4 / 32
序章
4話
しおりを挟む
海と違って川はいい。
潮の満ち引きがない分まず酔いにくい。
さらに言えば陸地が近くにあるというのは陸で生きる生物にとって非常に心を穏やかにしてくれるし、なにより海水と違って浄化処理が楽なのが素晴らしい。
道中何度か休憩を挟み、そうして川を下り続けたアデル達はようやく王国の国境を抜けて森の中にいた。
「結局3週間近くかかったな。もうそろそろ冬か」
「シャワー……はやくシャワーが浴びたい……」
疲労感と共にそんな言葉を発してしまうのも仕方がないだろう。
王国を出て三週間もの間ほとんどずっと船の上にいた彼等は、道中何度か水浴びをしているとは言えしっかりとした設備で休憩をとった時に比べればまるで休憩できていない。
疲労というのは限界値を徐々に減らしていくものだ。
限界値が減っていけば回復までの時間は早いが当然のことながら動けなくなるまでの時間も早い。
近くに落ちていた木の枝を杖代わりにして歩く彼女の姿はまさにしんどさの象徴だ。
「確かにな。匂うぞ?」
「なんで同じ時間風呂に入っていないはずなのにそっちは匂いがしないんだ。自分の匂いで鼻まで曲がってしまったのか私は」
「長旅するんだからそれ用の魔法だったり道具だったり用意するでしょ。冒険者ならこれくらいできるけど正規軍はそういうのやらないもんな」
アデルの手の中にあるのは小さな指輪。
彼がそれを握りしめながら何かを唱えると、少しだけ彼から発されていた大衆の様なものが消え失せる。
王国軍に所属している人間は身なりをきれいにし、常に高潔であることを求められるのだが現場に降りてくる金額が少なすぎて彼が持っているいわゆる魔道具──誰でも簡易的に魔法が使える様に改良された道具──を揃えることはできなかったのだ。
理由はそれ以外にももちろんあるが、理由の半分はそれだといっていい。
「魔法は使うと魔術組合と宮廷魔術師がうるさいのだ。私だってできれば魔法を覚えたい」
「それは俺じゃなくて魔法使いにでも聞いてくれ。使い方はわかるけど教え方とか知らないしな」
「魔法使いの講習か……どれくらいかかるんだろうか」
魔法使いとこの世界で正式に呼ばれる物たちは稀だ。
魔法を使える者と魔法を使う事のできるものは全く違う。
弛まぬ知識と努力こそが魔法を覚える唯一の手段であり、肉体的要素のある戦士とは違い魔法使いには一切才能というものが存在しない。
ただひたすらに修練を重ねた者、勉学を収め続けた者のみが魔法使いとして高みへと昇っていくわけであり、それを他者に教えるとすれば一体いくらになるのだろうか。
「ちゃんと魔法使いとして食っていけるレベルまで教えてくれる人なら公金貨で大体100枚くらいじゃないか?」
「公金貨で100枚!? 私の月給レベルじゃないか!」
「王国の騎士団長貰いすぎでしょ。手当なしでそれなの?」
「交通費や側近を雇うための費用、その他雑務はもちろん王国からでるぞ」
公金貨100枚がいくら程度なのかと聞かれれば、王都に住む一般家庭の家族五人組が年間で手に入れる金額のおおよそが金貨50枚ほどとされている。
一人の人間が生きていくのにかかる費用は大体一年間につき10枚といったところ。
そう考えれば年間1200枚というのは途方もないほどの金額だと思えるが、それでももう少しは貰っていいと思えるほどに騎士団長の仕事は激務であった。
思い返せばいい思い出たが、そんな莫大な収入を失ったと思うと同時に頭も痛い。
「王国負けそうだなぁ。帝国の上層部は戦争するためなら尋常じゃないくらい結束力高いし」
「私の生まれ故郷も焼け野原に変わるのか。なんだか感慨深いなぁ」
「感慨深いっておそらくそんな風に使う言葉じゃないぞ」
「なんでもいいじゃないか。ようやく街が見えてきたぞ」
普段しない様なことをするべきではない。
ジト目でこちらの間違いを指摘してきたアデルに対し、私は強制的に話題を入れ替えさせた。
「共和国で最も王国に近い街ということはバイエルンか」
王国と共和国の仲は良くはない。
共和制を取り入れ血を第一としない共和国の人間に対して、王国は絶対血統至上主義だ。
根本的な思想の違いは対立を産み、一時期は戦争が始まるかとも思われたものだが共和国の軍備と地形などを考慮に入れた結果、戦争に処理できたとしても尋常ではないほどの被害が両名に出るという事でぎりぎり戦争を回避した歴史がある。
