多分それが愛というものだから

東屋 志季

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多分それが愛というものだから

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 惚れた、だの好きだ、だの俺の顔しか見ずにのたまう薄っぺらい女が嫌いだ。反吐が出る。
 無駄に整っているらしい俺の顔、そして地位に釣られて蛆虫みたいにやってくる。
 とは言え俺も男である以上性欲はある。それも困ったことに人並み以上に、だ。
 大体は適当に自分で処理する。でもただでさえ溜まってるときにああいう女が寄ってくることがある。と、なればやることだけやる。

 前戯なんて面倒なことはしない。濡れていなければ適当にローションを使う。近くでアンアン煩い喘ぎ声も聞きたくないし、どさくさに紛れて抱きつかれたくもない。後ろから突っ込んで、腰振って、出して、それで終わり。別に脳味噌がとろけるような快楽が欲しいわけじゃない。ただ、とりあえず溜まったものを出せればそれでいい。

 本来は愛を紡ぐための行為。
 そんなの知ったことか。愛だの恋だのそんなの幻想だ。街を歩けばうっすい絆だかなんだかで辛うじて繋がっているらしい男と女がうじゃうじゃいる。12月になればやれクリスマスだなんだとお祭り騒ぎ。2月はバレンタインだかなんだか知らないが顔も知らない女からの山積みの菓子が贈られてくる。うんざりだ。

 酷い男だ、と周りの人間に言われることがある。
 まあ、そう言われても仕方ないかもしれない。だが、仮にそうだったとしてだから何なのだという話だ。

 そんなもの俺には縁のないものだと思っていた。

 そう、昨日までは。




 重いカーテンが閉じられた薄暗い部屋の中には甘いようなそれでいて鼻をつくような香りが充満している。

 パンッ

「…アアッ!」

 腰を強く打ち付けると腕の中の女は腰を仰け反らせて喘ぐ。

 苦しそうに眉を潜めて口の端から透明な液体を垂らす女の表情に、限界まで硬くなったと思った俺のものがさらに硬度を増す。

「う、そ…いやっ」

 それを敏感に感じ取ったのか、グリグリと奥にあるコリコリとした部分に押し付けると首を横に振りながら嫌だと漏らす。

「ん。何がイヤ、なんだ。ほら、その口で言ってみろ」

 女の耳朶を上唇で食みながらそう囁けば

「っっ~~、ァっ!」

 昨日から通算何度イッたのか。それは分からないが、今またそのカウントが1増えた。

「ん?言えないのか?」

 グッと腰を押し込む。
 女は目尻に涙を滲ませる。

「も、むり…っ、動きたくないの…」

 息を荒げてそう懇願する女の顔を見下ろすのは、悪くない気分だ。むしろ満足感さえ覚える。
 しかし、

「動くも何も。お前は動いてない、だろ?」

 俺の下で組み敷かれているのだから当然、俺が動いているのだ。そう示すようにギリギリまで腰を引き、だらだらとだらしなく白く泡立ったものを垂れ流すそこにたたき込む。

「ち、ちが…そうじゃ、っァア!」

 またイッた。いともたやすく達するものだ。
 機械仕掛けの人形のように、俺の与えた刺激に敏感に答えるのだから。

「あー…。そうか、さっきからずーっとビクビク、ビクビクって腰、動いてるもんな。
 お前は動いてない、なんて言って悪かった、な」

 ドチュン、

 強めに腰をねじ込みながら目を細め、ゆるりと頬を指でなぞると女はそのわずかな刺激でさえも気持ちいいというかのように中をギュッと締めた。

 ンチュっ、ジュルリ
 チュクチュク、チュッ

 俺はこみ上げてくる射精感を抑えるように女の唇に俺のそれを重ねる。舌を差し込み、口内の液体を全て啜り上げていく。
 この女の唾液はとても甘い。こんなものを甘い、だなんて感じたことは今までに一度もなかった。頭の中がぼうっとしていく。

 パンパンパンっ!
 ジュポジュポッジュ

 そのモヤを取り払うように腰を振りたくる。

 止まらない。あまりにも気持ち良過ぎて何も考えられない。
 頭が焼き切れるんじゃないかと思うほどの快感が駆け上がってくる。それに合わせて細くくびれた腰をガシリと掴み、己の腰を叩きつける。

「ンッ、アア、、、やっ!、ァァア!」

 悲鳴に近い、耳に心地よい嬌声を聴きながら俺は果てた。

「ハァ、ハァ…」

 荒く息を吐き出していると、だんだんと思考がクリアになっていく。

 ふと下を見ると、女は気を失っていた。

 俺が腰を引き、女の中から出ていくと。まるで後追いするかのように白濁した液体が流れ出てくる。その光景に俺のモノはまた硬度を取り戻していくのを感じた。我ながら猿だな、と頭の片隅で考える。
 俺と女の分泌物が混ざったそれを指でクチュクチュとこねくり回した後元あった場所へと押し込む。

