とある少年の生き方

如月圭

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 疲れたように自室に帰ってくると、居間に咲が居た。

 「よう、お帰り、シキ」

 「咲さんただいま、フェイさんから兄さんに、携帯番号とメールアドレス、ラインのQRコードを貰ったんです。今から、兄さんの所に行って、渡そうと思います」

 咲は複雑そうな顔で、

 「お前、俺の事好きなんだよな?」

 そう聞いた。シキは、

 「そうですね、好きですよ」

 「お兄さんより?」

 「咲さん?」

 態度のおかしい咲は、シキに、

 「お兄さんの事も良いけど、俺との事も考えろよ?」

 キスした。シキは咲に、

 「咲さん、すみません、兄さんの事ばかりで」

 と言って抱き締めると、咲は、

 「今日は帰る」

 そう言って、シキから離れると、部屋から出て行った。


 シキはバイクに乗り、チサの下へ行く、すると、チサが、家から出てきて、

 「シキ、いらっしゃい」

 「ただいま、兄さん」

 家に中に入ると、シキは早速、チサにフェイロンの携帯番号と、メールアドレス、ラインのQRコードを渡した。しかし、チサは、

 「要らない。もう、別れて四年になるんだよ?もうフェイの事なんて忘れて……」

 「嘘だ!兄さんはフェイさんに囚われてる!まだ好きなんでしょう!?」

 「違う」

 「違わない!兄さん、フェイさんは兄さんの事を諦めてなかったですよ!」

 「ウソ」

 チサは動揺した。

 「本当です。これ渡しておきますね。気が向いたら、電話してあげて下さい」

 とチサに言って、シキは強引に名刺を渡すと、チサは泣いていた。

 「フェイ」

 そう口にして、名刺を持っていた。シキは、兄の部屋から出ると、

 (自分に出来ることは、終わったかもしれない。)

 後は、大人の駆け引きだった。



 チサは、午前零時頃、恐る恐る自室でフェイロンの携帯の番号を押していた。フェイロンのチサ用の携帯が鳴ると、フェイロンは笑みを浮かべて、電話に出た。

 その翌日、チサは今までより、柔らかい笑顔になった。それを見たシキはチサに、

 「兄さんの本当の笑顔だ!」

 と喜んでいた。チサはシキに、

 「ありがとう、シキ」

 そう言って抱きしめると、シキは笑って、

 「兄さんのその笑顔が見たかったんです!」

 と言った。朝食を鼻歌を歌いながら作っているチサを見つめていたシキは、嬉しかった。

 「兄さん、何か良いことでもあったんですか?」

 そう聞くと、チサは、

 「フェイとちゃんと話したかな、でもお義母さんとの縁談は亡くなった、お父さんの遺言だからって……。事態は変わってないけど、フェイと話したら、何か落ち着いた。ありがとう、シキ」

 そう言われたシキは、

 「俺の出番もここまでですかね?」

 と笑う。チサは笑顔で、

 「朝食にしようか、シキ、お祖父ちゃん」

 と微笑み、三人は朝食を食べた。
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