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序章
二話
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ぱちぱちと、木の中にある空気が弾け飛び火へと変換されていく。
焚き火から発される暖かい火を感じて、彼女はゆっくりと目を覚ました。
自分の体が横たわっている事を感じて上体を起こし、瞼を開けて眩しさに手で陽の光を隠しながらいま自分が生きている事を全身で感じる。
肺に流れ込んでくる空気はいつもより冷たく、ゆっくりと上体を起こしながら徐々に意識を覚醒させていた。
「……朝か」
言葉を発すれば自分が自分であった事を思い出せる。
昨晩はなんとも驚きの連続であった。
この世界の武の極地、最強の人間がどうして最強と呼ばれるのかを全身で体感した一日であったと思う。
彼が戦闘しているところを見たのは初めてというわけではないが、いつも一刀で戦闘を終わらせてしまう彼が初めて戦闘らしい戦闘をしていたのはこれからも長く記憶に鮮烈に残るだろう。
こちらのことを覗き見ているアデルの存在に気がついた私は、なるべく自然な風を装いながら喉を鳴らす。
「衣服の乱れは……ないな」
「朝起きて一番初めに確認するのがそれなの俺に対しての信用なさすぎじゃない?」
「信用はしている。何度もアデルの仕事には助けられているからな。だから手を出されたら責任を取ってもらおうと思っただけだ」
「三十路の人間がそれをいうと言葉の重みが変わってくるからやめてよ」
冗談を言い合いながら笑っていた自分の顔がびきりと強張るのを感じる。
日頃のアデルの言葉が人を避けるためわざと辛口になっているのは理解している。
だからこそ私は何を言われたところで落ち込まないし凹みもしなかった訳だが、今回限りは話が違った。
「私まだ18なんだが」
「……マジ?」
「おおマジだ。これでも天才だなんだともてはやされていたんだからな」
「だから初対面の時に俺にあんなこと言ったんだ。よかったね強くなれて」
騎士団長としては初対面の頃、五年前になるから13歳か。
13歳の人間と18歳の人間の見極めがつかないのは正直どうかと思うのだが、よほど私に興味がないのかもしくは普段からデカいのや小さいのとばかり戦っていて身長という概念にそれほど興味がないのか。
出来れば後者であって欲しいと思いつつ、私は昔の事を思い出す。
天才だなんだと言われれば調子に乗るのが人の性、人が決して辿り着くことができないとされる至高の領域で、ありありとあらゆるものから尊敬される最強の二つ名を手に入れたいと思ってしまったのだ。
そうしてどうやら現代の最強と呼ばれているらしいアデルを見かけた私は勝負を挑んでしまった。
「いま思えばあの時の私は馬鹿だったからな。訓練で殺しにくる人間がいるなんて思っても見なかったんだよ」
いま思い出せばあれでも手加減してくれていたのだろうが、目にも留まらぬ速さでぶん殴られた気分はいまでも思い返せる。
あれからあの時のことを思い返して訓練し続け、こうして共に旅をする関係にまで成り上がったわけだ。
人生というのはなんとも不思議なものである。
「……そう言えば料理するんだな」
とはいえいつまでも感傷に浸ってはいられない。
話題を切らすことを恐れた私は、鍋を混ぜるアデルの手つきを見ながらふとそう呟いた。
「料理くらいするさ、結局のところ自分の作る飯が一番美味いからね。まぁ作るの面倒だから旅の間しかやらないけどな。ほら、やるよ食べな」
「いいのか? 無理を言って付いてきているんだぞ私は」
「可愛いやつには飯を奢れ、性格がいい奴には恩を売れ、尊敬する人間には態度で示せ、愛した人間は常にそばにいろ、それ以外はゴミと一緒敵対するなら全部殺せ。これが俺の師匠の教えで、俺はそれに従って生きてるだけだよ」
自分がその五つの教えの中でどれに入っているのか。
殺されていないから最後のではないとして、可愛いのか性格がいいのか尊敬されているのか愛されているのか。
