水しか出ない神具【コップ】を授かった僕は、不毛の領地で好きに生きる事にしました

長尾 隆生

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3巻

3-2

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『他に何がある? 我も生まれて間もない頃でな。何をどうしたのかは忘れてしまったが、気がついたら大渓谷の上で空腹のために倒れてな。そこを婆さんに拾われたのじゃ』

 大渓谷の主に拾われたシーヴァは、それからある程度自立できるようになるまで、大渓谷の底で暮らしていたのだという。

『そういえば迷宮作りに夢中になっていて、もう随分と婆さんとは会ってないのう』 

 そうだったのか。
 なら、シーヴァも育ての親に久々に会いたいのだろうか。

「じゃあシーヴァも僕と一緒に――」
『それは断るのじゃ。なぜなら我はもう独り立ちした身。今更婆さんに会おうとは思っておらん』

 断られてしまった。
 シーヴァが一緒に行ってくれれば心強かったのだけれど、本人がこう言うなら無理は言えない。
 そんなことを考えていると、ルゴスの顔に意地悪な笑みが浮かぶ。

「そういや聞いたことがあったな。昔、一匹の魔獣を拾って育てたことがあるって。それがシーヴァだったのか」
『……あの婆さん。余計なことは言っておらぬじゃろうな』
「そうだな。まぁ色々聞かせてもらったぜ、色々とな」

 ルゴスの笑みが更に意地悪さを増した。
 それを見てシーヴァがあからさまに慌てだす。

『お主っ、何を聞いたか知らぬが絶対にそれを口にしてはならんぞっ。喋ったら食い殺すからのっ!!』

 再び毛を逆立ててうなるシーヴァ。
 どうやら彼にも他人に知られたくない過去があるらしい。
 まぁ、僕だって子供の頃のあれやこれやを人に聞かれるのはかなり恥ずかしいからシーヴァの気持ちもわかる。

「ルゴス、その辺にしておいてあげなよ」

 僕は今にも飛びかかりそうなシーヴァを抱く手を強めて、ルゴスに言った。
 それから、改めて一同を見回す。

「さて、今までの話で大渓谷の主は話が通じるし、むやみやたらに危害を加えてくるような魔獣ではないことをみんなも理解してくれたと思う」

 僕はみんなが頷くのを確認してから言葉を続ける。

「だから、僕はこの地の領主として大渓谷の主……いや、主様にお願いに行くことにしたんだ」
「お願いって一体何をさね」

 メディア先生が聞いてきた。

「僕は主様が橋に岩を置いて、この町の水源を止めているのではないかと考えている」

 王国による大渓谷開発。
 それを中止させようと現れたドラゴン。
 ヒューレの魔法でも壊せなかった大岩。
 全ての話を総合して、僕はそう結論づけた。
 おそらく主様は、水源を止めることで王国が大渓谷の開発から手を引くよう仕向けたのだ。
 当時、大渓谷開発のために王国の開発部隊が拠点としたのがデゼルトの町だ。
 開発部隊が消費する水をまかなえるのは、この町のオアシスの泉のみだったからである。
 その泉を枯らしてしまえば、開発部隊は撤退せざるを得なくなる。
 だから主様は、この地への水の供給を絶つことにしたのだろう。
 迂遠うえんではあるが、ドラゴン討伐のために本気になった王国軍と真正面から戦うよりは、その方が平和的かつ効果的だという考えがあったに違いない。
 現に水源が絶たれ、徐々に水を失っていったデゼルトから、開発部隊はすぐに引き揚げた。
 それ以降、この地は王国に見捨てられることになったのである。
 僕は一旦立ち上がってシーヴァを椅子の上に降ろし、そのままエンティア先生が立つ黒板の前まで歩いていく。