そんな背景もあってか王国との間に作られたこの街は固い城壁と数多くの兵士によって守られており、いつ王国が攻めてきてもいいようにと守備を固めている。
王国の騎士団長としての立場でこの場所に入ればどうなるかは考えるまでもないので、鎧につけられたマントを取り外し騎士団長の証を取り外しているとアデルから声がかかった。
「一応王国を出たわけだけど、まだ付いてくんの?」
「受けた恩は返せと教えられて育ってきた。それに歩法もまだ教えてもらえていないからな」
「別にいいけど無理に恩を返さなくてもいいよ。返せると思ってないし」
そういいながらこちらを見てくるアデルの目には優しさがともっている。
まるで小さな子供が親の手伝いをしようとしたときにやんわりと断るときの様な、どうせ無理だとわかっているが相手のプライドを傷つけないためだけに優しくしてやっているというのがひしひしと伝わってくる。
「言うじゃないか。これでも名家の産まれだ、金の稼ぎ方くらいは知っているぞ」
「……俺が受ける依頼って一個の案件につきいくらだと思う?」
カネで恩を返すのはあまり褒められたことではないが、金を貰って困ることがないのも事実。
一番わかりやすい金という単位で彼に恩を返そうと考え言葉を投げかけてみれば、若干呆れたような顔をしながらそんな言葉を返してくる。
「そうだな、冒険者の最高位で料金は大体一案件最低50金貨と聞く。世界最強の男と言われるのだから私の月収と同じ100金貨でどうだっ!?」
「初依頼料が100金貨、それに合わせて通常依頼料金が500金貨、依頼をこなすための交通費と道具料金は別途、戦闘後に綺麗な状態にして欲しい場合は追加で100金貨。しめて大体1000枚前後が俺の一回の依頼料だよ」
「一回でか? 本当に? 少なくとも私の口から7回はお前に依頼したぞ? あれで7千万だというのか!?」
思い出すのは酒場での依頼。
アデルに対しての依頼は全て口頭のみで伝えられ、料金に関しては別のところで受け取っていると一度アデルから聞いたことがあった。
伝令役として騎士団長である自分が使わされていることが正直腹立たしくもあったのだが、一度の依頼に対してそれだけの金額がかかっているのならば自分にまかせるのも納得はできる。
「契約時に相手を威圧するため、どこぞの教団が召喚した大悪魔の討伐任務、突如発生した魔物の群の排除。最初のは別としてどれもこなせば一個大隊単位で被害が出る代物だ。
一人死ねば遺族に手当として金貨10枚、遺族手当として二ヶ月に一枚金貨が配られそれが一年は続く。つまり訓練してきた兵士が一人死ねばそれだけで16枚、新任を教育する金を考えたらもっとだ。50人も死ねばとんとん、しかも短期間で兵士が死にまくれば当然志願するやつも減るし辞める奴だって増える。
随分と安上がりだよ、そう考えれば」
「確かにそうだな。兵士が死ぬことを考えれば……安いのか?」
「国相手だから高いのもあるけどな」
それだけの金額をそれに見合った大変な仕事をして稼いだというのにその稼ぎは全て王国に。
ただ働きで言いように使われたとしか言えない彼に可哀想だという感情が浮かんでくるが、国から逃げるというのはそれなりにリスクを負うものなのだから金だけで済んでいる分まだいいのかもしれない。
そんな事を考えながら街道を歩き、いつしか街を取り囲む城壁を見上げるようになっていたころには完全に体力もなくなってしまっていた。
「ようこそバイエルンへ。通行証は……その姿もしかして王国の?」
「そこらへんは深く追求しないでよ。はい、通行手形」
騎士団長とはバレずとも鎧の造形でどこの国の人間かくらいはある程度兵士として訓練を積んでいる者ならばわかる。
ましやそれが王国から日々やってくるだろう刺客をはねのけているこの街の人間であることを考えれば当然のことだ。
警戒心を隠そうともしない兵士に対し、アデルはまるで何も問題がないかのようなふりをしながら通行手形と呼ばれるだれがどこの町からやってきてどのような人物なのかを証明するようなものを手渡す。
分かっていたことではあったが、そうして通行手形を目にしたとたんに兵士の顔色が変わる。
「この通行証は……失礼しました。どうぞ中へ、街長への連絡はどういたしましょうか?」
