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番外編・祭
特別任務【序】
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「は…我が隊に特別任務ですか?」
朝の司令室にて、高梨は重厚な机を挟んで椅子に座る五十嵐からの言葉に目を瞬かせた。
「ええ、そうです。日程は後程知らせますが、三日間程と思って欲しい。昨今、保養所と云う物が出来て来て、私達、朱雀もそれを用意したのは知っていますよね? ですが、利用者が居ないのが現状です。そこで、一般開放しようと云う話があがりましてね。その為に、良い処、不便な処を実際に利用して貰って、その報告書を…」
五十嵐の言葉に高梨は頷く。保養所とは、企業等がそこに勤める者達に対して用意した療養場所みたいな者だ。日頃の疲れを癒やす為に、のんびりと過ごして欲しいと。温泉地等にあるのが人気だとされている。そして、朱雀のそれも、温泉地にあるのだが。…あるのだが。
「お断りします」
高梨は深く頭を下げて、踵を返した。
…あるのだが、それは人里離れた山の中にあった。当然、管理等は行き届いてはいない。療養を目的とするのに、先ず、妖の脅威と戦わなければならない。誰が好き好んで行くと云うのか。
「待ちなさい! これは任務です! 貴方に断る権限はありません!」
「…っち…」
「舌打ち!? 上司である私に対して舌打ちですか!?」
舌打ちもしたくなるだろう。三日程と五十嵐は口にした。それは、泊まりになると云う事だ。即ちそれは、その間、雪緒を一人にしなくてはならないと云う事を意味する。そんな事を、この雪緒馬鹿の高梨が出来る筈も無い。妖の脅威よりも、そちらの方が高梨は重要なのだった。
「これは失礼をしました。それは特段、我が隊で無くとも務まる任務です。そうです、第一番隊が適任かと思われますが如何なものでしょうか? 彼等ならば、客観的に判断してくれるでしょう」
そう。優秀な人材ばかりが集まる第一番隊ならば、何の贔屓も無く淡々と利用した結果を報告するだろう。彼等以上の適任者はいまいと、高梨は話を締め括り、今度こそ部屋を出ようと踵を返すが。
「…家族同伴…」
ぽそりと呟いた五十嵐の言葉に、高梨の足がピタリと止まる。
「…雪は未だですが、雪見風呂等も良いですねえ…」
ゆっくりと高梨が五十嵐を振り返れば、五十嵐は静かな笑みを浮かべ椅子から立ち上がり、窓の傍へと歩いて行きながら、その向こうに広がる青空を見ながら呟く。
「…街の喧騒から離れ、ゆったりとした時間を過ごすのも悪くはない。凍った空に浮かぶ月…庭で焚き火を熾し、魚や肉を焼きながら食べる…何とも風流だと思いませんか? …愛しい人と暖を取りながら夜を語り合う…素晴らしいとは思いませんか…?」
再び五十嵐と向かい合って、高梨が咳払いを一つ。
「…何とも素晴らしい提案ですね。第一番隊の皆、とても喜ぶと思います。是非、そうしてあげて下さい。それでは、自分は朝の会議がありま」
無表情で高梨が言い、今度こそ部屋を後にしようとしたら、五十嵐が後ろからその肩をがっしりと掴んで来た。
「何が不満なんですかっ!? 第一番隊は皆独身だと知っているでしょう!? 雪緒君を連れて行ってあげたいとは思わないんですかっ!?」
五十嵐が目を見開いて叫べば、高梨も負けじとその細い目を見開いて声を張り上げる。
「ですから! あんな妖が待つ山奥! 誰が喜んで行くと思うんですか!? そんな危険な場所に雪緒を連れて行く筈が無いでしょう!?」
「ああ、解りました、解りましたよっ!! 第一番隊には既に声を掛けて断られていましてねっ! 二番、三番も以下同文…は、置いといてっ!! 山奥にある保養所周りの妖の駆逐を命じる! 君に拒否権は無い! 期間は三日から五日に延長! 早々に任務を終わらせれば、後は自由にしてくれて構わない! ゆっくりと温泉にでも浸かって逆上せれば良い! 遊びながら給金が発生するんですよ!? これでも尚断るのでしたら杜川前司令を呼びますからね!!」
