攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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攻略されていたのは、俺

【23】

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「先日、話したばかりですよね? 私は、メゴロウに嫌われる訳には行かないのです。メゴロウと仲良くすれば、死なない。メゴロウと仲良くしていれば、いざヒロインが私を断罪しようとしたとしても、メゴロウが止めてくれるでしょう?」

 うん、メゴロウなら、絶対にヒロインを止めてくれる筈だ。それがウーパールーパーだろうと、ブコだろうと、或いは、他の知らないヒロインが出て来たとしても。

「…あ…でも…大嫌いだと言われたのでした…」

 今にも泣き出しそうだった…。泣かせたい訳じゃないのに…。あんな顔をさせたかった訳じゃないのに…。

 しょんぼりと項垂れた俺の耳に、生徒会長の呆れた様な声が聞こえた。

「…だから、何故、君は…そうなんだ…」

 顔を上げれば、生徒会長は頭をソファーの背凭れの上に乗せていて、天井を見上げていた。

 …首凝るぞ、それ。

「…自覚を促そうとあそこまでしたのに…。…更には自分で叫んでいて、何故、気付かない…。…本当に…苦労する…」

 な、何だよ?
 何の自覚だよ?

「…まあ…だが…もう、時間の問題、か?」

 だから、何なんだよ?
 また、一人でブツブツ言って、納得するなよ。

「…君の気持ちは解った。今の事を素直にメゴロウに話せば良い」

 は?
 俺の気持ち?

「…今の、とは…?」

 ちんこ触れって奴の事か?

「…いや…そんな目で見るな。食べられても文句は言えないぞ。ほら、もう寝ろ。子供はおやすみの時間だ」

「は?」

 どんな目だよ?
 食べるって何だ?
 てか、子供?

 しかし、首を傾げても、生徒会長は天井を見たまま、しっしっと手を振るだけで、何も答える気は無いのか、俺は『お先に失礼します』と、ソファーから立ち上がり、ゲストルームへと足を向けた。

「…疲れた…」

 布団を捲って、ベッドの上へと倒れ込んで、開口一番出た言葉は、それだった。

 …怒涛の一日だったな…。
 
 てか、何で生徒会長はちんこ触らせようとしたんだ? 俺が、男のちんこ触って喜ぶ人間に見えたのか? そんな訳あるか。俺がメゴロウのちんこを触ろうとしたのは、自家発電の邪魔をした罪悪感からだし、大体、メゴロウのちんこは何時も、俺の尻に入っているんだ。それと比べたら、触るぐらい屁でもないだろう。あいつのちんこは特別なんだ。他のちんこと一緒にするなよな。
 まあ、とにかく。
 明日は…明日こそはメゴロウに謝って、生徒会長のちんこは触りたくないから、お前のちんこを触らせ…いや、違う違うそうじゃない。いや? 生徒会長の口振りからするとそうなのか? でも、明日には自家発電終わっているだろう? いや、連続でイケるのか? まあ、良いや…とにかく疲れたから寝よう…頑張れ、明日の俺…。

 ◇

「…ああ…。…早い方が良いからな。準備は?」

 …んあ…?

「…ばっちり、おっけー。集音は………朝から…………が待機で、放送室は…………」

 ボソボソと…生徒会長と…誰だ…? 何か…チャラい声が聞こえる…な…?

「…ん…?」

 モゾモゾと布団の中から顔を出して、ベッドヘッドのスペースにある時計に、俺は手を伸ばす。時計の針は、五時をちょっと回った処だった。早起きだな、おい。メゴロウと変わらないじゃないか。
 目が覚めたのに、寝ているのもあれだし、聞かれたら拙い話なら、俺が起きてるってアピールした方が良いよな?
 そう思った俺は身体を起こして、ベッドの脇にあるスリッパに足を通して、パタパタとわざと音を立てながら歩いて、ゲストルームのドアを開けた。

「…おはようございます…」

 すぐ目の前には、昨日俺が座ったソファーがあって、そこにはピンク色のふわふわな後頭が見えた。その向こうに生徒会長の顔が見える。流石、生徒会長。もうピシッと制服を着てるよ。まあ、ブレザーは着ていないが。

「ああ、おはよう。早いな」

 俺を見た生徒会長が、眉一つ動かさないで、返事をして来る。昨日の、笑い涙の後なんて見えやしない。可愛くない奴め。
 
「おはよー、ケタちゃん」

 そのすぐ後で、ピンク頭が振り返って来て、ひらひらと手を振りながら言って来た言葉に、俺は固まってしまった。

 ケ…タ……だと…?
 何だ、このピンク頭。チャラいのは声や髪の色だけじゃなく、その頭の中身もチャラいのか?

「あ、無にならないで。ゴメンゴメン。じゃ、俺、行くわ。また後で。じゃあね、ケタちゃん」

 おい、何、投げキッスして来るんだ。止めろ。男のキスなんか要らないぞ。

「眠れたか?」

 ピンク頭が部屋から出て行った後で、生徒会長が俺にそう聞いて来た。

「…ええ…ありがとうございました…。あの…今の方は…?」

 何か、何処かで見た様な気がするんだが…何処でだ?

「ああ、書記だ」

 …ショキ?

「…生徒会の書記だ」

 首を傾げた俺に、生徒会長がご丁寧に言い直して来た。

「え、あれ…あ、いや、あの方がですか!?」

 本当に実在したのかよ、生徒会役員! てか、書記なら会議の時とかに居た筈だよな!? 記憶にないぞ!?

「まあ、普段は表に出て来ないからな」

「は?」

「生徒達の動向を知るのに、顔を知られるのは拙いだろう? だから、俺以外の役員の顔を知るのは、俺と一部の教師だけだ」

 何処の隠密部隊だよっ!?
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