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第13話 後輩
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ミライザはグランの腕に手を添えて、会場前の階段を一緒に登って行った。
ミライザ達を見た中年の貴婦人が、目を見開いている。少し離れた場所では、扇で口元を隠し、こちらを見ながら小声で話し合う女性達がいる。
何故か過度に注目されている気がして、ミライザは訝しく思った。不思議に感じながらも、グランと共に階段を登り切り、会場へ入って行った。
「グラン様!どう言う事ですか。パートナーは私のはずでは無かったのですか!」
急に、グランへ金髪の気の強そうな美人が話しかけてきた。真紅のドレスは大輪のバラを彷彿させられ、金とルビーのティアラをつけた目の前の女性は、会場の誰よりも目立っていた。
(パートナーがいたの?)
ミライザは驚き、グランから離れようとする。だが、グランはミライザを強く引き寄せた。
「アイリーン公爵令嬢。貴方と約束した覚えは無いのですが?」
グランに抱き寄せられるミライザをアイリーンは忌々しそうに睨みつけてきた。
「グラン様が、パーティへ出席されないと聞いていたからですわ。ですが、今日になってグラン様がパーティへ出席する準備をしていると報告を受けましたの。私は婚約者としてパートナーを勤めるのは当然だと思って、ここまできました。
それなのに、私以外の女性を連れてくるなんて!
そもそも貴方は恥ずかしく無いのですか!少し見た目がいいからって、グラン様の隣に立つ資格があるとでも!!」
ミライザは、目の前の激昂する美人を冷静に見つめていた。真紅のドレスの向こうに見える煌びやかなパーティ会場から無数の視線を感じる。かなりの人間がこちらを注目しているようだった。
(グランは思っていたより、厄介な男だったのかも。)
ふと、ミライザはパーティ会場の北東の通路へ入っていく人物を見つけた。パーティ会場には、少数だがスーツを着て参加している人物がいる。無数の色のドレスや装飾品がつけられたタキシードが揺らめいている会場では、地味なスーツ姿は逆に目立って見えた。
(見つけたわ。)
「初めまして。私はミライザと申します。
グラン?こんなに素敵なお相手がいるのなら、私は遠慮するわ。アイリーン公爵令嬢。素敵な夜を。」
ミライザは、グランの手を躱しその場を離れた。
アイリーンは、すかさずグランへ駆け寄って縋り付く。
「グラン様。嬉しいですわ。やっと一緒に・・・・・・」
グランは慌てて声を出した。
「待って。ミライザ。どこへ行く?」
ミライザはグランを振り返り言った。
「少し会いたい人がいるの。今日は連れてきてくれてありがとう。貴方も彼女と楽しんでね。」
(公爵令嬢が婚約者だなんて、どれだけ裕福なのかしら。グランの事は素敵だと思うけど、婚約者がいる男性だと知っていたらパートナーを引き受けなかったのに。でも、おかげであの子を見つけたわ。)
ミライザが見つけたのは、後輩研究員のマイクだった。黒のシンプルなスーツでパーティ会場から北東の通路へ出て行った。帝国学院の研究発表チームは毎年パーティへ招かれている。あくまで慰労の為の招待で、研究チームで固まり飲食を楽しんで早々と退散する事が常だった。マイクは、他の研究メンバーと共にいるはずだ。
ミライザは、無数の人達の間を泳ぐように足を進めた。ピンクやブルー、イエローのドレスがヒラヒラと揺れている。遥か後ろでグランがミライザを呼ぶ声が聞こえたような気がしたけど、ミライザはもう振り返らなかった。
ブルーシルバーのドレスは、透き通った海を思い出させる。時折すれ違う男性がミライザを惚けたように口を開けて見てくる。
女性達も、宝石やドレスが珍しいのか好奇心が籠った眼差しをミライザへ向ける。
(まだ海の中にいるようだわ。)
海に落ちる前は、分厚い眼鏡をかけた地味なミライザを、誰も注目しなかった。あの頃とは違う光景の中を、ミライザは、軽やかに進んでいった。
ミライザ達を見た中年の貴婦人が、目を見開いている。少し離れた場所では、扇で口元を隠し、こちらを見ながら小声で話し合う女性達がいる。
何故か過度に注目されている気がして、ミライザは訝しく思った。不思議に感じながらも、グランと共に階段を登り切り、会場へ入って行った。
「グラン様!どう言う事ですか。パートナーは私のはずでは無かったのですか!」
急に、グランへ金髪の気の強そうな美人が話しかけてきた。真紅のドレスは大輪のバラを彷彿させられ、金とルビーのティアラをつけた目の前の女性は、会場の誰よりも目立っていた。
(パートナーがいたの?)
