28 / 85
それぞれの絆
【雪】冬の星と青空
しおりを挟む
とさり…と、雪の落ちる音が聞こえまして僕は目を開けました。
何時の間にか眠ってしまっていた様ですね。
背中を預けて居た座椅子から、軽く背中を離して両腕を上へと上げて伸びをします。
「…ふぇっ…」
その時に身体中に鈍い痛みが走りまして、思わず僕は情けない声を出してしまいました。
今日は僕だけでなく、だん…紫様もお休みですので…その…ええと…まあ…僕だけがお休みの時よりは…その…はい…それなり…以上に…致し…。
「ふあああああっ!!」
昨夜の事を思い出した僕は思わず両手で顔を覆ってしまいました。
物凄く顔が熱いです。旦那さ、紫様が今、ここに居なくて良かったです。
その拍子に膝の上に置いてあった本が畳へと落ちてしまいました。
「ああ、いけません。倫太郎様からお借りした物ですのに」
拾い上げて頁が折れていないか確認をします。
どうやら問題はなさそうですね、良かったです。
落ちていた栞を挿み直しまして、同じく膝の上にあります膝掛を退かしまして、そちらを畳んでから僕は立ちあがりました。
石油ストーブの上にありますヤカンがしゅんしゅんとした音を立てて居ます。
茶の間の障子を開けまして廊下へと出ます。
ひんやりとした空気が気持ち良いです。
カラカラと縁側へと続く戸を開ければ、更に冷たい空気が入り込んで来ましたが、空気の入れ替えは必要ですよね。
「…ああ、このお天気で雪が溶けたのですね」
どれぐらい眠っていたのでしょうか? 朝は曇りだったと思うのですが、今は見事な快晴ですね。
縁側に腰を下ろしまして、お庭にありますお花を見ます。
「…ふふ…」
キンセンカ、クレマチス、シクラメン、シンビジウム、水仙、様々なお花が青空の下で溶けた雪の雫で輝いています。
橙色、白色、紫色、桃色、黄色、緑色と様々な色が目を楽しませてくれます。
あの日、えみちゃん様からご招待を受けました時に、お庭にもっとお花を植えたいと思いました事を後日旦那さ、紫様にお話ししましたら、紫様もそう思っていたそうで、早々にお花の種を買いに行ったのですよね。懐かしいです。
梅の木を見れば、蕾を付けているのが見えます。もう暫くもしましたら、それは見事に咲くのでしょうね。
「雪緒! 外へ出るなら何かを羽織れ、風邪を引くぞ!」
「だ…紫様。お帰りなさいませ」
そうやってお花を眺めていましたら、だ…紫様が慌てた様子で門からこちらへと駆け寄って来ました。
その手には紙袋が握られています。読書中にお買い物へ行くと仰っていましたが、何を買いに行ってらしたのでしょうか? お酒や食材でしたらありますのに。
「…ああ、手が冷たい早く中へ入れ」
「大袈裟ですよ。未だ、半刻も経っていませ…」
僕の手を取り、心配そうに言います紫様に僕は笑って言いますが、無言で睨まれてしまいましたので、茶の間へと下がる事にしました。
「だ、紫様こそ、お買い物に行かれて身体が冷えたのではありませんか? 今、温かいお茶を煎れますね」
「ああ、頼む」
僕がそう言いましたら、紫様は紙袋を卓袱台の脇へと置いて、茶の間を出て行きました。
長羽織をお部屋へ置きに行くのでしょうか?
それにしても、何をお買い求めになられたのでしょうか?
気にはなりますが、勝手に中身を覗く訳には行きません。我慢です。
そうしてお茶を煎れまして待っていましたら。
「…あ…」
戻って来ました紫様の手にはあの箱がありました。
ぽかぽかの青い箱です。
「…この間から気になっていた。もう大分色も褪せて来たし、擦り切れてもいたからな。袋の中の物を出してくれ」
肩を竦めて笑って隣へと腰を下ろします紫様の言葉に、僕は慌てて紙袋の中身を卓袱台の上に出して行きます。
中から出て来ました物は、小さめの鋏に、折り紙、糊、お星様の形の穴が開いているプラスティックの板?
