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アヤメ
2.葛藤
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「何を言っている?君には会った事がない。俺は、君の事を知らない。気持ち悪い!」
真っ赤なドレスを着て、腹部に手を当てたエリカが、カエデを見て訝しそうに眉間に皺を寄せ言う。
「知らないだなんて、嘘よ。あの日、一緒に楽しんだじゃない。貴方の妻の目の前で。そう、アヤメ。貴方も見たでしょう。私達の事を知っているはずよ」
夫に問いかけながら、アヤメに気が付いたエリカは、アヤメを暗く愉悦が籠った瞳で睨みつけてきた。
(あの金曜日の夜、甘酸っぱい香りが立ち込める中、夫と義姉は確かに一緒にいた。でも、夫は覚えていない。確かに見た。でも、未だに認めたくない気持ちがある。それに、私は夫の事を。)
アヤメは、か細い声で返事をしようとした。
「私は、、、」
「お前の事なんて、妻が知っているはずがないだろう!俺達夫婦に隠し事なんて無い。いきなり訪ねて来て訳が分からない事を言い出すなんて、ありえない」
夫のカエデが、エリカの腕を掴みながら、玄関の外へ無理やり押し出そうとしている。
「まって、本当に貴方の子供なの。アヤメ。説明して、この子は貴方の夫の…キャア」
ガシャーン
ピ、ピ、ジャジャーン
「本当に気味が悪い。アヤメ。大丈夫だったか?念のため警察に通報した方がよさそうだ」
バン!バン!バン。
『あけて・・・アヤメ!』
玄関ドアの外から微かにエリカのヒステリックな声が聞こえてくる。
カエデは、胸ポケットからスマホを取り出し警察へ電話を掛けた。
「自宅に不審者が乱入してきました。相手は女です。住所は…。え?9か月前にも通報が。いいえ、覚えていません。人違いではないでしょうか?…ええ、わかりました。」
9か月前、彼はあの日の事を忘れてしまった。
彼女の事も覚えていない。でも、医師は言っていた。些細な事が刺激となって、思い出す事もあると。
夫にあの日の事を説明してもらいたい気持ちがある。彼を問い詰めたい想いがまだ残っている。でもそれより怖い。はっきりと思い出した彼が、もしかしたら私ではなくて義姉エリカを選ぶのではないか?
夫の事を愛している。心の底からそう思う。でも、また今日も彼に強い憎しみと殺意を感じてしまった。
愛しているのに、どうしてなのか自分でも分からない。
私は、もしかしたら彼の側にいるべきではないのではないかもしれない。
もしかしたら、本当にエリカは夫の子供を妊娠しているのかも・・・
だとしたら私は。
警察との電話を終えたカエデが、俯くアヤメに声をかけてきた。
「警察に通報したよ。すぐに来てくれる事になった。でも、おかしい。9か月前にも同様の通報があったと言われた。そんなはずがないのに。君は、なにか知らないか?」
アヤメは、強い葛藤で潤んだ瞳を隠すように、彼の足元を見たまま言った。
「知らないわ。私はなにも。」
ただ、ただ胸が張り裂けそうで、辛かった。
真っ赤なドレスを着て、腹部に手を当てたエリカが、カエデを見て訝しそうに眉間に皺を寄せ言う。
「知らないだなんて、嘘よ。あの日、一緒に楽しんだじゃない。貴方の妻の目の前で。そう、アヤメ。貴方も見たでしょう。私達の事を知っているはずよ」
夫に問いかけながら、アヤメに気が付いたエリカは、アヤメを暗く愉悦が籠った瞳で睨みつけてきた。
(あの金曜日の夜、甘酸っぱい香りが立ち込める中、夫と義姉は確かに一緒にいた。でも、夫は覚えていない。確かに見た。でも、未だに認めたくない気持ちがある。それに、私は夫の事を。)
アヤメは、か細い声で返事をしようとした。
「私は、、、」
「お前の事なんて、妻が知っているはずがないだろう!俺達夫婦に隠し事なんて無い。いきなり訪ねて来て訳が分からない事を言い出すなんて、ありえない」
夫のカエデが、エリカの腕を掴みながら、玄関の外へ無理やり押し出そうとしている。
「まって、本当に貴方の子供なの。アヤメ。説明して、この子は貴方の夫の…キャア」
ガシャーン
ピ、ピ、ジャジャーン
「本当に気味が悪い。アヤメ。大丈夫だったか?念のため警察に通報した方がよさそうだ」
バン!バン!バン。
『あけて・・・アヤメ!』
玄関ドアの外から微かにエリカのヒステリックな声が聞こえてくる。
カエデは、胸ポケットからスマホを取り出し警察へ電話を掛けた。
「自宅に不審者が乱入してきました。相手は女です。住所は…。え?9か月前にも通報が。いいえ、覚えていません。人違いではないでしょうか?…ええ、わかりました。」
9か月前、彼はあの日の事を忘れてしまった。
彼女の事も覚えていない。でも、医師は言っていた。些細な事が刺激となって、思い出す事もあると。
夫にあの日の事を説明してもらいたい気持ちがある。彼を問い詰めたい想いがまだ残っている。でもそれより怖い。はっきりと思い出した彼が、もしかしたら私ではなくて義姉エリカを選ぶのではないか?
夫の事を愛している。心の底からそう思う。でも、また今日も彼に強い憎しみと殺意を感じてしまった。
愛しているのに、どうしてなのか自分でも分からない。
私は、もしかしたら彼の側にいるべきではないのではないかもしれない。
もしかしたら、本当にエリカは夫の子供を妊娠しているのかも・・・
だとしたら私は。
警察との電話を終えたカエデが、俯くアヤメに声をかけてきた。
「警察に通報したよ。すぐに来てくれる事になった。でも、おかしい。9か月前にも同様の通報があったと言われた。そんなはずがないのに。君は、なにか知らないか?」
アヤメは、強い葛藤で潤んだ瞳を隠すように、彼の足元を見たまま言った。
「知らないわ。私はなにも。」
ただ、ただ胸が張り裂けそうで、辛かった。
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