。
 燃え尽きるにはまだ早いと考えていたが、どうやら燃え尽きてしまうまではそう遠くないようだ。

 上段に剣を構え、呼吸を整えて己の内側の力に意識を集中し、数分間の集中の後に怒号と共にグランベルトは剣を振るった。
 すると海面はまるで斬られたかのように真っ二つに分断され、空は元からそうであったかのように海と同じように切れていく。
 そうして一瞬遅れてから鼓膜を痛めつけるほどの圧倒的な音量で放たれた音は空気が破裂した音であり、グランベルトは自分が振るったその技に目を細める。

 完璧だ、だがまだ更に上がある一撃でもある。

 グランベルトはこの世に存在するありとあらゆる攻撃方法を習得しており、究極の一撃を手に入れるために常日頃から修練を重ねてきているがどうにも最近何か大きな扉を開けそうな気配があるのだ。
 覚醒へと自分を導いてくれる扉の感覚は、グランベルトの人生において定期的に現れる試練でもある。

 それを乗り越えることでグランベルトは強くなってきたのだが、年も考えればそろそろ諦めてもいい頃なのではないか。

「諦めるのか? 究極の一撃というのは俺にとってそんな程度のものだったのか? 本当に諦めていいものなのか?」

 自問自答をしながら、グランベルトは答えのない問いに対して悩むフリをし続けなければならなかった。
 きっと心のどこかに既に答えはあって、それを素直に受け入れるために自分で準備しているだけにすぎない。

 先程の一撃が致命傷になったのか鞘に入れた途端完全にへし折れてしまった剣をどうしようかと悩みながらも、グランベルトはそうして海岸線に座り続ける。
 そうして何日が過ぎただろうか。

 己の技が究極に到達することを望んでいたはずのグランベルトはいまやそこには存在せず、究極に到達した技を見たいという欲求だけを持った男がそこにはいた。
 もはや老化のはじまった己の身体ではどう足掻いたところで最強の一撃を振るうことはできないだろう。

 ならばグランベルトにできることは己の技を継承し、発展させ、そして新たな方法で最強の一撃を生み出せる人材を見つけることだ。
 己の技を覚えることができるようなそんな天才を探すために、そうしてグランベルトは旅に出るのであった。
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