「僕が大渓谷の主様に頼みたいこと。それはね」

 そう言いながら、エンティア先生が描いた大渓谷を横断する橋の一点を指さす。

「昔のようにオアシスを復活させてほしいってことさ」

 僕が指で指し示したのは、ヒューレが証言した大岩があると思われる場所だ。

「つまり、その水道橋がオアシスの泉の水源だって言うのかい?」

 メディア先生の質問に、僕は黒板を指でコツコツ叩きながら答える。

「実際のところ確証はない。でも、さっき話してたこの橋なんだけどね。ヒューレだけじゃなくてドワーフたちも、昔は橋の上に大岩なんてなかったって言うんだ」
「そう。おかげで荷物を落とした」

 ヒューレが無表情ながら、どこか無念そうに言った。
 ちなみに落とした荷物は僕が大渓谷に行ったついでに探してみるつもりだが、見つかるかどうかはわからない。
 というか、見つかったら奇跡だろう。それだけ大渓谷は広いのだから。
 なお、ヒューレも一緒に行かないかと誘ったのだが、シーヴァ同様あっさりと拒否されてしまった。せっかく家出してきたのに帰りたくはないそうだ。
 仕方ないので、僕が大渓谷に出向いている間、彼女には以前作ってくれた氷キューブの改良と、この町の警備を任せることにした。
 基本的にぐーたらしている駄エルフだが、魔法の力は本物だ。
 彼女のことはバトレルに任せてあるので、よほどのことでも起きない限り問題は起こらないだろうと信じている。
 本当はバトレルも連れていきたいのだけれど、僕がいない間の領地を任せられるのは、今のところ彼だけなのだ。

「つまり、大岩を取っ払ってもらえれば水は復活すると?」

 デルポーンが長い顎をいじりながら聞いてくる。

「おそらくね。図で説明しようか」

 僕は黒板に描かれた大渓谷の俯瞰図に、簡単な図を何個か描き足していく。
 まず、大渓谷の向こうにあるらしいエルフの森。大渓谷とパハール山の間に位置する。
 そして、パハール山とエルフの森と大渓谷を突っ切るように、一本の蛇行だこうした太い線を引いた。

「えっと……それは……雲と蛇っすかね?」

 ポーヴァルが、僕が描いたものを見てそう問いかけてくる。
 他のみんなも、僕が描いたものが何かわからないという表情を浮かべていた。
 僕の描く絵ってそこまでひどいのか、と少し……というかかなりショックを受けつつ、僕は仕方なく答える。

「えっと、まずこれはエルフの森なんだけど」

 そう言った瞬間、誰かが小さく「あれって森だったんだ」とつぶやく声が耳に届いた。
 あえて無視して、次に山から大渓谷までの蛇行した線を指し示す。

「そしてこの蛇行した線。これはパハール山を水源とした川だ」
「あ、ああ。わかったさね」
「蛇じゃなかったのか」
「なるほど、言われてみれば……というか言われないとわかんないっすね」

 その場に微妙な空気が流れる。

「坊ちゃん、私が描き直しましょう」

 エンティア先生がささっと黒板に描かれた僕の絵を消して、あっさりと描き直してしまった。

「おおっ、森と川だ」
「これならわかりやすいな」
「さすがっすね」

 ありがたいけど、みんなのそんな反応を見ているとなんだかとても複雑な気分になる。
 だがみんなの言う通り、さすがエンティア先生だ。
 一目でそれとわかるようになっている。

「えっと、それじゃあ話の続きをするよ」

 僕は気を取り直し、綺麗にわかりやすく描き直された黒板の俯瞰図をもう一度指さしながら、みんなに説明する。
 ヒューレとドワーフ族、そしてルゴスから聞き出した話でわかったのは、パハール山とその近辺から数本の川が大渓谷へ向けて流れ込んでいるということだ。
 流れ込んだ水は大渓谷にたどり着くとそれぞれ滝となってなだれ落ちて、大渓谷の底で一つの大きな川となる。
 その大川の水がどこへ流れていっているのかは不明だが、海に繋がっているわけではないらしい。
 というのも、大渓谷の底は海面よりも更に低い位置にあるからなのだそうだが……詳しいことはわからない。
 問題は、今エンティア先生が描いてくれた蛇行した川だ。
 これはヒューレが住んでいたというエルフの森の中を流れる川であり、この水が流れゆく先にあるのが――

