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攻略していたのは、僕
【19】
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夢と同じになんて行く訳が無い。
夢と現実とは違う。
夢の中でのケタロウ様は、優しく甘く熱く僕を迎え入れてくれたけれど。
まるで夢の様に青い空の下なのに、ケタロウ様から返って来る物は何もなくて。
それでも、これできっと何かが変わる筈だと、そう思って、僕は何度もケタロウ様の中に、自分の望みを吐き出した。段々と冷えて固くなって行く躰。それでも、そこだけは、僕の願いで熱を持っていた。
誰を味方にしなくても。
誰を味方にしても。
ケタロウ様は死んだ。
それなら、もう、誰もが敵になっても良い。
ケタロウ様だけ。
ケタロウ様だけが居てくれれば、それで良いんだ。
誰も見ないから。
何も見ないから。
だから。
ねえ、ケタロウ様?
僕を見て。
僕に笑い掛けて。
「…僕を…好きになって…?」
青い空の下で、ぽたぽたとはらはらと、僕の目から流れた物が、ケタロウ様の白い躰に落ちて行く。
「…僕と…生きて…?」
冷たい躰を抱き締めて。
今のケタロウ様が、僕を抱き返してくれる事はないけれど。
それでも、僕は望みを口にして行く。
「…僕を見て…声を聴かせて…?」
夢の中のそこは、もっと熱く、柔らかく蠢いていたけれど。今は…僕だけが、熱を持って動いている。
それが酷く切なく悲しかったけれど。
でも。
きっと。
これで。
変わってくれる筈。
そうだと信じたい。
今度こそは。
「…ケタロウ様…」
ずるりとケタロウ様の中から出て、冷たくなった唇に口付ける。
「…汚しちゃって…ごめんなさい…」
唇を離して頬を撫で、髪に指を通して僕は謝る。ぽたぽたとはらはらとした物が、ケタロウ様の顔に落ちて行く。
ジャリ…って、音が聞こえた気がした。少し遅れて悲鳴の様な耳障りな声も。
そんなの、どうでも良い。
ケタロウ様は誰にも渡さない。
ケタロウ様は誰にもあげない。
ケタロウ様は僕だけのものだから。
「…だから…」
…………時よ、戻って…――――――――。
…誰かに、何かに、殺させたりなんかしない。
ケタロウ様は、僕と生きるんだから…それが…出来ないのなら………――――――――。
◇
「…ここ…?」
「突然の入寮に対応しただけでも有り難く思え」
…初めてケタロウ様を抱いてからも、僕は何度か時間を巻き戻した。
ケタロウ様が死なない未来を、何度も模索した。いっそ、ケタロウ様が学園に通わなければ良いんじゃないの? って思って、何時もは車の中から始まる時間…それよりも過去へ戻ろうとしたけど、出来なかった。…僕が知らない時間には戻れないみたい…それとも、力が足りないのかな…。何度も何度も戻って、解った事もある。壺を落としたのも、あの鼠やゴキブリの死骸を用意したのも、あの紫…ウーゴだった。学園を去った後は、生徒に頼んでやらせていた。理由は、格下の僕に恥をかかされたから…らしい。ピンコさんと、噴水に落ちた時、その時にピンコさんに松竹梅を持ち出された時のアレだ。それは、ピンコさんを味方にして、同好会の皆も味方にすれば、ケタロウ様を助けてくれるんじゃないかって、僕が止められなくても、僕の代わりに、ケタロウ様が絞首台に上がるのを止めてくれるんじゃないかって思って行動した時に解った事だった。
「…最悪…」
本当に、最悪な紫女だ。
まあ、今、最悪なのは、寮監に案内された、この部屋なんだけど。
「…こんな事、これまで無かったのに…」
カビ臭いし、それなのにジメジメしてるし、埃っぽいし…これ…どう贔屓目に見ても、物置き…それも、長年放置された…。
そんな、じとっとした部屋には、じとっとしたベッドとじとっとした勉強机が一つ。クローゼットなんて、無い。床は埃塗れだし、手にした鞄を置くのも躊躇われる。
「…どうして…?」
床よりはマシなベッドの隅に鞄を置いて、ぽすんと座ればギシッて錆びついた音がした。実家の僕のベッドよりボロいかも知れない。
こんな、部屋が無いなんて、今まで無かったのに。寮監の、リョ・カーンさんだって、あんな僕を見下す様な態度なんて取った事無かったのに。
「…変わった…?」
…何かが…変わったんだ…多分…。
…ケタロウ様が生きる未来なら…良いんだけど…。
「う、臭い…」
ぼすっと、身体を横にすれば、何だか饐えた様な臭いがして、僕は思わず呻いた。
「…明日…早く起きて、布団を干そう…シーツやカバーも洗って…」
臭い臭いって思いながらも、気が付けば僕は眠りに落ちていった。
◇
やっちゃったっ!!
