女神は推考する

仲 奈華 (nakanaka)

文字の大きさ
21 / 21
第一章

即位

しおりを挟む
私は、大王に即位した。
多くの豪族達は、何度も続く戦に疲れ果てていた。
広彦皇子の反発が予想されたが、私の即位が決まってから意外な事に広彦皇子はなにも言ってこなかった。

今日は、私の即位式が行われる。

広い本宮の中を、紅白の豪華な衣装を着て私は歩いて行く。
両側には、沢山の豪族が頭を下げて静かに私が上座に辿り着く様子を伺っている。

大王が座る上座の左右には既に二人の人物が座っていた。

右側に座るのは皇太子となる厩戸皇子だ。厩戸皇子は2年間大王の座につき亡くなった大兄大王の息子になる。優秀な厩戸皇子は両親が蘇我一族の血を引き、叔父は厩戸皇子に期待をしているみたいだった。

左側に座るのは、、、、
元夫によく似た壮年の男性だった。そこに座るのは広姫の息子の広彦皇子のはずだ。巨額な財産を持つ押坂一族の支援を受けた死んだ夫の嫡男。広姫と対立していた私は広彦皇子と初めて会うはずだった。だけど彼は、潤んだ瞳で私をみつめている。会った事がある。庭で時々話をしていた皇子だ。そういえば彼とはいつの間にか会う事が無くなった。まさか、彼が、、、

私は疑問を心の底に封じ込めて、胸を張り、前を見た。

「「額田部大王様おめでとうございます」」

周囲から祝いの言葉と、拍手が響き渡る。

上座から離れた場所に座る叔父の蘇我馬子は薄っすらと満足そうに笑っていた。

この場には竹田皇子は来ることができなかった。最近また調子を崩し寝込むことが多い。

私の目的は、この国の安定と平和。

それが、私の子供達の安全に繋がるはず。

大王だった夫が亡くなってから、8年が経つ。

その間に、同母兄と異母弟が大王に選ばれ、二人とも命を落とした。

いつ私も殺されるか分からない。次の大王が決まるまで、竹田皇子が元気になるまで、子供達が大きくなるまで、私はこの国の安定を守ってみせる。

叔父の蘇我馬子へ微笑みかける。叔父は満足そうに頷いていた。

他の豪族達にも微笑みかける。私は38歳になるが、侍女達によって熱心に手入れされた髪や肌は艶を保ち、最高級の布を使って作られた衣装を着た私は天女のようだと褒められる。

大王になったのは、蘇我一族の為ではない。竹田皇子を大王にする為ではない。ただ、守りたいだけだ。私の大切な人達を、その為に私は微笑み推考する。

生き延びるための道筋を、、、、

しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

あさのりんご

楽しませていただきました。この時期は、遥かロマンの世界。これからの展開が楽しみです。
                   夢野凛

2022.05.18 仲 奈華 (nakanaka)

コメントありがとうございます。
時々更新していきますので、また読んで頂けたら嬉しいです。ロマンですね♪

解除

あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

離婚した彼女は死ぬことにした

はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。