どれに自分が当てはまるかを考えるとなんだかそわそわしてしまうが、それよりもまず気になったのはそんな教えをアデルが信じているということだ。
「あんまり人の師弟関係に口を挟むのは良くないと思うが……大丈夫かその師匠」
「実際にその師匠のおかげで俺は世界最強になった。だから良いんじゃないの?」
「まぁそうなのだろうが……部外者がどうこういう話ではないな。いただきます」
師匠を馬鹿にしているわけではないが、そう捉えられてしまっては敵わないと思った私はとっとと話題を終わらせて食事をいただくことにした。
口に含んでみれば口の中に広がる肉の味と薬味の香り、暖かなスープはゆっくりと体の端から体を温めてくれている。
「──美味しいっ!」
「喜んでもらえて何よりだよ。おかわりはいくらでもあるから好きに食べな」
食べることを遠慮するのは馬鹿のすることだ。
食べられるものは食べられるうちに食べておく、それが私の流儀であり戦場で得た学びである。
バクバクと口に運び、おかわりをもらって口に入れながらある程度満足するまで食べた頃には鍋の中身は半分ほどまで減っていた。
そうして一旦胃が落ち着いたところで箸休めにアデルに疑問を投げかける。
「この料理はなんて言うんだ?」
「名前なんてないよ、荒汁とか鍋とかまぁ好きに名前つければいいじゃん。適当に作っただけだよこんなの」
「ふむ、では覇王汁というのはどうだろうか」
「なんか嫌なんで却下で。というか俺の事覇王って呼んでんのあの国だけだからな」
あの国、というのは王国のことだろう。
覇王と呼ばれるたびに若干嫌そうな顔をするから他所国でも大変そうだななどと思っていたのだが、どうやら国によって彼にかけられている二つ名は様々だったらしい。
それは最強という言葉の意味が国によって違うからだろう。
最強、といえば万人に伝わるが人は唯一性のあるものを特別な言葉で表現しようとする。
その結果が国によって彼の名称を変えるという変な方向に突き進んだらしい。
「そうなのか? なら帝国はなんと呼んでいるのだ?」
「天使威だ」
「あまつかい? 雨でも降らしたのか?」
「天が使う威光って書いてあまつかい。空にいる神が帝国のために使わせた天使だからだと」
自重気味に笑うアデルを見て私はアデルのことをしたから上まで観察する。
使い込まれている装備、ただ物ではない立ち居振る舞い。
顔は端正な方だとは思うが、天使というよりはどちらかといえば戦の神という方が私にしてみればしっくりとくる。
「天使? お前がか?」
「さっきは申し訳なさそうにしてたのにいきなり態度悪くなるな。びっくりするよ」
「気を悪くしたなら謝るが、実際自分でも天使は似合わないと思うだろう?」
「まぁどちらかと言えば悪魔だろうな。自分で言うのは癪に触るが」
「だがまぁどちらにせよ、最強であることには変わりないのだな」
「羨ましい?」
ふと言葉を投げかけられ、どう返答すればいいものかと頭を悩ませる。
自分がもしもアデルと同じ力を持っていたならばどうだろうか。
少なくともアデルと同じように国に所属はしないだろう、私が騎士団に所属していたのは自分の強さが所詮国という箱の中でしか使えないものであることを自覚していたからだ。
そこいらを歩く人間よりもはるかに強い自身はあるが、この世界を一人で生き抜くにはとてもではないが力が不足している。
力があれば、そう思ったことは一度や二度ではないが、孤独に焦がれているいまと孤独であることを強制されている彼のことを考えるとどうにも最強というものに琴線は触れない。
「私は最強になりたいとは思わんよ。目標としてる人物の隣に立てればそれでいい」
「……そうか」
そしてそんな私の言葉に対して悲しそうな声で返したアデルを見て、きっと彼もその孤独に押しつぶされそうなのだろうということを理解させられる。
何とかしてあげたいとは思うのだが、最強というものに一度もなったことがない私では彼の気持ちを推し量ることができず、同時に助けてあげることも満足にはできない。
なんだか嫌な雰囲気が流れ出したのを感じて、私は話を強引に切り替える。
