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「開けなさい。ルミア。いるのでしょ。」
ドアの向こうから、女の金切り声が聞こえてくる。
もうここを離れるのだ。相手をする必要なんてない。ルミアは後ずさりした。
ドアの向こうには何人かいるようだ。いつもより騒がしい。
「こじ開けて!」
無理やりにでも入ってくるつもりだ。
ルミアは、ボストンバックを、裏口の近くにある床下収納へ急いで押し入れ蓋を占めた。
ガチャガチャ、バキバキ、バキ。
ドーーン。
鍵穴と共に、ドアが壊される音がして、複数人の人物が塔へ入ってきた。
「「やっぱりいたのね。ルミア」」
長い茶髪を編み込み、大ぶりのガーネットの宝石を身に着けて、胸が強調されるほど深いVネックドレスを着ている美しいルーナ姫は、目を吊り上げながらルミアを見下ろしていた。瞳は燃えるように苛立ちルミアを睨みつけてきた。
隣のリーナ姫は、サファイアのネックレスをつけ、肌が透け見える花の刺繍ドレスを身にまとい、凍えるような冷たい瞳でルミアに近づいてきた。
義姉のルーナ姫とリーナ姫の後ろには、屈強な使用人が数人付き添って、塔にぞろぞろと入ってきた。
ルーナ姫は言った。
「今日はね、皇子は私にプロポーズをするはずだったのよ。」
リーナ姫も言う。
「そうよ。私に愛の言葉をつげるはずだったの。」
「それが、おかしいのよ」
「ええ、ありえないわ」
「黒髪の娘を探しているのですって」
「帝国へ連れて帰るって言うの」
ルミアは、強い恨みがこもった口調で詰め寄ってくる二人の義姉から少しでも離れようと、座り込んだまま後づさった。
二人はルミアの黒髪を鷲掴みにして持ち上げた。
「痛い。やめて姉様達。私は塔から出たことなんてないわ。なにも知らないの。皇子なんてしらない。」
「もちろんそうだわ。こんな汚いルミアなんて誰も必要としていない」
「ありえないわ。私達じゃなくてルミアが選ばれる事なんてない」
「ただね。似ているだけよ。あなたが皇子の言った娘の特徴とね」
「ルミアだとは思っていないの。でもね。ちょっと付き合って頂戴」
ルミアは、二人に髪をひっぱられながら塔の外へ無理やり引きずられていった。
ドアの向こうから、女の金切り声が聞こえてくる。
もうここを離れるのだ。相手をする必要なんてない。ルミアは後ずさりした。
ドアの向こうには何人かいるようだ。いつもより騒がしい。
「こじ開けて!」
無理やりにでも入ってくるつもりだ。
ルミアは、ボストンバックを、裏口の近くにある床下収納へ急いで押し入れ蓋を占めた。
ガチャガチャ、バキバキ、バキ。
ドーーン。
鍵穴と共に、ドアが壊される音がして、複数人の人物が塔へ入ってきた。
「「やっぱりいたのね。ルミア」」
長い茶髪を編み込み、大ぶりのガーネットの宝石を身に着けて、胸が強調されるほど深いVネックドレスを着ている美しいルーナ姫は、目を吊り上げながらルミアを見下ろしていた。瞳は燃えるように苛立ちルミアを睨みつけてきた。
隣のリーナ姫は、サファイアのネックレスをつけ、肌が透け見える花の刺繍ドレスを身にまとい、凍えるような冷たい瞳でルミアに近づいてきた。
義姉のルーナ姫とリーナ姫の後ろには、屈強な使用人が数人付き添って、塔にぞろぞろと入ってきた。
ルーナ姫は言った。
「今日はね、皇子は私にプロポーズをするはずだったのよ。」
リーナ姫も言う。
「そうよ。私に愛の言葉をつげるはずだったの。」
「それが、おかしいのよ」
「ええ、ありえないわ」
「黒髪の娘を探しているのですって」
「帝国へ連れて帰るって言うの」
ルミアは、強い恨みがこもった口調で詰め寄ってくる二人の義姉から少しでも離れようと、座り込んだまま後づさった。
二人はルミアの黒髪を鷲掴みにして持ち上げた。
「痛い。やめて姉様達。私は塔から出たことなんてないわ。なにも知らないの。皇子なんてしらない。」
「もちろんそうだわ。こんな汚いルミアなんて誰も必要としていない」
「ありえないわ。私達じゃなくてルミアが選ばれる事なんてない」
「ただね。似ているだけよ。あなたが皇子の言った娘の特徴とね」
「ルミアだとは思っていないの。でもね。ちょっと付き合って頂戴」
ルミアは、二人に髪をひっぱられながら塔の外へ無理やり引きずられていった。
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