「いらない。今回は遊びに来ただけだからね、気を使ってくれてありがとう」
「いえ、私は門兵としての仕事をこなしたまでですので」
「なんともまぁ優遇されているものだな」
ふとそんな言葉が口から飛び出る。
通行手形を見せずに通ることは基本的に不可能だ、それは街の治安を守るためであり当然誰しもがこのルールに縛られている。
だというのに最強の名前さえあれば、そんなルールすらも相手の方から無視してくれるのだ。
なんとも都合のいいことがあったものである。
いや、都合がいいのは相手の方であってアデルからしてみればいらぬ世話を焼かれているようなものなのかもしれないが。
「そりゃあね。誰だって最強の力を自分の側につけたいからね」
「気分が悪くなったりはしないのか? 周りの誰もが媚びを売って来るなんて胸焼けしそうだ」
「人間なんて所詮お互いの事を打算的に使おうとしているんだから、それが見やすくなっただけだよ。相手の性格がわかりやすくてこれはこれで悪くないんだ」
そういいながらアデルは笑う。
普段からよく笑う男ではあるが、なんだかその笑顔は無理をしているように見えた。
アデルが何歳なのかは知らないが、最強と呼ばれてずっと自分達とは違うといわれて育ってくれば疎外感はどうしたって感じてしまうものだろう。
「なんというか寂しい人生だな」
「酷いこと言うね、まあ……君はわりと打算的に動いてこないからその点ではありがたいんだけどさ」
変なところで言葉に詰まったアデルを見て、言いようのない違和感を覚える。
後の言葉を考えれば別に言いよどむようなことはなかったはずだ。
そこまで考えて彼女はとあることに気が付いた。
この旅の道中、いやこの旅が始まるまえですらも――たったの一度たりとも彼から名前を呼ばれたことがないという事実に。
「もしかして私の名前を憶えていないのか?」
「長期的な付き合いをしたことが無いから人の名前を覚えられないんだよ。あんたくらいのもんだ、師匠を除けば俺の周りに長いこといたのは」
「つまり私の名前には興味ないと?」
意地悪な質問だったろうか? いやそんなことはないはずだ。
人の名前というものは大切なもので、たとえどれだけ行動を共にしていたとしても名前を呼びあうというのは関係性を深めるうえでこれ以上ないピースである。
いまのいままで名前を呼ばれていなかったことに違和感を感じなかった自分がそれを口にすると言葉の重みが消えてしまうので口にはできないが、それでも名前の重要性というのは個人を識別するうえで、これ以上ないほどに大切なのだ。
アデルの肩に手を添えてにらみつけるようにして目線を送ってみれば、アデルは観念したように大きく息を吐きだすと肩に置いた手を優しく振りほどく。
「仕事を持ってくるだけの人でしかなかったからな。風呂入って身なりを綺麗にしたら改めて名前を聞くからとりあえず宿に行くぞ」
「二度と名前を忘れないようにしてやる」
一度も覚えていないのだから正確には一度も忘れられないように、という風に口にするのが正しいのだろうが、一度も覚えられていないと自分の口で言うのはなんだか尺に触る。
そうして約束をしたアデルと彼女は王国を出て初めて別々に別れ、アデルはこの街の冒険者組合へと向かい彼女はアデルに教えられた宿の一室で念願の風呂に入っていたのだった。
「――まさかシャワーだけじゃなくて風呂にまで入れるとはな」
王都や帝都などと呼ばれるその国の首都であるならばまだしも、地方の街の上下水道の設備というのはとてもひどい。
汚くなった水を処理するため何とか下水道が取り付けられているところがほとんどで、飲み水や生活用水などは少し離れた川に行くか井戸から水をくみ取ってくるかしなければ手に入れることもできない。
そんな環境の街でシャワーを浴びることすら相当の贅沢だというのに、ましてや風呂に入れるなどとは驚きだ。
ラウンジの風格からして相当に良い宿屋であることは予想がついていたが、これほどまでに設備が整っているとなると考えられるのは貴族や王族などが視察に来た際に使われるような施設なのだろう。
基本的にはこういった宿屋は一見さんをお断りしている場合は多いのだが、アデルに言われるがままに彼の名前を出すとここでも勝手に便宜を図ってくれた。
「王国とは完全に縁が切れた以上はあの男についていくのが最も賢い選択か。本人は私が打算的ではないと言っていた手前申し訳ないが……」
打算的でないのならば、私はきっとあの時彼についていくなど口にしなかっただろう。
確かに彼を救おうとしたのは自分自身の考えでそこに打算というものは存在しなかったが、目の前で王国最強の部隊をまるで子供の相手をするようにして蹴散らした彼を見てこの男についていけば自分は安全にこの国から逃げられるという感情が芽生えたのは確かだ。
いつかは彼に対してそんな風に思ってしまっていることを謝罪しなければならないだろうが、それはきっと自分が感じているこの恩全てを完全に返しきれたと思えた時だろう。
「それにしてもあの男が最強と言われてもなんだか実感がわかないな。確かに王国最強の部隊を相手にしてかすり傷も追わないのは凄腕だが、世界最強かと聞かれるとなんだかな。本気の戦闘を見ていないからなんだろうが」
思い変えすのは立ち回り方や武器の振るい方に目線の使い方。
強い人間の動きを分析することは彼女の趣味のようなものだが、そんな彼女が疑念を抱いているのにはもちろん理由がある。
アデルが使っていた技術というのは素晴らしいものだ。
全てが神業と呼ばれるにふさわしいだけの練度を誇っていたし、誰もそのことについて文句を挟める人間は存在しないだろう。
だが世界最強と言われると話は変わってくる。
この世界には人間だけでなく亜人と呼ばれる異なる種が存在する。
それらは人と魔物と呼ばれる動植物達の中間のような生物であり、それぞれが様々な特色を持つのだが中には巨岩を一撃で破壊するような力を持つものや100本近い腕を操るものだっているのだ。
それらすべてに彼が勝てるのかと聞かれれば疑問がないわけではない。
「守ってもらっている分際で失礼か」
最強とはどのようなものなのか。
闘いにかかわるものとしてその高見がどれほどなのか気にならないわけではなかったが、それでもこれ以上はアデルに対して失礼というものだろう。
改めて肩まで湯につかりなおし、とりあえず空を眺めてここまでこれたことを喜ぶのだった。
潮の満ち引きがない分まず酔いにくい。
さらに言えば陸地が近くにあるというのは陸で生きる生物にとって非常に心を穏やかにしてくれるし、なにより海水と違って浄化処理が楽なのが素晴らしい。
道中何度か休憩を挟み、そうして川を下り続けたアデル達はようやく王国の国境を抜けて森の中にいた。
「結局3週間近くかかったな。もうそろそろ冬か」
「シャワー……はやくシャワーが浴びたい……」
疲労感と共にそんな言葉を発してしまうのも仕方がないだろう。
王国を出て三週間もの間ほとんどずっと船の上にいた彼等は、道中何度か水浴びをしているとは言えしっかりとした設備で休憩をとった時に比べればまるで休憩できていない。
疲労というのは限界値を徐々に減らしていくものだ。
限界値が減っていけば回復までの時間は早いが当然のことながら動けなくなるまでの時間も早い。
近くに落ちていた木の枝を杖代わりにして歩く彼女の姿はまさにしんどさの象徴だ。
「確かにな。匂うぞ?」
「なんで同じ時間風呂に入っていないはずなのにそっちは匂いがしないんだ。自分の匂いで鼻まで曲がってしまったのか私は」
「長旅するんだからそれ用の魔法だったり道具だったり用意するでしょ。冒険者ならこれくらいできるけど正規軍はそういうのやらないもんな」
アデルの手の中にあるのは小さな指輪。
彼がそれを握りしめながら何かを唱えると、少しだけ彼から発されていた大衆の様なものが消え失せる。
王国軍に所属している人間は身なりをきれいにし、常に高潔であることを求められるのだが現場に降りてくる金額が少なすぎて彼が持っているいわゆる魔道具──誰でも簡易的に魔法が使える様に改良された道具──を揃えることはできなかったのだ。
理由はそれ以外にももちろんあるが、理由の半分はそれだといっていい。
「魔法は使うと魔術組合と宮廷魔術師がうるさいのだ。私だってできれば魔法を覚えたい」
「それは俺じゃなくて魔法使いにでも聞いてくれ。使い方はわかるけど教え方とか知らないしな」
「魔法使いの講習か……どれくらいかかるんだろうか」
魔法使いとこの世界で正式に呼ばれる物たちは稀だ。
魔法を使える者と魔法を使う事のできるものは全く違う。
