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限界離婚≪再≫
戻った世界
しおりを挟む拓也は、自閉症スペクトラム症の診断を受けた2年後に研修医として復帰した。
服薬でうつ病は改善し、研修先の理解を得て終了する事ができた。
今の拓也は一人暮らしをしている。
静かな自分だけの空間で、医師資格を生かして海外の医療専門紙を中心に翻訳の仕事を請け負っている。
翻訳の仕事は父が窓口となり、拓也の苦手な交渉をフォローしてくれる。
毎日決まった時間に起きて、運動をして、仕事をする。30分ごとに休憩を取り、いつものコンビニで購入した弁当を食べる。
静かで単調で安心できる空間がそこにあった。
時々、元妻の事を思い出す。
寝る前に、あの時もし違う行動をしていたらと考え眠れなくなりそうなことがある。
だけど、毎日睡眠薬を飲み、眠りにつく。
大勢集まる場所には極力参加しないようにしているが、どうしても行かなければいけない時は、防音イヤーマフや耳栓をつけて参加する。
あの時診断を受けて、とても楽になった。
以前の拓也は自分が間違っていないと信じたかった。
拓也の常識は、周囲の人たちの常識とは違う。
どうしてもうまく行かない時、周囲を責めたくなる気持ちが拓也にはあった。どうしてなのかと。だけど、そんな事をするわけにはいかない。自分自身を責めて身動きが取れなくなった時、この世界で感じている違和感は、周囲のせいでもなく、自分のせいでもなく、拓也が産まれた時から持っている特性のせいだという事が分かった。
もう、頑張る必要はない。
出来ない事を、しないといけないと言われる事もない。
静かで落ち着く環境で、黙々と翻訳作業をして、時間があれば好きな読書をする。
時々、手紙を書く。
今まで拓也を支えてくれた人たちに感謝の気持ち伝える為に。
拓也の真っ暗だった世界は、いつの間にか落ち着いた色合いに戻っていた。
時々キラキラと輝く灰銀の道路、黄緑と緑が風に吹かれて複雑になびく木々、清潔感を感じる白いマンション、水色の穏やかな空。
拓也は穏やかに笑い、またいつもの作業を繰り返した。
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