「この橋なんだ」

 くだんの橋は、その川が流れ落ちることでできる滝の真ん中を突っ切るように存在している。
 そして、雨どいのように水を対岸まで届ける役目を果たしていたそうだ。

「それがある日、橋の上に巨大な岩が出現した。橋を流れてきた水は岩にはばまれて、ほとんど対岸まで届かなくなったというわけなんだ」
「さっきも言ったけど、前は魔法で作った氷の船ですいーっと橋を渡れたのに、今回は岩に邪魔されて困った」

 ヒューレが無表情ながら、どこか怒ったように言った。
 彼女は前に大渓谷を渡った時も、そして今回も、自作の氷船でエルフの里から川を下ってきたのだとか。

「私が高貴で、誰にも負けないくらい、凄い、凄い大エルフだから助かった。そうじゃなかったら大岩にぶつかって死んでいた」

 その話を僕に聞かせてくれた時、普段はほとんど表情が変わらない彼女が、珍しく青ざめていた。よほど予想外の事態だったのだろう。
 なんせ自慢の攻撃魔法でも大岩は壊せなかったのだから。
 彼女は氷魔法でなんとか窮地きゅうちを脱したらしい。
 それを聞くと、確かに大エルフの彼女だからこそ助かったのだとも言える。
 まぁ、普通のエルフ族なら風の精霊シルフの力を借りて空を飛べるから、大渓谷を渡ることくらいは余裕らしいのだけれど。
 ツッコむだけ野暮やぼだろう。

「それにしたって、魔法で壊れない岩なんてあるんさねぇ?」

 不思議そうに首を傾げるメディア先生に、ヒューレが答える。

「あの岩、私の魔法を吸収したように見えた」

 魔法を吸収する岩なんて僕も聞いたことはない。
 だけど当事者のヒューレが言うのだから、おそらくは本当なのだろう。

「あんなのエルフ族でも作れない。だからこそ私はこう思った。あれはきっと主の仕業」

 ヒューレはわずかばかりの悔しさをにじませた声で言うと、脇に置いた自分専用のたるからサボエールを汲んで、「話はこれまで」と言わんばかりに飲み始めたのだった。


     ◇     ◇     ◇


 こうして、僕は大渓谷の主様と話し合うためにデゼルトの町を出た。
 そして旅を始めて、既に三日。
 僕とデルポーンはそれぞれ別の馬に乗り、馬上で揺られながら砂漠の中を進んでいた。
 僕の馬の分まで手綱たづなを引くデルポーンは、自らも手伝いながら長い期間をかけて調整し、ほぼ完成形となった馬用砂上靴さじょうぐつ――いや、砂上馬蹄さじょうばていと名を改められた新装備について一人喋り続けている。
 デルポーンはこの領地にやってきてから、大好きな馬がほとんど活躍できず、自由に走らせることもできずにストレスを溜めさせていることにずっと悩んでいた。
 デゼルトの町の周りであれば地面も固く踏み固められているため、馬を駆けさせることも可能だった。
 しかし、少しでも町を離れれば、荒野のところどころにある柔らかな砂地に足を取られかねず、最悪の場合、馬に大怪我をさせかねない。
 エリモス領の大半が、そのように不安定な土地なのである。
 そのため馬たちは町中での荷物運び程度でしか動き回れず、我慢の日々を送っていたのだ。
 それが砂上馬蹄のおかげで、通常の草原や整地された道路ほどではないものの、ある程度までなら、エリモス領内の悪路を駆けることができるようになった。
 馬たちはもちろんのこと、馬をこよなく愛するデルポーンの喜びは想像にかたくない。
 しかし、彼の話を「よかったな」と共に喜ぶことができたのは、デゼルトの町を出てしばらくまで。
 さすがにそれが三日も続いてはうんざりするというものだ。
 既に僕の耳は彼の言葉を右から左に聞き流すだけの筒と化してしまっていたが、それも仕方ないことだろう。
 そんなわけで、デルポーンが僕に呼びかけていたことに、しばらく気づかなかった。