弛まぬ知識と努力こそが魔法を覚える唯一の手段であり、肉体的要素のある戦士とは違い魔法使いには一切才能というものが存在しない。
ただひたすらに修練を重ねた者、勉学を収め続けた者のみが魔法使いとして高みへと昇っていくわけであり、それを他者に教えるとすれば一体いくらになるのだろうか。
「ちゃんと魔法使いとして食っていけるレベルまで教えてくれる人なら公金貨で大体100枚くらいじゃないか?」
「公金貨で100枚!? 私の月給レベルじゃないか!」
「王国の騎士団長貰いすぎでしょ。手当なしでそれなの?」
「交通費や側近を雇うための費用、その他雑務はもちろん王国からでるぞ」
公金貨100枚がいくら程度なのかと聞かれれば、王都に住む一般家庭の家族五人組が年間で手に入れる金額のおおよそが金貨50枚ほどとされている。
一人の人間が生きていくのにかかる費用は大体一年間につき10枚といったところ。
そう考えれば年間1200枚というのは途方もないほどの金額だと思えるが、それでももう少しは貰っていいと思えるほどに騎士団長の仕事は激務であった。
思い返せばいい思い出たが、そんな莫大な収入を失ったと思うと同時に頭も痛い。
「王国負けそうだなぁ。帝国の上層部は戦争するためなら尋常じゃないくらい結束力高いし」
「私の生まれ故郷も焼け野原に変わるのか。なんだか感慨深いなぁ」
「感慨深いっておそらくそんな風に使う言葉じゃないぞ」
「なんでもいいじゃないか。ようやく街が見えてきたぞ」
普段しない様なことをするべきではない。
ジト目でこちらの間違いを指摘してきたアデルに対し、私は強制的に話題を入れ替えさせた。
「共和国で最も王国に近い街ということはバイエルンか」
王国と共和国の仲は良くはない。
共和制を取り入れ血を第一としない共和国の人間に対して、王国は絶対血統至上主義だ。
根本的な思想の違いは対立を産み、一時期は戦争が始まるかとも思われたものだが共和国の軍備と地形などを考慮に入れた結果、戦争に処理できたとしても尋常ではないほどの被害が両名に出るという事でぎりぎり戦争を回避した歴史がある。
そんな背景もあってか王国との間に作られたこの街は固い城壁と数多くの兵士によって守られており、いつ王国が攻めてきてもいいようにと守備を固めている。
王国の騎士団長としての立場でこの場所に入ればどうなるかは考えるまでもないので、鎧につけられたマントを取り外し騎士団長の証を取り外しているとアデルから声がかかった。
「一応王国を出たわけだけど、まだ付いてくんの?」
「受けた恩は返せと教えられて育ってきた。それに歩法もまだ教えてもらえていないからな」
「別にいいけど無理に恩を返さなくてもいいよ。返せると思ってないし」
そういいながらこちらを見てくるアデルの目には優しさがともっている。
まるで小さな子供が親の手伝いをしようとしたときにやんわりと断るときの様な、どうせ無理だとわかっているが相手のプライドを傷つけないためだけに優しくしてやっているというのがひしひしと伝わってくる。
「言うじゃないか。これでも名家の産まれだ、金の稼ぎ方くらいは知っているぞ」
「……俺が受ける依頼って一個の案件につきいくらだと思う?」
カネで恩を返すのはあまり褒められたことではないが、金を貰って困ることがないのも事実。
一番わかりやすい金という単位で彼に恩を返そうと考え言葉を投げかけてみれば、若干呆れたような顔をしながらそんな言葉を返してくる。
「そうだな、冒険者の最高位で料金は大体一案件最低50金貨と聞く。世界最強の男と言われるのだから私の月収と同じ100金貨でどうだっ!?」
「初依頼料が100金貨、それに合わせて通常依頼料金が500金貨、依頼をこなすための交通費と道具料金は別途、戦闘後に綺麗な状態にして欲しい場合は追加で100金貨。しめて大体1000枚前後が俺の一回の依頼料だよ」
「一回でか? 本当に? 少なくとも私の口から7回はお前に依頼したぞ? あれで7千万だというのか!?」
思い出すのは酒場での依頼。
アデルに対しての依頼は全て口頭のみで伝えられ、料金に関しては別のところで受け取っていると一度アデルから聞いたことがあった。