「何処の子供だ――――――――っ!!」
上司だと云う事を忘れて、高梨は年々杜川に似て来た五十嵐に向かって力の限りに叫んだ。
朝の司令室にて、高梨は重厚な机を挟んで椅子に座る五十嵐からの言葉に目を瞬かせた。
「ええ、そうです。日程は後程知らせますが、三日間程と思って欲しい。昨今、保養所と云う物が出来て来て、私達、朱雀もそれを用意したのは知っていますよね? ですが、利用者が居ないのが現状です。そこで、一般開放しようと云う話があがりましてね。その為に、良い処、不便な処を実際に利用して貰って、その報告書を…」
五十嵐の言葉に高梨は頷く。保養所とは、企業等がそこに勤める者達に対して用意した療養場所みたいな者だ。日頃の疲れを癒やす為に、のんびりと過ごして欲しいと。温泉地等にあるのが人気だとされている。そして、朱雀のそれも、温泉地にあるのだが。…あるのだが。
「お断りします」
高梨は深く頭を下げて、踵を返した。
…あるのだが、それは人里離れた山の中にあった。当然、管理等は行き届いてはいない。療養を目的とするのに、先ず、妖の脅威と戦わなければならない。誰が好き好んで行くと云うのか。
「待ちなさい! これは任務です! 貴方に断る権限はありません!」
「…っち…」
「舌打ち!? 上司である私に対して舌打ちですか!?」
舌打ちもしたくなるだろう。三日程と五十嵐は口にした。それは、泊まりになると云う事だ。即ちそれは、その間、雪緒を一人にしなくてはならないと云う事を意味する。そんな事を、この雪緒馬鹿の高梨が出来る筈も無い。妖の脅威よりも、そちらの方が高梨は重要なのだった。
「これは失礼をしました。それは特段、我が隊で無くとも務まる任務です。そうです、第一番隊が適任かと思われますが如何なものでしょうか? 彼等ならば、客観的に判断してくれるでしょう」
そう。優秀な人材ばかりが集まる第一番隊ならば、何の贔屓も無く淡々と利用した結果を報告するだろう。彼等以上の適任者はいまいと、高梨は話を締め括り、今度こそ部屋を出ようと踵を返すが。
「…家族同伴…」
ぽそりと呟いた五十嵐の言葉に、高梨の足がピタリと止まる。
「…雪は未だですが、雪見風呂等も良いですねえ…」
ゆっくりと高梨が五十嵐を振り返れば、五十嵐は静かな笑みを浮かべ椅子から立ち上がり、窓の傍へと歩いて行きながら、その向こうに広がる青空を見ながら呟く。
「…街の喧騒から離れ、ゆったりとした時間を過ごすのも悪くはない。凍った空に浮かぶ月…庭で焚き火を熾し、魚や肉を焼きながら食べる…何とも風流だと思いませんか? …愛しい人と暖を取りながら夜を語り合う…素晴らしいとは思いませんか…?」
再び五十嵐と向かい合って、高梨が咳払いを一つ。
「…何とも素晴らしい提案ですね。第一番隊の皆、とても喜ぶと思います。是非、そうしてあげて下さい。それでは、自分は朝の会議がありま」
無表情で高梨が言い、今度こそ部屋を後にしようとしたら、五十嵐が後ろからその肩をがっしりと掴んで来た。
「何が不満なんですかっ!? 第一番隊は皆独身だと知っているでしょう!? 雪緒君を連れて行ってあげたいとは思わないんですかっ!?」
五十嵐が目を見開いて叫べば、高梨も負けじとその細い目を見開いて声を張り上げる。
「ですから! あんな妖が待つ山奥! 誰が喜んで行くと思うんですか!? そんな危険な場所に雪緒を連れて行く筈が無いでしょう!?」
「ああ、解りました、解りましたよっ!! 第一番隊には既に声を掛けて断られていましてねっ! 二番、三番も以下同文…は、置いといてっ!! 山奥にある保養所周りの妖の駆逐を命じる! 君に拒否権は無い! 期間は三日から五日に延長! 早々に任務を終わらせれば、後は自由にしてくれて構わない! ゆっくりと温泉にでも浸かって逆上せれば良い! 遊びながら給金が発生するんですよ!? これでも尚断るのでしたら杜川前司令を呼びますからね!!」
「何処の子供だ――――――――っ!!」
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