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第11章 モンスター

ルナ無双

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「ばなじでぐだざい。」

「えっと、これなに?」

「蚊です。新種の。」

ルナの説明が、辛辣なのはこいつの性だろう。
つまらないとは違う、別の事で怒ってらっしゃる?

「とりあえず、提案された新たな奴隷紋章と、改良版もあるけど。」

「では、奴隷紋章から試して下さい。」

「はい!」

怒ってらっしゃるルナさんに、逆らうのは得策では無い。
静かな怒りほど、恐いものはない。
静かに、新たな奴隷紋章を相手に掛ける。

「あ、あああ!」

「効きませんね?」

「うーん、駄目か。改良版を行くぞー。」

「お願いします。」

ルナさんの言葉は、相変わらず冷たい。
どうも、相手に対して怒ってらっしゃる。逆らわない、逆らわない。

改良版の奴隷紋章を掛ける。

此れは、多分だが篤郎が作ってしまった魂に掛けるモノで、上書きは不可能になる。
刑罰に使おうと思って、作った恐ろしいモノだ。

「あああああああ!」

「効いたかな?」

「マスター。」

効いたのかを聞いたのに、ルナの表情が微妙になっていた。
何か問題でもあるのかな?謎だ。

「効いて無いのか、ちょっと待ってくれよ。」

「えっ!?」

魂だけでは、効かないらしい。
それならば、魂以上のモノにも刻める魔法にしよう。
構築するのに時間が掛かる。
どうしよう。

篤郎が悩んでいたが、改良版は効いていた。
エリザベートの魂には刻まれたが、何かには効いて無いのだ。

半分は成功で、半分が失敗になっているのだ。
ルナは直ぐに原因を探した。

「あー。」

エリザベートは、意識が別の所に有るのか力が抜けており、ルナの支えでぶら下がっている。
体とアストラル体の事を科学的に数値化しているのが良かったのか、原因を特定する事が出来た。
マスターに言うべく、篤郎の元に帰った。

「此がこうして、うーん、こうか?いや、こっち?」

「マスター、原因が解りました。」

「ん?(効かなかった)原因?」

「はい、(半分しか効かなかった)原因は所有者が居ることによる、命令系統が有るたです。」

「うん?」

「所有者の上書きがなされなかった様ですね。」

「上書きか。魂に2つの所有者が有るのか?」

「ええ、その様です。」

「成る程、分かった!」

篤郎の分かったは、ルナの答えと違う所に着目した為である。
ルナの答えは、体と魂を構成してるのが所有者(吸血鬼)の魂で補われている。
一方、篤郎の答えは所有者の完全変更を目的とした、奴隷紋章を構築していた。

所有者を書き換える事は、篤郎の魂とエリザベートの魂が融合してしまう事になる。

即座にルナは篤郎の構築に別の構築を加え出していた。

魂から魔力による変換と、消えている組織の復活をだ。難しいのではない。
やらなくてはならないのだ、篤郎を守る為に。

魂の復活に「リザレクト」と肉体と臓器と血を戻す「パーフェクトヒール」を足す。
所有者の所を消してからになるが、珍しい倦怠は手に入る。
直ぐに、篤郎の頭に図案を送った。

「これは!良いねー。採用!」

ルナの考案した魔法式を紋章に加えて、維持をする為の紋章も加えた。
もはや、奴隷紋章ではない。
新たな紋章なのだが、篤郎は奴隷紋章にしてる。
更なる、奴隷紋章が加えられた。

「あー。ごはーん!」

「ひいぃ!」

「大丈夫ですか、マスター?」

エリザベートが目覚めたとしても、ルナの手の内に頭が固定されている。外れる訳が無いのだ。

「ぐるるる!ごはん、ごはんごはんごはんごはんごはん!」

「飯は食えるのか?」

「はい。五月蝿いので、先にラボに連れて行きます。」

「分かった。」

「失礼します、マスター。」

ルナとエリザベートは消えた。
やはり、空間転移は羨ましいと篤郎は思った。

「で、此処に置いてけぼりですよね。」

篤郎は、覚めたコップに新たな紅茶を継ぎ足して、飲んで待つことになる。



ヘークション!
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