伝令役として騎士団長である自分が使わされていることが正直腹立たしくもあったのだが、一度の依頼に対してそれだけの金額がかかっているのならば自分にまかせるのも納得はできる。
「契約時に相手を威圧するため、どこぞの教団が召喚した大悪魔の討伐任務、突如発生した魔物の群の排除。最初のは別としてどれもこなせば一個大隊単位で被害が出る代物だ。
一人死ねば遺族に手当として金貨10枚、遺族手当として二ヶ月に一枚金貨が配られそれが一年は続く。つまり訓練してきた兵士が一人死ねばそれだけで16枚、新任を教育する金を考えたらもっとだ。50人も死ねばとんとん、しかも短期間で兵士が死にまくれば当然志願するやつも減るし辞める奴だって増える。
随分と安上がりだよ、そう考えれば」
「確かにそうだな。兵士が死ぬことを考えれば……安いのか?」
「国相手だから高いのもあるけどな」
それだけの金額をそれに見合った大変な仕事をして稼いだというのにその稼ぎは全て王国に。
ただ働きで言いように使われたとしか言えない彼に可哀想だという感情が浮かんでくるが、国から逃げるというのはそれなりにリスクを負うものなのだから金だけで済んでいる分まだいいのかもしれない。
そんな事を考えながら街道を歩き、いつしか街を取り囲む城壁を見上げるようになっていたころには完全に体力もなくなってしまっていた。
「ようこそバイエルンへ。通行証は……その姿もしかして王国の?」
「そこらへんは深く追求しないでよ。はい、通行手形」
騎士団長とはバレずとも鎧の造形でどこの国の人間かくらいはある程度兵士として訓練を積んでいる者ならばわかる。
ましやそれが王国から日々やってくるだろう刺客をはねのけているこの街の人間であることを考えれば当然のことだ。
警戒心を隠そうともしない兵士に対し、アデルはまるで何も問題がないかのようなふりをしながら通行手形と呼ばれるだれがどこの町からやってきてどのような人物なのかを証明するようなものを手渡す。
分かっていたことではあったが、そうして通行手形を目にしたとたんに兵士の顔色が変わる。
「この通行証は……失礼しました。どうぞ中へ、街長への連絡はどういたしましょうか?」
「いらない。今回は遊びに来ただけだからね、気を使ってくれてありがとう」
「いえ、私は門兵としての仕事をこなしたまでですので」
「なんともまぁ優遇されているものだな」
ふとそんな言葉が口から飛び出る。
通行手形を見せずに通ることは基本的に不可能だ、それは街の治安を守るためであり当然誰しもがこのルールに縛られている。
だというのに最強の名前さえあれば、そんなルールすらも相手の方から無視してくれるのだ。
なんとも都合のいいことがあったものである。
いや、都合がいいのは相手の方であってアデルからしてみればいらぬ世話を焼かれているようなものなのかもしれないが。
「そりゃあね。誰だって最強の力を自分の側につけたいからね」
「気分が悪くなったりはしないのか? 周りの誰もが媚びを売って来るなんて胸焼けしそうだ」
「人間なんて所詮お互いの事を打算的に使おうとしているんだから、それが見やすくなっただけだよ。相手の性格がわかりやすくてこれはこれで悪くないんだ」
そういいながらアデルは笑う。
普段からよく笑う男ではあるが、なんだかその笑顔は無理をしているように見えた。
アデルが何歳なのかは知らないが、最強と呼ばれてずっと自分達とは違うといわれて育ってくれば疎外感はどうしたって感じてしまうものだろう。
「なんというか寂しい人生だな」
「酷いこと言うね、まあ……君はわりと打算的に動いてこないからその点ではありがたいんだけどさ」
変なところで言葉に詰まったアデルを見て、言いようのない違和感を覚える。
後の言葉を考えれば別に言いよどむようなことはなかったはずだ。
そこまで考えて彼女はとあることに気が付いた。
この旅の道中、いやこの旅が始まるまえですらも――たったの一度たりとも彼から名前を呼ばれたことがないという事実に。
「もしかして私の名前を憶えていないのか?」
「長期的な付き合いをしたことが無いから人の名前を覚えられないんだよ。あんたくらいのもんだ、師匠を除けば俺の周りに長いこといたのは」
「つまり私の名前には興味ないと?」
意地悪な質問だったろうか? いやそんなことはないはずだ。