「このペースだと共和国に着くのは春くらいになりそうだな」
「追手でも気にしてんの?」
「それに関しては気にしていない。王国の虎の子である第六師団すらも使って止めようとして無理だったのだ、追手が来る可能性は限りなく低いだろうしな。問題は共和国のある食材の事だ」
王国の中でも軍部を預かる自分ですら存在を噂程度にしか聞いたことのない存在。
団員数が一体何人いるのかは知らないが、アデルを捕まえるためにあれだけの人数を招集し、結果全滅しているのだからこれ以上の追手を差し向けることはないだろう。
私の頭の中を占領しているのはそんな来るはずもない脅威ではなく、去って行ってしまう食べ物についてだ。
「食材?」
「話によれば共和国で冬に川からとれる魚はそれはそれは旨いらしいぞ」
「へえ、魚ね……確かに悪くないな」
アデルが食に対してうるさいことは私も知っているところだ。
基本的にどうやってもお願いを聞こうとしないアデルだが、おいしい食べ物という情報だけでも積極的に話をきいてくれるようになる。
きっとそれは安らぎを求めている彼自身の性質由来なのだろうが、今回はそれを上手に使わせてもらおう。
追手が来ないにしろ、私はこんな国からは一刻でもはやく逃げ出したいのだ。
自分では難しい話であったとしても最強ならばどうにかしてくれるだろう。
結局私という人間も彼の最強の力に頼りきってしまっている。
「まあ馬でも見つけない限り無理だとは思うがな」
「そうでもないよ、この近く確か川あったよね」
「王国の中央を流れているイリシス川か? 王国が栄える要因にもなったほどの大きな川だし確かにあの川を下れば早いだろうが、この時期のイリシス川は落ちたら死ぬぞ? それに凶悪な海魔が現れる時期でもある」
「落ちたら死ぬなら落ちなければいいだけ、海魔が現れたら殺して切り抜ければいいだけだ。怖いなら置いて行ってやろうか?」
「まさか、さっきのはただの一般論だ。私もついていくとも」
挑発的な態度のアデルの言葉に対して私は負けじと言葉を返す。
彼に甘えてしまっている、そんなことはわかっている。
あの日己に誓った約束のためにも、私は彼に見捨てられる前に更に強くなる事を心に決めるのだった。
焚き火から発される暖かい火を感じて、彼女はゆっくりと目を覚ました。
自分の体が横たわっている事を感じて上体を起こし、瞼を開けて眩しさに手で陽の光を隠しながらいま自分が生きている事を全身で感じる。
肺に流れ込んでくる空気はいつもより冷たく、ゆっくりと上体を起こしながら徐々に意識を覚醒させていた。
「……朝か」
言葉を発すれば自分が自分であった事を思い出せる。
昨晩はなんとも驚きの連続であった。
この世界の武の極地、最強の人間がどうして最強と呼ばれるのかを全身で体感した一日であったと思う。
彼が戦闘しているところを見たのは初めてというわけではないが、いつも一刀で戦闘を終わらせてしまう彼が初めて戦闘らしい戦闘をしていたのはこれからも長く記憶に鮮烈に残るだろう。
こちらのことを覗き見ているアデルの存在に気がついた私は、なるべく自然な風を装いながら喉を鳴らす。
「衣服の乱れは……ないな」
「朝起きて一番初めに確認するのがそれなの俺に対しての信用なさすぎじゃない?」
「信用はしている。何度もアデルの仕事には助けられているからな。だから手を出されたら責任を取ってもらおうと思っただけだ」
「三十路の人間がそれをいうと言葉の重みが変わってくるからやめてよ」
冗談を言い合いながら笑っていた自分の顔がびきりと強張るのを感じる。
日頃のアデルの言葉が人を避けるためわざと辛口になっているのは理解している。
だからこそ私は何を言われたところで落ち込まないし凹みもしなかった訳だが、今回限りは話が違った。
「私まだ18なんだが」
「……マジ?」
「おおマジだ。これでも天才だなんだともてはやされていたんだからな」
「だから初対面の時に俺にあんなこと言ったんだ。よかったね強くなれて」
騎士団長としては初対面の頃、五年前になるから13歳か。