ともかくも、紫様が何をなさるのか、それを理解した僕の胸が熱くなり、視界が滲んで来てしまいました。
「おい。お前にも手伝って貰うからな? 今は便利な物があるんだな。これを折り紙にあててだな、鉛筆でなぞるだけで簡単に星の形が書ける。で、この鋏で切り取って…って、聞いてるのか?」
「…ふぁい…嬉ひいれひゅ…」
僕の鼻を摘まみながら、そう言います紫様にこくこくと頷きます。
その拍子に涙が零れ落ちたのは、ご愛嬌と云う事でご容赦下さい。
「…全く…茶を飲んだら始めるからな…」
照れましたのか、ぶっきらぼうに言いまして、僕の鼻から離れて湯呑みを掴みます紫様の手を見れば、そこには銀色に光る指輪があります。
何時からでしたでしょうか? お休みの日には、ネックレスに通して首に下げるのではなくて、指に嵌める様になりました。
それに気が付いた時、とても嬉しく思ったのを覚えています。
身に着けて居ます事に変わりはありませんのに、不思議な物ですね。
しゅんしゅんとヤカンが音を奏でて居ます中で、僕は少しだけ温くなったお茶を飲んだのでした。
何時の間にか眠ってしまっていた様ですね。
背中を預けて居た座椅子から、軽く背中を離して両腕を上へと上げて伸びをします。
「…ふぇっ…」
その時に身体中に鈍い痛みが走りまして、思わず僕は情けない声を出してしまいました。
今日は僕だけでなく、だん…紫様もお休みですので…その…ええと…まあ…僕だけがお休みの時よりは…その…はい…それなり…以上に…致し…。
「ふあああああっ!!」
昨夜の事を思い出した僕は思わず両手で顔を覆ってしまいました。
物凄く顔が熱いです。旦那さ、紫様が今、ここに居なくて良かったです。
その拍子に膝の上に置いてあった本が畳へと落ちてしまいました。
「ああ、いけません。倫太郎様からお借りした物ですのに」
拾い上げて頁が折れていないか確認をします。
どうやら問題はなさそうですね、良かったです。
落ちていた栞を挿み直しまして、同じく膝の上にあります膝掛を退かしまして、そちらを畳んでから僕は立ちあがりました。
石油ストーブの上にありますヤカンがしゅんしゅんとした音を立てて居ます。
茶の間の障子を開けまして廊下へと出ます。
ひんやりとした空気が気持ち良いです。
カラカラと縁側へと続く戸を開ければ、更に冷たい空気が入り込んで来ましたが、空気の入れ替えは必要ですよね。
「…ああ、このお天気で雪が溶けたのですね」
どれぐらい眠っていたのでしょうか? 朝は曇りだったと思うのですが、今は見事な快晴ですね。
縁側に腰を下ろしまして、お庭にありますお花を見ます。
「…ふふ…」
キンセンカ、クレマチス、シクラメン、シンビジウム、水仙、様々なお花が青空の下で溶けた雪の雫で輝いています。
橙色、白色、紫色、桃色、黄色、緑色と様々な色が目を楽しませてくれます。
あの日、えみちゃん様からご招待を受けました時に、お庭にもっとお花を植えたいと思いました事を後日旦那さ、紫様にお話ししましたら、紫様もそう思っていたそうで、早々にお花の種を買いに行ったのですよね。懐かしいです。
梅の木を見れば、蕾を付けているのが見えます。もう暫くもしましたら、それは見事に咲くのでしょうね。
「雪緒! 外へ出るなら何かを羽織れ、風邪を引くぞ!」
「だ…紫様。お帰りなさいませ」
そうやってお花を眺めていましたら、だ…紫様が慌てた様子で門からこちらへと駆け寄って来ました。
その手には紙袋が握られています。読書中にお買い物へ行くと仰っていましたが、何を買いに行ってらしたのでしょうか? お酒や食材でしたらありますのに。
「…ああ、手が冷たい早く中へ入れ」
「大袈裟ですよ。未だ、半刻も経っていませ…」
僕の手を取り、心配そうに言います紫様に僕は笑って言いますが、無言で睨まれてしまいましたので、茶の間へと下がる事にしました。
「だ、紫様こそ、お買い物に行かれて身体が冷えたのではありませんか? 今、温かいお茶を煎れますね」
「ああ、頼む」
僕がそう言いましたら、紫様は紙袋を卓袱台の脇へと置いて、茶の間を出て行きました。
長羽織をお部屋へ置きに行くのでしょうか?