そして、今、僕は、下半身を露出させたケタロウ様の脚にしがみついていた。
夢と現実とは違う。
夢の中でのケタロウ様は、優しく甘く熱く僕を迎え入れてくれたけれど。
まるで夢の様に青い空の下なのに、ケタロウ様から返って来る物は何もなくて。
それでも、これできっと何かが変わる筈だと、そう思って、僕は何度もケタロウ様の中に、自分の望みを吐き出した。段々と冷えて固くなって行く躰。それでも、そこだけは、僕の願いで熱を持っていた。
誰を味方にしなくても。
誰を味方にしても。
ケタロウ様は死んだ。
それなら、もう、誰もが敵になっても良い。
ケタロウ様だけ。
ケタロウ様だけが居てくれれば、それで良いんだ。
誰も見ないから。
何も見ないから。
だから。
ねえ、ケタロウ様?
僕を見て。
僕に笑い掛けて。
「…僕を…好きになって…?」
青い空の下で、ぽたぽたとはらはらと、僕の目から流れた物が、ケタロウ様の白い躰に落ちて行く。
「…僕と…生きて…?」
冷たい躰を抱き締めて。
今のケタロウ様が、僕を抱き返してくれる事はないけれど。
それでも、僕は望みを口にして行く。
「…僕を見て…声を聴かせて…?」
夢の中のそこは、もっと熱く、柔らかく蠢いていたけれど。今は…僕だけが、熱を持って動いている。
それが酷く切なく悲しかったけれど。
でも。
きっと。
これで。
変わってくれる筈。
そうだと信じたい。
今度こそは。
「…ケタロウ様…」
ずるりとケタロウ様の中から出て、冷たくなった唇に口付ける。
「…汚しちゃって…ごめんなさい…」
唇を離して頬を撫で、髪に指を通して僕は謝る。ぽたぽたとはらはらとした物が、ケタロウ様の顔に落ちて行く。
ジャリ…って、音が聞こえた気がした。少し遅れて悲鳴の様な耳障りな声も。
そんなの、どうでも良い。
ケタロウ様は誰にも渡さない。
ケタロウ様は誰にもあげない。
ケタロウ様は僕だけのものだから。
「…だから…」
…………時よ、戻って…――――――――。
…誰かに、何かに、殺させたりなんかしない。
ケタロウ様は、僕と生きるんだから…それが…出来ないのなら………――――――――。
◇
「…ここ…?」
「突然の入寮に対応しただけでも有り難く思え」
…初めてケタロウ様を抱いてからも、僕は何度か時間を巻き戻した。
ケタロウ様が死なない未来を、何度も模索した。いっそ、ケタロウ様が学園に通わなければ良いんじゃないの? って思って、何時もは車の中から始まる時間…それよりも過去へ戻ろうとしたけど、出来なかった。…僕が知らない時間には戻れないみたい…それとも、力が足りないのかな…。何度も何度も戻って、解った事もある。壺を落としたのも、あの鼠やゴキブリの死骸を用意したのも、あの紫…ウーゴだった。学園を去った後は、生徒に頼んでやらせていた。理由は、格下の僕に恥をかかされたから…らしい。ピンコさんと、噴水に落ちた時、その時にピンコさんに松竹梅を持ち出された時のアレだ。それは、ピンコさんを味方にして、同好会の皆も味方にすれば、ケタロウ様を助けてくれるんじゃないかって、僕が止められなくても、僕の代わりに、ケタロウ様が絞首台に上がるのを止めてくれるんじゃないかって思って行動した時に解った事だった。
「…最悪…」
本当に、最悪な紫女だ。
まあ、今、最悪なのは、寮監に案内された、この部屋なんだけど。
「…こんな事、これまで無かったのに…」
カビ臭いし、それなのにジメジメしてるし、埃っぽいし…これ…どう贔屓目に見ても、物置き…それも、長年放置された…。
そんな、じとっとした部屋には、じとっとしたベッドとじとっとした勉強机が一つ。クローゼットなんて、無い。床は埃塗れだし、手にした鞄を置くのも躊躇われる。
「…どうして…?」
床よりはマシなベッドの隅に鞄を置いて、ぽすんと座ればギシッて錆びついた音がした。実家の僕のベッドよりボロいかも知れない。
こんな、部屋が無いなんて、今まで無かったのに。寮監の、リョ・カーンさんだって、あんな僕を見下す様な態度なんて取った事無かったのに。
「…変わった…?」
…何かが…変わったんだ…多分…。
…ケタロウ様が生きる未来なら…良いんだけど…。
「う、臭い…」
ぼすっと、身体を横にすれば、何だか饐えた様な臭いがして、僕は思わず呻いた。
「…明日…早く起きて、布団を干そう…シーツやカバーも洗って…」
臭い臭いって思いながらも、気が付けば僕は眠りに落ちていった。
◇
やっちゃったっ!!
そして、今、僕は、下半身を露出させたケタロウ様の脚にしがみついていた。
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