「坊ちゃん、坊ちゃん!」
「ん? なんだいデルポーン」
「あれ見てくださいっす」

 僕はもたれかかっていた馬の背から身を起こしながら、少し興奮気味に前方を指さすデルポーンの視線を追って顔を上げる。
 最初に目に入ってきたのは、僕たちを先導して歩く二人のドワーフの姿。
 ビアードさんの部下である、タッシュとスタブルの二人の足は驚くほど速い。
 僕たちは馬に乗っているというのに、彼らは同じくらいの速度でこの足場の悪い中を進んでいくのだから。
 そんなドワーフたちの少し上方。
 デルポーンが指さしていたのは、今僕たち一行が上っている緩い傾斜の先だった。

「あれが例の砦跡とりであとじゃないっすか?」

 まだ遠く、風で舞い上がった砂のせいでおぼろげにしか見えないが、確かに砦のような建物が丘の上にぽつんと建っている。


「思ったより小さいな」

 時々風がやむ度に砂が一瞬晴れ、石を積み上げて作ったと思われる建物がかすかに確認できた。
 かつて国が大渓谷を開発するため、最前線に建築したという砦に間違いないだろう。
 そしてここからは見えないが、あの砦の向こう側には、目的地である大渓谷があるはずだ。
 ドワーフたちの話によれば、砦は大渓谷の断崖絶壁だんがいぜっぺきの近くに作られているとのこと。
 国の撤退にあたりそのまま放置されたが、ち果てる前にドワーフたちが見つけて勝手に改築をして、今では彼らがデゼルトの町との取引に向かう前の拠点として再利用されているらしい。

「ちょいと上の方がくずれてるように見えるのはアレっすかね。ドラゴンにでも壊されたんすかね」
「いや、ドラゴンが本気で暴れたら、たぶんあんな砦なんて端微塵ぱみじんに吹っ飛んで跡形も残ってないだろうね」

 仮に大渓谷の主様が関わっていたとしても、おどしをかけるために少しだけ壊したのかもしれない。ルゴスの言葉通りであるなら、主様は優しい性格のようだから。
 むしろ、ただ単に王国に放棄されて手入れもされずにいたせいで、自然に崩れただけだと考えた方が自然だろう。
 デルポーンも納得したみたいだった。

「確かにそうっすね。学校で習った歴史でも、建国の時にはブラックドラゴンを倒すため、女神様から強力な神具と加護をもらった人たちが、大勢で戦ってやっと倒したと書かれていたっすから」

 僕はその言葉に、曖昧あいまいに頷いておくだけだった。
 これまで教わったことが全て事実なのかどうか、今はわからない。
 エリモス領に来て色々と経験して、ドワーフやヒューレと話をすればするほど、王都で学んだことがどんどん信じられなくなっていった。
 いや、この地にやってくる前から、僕は心のどこかで疑問に思っていたのだと思う。
 たぶん最初に僕が様々なことに疑念を抱いたのは、生死の狭間はざまをさまよっていた際に『本物の女神様』から神託を授かった時だ。
 その後、僕が師匠としたうとある人物に出会って、更にこの領地にやってきて、今まで学んだことと現実との齟齬そごの当たりにした。そうして疑問が確信に変わったと言った方が正しいかもしれない。
 もし僕が今でも王都で学んだことを信じていたならば、恐ろしい魔獣が跋扈ばっこする大渓谷に自ら足を運び、その主であるドラゴンと話し合おうなんて考えなかっただろう。