それにしても、何をお買い求めになられたのでしょうか?
気にはなりますが、勝手に中身を覗く訳には行きません。我慢です。
そうしてお茶を煎れまして待っていましたら。
「…あ…」
戻って来ました紫様の手にはあの箱がありました。
ぽかぽかの青い箱です。
「…この間から気になっていた。もう大分色も褪せて来たし、擦り切れてもいたからな。袋の中の物を出してくれ」
肩を竦めて笑って隣へと腰を下ろします紫様の言葉に、僕は慌てて紙袋の中身を卓袱台の上に出して行きます。
中から出て来ました物は、小さめの鋏に、折り紙、糊、お星様の形の穴が開いているプラスティックの板?
ともかくも、紫様が何をなさるのか、それを理解した僕の胸が熱くなり、視界が滲んで来てしまいました。
「おい。お前にも手伝って貰うからな? 今は便利な物があるんだな。これを折り紙にあててだな、鉛筆でなぞるだけで簡単に星の形が書ける。で、この鋏で切り取って…って、聞いてるのか?」
「…ふぁい…嬉ひいれひゅ…」
僕の鼻を摘まみながら、そう言います紫様にこくこくと頷きます。
その拍子に涙が零れ落ちたのは、ご愛嬌と云う事でご容赦下さい。
「…全く…茶を飲んだら始めるからな…」
照れましたのか、ぶっきらぼうに言いまして、僕の鼻から離れて湯呑みを掴みます紫様の手を見れば、そこには銀色に光る指輪があります。
何時からでしたでしょうか? お休みの日には、ネックレスに通して首に下げるのではなくて、指に嵌める様になりました。
それに気が付いた時、とても嬉しく思ったのを覚えています。
身に着けて居ます事に変わりはありませんのに、不思議な物ですね。
しゅんしゅんとヤカンが音を奏でて居ます中で、僕は少しだけ温くなったお茶を飲んだのでした。
22
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します
市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。
四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。
だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。
自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。
※性描写あり。他サイトにも掲載しています。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
僕の目があなたを遠ざけてしまった
紫野楓
BL
受験に失敗して「一番バカの一高校」に入学した佐藤二葉。
人と目が合わせられず、元来病弱で体調は気持ちに振り回されがち。自分に後ろめたさを感じていて、人付き合いを避けるために前髪で目を覆って過ごしていた。医者になるのが夢で、熱心に勉強しているせいで周囲から「ガリ勉メデューサ」とからかわれ、いじめられている。
しかし、別クラスの同級生の北見耀士に「勉強を教えてほしい」と懇願される。彼は高校球児で、期末考査の成績次第で部活動停止になるという。
二葉は耀士の甲子園に行きたいという熱い夢を知って……?
______
BOOTHにて同人誌を頒布しています。(下記)
https://shinokaede.booth.pm/items/7444815
その後の短編を収録しています。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
【完結】火を吐く土の国の王子は、塔から来た調査官に灼熱の愛をそそぐ
月田朋
BL
「トウヤ様、長旅お疲れのことでしょう。首尾よくなによりでございます。――とはいえ油断なされるな。決してお声を発してはなりませんぞ!」」
塔からはるばる火吐国(ひはきこく)にやってきた銀髪の美貌の調査官トウヤは、副官のザミドからの小言を背に王宮をさまよう。
塔の加護のせいで無言を貫くトウヤが王宮の浴場に案内され出会ったのは、美しくも対照的な二人の王子だった。
太陽に称される金の髪をもつニト、月に称される漆黒の髪をもつヨミであった。
トウヤは、やがて王家の秘密へと足を踏み入れる。
灼熱の王子に愛され焦がされるのは、理性か欲か。
【ぶっきらぼう王子×銀髪美人調査官】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる