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攻略されていたのは、俺
【10】
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「…そんなに買うのか…」
まさかの爆量に、いきなりフードファイターになれる筈も無く、残った物を包んで貰い、俺達は地獄のカフェを後にした。何でエロゲでコ○ダが出て来るんだよ、おかしいだろ。ゲームではメルヘンでおしゃれなカフェだったろ。そんなカフェで、フードファイトとかおかしいだろ。これ、昼と夜で食べ切れるか? サービスでドライアイスを付けてくれたから、そう直ぐに傷む事は無いだろうが。てか、これ持ち帰る人がほとんどなんだろ? でなければ、そうそうドライアイスなんて出て来ないだろう。どんだけチャレンジしてるカフェなんだ。メゴロウなら、間違いなくいけるだろうが、これ食べてくれるかな? ダチョウの卵なんて珍しいから、驚くよな? 喜んでくれるかな?
ともかく、早速胃薬の出番だな。胃薬を買うのが目的とは云え、何とも何ともな感じだ。てな訳で、デカい袋をぶら下げて、重い胃を擦りながら俺達は薬屋へとやって来た。
で、俺が次から次へと胃薬を手にしているのを見て、生徒会長が引いた様に言ったのが、先の言葉だ。
「どれが自分に合うのか、飲んでみないと解らないでしょう? また、同じ物を飲み続けていると効きが悪くなりますからね。その時の為です」
どんだけって表情で生徒会長が見て来るが、そんなの俺が、このメゴロウと離れてる状態に慣れるまでだろうな。
…慣れる気はしないけどな。
本当に、自分でも不思議だ。
死にたくないから、メゴロウに媚びを売って仲良くなろうとした。
仲良くなれば、メゴロウに意地悪さえしなければ、断罪はされない。そう思ったから。
切っ掛けなんて、そんな物だった。
ただ、それだけの筈だった。
それなのに。
何なんだろうな、この感じは。
メゴロウと居るのが楽しくて。
メゴロウと居るのが当たり前で。
本当に、この先もずっと一緒だと思っていたのに。
そして、離れて、改めて気付いた。
俺を断罪するのは、メゴロウじゃない。
どのルートでも、ケタロウを断罪するのはヒロインなんだと。
主人公は、何時も断罪されるケタロウを見ているだけだった。
だから、俺が仲良くするのはメゴロウでは無くて、ヒロインの方なのかも知れないって。
けど、今更、そう思ってもな…。
それに…隠し攻略キャラが…。
「…っ…!」
まただ。
あの女…じゃない、隠しキャラの事を思うと、頭が痛くなるし、息が苦しくなる。何なんだ、これは? 以前はこんな事無かったのに。何時から、こうなった?
「大丈夫か? 早く薬を買って飲もう」
「…そうですね。ああ、生徒会長は買わなくても良いですよ。私が買いますから、それをどうぞ」
どうせ大量に買うんだから、一つや二つあげても構わない。生徒会長はそんなに胃痛に悩まされるタチじゃないだろ、多分。生徒会長が手にしていた胃薬を奪って俺がそう言えば、何とも言えない顔をした。何だかな。クールな生徒会長様だろうに、この間から顔が崩れてばかりだな? まあ、まだ学生なんだし、色んな表情を見せても良いだろう。将来は社畜になるんだろうし。ありがとうサービス残業、今日も栄養ドリンクが美味いとか言うんだろうな。
会計を済ませて店を出て、さて何処で薬を飲もうかと歩きながら、そんな事を思っていたら。
「…何か、失礼な事を考えていないか?」
「いいえ? あ、あちらのカフェで休みましょうか」
生徒会長がじとりと眼鏡を光らせて睨んで来たから、俺は慌てて視界に入ったカフェを指差して歩き出した。勘の良い奴め。
そこはテラスのある店で、食べ物の匂いに胃袋が暴れ出しそうになった俺達は、閑散としたテラス席を希望して、そこへと案内して貰った。二人共アイスレモンティーを注文して、先に運ばれて来た水で胃薬を飲んだ。
「しかし、君がああ云う店を知っていたとは意外だった」
胃薬を飲んだ後に軽く胃を擦りながら話す生徒会長に、俺は軽く肩を竦める。
