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運命の糸を宿した君へ
求婚 リューシー 前編
『かぁわいい~っ!! ああっ、やっぱりタタラちゃんにはこっちよ、こっち! 可愛い服こそ似合うんだから! でも待って…次、次はこっちの攻めた服も着てほしいわ!! 迷っちゃーう!!』
新しい服を汚さないよう気をつけながら、お昼ご飯にと花色の仕立て屋の従業員のお姉さんが買ってきてくれたパンを庭で食べている。シートの上で寝転び、オレの膝に頭を乗せて休むリィブルーが落としてしまったパンの欠片をパクリと食べた。
…お前その体で食べれるのか!?
『ん! このパン…美味い! リューシー、リューシーも食べてみて』
暴走気味に店に戻って行ったビローデアさんを横目に、隣に座るリューシーに食べていたのと同じパンを取って差し出す。だけどリューシーは首を振るので、要らないのかと肩を落としてパンをリィブルーに差し出そうとしたら。
『そちらが良い。食べさせてくれないだろうか?』
『なっ?!』
わざわざオレが口にした方を指差すリューシーに、仕方ないなと言いながらあまり食べていない部分を差し出したのに…わざわざ大きな一口で残りを殆ど食べてしまった。残った分もそのままパクリと食べてしまい、包み紙だけが残る。
『ぜ、全部食べるならこっちで良いだろ?! もうっ…リューシーったら』
誤魔化すように新しいパンを掴んで食べると、そっとリューシーの指が唇に触れる。驚いてリューシーを見ると、飛び出たジャムが唇についていたのを取ってくれたらしい。お礼を言おうとしたのに、なんと彼はそれをそのまま自分の口に移動させた。
『ん。これも美味い』
『~っ!! リューシーッ!!』
誰だ、誰に仕込まれたこのあざといのは?! 真っ赤になって怒るオレに悪びれもせずに爽やかに笑いながら髪を梳くように撫でられる。
何故かため息を吐きながらドン、と背中をリィブルーに押されてそのままリューシーの方に倒れて膝に手を置いてしまう。嬉しそうに笑ってから更にオレの体を寄せて膝に乗せてから食事を再開するリューシーに、オレは振り回されっぱなしだ。
『それにしても、空にドラゴンが現れた時はどうなるかと思ったわよ。本当にぬいぐるみから本物のドラゴンになれるなんて…不思議ね!』
ドラゴンの出現により王都はパニックに陥った。オレの変化を悟り、様子を見に来たリィブルーが黒だと判断して真の姿になって現れた。だけど既にリューシーによって保護された姿を見て、なんとか怒りを収めてくれたらしい。
グッジョブ、リューシー! ナイスタイミング!
『…でも、ちょっとだけ…たまに思うんだ』
スピスピと鼻提灯を揺らすリィブルーを眺めながら、思いを馳せる。何度も考えないようにしては目を逸らしていたこと…今日、彼らに言われてハッキリと思い描いてしまった。
『やっぱり…帰った方が良かったのかな、って。オレがいるせいでこんなに怯えさせてるってわかったら…自分が、考えなしだったのかって』
『嫌だ』
肩を掴まれてリューシーと向かい合うと、そのまましっかりと抱きしめられる。
ちょっ…ビローデアさんがすぐ側にいるのに!
『行かないでほしい。まだ…まだ、伝えたい言葉はたくさんある。我は…ずっと共にありたいのである』
『…、怖くないのか? 魔人のリィブルーに、オレは異世界の人間なのに?』
『ああ。我はずっと、タタラが…』
『待て待て、待ちなさい!! ちょっと…十五分、十五分で良いからちょっとお待ち!!』
リューシーが何かを言いかけたところでビローデアさんがそれを遮る。どうして、と聞く前にタイミングよく店から駆けてきた従業員さんたちと共にビローデアさんに担がれ店へと運ばれる。
あれよあれよと、ひらっひらの服から妙に体のラインに沿ったピッタリした白のショートパンツに更に白いベースのキャミソールに若草色の少しサイズの大きいパーカーを羽織る。お尻辺りまで隠れるから中々大きい。黄色いサンダルを用意されて店を出るとリューシーが佇まいを正す。
『…感謝する、イーフィ殿』
『さっきのお礼よ。スカッとしたからね、貴方の言葉で! だからちゃんとその子を繋ぎ止めて頂戴よ。私は悪い大人だから、手段なんて問わないのよ』
また来てね、と言ってウインクをかますビローデアさんに戸惑いながらも頷く。近くで従業員の人にお金を払うリューシー、まさかこの服のじゃないだろうなと慌てて問い詰めようとしたが話す間も与えられず手を繋がれて店を出る。
リューシーに抱き上げられて飛び立ち、空の散歩を楽しんでからある場所に降り立つ。リューシーの起こす風により草花が揺れて、花弁が舞う。
『魔王との戦いで、勝てはしなかったが…タタラを想いながら戦っていたせいか善戦できたのである。風の魔王は手加減をしていたであろうが、多少褒められたのだ。
我はまだ、強くなる』
『フォンさんが…? 凄いね、リューシー。彼女は嘘もお世辞も言わない人だから本心だ。…戦ってくれて、ありがとう』
魔王を相手に戦ってくれたリューシーは大きな怪我もなくすぐに回復したらしい。どこか誇らしげに笑う姿が眩しくて、心臓が高鳴ってしまう。
『我はまだまだ強くなる。そして、タタラ…今度こそ君を護れるよう誓いたい…一度は断られたが、どうしても伝えたい。良いだろうか?』
地に片膝をつけてオレの両手を握る彼は、真剣な眼差しでそう願い出た。あまりに真っ直ぐな視線にこちらから逸らしてしまいながら、小さく頷くことには成功した。
『結婚を前提に付き合ってほしい』
『うえぇっ?!』
なんかレベルアップしとるんだが!!
付き合うとか通り越して結婚なんだが!!
『してもらえなければ、国を出る』
『なんっ…?!』
ですと!!
『この恋心を抱きながら日常生活は送れないと判断した。ならば我は地位も名誉も全て此処に置いて旅立つ他ない。…安心してくれ、守護魔導師は他に幾らでもいる、我の代わりなど星の数ほど…』
『ま、待てよリューシー! そんな…国を出るなんて、いきなりすぎてビックリするだろ…っそれに!! リューシーの代わりなんていない、どこにもいないんだ!!』
『…いや、そうでもない。ペッツや他の後輩も順調に育っている。勿論、貴殿を愛する人間も代わりはいるのである…だから、』
切なさに締め付けられる胸を押さえながら、僅かな距離を詰めてその体にしがみ付く。離れないように服をギュッと掴んで首が反るほど上を向いて彼を見上げた。
『折角…っ、折角オレ…此処にいられるのに、リューシーいなくなっちゃうのか? そんなっ…や、やだぁ…寂しいよ、リューシーっ』
共に悲しみを分かち合い、共に戦場を駆け、共にギルドで張り合いながら競った。互いに守護者という立場でありながらギルドで肩を並べて歩ける奇妙な関係。だけど、とても大切な相棒。
『っ、ぅ…ううっ、』
泣いたところで、いつものように甘やかさない辺り…本気なのだ。
『やっ、行っちゃやだ…』
どうしたらリューシーは国を出ないのか。そんなもの、決まっている…だけど。オレが好きなのは、ハルジオン王子だ。いくらバーリカリーナが良いと言っても抵抗はあるが…
…好き?
好きでもない人間を、こんなに引き止めたくなるものだろうか? 人間性ではなく、恋愛的に…思い出そう。リューシーに色々とエッチな展開になって、どんな気持ちだったか。
…嫌では、ないな。むしろ…なんていうか。
『す、…き?』
『タタラ…』
普通、あんなことになったら気まずくて距離くらい開きそうなのにリューシーとはなんともなくて、むしろなんか…恥ずかしいけど、気持ちよくて。
『リューシー!!』
『なんだ?』
この気持ちを、確かめなければ!!
『オレに触って!!』
『……なっ?!』
.
新しい服を汚さないよう気をつけながら、お昼ご飯にと花色の仕立て屋の従業員のお姉さんが買ってきてくれたパンを庭で食べている。シートの上で寝転び、オレの膝に頭を乗せて休むリィブルーが落としてしまったパンの欠片をパクリと食べた。
…お前その体で食べれるのか!?
『ん! このパン…美味い! リューシー、リューシーも食べてみて』
暴走気味に店に戻って行ったビローデアさんを横目に、隣に座るリューシーに食べていたのと同じパンを取って差し出す。だけどリューシーは首を振るので、要らないのかと肩を落としてパンをリィブルーに差し出そうとしたら。
『そちらが良い。食べさせてくれないだろうか?』
『なっ?!』
わざわざオレが口にした方を指差すリューシーに、仕方ないなと言いながらあまり食べていない部分を差し出したのに…わざわざ大きな一口で残りを殆ど食べてしまった。残った分もそのままパクリと食べてしまい、包み紙だけが残る。
『ぜ、全部食べるならこっちで良いだろ?! もうっ…リューシーったら』
誤魔化すように新しいパンを掴んで食べると、そっとリューシーの指が唇に触れる。驚いてリューシーを見ると、飛び出たジャムが唇についていたのを取ってくれたらしい。お礼を言おうとしたのに、なんと彼はそれをそのまま自分の口に移動させた。
『ん。これも美味い』
『~っ!! リューシーッ!!』
誰だ、誰に仕込まれたこのあざといのは?! 真っ赤になって怒るオレに悪びれもせずに爽やかに笑いながら髪を梳くように撫でられる。
何故かため息を吐きながらドン、と背中をリィブルーに押されてそのままリューシーの方に倒れて膝に手を置いてしまう。嬉しそうに笑ってから更にオレの体を寄せて膝に乗せてから食事を再開するリューシーに、オレは振り回されっぱなしだ。
『それにしても、空にドラゴンが現れた時はどうなるかと思ったわよ。本当にぬいぐるみから本物のドラゴンになれるなんて…不思議ね!』
ドラゴンの出現により王都はパニックに陥った。オレの変化を悟り、様子を見に来たリィブルーが黒だと判断して真の姿になって現れた。だけど既にリューシーによって保護された姿を見て、なんとか怒りを収めてくれたらしい。
グッジョブ、リューシー! ナイスタイミング!
『…でも、ちょっとだけ…たまに思うんだ』
スピスピと鼻提灯を揺らすリィブルーを眺めながら、思いを馳せる。何度も考えないようにしては目を逸らしていたこと…今日、彼らに言われてハッキリと思い描いてしまった。
『やっぱり…帰った方が良かったのかな、って。オレがいるせいでこんなに怯えさせてるってわかったら…自分が、考えなしだったのかって』
『嫌だ』
肩を掴まれてリューシーと向かい合うと、そのまましっかりと抱きしめられる。
ちょっ…ビローデアさんがすぐ側にいるのに!
『行かないでほしい。まだ…まだ、伝えたい言葉はたくさんある。我は…ずっと共にありたいのである』
『…、怖くないのか? 魔人のリィブルーに、オレは異世界の人間なのに?』
『ああ。我はずっと、タタラが…』
『待て待て、待ちなさい!! ちょっと…十五分、十五分で良いからちょっとお待ち!!』
リューシーが何かを言いかけたところでビローデアさんがそれを遮る。どうして、と聞く前にタイミングよく店から駆けてきた従業員さんたちと共にビローデアさんに担がれ店へと運ばれる。
あれよあれよと、ひらっひらの服から妙に体のラインに沿ったピッタリした白のショートパンツに更に白いベースのキャミソールに若草色の少しサイズの大きいパーカーを羽織る。お尻辺りまで隠れるから中々大きい。黄色いサンダルを用意されて店を出るとリューシーが佇まいを正す。
『…感謝する、イーフィ殿』
『さっきのお礼よ。スカッとしたからね、貴方の言葉で! だからちゃんとその子を繋ぎ止めて頂戴よ。私は悪い大人だから、手段なんて問わないのよ』
また来てね、と言ってウインクをかますビローデアさんに戸惑いながらも頷く。近くで従業員の人にお金を払うリューシー、まさかこの服のじゃないだろうなと慌てて問い詰めようとしたが話す間も与えられず手を繋がれて店を出る。
リューシーに抱き上げられて飛び立ち、空の散歩を楽しんでからある場所に降り立つ。リューシーの起こす風により草花が揺れて、花弁が舞う。
『魔王との戦いで、勝てはしなかったが…タタラを想いながら戦っていたせいか善戦できたのである。風の魔王は手加減をしていたであろうが、多少褒められたのだ。
我はまだ、強くなる』
『フォンさんが…? 凄いね、リューシー。彼女は嘘もお世辞も言わない人だから本心だ。…戦ってくれて、ありがとう』
魔王を相手に戦ってくれたリューシーは大きな怪我もなくすぐに回復したらしい。どこか誇らしげに笑う姿が眩しくて、心臓が高鳴ってしまう。
『我はまだまだ強くなる。そして、タタラ…今度こそ君を護れるよう誓いたい…一度は断られたが、どうしても伝えたい。良いだろうか?』
地に片膝をつけてオレの両手を握る彼は、真剣な眼差しでそう願い出た。あまりに真っ直ぐな視線にこちらから逸らしてしまいながら、小さく頷くことには成功した。
『結婚を前提に付き合ってほしい』
『うえぇっ?!』
なんかレベルアップしとるんだが!!
付き合うとか通り越して結婚なんだが!!
『してもらえなければ、国を出る』
『なんっ…?!』
ですと!!
『この恋心を抱きながら日常生活は送れないと判断した。ならば我は地位も名誉も全て此処に置いて旅立つ他ない。…安心してくれ、守護魔導師は他に幾らでもいる、我の代わりなど星の数ほど…』
『ま、待てよリューシー! そんな…国を出るなんて、いきなりすぎてビックリするだろ…っそれに!! リューシーの代わりなんていない、どこにもいないんだ!!』
『…いや、そうでもない。ペッツや他の後輩も順調に育っている。勿論、貴殿を愛する人間も代わりはいるのである…だから、』
切なさに締め付けられる胸を押さえながら、僅かな距離を詰めてその体にしがみ付く。離れないように服をギュッと掴んで首が反るほど上を向いて彼を見上げた。
『折角…っ、折角オレ…此処にいられるのに、リューシーいなくなっちゃうのか? そんなっ…や、やだぁ…寂しいよ、リューシーっ』
共に悲しみを分かち合い、共に戦場を駆け、共にギルドで張り合いながら競った。互いに守護者という立場でありながらギルドで肩を並べて歩ける奇妙な関係。だけど、とても大切な相棒。
『っ、ぅ…ううっ、』
泣いたところで、いつものように甘やかさない辺り…本気なのだ。
『やっ、行っちゃやだ…』
どうしたらリューシーは国を出ないのか。そんなもの、決まっている…だけど。オレが好きなのは、ハルジオン王子だ。いくらバーリカリーナが良いと言っても抵抗はあるが…
…好き?
好きでもない人間を、こんなに引き止めたくなるものだろうか? 人間性ではなく、恋愛的に…思い出そう。リューシーに色々とエッチな展開になって、どんな気持ちだったか。
…嫌では、ないな。むしろ…なんていうか。
『す、…き?』
『タタラ…』
普通、あんなことになったら気まずくて距離くらい開きそうなのにリューシーとはなんともなくて、むしろなんか…恥ずかしいけど、気持ちよくて。
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『……なっ?!』
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