 んっ

 時折鼻にかかる甘ったるい声とも言えぬ音を漏らし意識を飛ばしている女の顔を見ていると、胸の奥からふつふつと熱いものが湧き上がるような感覚を覚える。



 今まで女を抱いた後、いや別にそうじゃない時でも、こんなことを感じたことは一度としてなかった。

 それがどうだ。
 昨晩、一眼この女を見た時から、そして目があった時、言い知れぬなんとも表現し難い衝動に駆られて思わずホテルに連れ込んでしまった。




 いつものように売上金の確認ついでに店を見回っていると、いつものようにどこぞの女が下品にその体にぶら下げてる脂肪の塊を俺の腕に押し付け、気持ち悪い媚を売るような声を出す。小蝿のようにしつこく付き纏ってくるこいつらをいちいち追い払うのも面倒だ。苛立ちを覚えつつ、そのまま店内を移動していた。


 しかし狭い通路だったせいだろう。この女が別の女にぶつかったらしい。

 痛いだの打ち身になっただのキャンキャン吠える女に、ぶつかられて床に倒れ込んだ女は萎縮したようで
「す、すみません」
 と見上げながら小さくかすれた声で謝罪の言葉を紡ぐ。
 いつもなら気にも留めない些細なことだ。自分に非がないというのに、例えあったとしても、謝るなんて俺はしない。

 だというのに、この簡単に踏み潰せそうな小動物を視界に入れた次の瞬間。
 俺は腕に纏わりついていた女を突き放していた。そして床に座り込んでいる女の腕を掴み上げると、ぶつかった痛みからか、女に責められたからかじわりと滲んでいた涙をチュルリと舐めとった。
 それは砂糖水よりも、ショコラよりも甘美だった。

「ヒッ」

 っと漏らした女の腕を掴んだまま歩き出す。
 小蝿が何やら喚いていたがその時の俺の耳には何も聞こえなかった。
 訳がわかっていないのか、思考が固まっているらしい女をそのまま車に押し込み1番近くのホテルに連れ込んだ。


 それからは赴くままに女を犯した。
 女の中も、外もぐちゃぐちゃにしたかった。服を引き裂いた時、それまで心ここにあらずといった様子だった女の子がハッと気がついたように抵抗した。
 抵抗と言っても俺にとっては何の負荷にもならない。
 泣こうが喚こうがどうでも良かった。ただ、この女を犯したい。純粋な欲望だけが全てだった。


 最初は抵抗していた女も、丁寧に解してやれば甘い声を出し始めた。女の声なんて耳障りなだけだと思っていたが、この女の声はもっと聞きたいと思った。

 熱い楔を打ち込めば、ねっとりと肉襞が絡みつく。腰を引けば、すがり付くようにジュプジュプと音を立てながら貪欲に媚びる。あまりにも気持ちの良いその蜜壺を丁寧に、そして時に荒々しく可愛がる。

 激しく揺さぶってやると女は助けを求めるように腕を差し出した。俺はその手を首にまわさせると、女の唇を貪りながらさらに中の奥へ奥へと突き上げた。

 頬を赤く染めて一瞬体の筋肉を張り詰めた後、ぐったりと力を抜く女の様子を見ているだけで何度出してもすぐに回復した。

 そうして夢中で女を組み敷いていた。






 俺は脱ぎ捨てた服を拾い上げると、素早くそれを身に纏う。
 同じく床に転がっていた時計を見るとどうやら丸一日抱いていたらしい。すっかり夜の時間になっていた。
 ベッドの上で女の胸がゆるやかに上下しているのを確認するとシーツで体を包み、抱え上げる。
 俺と女の匂いが染み付いた布で包まれた女を見ていると今まで満たされたことのなかった器にトプトプと何かが注がれていく様な気がした。

 部屋を出るとフロントには向かわず通路を使いそのまま車に向かう。金は誰かに払いにいかせれば良いし、そもそも払う必要すらない。ここは俺の所有するホテルなのだから。


 後部座席ですやすやと寝息を立てる女をミラーでチラリと確認する。鏡の中の俺と目が合う。目線を前に戻すと自宅へと夜の闇に紛れるような黒い車を走らせる。

 この感情が何か、なんて事はどうでもいい。ただ、この女を誰にも見せないように、どこにもいけないように閉じ込めてしまおう。

 女は目を覚ましたら驚くだろうか?知らない部屋に自分を貪った男といたとしたら。
 カタカタと震え怯える小動物のような女を想像する。
 悪くない。

 服を買い与えなければ。
 それに名前も知りたい。あの店で働いていたらしいことは服装を見れば明らかだった。だから名前はもちろん、住所やどこで生まれてどうやって生きてきたのかまで全て調べることもたやすい。だが、直接この女の口から聞きたい。何故かそう思ってしまう。

 ああ、やることが山積みだ。

 俺は自分の口元が緩んでいくのを感じた。
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