「私だって、それくらいは知っていますよ。何時かは、学生向けの店を出したいと思っていますしね」
家の商会も、セレブ相手じゃなくて学生向け…まあ、誰もが気軽に利用出来る店を出すべきなんだ。この王都では良いとしても、地方じゃあ、なかなか難しいからな。憧れのあの店が手の届く処に! ってなれば、更に客も増えると思うんだけどな。思うけど、王家御用達って看板が邪魔をしているのか、思い切った事が出来ないのが現状だ。ぬるぬるとゆるゆると、それだけに甘んじていたら駄目だろうって、思っていても、結局は俺もそれに倣って行くんだろうな。誰か、ガツンと新しい風を吹き込む奴が居てくれたらなあ。
カランカランと、運ばれて来たアイスレモンティーの氷をストローでかき混ぜながら、俺は自嘲する。
こんな事を思っていても、実行出来ないのが俺だ。
用意されたレールの上を歩くだけ。
新しい風を吹き込む度胸も勇気も無い。
こんな俺だから、メゴロウも愛想を尽かしたのだろう。
「…そうか。処で、未だ勃起はしないのか?」
「ぶぼっ!?」
下へ下へと沈んで行く俺を叱咤しようとしたのか、励まそうとしたのかは解らないが、生徒会長のその言葉に、ストローを咥えていた口から盛大に紅茶が噴き出した。ボコッとグラスの中の紅茶も泡立つ。
「俺なりに考えたんだが、君が勃起しない原因は、胃痛の様に精神的な物だと思う。が、恋人である彼の事を想えば勃起しない現状の方が好ましいのではないかと思える。勃起しないのであれば子を成す事は出来ないから、君は異性と結婚する必要も無いし家を継ぐ必要も無いだろう。家は養子を迎えてその子に継がせれば良いと思う」
いや、いきなり何を言ってるんだ!?
淡々と言っているが、その顔は真っ赤だぞ!?
てか、何が何だって!?
まさかの爆量に、いきなりフードファイターになれる筈も無く、残った物を包んで貰い、俺達は地獄のカフェを後にした。何でエロゲでコ○ダが出て来るんだよ、おかしいだろ。ゲームではメルヘンでおしゃれなカフェだったろ。そんなカフェで、フードファイトとかおかしいだろ。これ、昼と夜で食べ切れるか? サービスでドライアイスを付けてくれたから、そう直ぐに傷む事は無いだろうが。てか、これ持ち帰る人がほとんどなんだろ? でなければ、そうそうドライアイスなんて出て来ないだろう。どんだけチャレンジしてるカフェなんだ。メゴロウなら、間違いなくいけるだろうが、これ食べてくれるかな? ダチョウの卵なんて珍しいから、驚くよな? 喜んでくれるかな?
ともかく、早速胃薬の出番だな。胃薬を買うのが目的とは云え、何とも何ともな感じだ。てな訳で、デカい袋をぶら下げて、重い胃を擦りながら俺達は薬屋へとやって来た。
で、俺が次から次へと胃薬を手にしているのを見て、生徒会長が引いた様に言ったのが、先の言葉だ。
「どれが自分に合うのか、飲んでみないと解らないでしょう? また、同じ物を飲み続けていると効きが悪くなりますからね。その時の為です」
どんだけって表情で生徒会長が見て来るが、そんなの俺が、このメゴロウと離れてる状態に慣れるまでだろうな。
…慣れる気はしないけどな。
本当に、自分でも不思議だ。
死にたくないから、メゴロウに媚びを売って仲良くなろうとした。
仲良くなれば、メゴロウに意地悪さえしなければ、断罪はされない。そう思ったから。
切っ掛けなんて、そんな物だった。
ただ、それだけの筈だった。
それなのに。
何なんだろうな、この感じは。
メゴロウと居るのが楽しくて。
メゴロウと居るのが当たり前で。
本当に、この先もずっと一緒だと思っていたのに。
そして、離れて、改めて気付いた。
俺を断罪するのは、メゴロウじゃない。
どのルートでも、ケタロウを断罪するのはヒロインなんだと。
主人公は、何時も断罪されるケタロウを見ているだけだった。
だから、俺が仲良くするのはメゴロウでは無くて、ヒロインの方なのかも知れないって。
けど、今更、そう思ってもな…。
それに…隠し攻略キャラが…。
「…っ…!」
まただ。
あの女…じゃない、隠しキャラの事を思うと、頭が痛くなるし、息が苦しくなる。何なんだ、これは? 以前はこんな事無かったのに。何時から、こうなった?
「大丈夫か? 早く薬を買って飲もう」
「…そうですね。ああ、生徒会長は買わなくても良いですよ。私が買いますから、それをどうぞ」
どうせ大量に買うんだから、一つや二つあげても構わない。生徒会長はそんなに胃痛に悩まされるタチじゃないだろ、多分。生徒会長が手にしていた胃薬を奪って俺がそう言えば、何とも言えない顔をした。何だかな。クールな生徒会長様だろうに、この間から顔が崩れてばかりだな? まあ、まだ学生なんだし、色んな表情を見せても良いだろう。将来は社畜になるんだろうし。ありがとうサービス残業、今日も栄養ドリンクが美味いとか言うんだろうな。
会計を済ませて店を出て、さて何処で薬を飲もうかと歩きながら、そんな事を思っていたら。
「…何か、失礼な事を考えていないか?」
「いいえ? あ、あちらのカフェで休みましょうか」
生徒会長がじとりと眼鏡を光らせて睨んで来たから、俺は慌てて視界に入ったカフェを指差して歩き出した。勘の良い奴め。
そこはテラスのある店で、食べ物の匂いに胃袋が暴れ出しそうになった俺達は、閑散としたテラス席を希望して、そこへと案内して貰った。二人共アイスレモンティーを注文して、先に運ばれて来た水で胃薬を飲んだ。
「しかし、君がああ云う店を知っていたとは意外だった」
胃薬を飲んだ後に軽く胃を擦りながら話す生徒会長に、俺は軽く肩を竦める。
「私だって、それくらいは知っていますよ。何時かは、学生向けの店を出したいと思っていますしね」
家の商会も、セレブ相手じゃなくて学生向け…まあ、誰もが気軽に利用出来る店を出すべきなんだ。この王都では良いとしても、地方じゃあ、なかなか難しいからな。憧れのあの店が手の届く処に! ってなれば、更に客も増えると思うんだけどな。思うけど、王家御用達って看板が邪魔をしているのか、思い切った事が出来ないのが現状だ。ぬるぬるとゆるゆると、それだけに甘んじていたら駄目だろうって、思っていても、結局は俺もそれに倣って行くんだろうな。誰か、ガツンと新しい風を吹き込む奴が居てくれたらなあ。
カランカランと、運ばれて来たアイスレモンティーの氷をストローでかき混ぜながら、俺は自嘲する。
こんな事を思っていても、実行出来ないのが俺だ。
用意されたレールの上を歩くだけ。
新しい風を吹き込む度胸も勇気も無い。
こんな俺だから、メゴロウも愛想を尽かしたのだろう。
「…そうか。処で、未だ勃起はしないのか?」
「ぶぼっ!?」
下へ下へと沈んで行く俺を叱咤しようとしたのか、励まそうとしたのかは解らないが、生徒会長のその言葉に、ストローを咥えていた口から盛大に紅茶が噴き出した。ボコッとグラスの中の紅茶も泡立つ。
「俺なりに考えたんだが、君が勃起しない原因は、胃痛の様に精神的な物だと思う。が、恋人である彼の事を想えば勃起しない現状の方が好ましいのではないかと思える。勃起しないのであれば子を成す事は出来ないから、君は異性と結婚する必要も無いし家を継ぐ必要も無いだろう。家は養子を迎えてその子に継がせれば良いと思う」
いや、いきなり何を言ってるんだ!?
淡々と言っているが、その顔は真っ赤だぞ!?
てか、何が何だって!?
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