「坊ちゃんよぉ。もうすぐ砦だ。早速で悪いが着いたら酒の準備を頼むぜ」

 先頭を歩いているドワーフ族のタッシュが、こちらを振り返りながら大声で叫ぶ。
 彼と、そのすぐ後ろを黙々と歩く無口なスタブルの二人は、ビアードさんが昔から頼りにしている仲間なのだそうで、今回デゼルトの町を訪れる際も同行させていた。
 しかしほとんどひげで顔が隠れているドワーフの見分けはなかなか難しく、正直言っていまだに完全には誰が誰だか区別がつかないでいる。
 ビアードさんだけは判別できるのだが、それも彼がいつも腕に赤い腕輪をめるようになったからであって、完全に見分けられているかといえば嘘になる。
 ちなみにその腕輪はビアードさんの妻、つまりルゴスの母親がビアードさんにプレゼントしたものらしく、今でも妻を愛しているあかしだと酒の席で豪快に笑いながら教えてくれた。

「そういえば儀式をするんでしたね」

 僕が声をかけると、タッシュが頷いた。

「おぅ、俺たちのゲン担ぎに付き合わせて悪いが、できれば坊ちゃんたちも一緒に楽しんでくれよ」

 ドワーフたちは大渓谷から出る時も大渓谷に戻る時も、一度あの砦の中で簡易的な宴会をする。
 それは旅路の安全を願うために始まった儀式のようなものらしいが、僕が思うに彼らはただ単に酒を飲む口実にしているだけではなかろうか。

「坊ちゃん。最高に冷えたサボエールを頼む」

 日頃ほとんど喋ることがないスタブルまでもそう言ってきた。
 やはりドワーフ族にとって、酒と宴会の話は特別なのだろう。

「はい、任せてください。そのためにコレを用意したんですからね」

 僕は腰にぶら下げているバッグをポンッと叩いて、大声で返事した。
 このバッグの中には、大エルフであるヒューレが自らの酒生活を充実させるために頑張って作った『氷キューブ試作二号』が入っている。
 このキューブをサボエールに入れれば、魔法の力でたちまちに冷えるという仕組みだ。

「しかし坊ちゃん。その氷キューブってのは便利なモンっすね」

 デルポーンがバッグに目を向けながら言った。ここ数日の旅で、彼は氷キューブの偉大さを味わっている。

「そうだろう。僕がヒューレに一生懸命頼んでいた理由がわかってもらえて嬉しいよ」
「おかげで馬たちも冷たい水で体を冷やせたんで、ほとんどへばることなく来られたっす」
「出発ギリギリになってヒューレが寝間着のままやってきた時はびっくりしたけどね」

 正直に言って、かなりドギマギとした。
 元々ヒューレは色々なことに無頓着むとんちゃくすぎる。
 整った外見をしているのに、無防備というか、男の目をまったく気にしてないというか。
 ロマンスを求めて旅に出たというが、ああいう性格の彼女が本当にそんな理由で家出したのか今でも疑わしいくらいだ。

「試作二号の完成を出発に間に合わせてくれた理由も、僕が旅に出るとお酒がしばらく手に入らなくなるからだしさ」

 氷キューブ試作二号の対価として、僕は大量の酒を求められた。
 結局僕は条件をみ、氷キューブを受け取る代わりに【コップ】から樽三つ分のサボエールと果実酒をそれぞれ出す羽目になった。
 出発前だからなるべく魔力は温存しておきたかったのだが、彼女の努力にむくいるためには仕方がない。
 しかし結果的に、この氷キューブ試作二号は旅の中でかなり助けになってくれた。それを思えば、今では安いものだったと思っている。
 そういえばその時にヒューレが『あと三日くらいあればもう一つ魔道具ができた。お酒ももっともらえたはずなのに。ざんねん』と口にしていたが、一体何を作っていたのだろうか。
 別れぎわ、僕が帰ってくるまでに氷キューブの性能をもっと高めるついでに、その別の魔道具も準備しておくと言っていたけれど。
 なんにせよ、楽しみだ。


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