人の名前というものは大切なもので、たとえどれだけ行動を共にしていたとしても名前を呼びあうというのは関係性を深めるうえでこれ以上ないピースである。
いまのいままで名前を呼ばれていなかったことに違和感を感じなかった自分がそれを口にすると言葉の重みが消えてしまうので口にはできないが、それでも名前の重要性というのは個人を識別するうえで、これ以上ないほどに大切なのだ。
アデルの肩に手を添えてにらみつけるようにして目線を送ってみれば、アデルは観念したように大きく息を吐きだすと肩に置いた手を優しく振りほどく。
「仕事を持ってくるだけの人でしかなかったからな。風呂入って身なりを綺麗にしたら改めて名前を聞くからとりあえず宿に行くぞ」
「二度と名前を忘れないようにしてやる」
一度も覚えていないのだから正確には一度も忘れられないように、という風に口にするのが正しいのだろうが、一度も覚えられていないと自分の口で言うのはなんだか尺に触る。
そうして約束をしたアデルと彼女は王国を出て初めて別々に別れ、アデルはこの街の冒険者組合へと向かい彼女はアデルに教えられた宿の一室で念願の風呂に入っていたのだった。
「――まさかシャワーだけじゃなくて風呂にまで入れるとはな」
王都や帝都などと呼ばれるその国の首都であるならばまだしも、地方の街の上下水道の設備というのはとてもひどい。
汚くなった水を処理するため何とか下水道が取り付けられているところがほとんどで、飲み水や生活用水などは少し離れた川に行くか井戸から水をくみ取ってくるかしなければ手に入れることもできない。
そんな環境の街でシャワーを浴びることすら相当の贅沢だというのに、ましてや風呂に入れるなどとは驚きだ。
ラウンジの風格からして相当に良い宿屋であることは予想がついていたが、これほどまでに設備が整っているとなると考えられるのは貴族や王族などが視察に来た際に使われるような施設なのだろう。
基本的にはこういった宿屋は一見さんをお断りしている場合は多いのだが、アデルに言われるがままに彼の名前を出すとここでも勝手に便宜を図ってくれた。
「王国とは完全に縁が切れた以上はあの男についていくのが最も賢い選択か。本人は私が打算的ではないと言っていた手前申し訳ないが……」
打算的でないのならば、私はきっとあの時彼についていくなど口にしなかっただろう。
確かに彼を救おうとしたのは自分自身の考えでそこに打算というものは存在しなかったが、目の前で王国最強の部隊をまるで子供の相手をするようにして蹴散らした彼を見てこの男についていけば自分は安全にこの国から逃げられるという感情が芽生えたのは確かだ。
いつかは彼に対してそんな風に思ってしまっていることを謝罪しなければならないだろうが、それはきっと自分が感じているこの恩全てを完全に返しきれたと思えた時だろう。
「それにしてもあの男が最強と言われてもなんだか実感がわかないな。確かに王国最強の部隊を相手にしてかすり傷も追わないのは凄腕だが、世界最強かと聞かれるとなんだかな。本気の戦闘を見ていないからなんだろうが」
思い変えすのは立ち回り方や武器の振るい方に目線の使い方。
強い人間の動きを分析することは彼女の趣味のようなものだが、そんな彼女が疑念を抱いているのにはもちろん理由がある。
アデルが使っていた技術というのは素晴らしいものだ。
全てが神業と呼ばれるにふさわしいだけの練度を誇っていたし、誰もそのことについて文句を挟める人間は存在しないだろう。
だが世界最強と言われると話は変わってくる。
この世界には人間だけでなく亜人と呼ばれる異なる種が存在する。
それらは人と魔物と呼ばれる動植物達の中間のような生物であり、それぞれが様々な特色を持つのだが中には巨岩を一撃で破壊するような力を持つものや100本近い腕を操るものだっているのだ。
それらすべてに彼が勝てるのかと聞かれれば疑問がないわけではない。
「守ってもらっている分際で失礼か」
最強とはどのようなものなのか。
闘いにかかわるものとしてその高見がどれほどなのか気にならないわけではなかったが、それでもこれ以上はアデルに対して失礼というものだろう。
改めて肩まで湯につかりなおし、とりあえず空を眺めてここまでこれたことを喜ぶのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる