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第7話 恩人
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ミライザは疑問を口にした。
「私は貴方の人魚姫じゃないわ?貴方は誰なの?とにかく離してください。」
ミライザは、自分を抱きしめる腕を必死に押しのけようとするが、筋肉質な彼の腕はビクともしなかった。
「つれないな。僕たちは唇を合わせた仲じゃないか。」
耳元で囁かれる低い声に、ミライザは驚き混乱した。
「唇?何の事。」
混乱するミライザの白く細いミライザの体を男は確認するかのように撫でまわし、体を起こしてミライザを覗き込んで言った。
「僕の事はグランと呼んでくれ。君は浜辺で倒れていたんだ。あの浜辺は遥か昔、人魚たちの休憩所だったという言い伝えがある場所だ。僕は人魚伝説に昔から憧れていた。あの場所で君を見た時、僕の人魚が現れたと思ったよ。でも、僕が見つけた時、君の体は冷え切っていて呼吸も止まっていた様子だった。だから、君を温めて、こうやって君に息を‥‥‥。」
グランと名乗った男性は、ミライザに説明をしながら、どんどん顔を近づけてきた。
ミライザは、慌てて片手で彼の唇を塞ぎ言った。
「貴方が私を助けてくれた事は分かったわ。でも私は‥‥‥」
グランの整った顔を、間近で眺めながらミライザは複雑な思いに翻弄されていた。
目の前の男は、まつ毛の一本一本が光り輝くような金で彩られ、染み一つない肌と、澄んだ碧眼は神が作り出した最高傑作だと言われても納得するくらいの美形だった。そんな男性が、ミライザを強く抱きしめたままミライザの手で唇を塞がれている。彼が助けてくれた事は本当のようだ。多分人工呼吸をして冷え切った体を温める為に立ち回ってくれたのだろう。
感謝すべきな事は分かっている。だけど、納得できないなにかがある。そもそも距離が近すぎる。それにミライザは今まで男性と唇を合わせた事も付き合った事さえない。ましてや抱きしめられるなんて論外だ。
どうしても恩人である彼に素直にお礼を言えそうにない。
グランは、私の恩人だ。そしてミライザの意識がない間に、たぶんいろんな事をして今の状況になっている。片手でグランの唇を塞ぎながら、もう片方の手でミライザを抱きしめるグランの腕を押しのけようとするが、グランは嬉しそうに微笑みながらミライザを見つめてくるだけで、全然動きそうにない。
ミライザは、いつの間にか涙目になっていた。海に落ちた時よりも混乱しているかもしれない。
とにかく、彼と離れて冷静にならないと。
「あの、とりあえず離し‥‥‥ひゃあ!」
ミライザは、涙目でグランを見上げながら、提案しようとした。その瞬間、グランの唇に当てていた掌を生暖かく柔らかい物体に擽ぐられ、ミライザは思わず悲鳴を上げた。
「私は貴方の人魚姫じゃないわ?貴方は誰なの?とにかく離してください。」
ミライザは、自分を抱きしめる腕を必死に押しのけようとするが、筋肉質な彼の腕はビクともしなかった。
「つれないな。僕たちは唇を合わせた仲じゃないか。」
耳元で囁かれる低い声に、ミライザは驚き混乱した。
「唇?何の事。」
混乱するミライザの白く細いミライザの体を男は確認するかのように撫でまわし、体を起こしてミライザを覗き込んで言った。
「僕の事はグランと呼んでくれ。君は浜辺で倒れていたんだ。あの浜辺は遥か昔、人魚たちの休憩所だったという言い伝えがある場所だ。僕は人魚伝説に昔から憧れていた。あの場所で君を見た時、僕の人魚が現れたと思ったよ。でも、僕が見つけた時、君の体は冷え切っていて呼吸も止まっていた様子だった。だから、君を温めて、こうやって君に息を‥‥‥。」
グランと名乗った男性は、ミライザに説明をしながら、どんどん顔を近づけてきた。
ミライザは、慌てて片手で彼の唇を塞ぎ言った。
「貴方が私を助けてくれた事は分かったわ。でも私は‥‥‥」
グランの整った顔を、間近で眺めながらミライザは複雑な思いに翻弄されていた。
目の前の男は、まつ毛の一本一本が光り輝くような金で彩られ、染み一つない肌と、澄んだ碧眼は神が作り出した最高傑作だと言われても納得するくらいの美形だった。そんな男性が、ミライザを強く抱きしめたままミライザの手で唇を塞がれている。彼が助けてくれた事は本当のようだ。多分人工呼吸をして冷え切った体を温める為に立ち回ってくれたのだろう。
感謝すべきな事は分かっている。だけど、納得できないなにかがある。そもそも距離が近すぎる。それにミライザは今まで男性と唇を合わせた事も付き合った事さえない。ましてや抱きしめられるなんて論外だ。
どうしても恩人である彼に素直にお礼を言えそうにない。
グランは、私の恩人だ。そしてミライザの意識がない間に、たぶんいろんな事をして今の状況になっている。片手でグランの唇を塞ぎながら、もう片方の手でミライザを抱きしめるグランの腕を押しのけようとするが、グランは嬉しそうに微笑みながらミライザを見つめてくるだけで、全然動きそうにない。
ミライザは、いつの間にか涙目になっていた。海に落ちた時よりも混乱しているかもしれない。
とにかく、彼と離れて冷静にならないと。
「あの、とりあえず離し‥‥‥ひゃあ!」
ミライザは、涙目でグランを見上げながら、提案しようとした。その瞬間、グランの唇に当てていた掌を生暖かく柔らかい物体に擽ぐられ、ミライザは思わず悲鳴を上げた。
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