13歳の人間と18歳の人間の見極めがつかないのは正直どうかと思うのだが、よほど私に興味がないのかもしくは普段からデカいのや小さいのとばかり戦っていて身長という概念にそれほど興味がないのか。
出来れば後者であって欲しいと思いつつ、私は昔の事を思い出す。
天才だなんだと言われれば調子に乗るのが人の性、人が決して辿り着くことができないとされる至高の領域で、ありありとあらゆるものから尊敬される最強の二つ名を手に入れたいと思ってしまったのだ。
そうしてどうやら現代の最強と呼ばれているらしいアデルを見かけた私は勝負を挑んでしまった。
「いま思えばあの時の私は馬鹿だったからな。訓練で殺しにくる人間がいるなんて思っても見なかったんだよ」
いま思い出せばあれでも手加減してくれていたのだろうが、目にも留まらぬ速さでぶん殴られた気分はいまでも思い返せる。
あれからあの時のことを思い返して訓練し続け、こうして共に旅をする関係にまで成り上がったわけだ。
人生というのはなんとも不思議なものである。
「……そう言えば料理するんだな」
とはいえいつまでも感傷に浸ってはいられない。
話題を切らすことを恐れた私は、鍋を混ぜるアデルの手つきを見ながらふとそう呟いた。
「料理くらいするさ、結局のところ自分の作る飯が一番美味いからね。まぁ作るの面倒だから旅の間しかやらないけどな。ほら、やるよ食べな」
「いいのか? 無理を言って付いてきているんだぞ私は」
「可愛いやつには飯を奢れ、性格がいい奴には恩を売れ、尊敬する人間には態度で示せ、愛した人間は常にそばにいろ、それ以外はゴミと一緒敵対するなら全部殺せ。これが俺の師匠の教えで、俺はそれに従って生きてるだけだよ」
自分がその五つの教えの中でどれに入っているのか。
殺されていないから最後のではないとして、可愛いのか性格がいいのか尊敬されているのか愛されているのか。
どれに自分が当てはまるかを考えるとなんだかそわそわしてしまうが、それよりもまず気になったのはそんな教えをアデルが信じているということだ。
「あんまり人の師弟関係に口を挟むのは良くないと思うが……大丈夫かその師匠」
「実際にその師匠のおかげで俺は世界最強になった。だから良いんじゃないの?」
「まぁそうなのだろうが……部外者がどうこういう話ではないな。いただきます」
師匠を馬鹿にしているわけではないが、そう捉えられてしまっては敵わないと思った私はとっとと話題を終わらせて食事をいただくことにした。
口に含んでみれば口の中に広がる肉の味と薬味の香り、暖かなスープはゆっくりと体の端から体を温めてくれている。
「──美味しいっ!」
「喜んでもらえて何よりだよ。おかわりはいくらでもあるから好きに食べな」
食べることを遠慮するのは馬鹿のすることだ。
食べられるものは食べられるうちに食べておく、それが私の流儀であり戦場で得た学びである。
バクバクと口に運び、おかわりをもらって口に入れながらある程度満足するまで食べた頃には鍋の中身は半分ほどまで減っていた。
そうして一旦胃が落ち着いたところで箸休めにアデルに疑問を投げかける。
「この料理はなんて言うんだ?」
「名前なんてないよ、荒汁とか鍋とかまぁ好きに名前つければいいじゃん。適当に作っただけだよこんなの」
「ふむ、では覇王汁というのはどうだろうか」
「なんか嫌なんで却下で。というか俺の事覇王って呼んでんのあの国だけだからな」
あの国、というのは王国のことだろう。
覇王と呼ばれるたびに若干嫌そうな顔をするから他所国でも大変そうだななどと思っていたのだが、どうやら国によって彼にかけられている二つ名は様々だったらしい。
それは最強という言葉の意味が国によって違うからだろう。
最強、といえば万人に伝わるが人は唯一性のあるものを特別な言葉で表現しようとする。
その結果が国によって彼の名称を変えるという変な方向に突き進んだらしい。
「そうなのか? なら帝国はなんと呼んでいるのだ?」
「天使威だ」
「あまつかい? 雨でも降らしたのか?」
「天が使う威光って書いてあまつかい。空にいる神が帝国のために使わせた天使だからだと」
