10 / 11
10 ガイルside
しおりを挟む
「さては、例の観察対象とやらの話だな~?」
詰所を後にし、いつもながら規則通りの礼服に着替えたガイルが執務室の扉を開けた途端、エドワードの声が聞こえた。
「そうですね」
ガイルが特に感情も出さず言葉を発すと、エドワードは大げさに眉を下げた。
「もうちょっとからかってやろうと思ってたんだけどなぁ~、面白くねーの」
「私のことをおもちゃにしないでください」
「いや~、でもお前、さっきちょっとニマニマしてたんだぜ?」
「してません」
ガイルはつかつかとエドワードの腰掛けている机に歩き寄り、紙の束をおいた。
「これが、手続きに必要な書類です。確認してください。あとちゃんと椅子に座ってください。」
パラパラとめくったエドワードは、すぐにサインをした。
「いーよ」
「毎度言ってますけど、ちゃんと確認してください」
ベロをだしてウインクしたエドワードに、ガイルはため息をつく。
「ね~、それより面白い話ないの?せっかく街に行ったんだったらなんかあるでしょ」
エドワードは猫のように体を伸ばし、机に寝転んだ。
「面白い話ではないですが、殿下に伝えておきたい話はあります」
「ふぅん…。好きな女の子に彼氏ができたとか?」
エドワードはニヤリとわかりやすく笑った。
「違います。魔族に力を弱めていると思われる指輪をもらってたんです」
エドワードは跳ね起きる。
「やっぱ好きなんじゃん!」
「何がですか?」
本当にわかっていない様子のガイルに、エドワードは心から残念がった。
ーーコイツ絶対付き合った女の子に嫌われる…
エドワードの心の中を知る由もないガイルは、そのまま言葉を続ける。
「どうやら前々から次の聖女候補であったクレアの祈りがこもった指輪のようで、聖女はクレアで確定かと」
「え、それ、何て言って聞き出したの」
目をガン開きにしたエドワードにちょっとひきながら、ガイルは答えた。
「多分、その指輪はだれからもらったのか、というような内容だったと思いますが、」
「キャー!!」
急に奇声を発して床をゴロゴロ転がり回り始めたエドワードに、もうそろそろ医者を呼ぶべきかどうか思案するガイル。
「それは『他に男がいるのか、俺以外とは付き合うなよ…!』って言ってんのと同じなんだよぉぉ!」
エドワードはものすごく嬉しそうに言うが、ガイルにはピンときていないらしい。
「はあ…そうですか」
「今頃俺と同じようになってるって!その子も!」
「というか、女性じゃないですし…」
「…………は?」
時が止まったのかのように錯覚するほどの時間の後、エドワードは顎をガクッと落とした。
「いや、本人は自分が女だと思っているようですが、基本的にこっちに渡ってくる魔族は男ですよ」
「確かにそうだけどさ、例外もいるじゃん。ガイルの母親と、その妹だろ?」
「そうですが、確率的には非常に低いですし、それに、女性の魔族はこちらでは短命ですよ」
今度はエドワードがこれみよがしにため息をつく。
「運命を、信じてみようぜ…?」
「あいにくですが、信じられないので」
相変わらずなガイルに、可哀想な目を向けるエドワードだった。
詰所を後にし、いつもながら規則通りの礼服に着替えたガイルが執務室の扉を開けた途端、エドワードの声が聞こえた。
「そうですね」
ガイルが特に感情も出さず言葉を発すと、エドワードは大げさに眉を下げた。
「もうちょっとからかってやろうと思ってたんだけどなぁ~、面白くねーの」
「私のことをおもちゃにしないでください」
「いや~、でもお前、さっきちょっとニマニマしてたんだぜ?」
「してません」
ガイルはつかつかとエドワードの腰掛けている机に歩き寄り、紙の束をおいた。
「これが、手続きに必要な書類です。確認してください。あとちゃんと椅子に座ってください。」
パラパラとめくったエドワードは、すぐにサインをした。
「いーよ」
「毎度言ってますけど、ちゃんと確認してください」
ベロをだしてウインクしたエドワードに、ガイルはため息をつく。
「ね~、それより面白い話ないの?せっかく街に行ったんだったらなんかあるでしょ」
エドワードは猫のように体を伸ばし、机に寝転んだ。
「面白い話ではないですが、殿下に伝えておきたい話はあります」
「ふぅん…。好きな女の子に彼氏ができたとか?」
エドワードはニヤリとわかりやすく笑った。
「違います。魔族に力を弱めていると思われる指輪をもらってたんです」
エドワードは跳ね起きる。
「やっぱ好きなんじゃん!」
「何がですか?」
本当にわかっていない様子のガイルに、エドワードは心から残念がった。
ーーコイツ絶対付き合った女の子に嫌われる…
エドワードの心の中を知る由もないガイルは、そのまま言葉を続ける。
「どうやら前々から次の聖女候補であったクレアの祈りがこもった指輪のようで、聖女はクレアで確定かと」
「え、それ、何て言って聞き出したの」
目をガン開きにしたエドワードにちょっとひきながら、ガイルは答えた。
「多分、その指輪はだれからもらったのか、というような内容だったと思いますが、」
「キャー!!」
急に奇声を発して床をゴロゴロ転がり回り始めたエドワードに、もうそろそろ医者を呼ぶべきかどうか思案するガイル。
「それは『他に男がいるのか、俺以外とは付き合うなよ…!』って言ってんのと同じなんだよぉぉ!」
エドワードはものすごく嬉しそうに言うが、ガイルにはピンときていないらしい。
「はあ…そうですか」
「今頃俺と同じようになってるって!その子も!」
「というか、女性じゃないですし…」
「…………は?」
時が止まったのかのように錯覚するほどの時間の後、エドワードは顎をガクッと落とした。
「いや、本人は自分が女だと思っているようですが、基本的にこっちに渡ってくる魔族は男ですよ」
「確かにそうだけどさ、例外もいるじゃん。ガイルの母親と、その妹だろ?」
「そうですが、確率的には非常に低いですし、それに、女性の魔族はこちらでは短命ですよ」
今度はエドワードがこれみよがしにため息をつく。
「運命を、信じてみようぜ…?」
「あいにくですが、信じられないので」
相変わらずなガイルに、可哀想な目を向けるエドワードだった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる