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第22話 了承

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グランは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに嬉しそうに笑いながら言った。


「ミライザ嬉しいよ。でも、本当にここでいいの?初めてだろ?」


(そうだわ。ここは学院だから着替えがない。早く銀糸ドレスを脱ぎたいのに!)


「朝、貴方が私に貸してくれた服はどこにあるの?」

「僕の隠れ家に運んでいるはずだよ。もう用事は終わったから、一緒に帰ろう。ドレスは隠れ家で脱がしてあげるよ」


マージャス侯爵家でも、ミリラーサン産の銀糸シルクを一度だけ取り扱った事がある。十数年前だが、その時の騒動はミライザの記憶に残っていた。一反の布だけの為に、マージャス侯爵家の大型船を3艘用意し、王国兵、外交官が船に乗り込んだ。3艘の周りには、護衛船として海軍まで出動し、王国にミリラーサン産の銀糸シルクが届いた時は、盛大な祭りが開催された。ミライザは、母と一緒に港へ、父と船を出迎えに行った。青白い顔色をした母は、沢山の船と盛大な祭りを見てはしゃぐミライザを嬉しそうに眺めていた。

ミリラーサン産の銀糸シルクが王国へ届いた時の祭りは、母と一緒に出かけた最後の楽しい記憶だった。あの時は、義母のルクラシアや義妹のローザリンの存在自体を知らなかった。

何よりも貴重な銀糸シルク。今ミライザが身につけているドレスの価値は計り知れない。もし汚したり、傷つけてしまったら?

(すぐにでも着替えたいけど・・・)

「私、貴方が皇子だなんて知らなかったわ。それにまさかこのドレスが、あの銀糸シルクだなんて」

「ミライザ、僕は確かに皇帝の息子だけど、皇族としての役割は受け持っていないよ。優秀な兄達がいるし、宰相は叔父が勤めている。僕は憧れの人魚を探して世界中を巡っていたから、両親も僕にはもう多くを望んでいない。このブルーシルバーのドレスは確かに貴重だけど、5年前に作ってから一度も着られずに保管されていた物だ。ミライザが着てくれた方がいいよ」

グランは、ミライザの腰に両腕を回し引き寄せてきた。

「私、婚約なんてしていないわ」

「暫く付き合うって約束しただろう。僕がミライザを選んで、今日のパーティに連れてきた事に意味がある。ミライザは、気にしなくていいよ。帰ろう。ミライザ。着いたら脱がしてあげるから」

ミライザは、いつの間にか閉じ込められるようにして包まれているグランの腕の中で、しぶしぶ頷いた。















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