殺めてもいいでしょうか?

仲 奈華 (nakanaka)

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アヤメ

2.残手

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追い詰められたように見えた鬼柳マサキが、漆黒のマントを大きく広げ、右大腿部に付けられていた細長い器具を掲げ上げ、上空へ発射した。




紅黄に光る何かが天井へ辿りついた瞬間、爆発し、周囲は濃霧に包み込まれた。




スプリンクラーが作動し、無数の雫が降り注ぐ。霧の中で所々、電気が走り火花を散らす。





ガシャ、ガシャ、






機械が地面に落ちる音が連続で鳴り響いた。




防弾ガラスの隙間から、濃霧が漂ってくる。







アヤメは、夫に縋り付いたまま言った。




「何があったの?」



ヨツバ博士が言う。


「どうやら相手も対策をしてきたようです。捕縛用ドローンが機能不全に陥った可能性があります」




防弾ガラスの向こうは霧に包まれ、何も見えない。





アヤメは、今にも防弾ガラスが突破される恐怖を感じた。




「貴方、逃げましょう」



「待って、霧が晴れる」




白濁していた空間は、徐々にクリアになり、広いホールには、落ちて煙を上げている複数のドローンと、目標を失い、混乱したように小刻みに動き続けるロボット犬が現れた。








鬼柳マサキの姿は、そこには無かった。







茶髪で長身の女性が告げてくる。



「襲撃者は逃走したみたいですね。」



カエデが言う。



「スミレさん。監視カメラ映像を出せますか?」



スミレと呼ぼれた女性がタブレットを操作しながら返答した。



「今、Airiに確認しています。映像が出ました。ここですね。会場から出て、廊下の窓から脱出しています」



ヨツバ博士が告げる。



「社長。捕縛用システムを作動させますか?予備セットは残っています。ですが、それらを使うと、この後のAiri説明会での展示ロボットが不足します」



カエデが言った。



「分かりました。鬼柳マサキについては、警察へ通報しましょう。Airiシステム実装はまだ公表されていません。会場内だけならともかく、公道で使用できる段階ではない」



アヤメは、心配になり、告げる。


「貴方、それでいいの?彼は本気でお義母さんの事を……」


義母のウメが、近づいてきてアヤメに告げた。



「いいのよ。会社の事を優先しましょう。なるようにしかならないわ」





義母は、銃弾で壁が抉られ、壊れたテーブルや椅子が散乱し、水浸しになった会場を見ていた。












会場の中央に、マサキがつけていた金属製の手首が、不気味に残されていた。
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