ミライザは驚き、グランから離れようとする。だが、グランはミライザを強く引き寄せた。
「アイリーン公爵令嬢。貴方と約束した覚えは無いのですが?」
グランに抱き寄せられるミライザをアイリーンは忌々しそうに睨みつけてきた。
「グラン様が、パーティへ出席されないと聞いていたからですわ。ですが、今日になってグラン様がパーティへ出席する準備をしていると報告を受けましたの。私は婚約者としてパートナーを勤めるのは当然だと思って、ここまできました。
それなのに、私以外の女性を連れてくるなんて!
そもそも貴方は恥ずかしく無いのですか!少し見た目がいいからって、グラン様の隣に立つ資格があるとでも!!」
ミライザは、目の前の激昂する美人を冷静に見つめていた。真紅のドレスの向こうに見える煌びやかなパーティ会場から無数の視線を感じる。かなりの人間がこちらを注目しているようだった。
(グランは思っていたより、厄介な男だったのかも。)
ふと、ミライザはパーティ会場の北東の通路へ入っていく人物を見つけた。パーティ会場には、少数だがスーツを着て参加している人物がいる。無数の色のドレスや装飾品がつけられたタキシードが揺らめいている会場では、地味なスーツ姿は逆に目立って見えた。
(見つけたわ。)
「初めまして。私はミライザと申します。
グラン?こんなに素敵なお相手がいるのなら、私は遠慮するわ。アイリーン公爵令嬢。素敵な夜を。」
ミライザは、グランの手を躱しその場を離れた。
アイリーンは、すかさずグランへ駆け寄って縋り付く。
「グラン様。嬉しいですわ。やっと一緒に・・・・・・」
グランは慌てて声を出した。
「待って。ミライザ。どこへ行く?」
ミライザはグランを振り返り言った。
「少し会いたい人がいるの。今日は連れてきてくれてありがとう。貴方も彼女と楽しんでね。」
(公爵令嬢が婚約者だなんて、どれだけ裕福なのかしら。グランの事は素敵だと思うけど、婚約者がいる男性だと知っていたらパートナーを引き受けなかったのに。でも、おかげであの子を見つけたわ。)
ミライザが見つけたのは、後輩研究員のマイクだった。黒のシンプルなスーツでパーティ会場から北東の通路へ出て行った。帝国学院の研究発表チームは毎年パーティへ招かれている。あくまで慰労の為の招待で、研究チームで固まり飲食を楽しんで早々と退散する事が常だった。マイクは、他の研究メンバーと共にいるはずだ。
ミライザは、無数の人達の間を泳ぐように足を進めた。ピンクやブルー、イエローのドレスがヒラヒラと揺れている。遥か後ろでグランがミライザを呼ぶ声が聞こえたような気がしたけど、ミライザはもう振り返らなかった。
ブルーシルバーのドレスは、透き通った海を思い出させる。時折すれ違う男性がミライザを惚けたように口を開けて見てくる。
女性達も、宝石やドレスが珍しいのか好奇心が籠った眼差しをミライザへ向ける。
(まだ海の中にいるようだわ。)
海に落ちる前は、分厚い眼鏡をかけた地味なミライザを、誰も注目しなかった。あの頃とは違う光景の中を、ミライザは、軽やかに進んでいった。
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