自重気味に笑うアデルを見て私はアデルのことをしたから上まで観察する。
使い込まれている装備、ただ物ではない立ち居振る舞い。
顔は端正な方だとは思うが、天使というよりはどちらかといえば戦の神という方が私にしてみればしっくりとくる。
「天使? お前がか?」
「さっきは申し訳なさそうにしてたのにいきなり態度悪くなるな。びっくりするよ」
「気を悪くしたなら謝るが、実際自分でも天使は似合わないと思うだろう?」
「まぁどちらかと言えば悪魔だろうな。自分で言うのは癪に触るが」
「だがまぁどちらにせよ、最強であることには変わりないのだな」
「羨ましい?」
ふと言葉を投げかけられ、どう返答すればいいものかと頭を悩ませる。
自分がもしもアデルと同じ力を持っていたならばどうだろうか。
少なくともアデルと同じように国に所属はしないだろう、私が騎士団に所属していたのは自分の強さが所詮国という箱の中でしか使えないものであることを自覚していたからだ。
そこいらを歩く人間よりもはるかに強い自身はあるが、この世界を一人で生き抜くにはとてもではないが力が不足している。
力があれば、そう思ったことは一度や二度ではないが、孤独に焦がれているいまと孤独であることを強制されている彼のことを考えるとどうにも最強というものに琴線は触れない。
「私は最強になりたいとは思わんよ。目標としてる人物の隣に立てればそれでいい」
「……そうか」
そしてそんな私の言葉に対して悲しそうな声で返したアデルを見て、きっと彼もその孤独に押しつぶされそうなのだろうということを理解させられる。
何とかしてあげたいとは思うのだが、最強というものに一度もなったことがない私では彼の気持ちを推し量ることができず、同時に助けてあげることも満足にはできない。
なんだか嫌な雰囲気が流れ出したのを感じて、私は話を強引に切り替える。
「このペースだと共和国に着くのは春くらいになりそうだな」
「追手でも気にしてんの?」
「それに関しては気にしていない。王国の虎の子である第六師団すらも使って止めようとして無理だったのだ、追手が来る可能性は限りなく低いだろうしな。問題は共和国のある食材の事だ」
王国の中でも軍部を預かる自分ですら存在を噂程度にしか聞いたことのない存在。
団員数が一体何人いるのかは知らないが、アデルを捕まえるためにあれだけの人数を招集し、結果全滅しているのだからこれ以上の追手を差し向けることはないだろう。
私の頭の中を占領しているのはそんな来るはずもない脅威ではなく、去って行ってしまう食べ物についてだ。
「食材?」
「話によれば共和国で冬に川からとれる魚はそれはそれは旨いらしいぞ」
「へえ、魚ね……確かに悪くないな」
アデルが食に対してうるさいことは私も知っているところだ。
基本的にどうやってもお願いを聞こうとしないアデルだが、おいしい食べ物という情報だけでも積極的に話をきいてくれるようになる。
きっとそれは安らぎを求めている彼自身の性質由来なのだろうが、今回はそれを上手に使わせてもらおう。
追手が来ないにしろ、私はこんな国からは一刻でもはやく逃げ出したいのだ。
自分では難しい話であったとしても最強ならばどうにかしてくれるだろう。
結局私という人間も彼の最強の力に頼りきってしまっている。
「まあ馬でも見つけない限り無理だとは思うがな」
「そうでもないよ、この近く確か川あったよね」
「王国の中央を流れているイリシス川か? 王国が栄える要因にもなったほどの大きな川だし確かにあの川を下れば早いだろうが、この時期のイリシス川は落ちたら死ぬぞ? それに凶悪な海魔が現れる時期でもある」
「落ちたら死ぬなら落ちなければいいだけ、海魔が現れたら殺して切り抜ければいいだけだ。怖いなら置いて行ってやろうか?」
「まさか、さっきのはただの一般論だ。私もついていくとも」
挑発的な態度のアデルの言葉に対して私は負けじと言葉を返す。
彼に甘えてしまっている、そんなことはわかっている。
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