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第一章
即位
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私は、大王に即位した。
多くの豪族達は、何度も続く戦に疲れ果てていた。
広彦皇子の反発が予想されたが、私の即位が決まってから意外な事に広彦皇子はなにも言ってこなかった。
今日は、私の即位式が行われる。
広い本宮の中を、紅白の豪華な衣装を着て私は歩いて行く。
両側には、沢山の豪族が頭を下げて静かに私が上座に辿り着く様子を伺っている。
大王が座る上座の左右には既に二人の人物が座っていた。
右側に座るのは皇太子となる厩戸皇子だ。厩戸皇子は2年間大王の座につき亡くなった大兄大王の息子になる。優秀な厩戸皇子は両親が蘇我一族の血を引き、叔父は厩戸皇子に期待をしているみたいだった。
左側に座るのは、、、、
元夫によく似た壮年の男性だった。そこに座るのは広姫の息子の広彦皇子のはずだ。巨額な財産を持つ押坂一族の支援を受けた死んだ夫の嫡男。広姫と対立していた私は広彦皇子と初めて会うはずだった。だけど彼は、潤んだ瞳で私をみつめている。会った事がある。庭で時々話をしていた皇子だ。そういえば彼とはいつの間にか会う事が無くなった。まさか、彼が、、、
私は疑問を心の底に封じ込めて、胸を張り、前を見た。
「「額田部大王様おめでとうございます」」
周囲から祝いの言葉と、拍手が響き渡る。
上座から離れた場所に座る叔父の蘇我馬子は薄っすらと満足そうに笑っていた。
この場には竹田皇子は来ることができなかった。最近また調子を崩し寝込むことが多い。
私の目的は、この国の安定と平和。
それが、私の子供達の安全に繋がるはず。
大王だった夫が亡くなってから、8年が経つ。
その間に、同母兄と異母弟が大王に選ばれ、二人とも命を落とした。
いつ私も殺されるか分からない。次の大王が決まるまで、竹田皇子が元気になるまで、子供達が大きくなるまで、私はこの国の安定を守ってみせる。
叔父の蘇我馬子へ微笑みかける。叔父は満足そうに頷いていた。
他の豪族達にも微笑みかける。私は38歳になるが、侍女達によって熱心に手入れされた髪や肌は艶を保ち、最高級の布を使って作られた衣装を着た私は天女のようだと褒められる。
大王になったのは、蘇我一族の為ではない。竹田皇子を大王にする為ではない。ただ、守りたいだけだ。私の大切な人達を、その為に私は微笑み推考する。
生き延びるための道筋を、、、、
多くの豪族達は、何度も続く戦に疲れ果てていた。
広彦皇子の反発が予想されたが、私の即位が決まってから意外な事に広彦皇子はなにも言ってこなかった。
今日は、私の即位式が行われる。
広い本宮の中を、紅白の豪華な衣装を着て私は歩いて行く。
両側には、沢山の豪族が頭を下げて静かに私が上座に辿り着く様子を伺っている。
大王が座る上座の左右には既に二人の人物が座っていた。
右側に座るのは皇太子となる厩戸皇子だ。厩戸皇子は2年間大王の座につき亡くなった大兄大王の息子になる。優秀な厩戸皇子は両親が蘇我一族の血を引き、叔父は厩戸皇子に期待をしているみたいだった。
左側に座るのは、、、、
元夫によく似た壮年の男性だった。そこに座るのは広姫の息子の広彦皇子のはずだ。巨額な財産を持つ押坂一族の支援を受けた死んだ夫の嫡男。広姫と対立していた私は広彦皇子と初めて会うはずだった。だけど彼は、潤んだ瞳で私をみつめている。会った事がある。庭で時々話をしていた皇子だ。そういえば彼とはいつの間にか会う事が無くなった。まさか、彼が、、、
私は疑問を心の底に封じ込めて、胸を張り、前を見た。
「「額田部大王様おめでとうございます」」
周囲から祝いの言葉と、拍手が響き渡る。
上座から離れた場所に座る叔父の蘇我馬子は薄っすらと満足そうに笑っていた。
この場には竹田皇子は来ることができなかった。最近また調子を崩し寝込むことが多い。
私の目的は、この国の安定と平和。
それが、私の子供達の安全に繋がるはず。
大王だった夫が亡くなってから、8年が経つ。
その間に、同母兄と異母弟が大王に選ばれ、二人とも命を落とした。
いつ私も殺されるか分からない。次の大王が決まるまで、竹田皇子が元気になるまで、子供達が大きくなるまで、私はこの国の安定を守ってみせる。
叔父の蘇我馬子へ微笑みかける。叔父は満足そうに頷いていた。
他の豪族達にも微笑みかける。私は38歳になるが、侍女達によって熱心に手入れされた髪や肌は艶を保ち、最高級の布を使って作られた衣装を着た私は天女のようだと褒められる。
大王になったのは、蘇我一族の為ではない。竹田皇子を大王にする為ではない。ただ、守りたいだけだ。私の大切な人達を、その為に私は微笑み推考する。
生き延びるための道筋を、、、、
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