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エンド
3.通草
しおりを挟むアケビは、あの強盗傷害事件の後、数日入院してから自宅へ帰った。
元々、高額な貴金属、不動産登記簿、銀行印、証券は貸金庫に預けてある。自宅に保管している者は日常で使用する比較的安価な物だった。
資産をできるだけ守り、孫のサカキに引き継ぎたい。できるだけ質素に暮らし、彼に残す資産を増やす事がアケビの生きがいだった。
だけど、これからは違う。
鬼柳第一病院から孫のサカキが亡くなったと連絡があった。彼は、複数の詐欺容疑で立件されている。刺されて病院に運ばれた後、感染症による脳炎と多臓器不全を患い、数週間の治療の甲斐なく亡くなってしまった。
やっと見つかった孫が、娘の忘れ形見が。
結局、再会してから一度も彼と会話を交わしていない。
どうして、詐欺に関わっていたのか?強盗のような真似をしていたのか?
妊娠させた相手がいるにも関わらず、別の女性と婚約をしたのか?
娘のルリは、幸せだったのか?どこに埋葬されているのか?
彼に聞きたい事は沢山あった。
アケビは、田中サカキの産まれたばかりの息子と養子縁組をした。彼はアケビのひ孫になる。DNA鑑定を行い、サカキとアケビとの血縁関係が証明された男の子を、レンと名付けた。レンの両親はもういない。彼らは犯罪に手を染めていたかもしれない。それでも、レンには強くまっすぐに生きていってほしい。
アケビは、レンを引き取った後、ベビーシッターと家政婦、執事を雇い、セキュリティーが厳重な広い庭がある屋敷を購入した。警備会社と契約を交わし、監視カメラを付け、なにかあればすぐに警備会社に連絡がいくように環境を整えた。弁護士に依頼し、もしレンが成人する前にアケビに何かあれば、後見人として彼をサポートしてもらうように契約した。
土家家の不動産収入を使い、彼が成人するまでサポートをする。高齢になったアケビには、育児や家事を全てこなす体力は残っていない。でも、レンは唯一残された血が繋がった親族だ。いくらかかっても彼の事は、土家家で育て上げようと決めていた。
土家家の財産は、膨大な額で、不動産と株投資による利益だけで生活する事ができる。
アケビは、執事と共にサカキの簡易的な葬式を上げ、遺骨を土家家の納骨堂へ持ち帰った。そこには名前が分からないレンの母の遺骨も埋葬されている。サカキの遺骨を彼女の隣に設置して、アケビは手を合わせて言った。
「レンを産んでくれてありがとうございます。彼の事は私が責任を持って育て上げます。安らかにお眠りください」
納骨堂の外に出ると、真っ青な空が広がっていた。
執事と共に、屋敷へ向かう。
「レンは元気にしているかしら」
「ええ、奥様。ベビーシッターから写真が送られてきました。よくミルクを飲んで、先程、眠ったそうです。レン様は強い子です」
「そう。あの投資は滞りなく成立したのかしら」
「はい。奥様の指示通り、鬼柳財閥の医療・福祉部門へと、児童教育部門を中心に投資する事になりました。お礼状と共に、鬼柳財閥新社長就任式の招待状が届いております」
「ありがとう。就任式には参加しないわ。レンとの時間を大切にしたいから」
「ええ、わかりました。」
土家家の納骨堂は、生い茂る木々の中にある。見渡せる山や林は全て土家家所有の土地になる。溜めていた資産の半分を、教育・福祉・医療・防犯への投資と、寄付に回す事にした。
もしかしたら資産が減るかもしれない。
だけど、財産以上に大切な事がある。
レンを含め子供達の未来の為に、私だけでなく、孫の罪を償う為にそうしようと決めたのだ。
アケビは振り返り、森の中にひっそりと佇む納骨堂を一瞥して、車に乗り込んだ。
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