寝癖と塩と金平糖

三冬月マヨ

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番外編・祭

特別任務【一】

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「と、云う訳で日程は未だ不明だが、特別任務に当たる事になった。これは野外訓練だと思え。各々個々の能力を上げる良い機会だ。周りには何も無いから好きなだけ暴れれば良い」

 第十一番隊に割り当てられた部屋に、隊員を集めて目を鋭く細めて高梨が放つ言葉に、若干名を残して皆が溜め息を溢した。

「…なあ…ゆかりん…それってさ、新月にぶつけて来るんじゃねーか?」

「勤務中だ高梨と呼べ。…それは俺も思う。普段は出て来ないあやかしも動くだろうからな。一網打尽に出来る良い機会なのは間違い無い。今月の新月は…二十三日か…恐らくその日か、或いは前日に日程は組まれるだろう」

 皆を代表して、天野がそれを高梨にぶつければ、高梨はさもありなんと頷く。

「うへぇ。クリスマスにぶつかるじゃねぇかよ。嫁さんと美味い飯を食いに行く約束があるのに」

「温泉旅行に切り替えろ」

 隊員の一人がそう言えば、高梨はそちらを一瞥して惨い一言を放った。

「ひでぇーっ!!」

「妖を早々に片付ければ、後は休暇だ。日蝕を経験した俺達だ。楽勝だろう」

 と、高梨は口にするが、それは方便だ。山にどれたけの妖が居るのかは解らない。討ち漏らしもあるだろう。保養所の周りが片付いても、交代で見張り等を立てる予定だ。また家族同伴との事だから、炊き出しに人員を割く必要も無い。討伐に集中出来るのも有難い。

「ああ、楠」

「はい?」

 不意に名を呼ばれて、首にある白い襟巻きを弄っていた優士ゆうじの手が止まった。

「治療隊も勿論連れて行くが、それとは別に橘を連れて行く。いずれ、此処に戻って来るんだ。新月時の実戦経験を積ませたい。構わないな?」

「…何故俺に…。津山さんに話は?」

 高梨の言葉に優士は僅かに眉を動かす。

「後から話すより、今話した方が良いだろう。津山にはこれから話す。とにかく、家族の同伴を許可されてる。連れて行く気がある者は今日中に話をして返事を貰って来い」

 まあ、確かにそれもそうかと優士は小さく頷き、再び襟巻きを指先で弄り出した。

(…温泉か。小さい時に瑞樹みずきの家族と一緒に行って以来だな…)

「つきとを連れてっても良いのか!?」

 そっと目を細める優士の耳に元気なせいの声が飛び込んで来た。

「構わんが、まだ学校があるのでは無いか?」

「休ませるに決まってんだろ!」

「……………胸を張って言うな…」

「…先生は無理よね…」

 胸を張る星の隣で、寂しそうに瑠璃子るりこがぽそっと呟くのが聞こえて、高梨は僅かに目を見開いた。

(…そうだ…。学校は未だ長期休暇には入らない…雪緒ゆきおは首を縦には振らんだろうな…)

 しかし、受けてしまった以上、もう引き返す事は出来ない。小さく高梨は溜め息を零すのだった。

 ◇

「と、これは画期的な代物なのです! これ以上、子を増やしたくない。でも、まぐわいたい! そんな思いを実現した物なのです」

(…何だこれ…)

 津山が大切な話があるからと、一般病棟の勤務に入っていない朱雀の治療隊員を会議室に集めたと思ったら、何やら風船らしき物を手にして力説が始まった。色の無い、いや、何処か濁った様な白い風船の様な物を手に、これでまた歴史は変わるとか、中々の勢いで話している。

「精液をこれが受け止めてくれますので、慌てて出て行かなくて良いのです」

(…何か…凄い事を話してる気がする…)

 朱雀病棟の一室にて、瑞樹はただ遠い目をしてその話を聞いていた。

(…まあ…俺達は男だし…関係無いよな…)

「感染症の予防にもなりますし、妊娠を望まないのであれば、必ず着用して下さいね。私達の中にそれを強いる者が居ないとは思いますが…悲しい事に堕胎があるのは事実なのですから…」

 津山の声が低く沈む。生命いのちを預かる職に就いている者として、その事実は如何ともし難い処だ。誰もが望んで堕胎をする訳では無いのも知って居る。知っては居るのだが…。

「ああ、津山ここに居たのか。高梨がお前に話があるってよー。備品取りに行くっつったら伝言頼まれたわ。橘君も一緒にだってよ」

「ああ、ありがとうございます、須藤さん」

「俺も?」

 沈んでしまった空気の中で、ひょっこりと扉を開けて、そこから笑顔を覗かせる須藤に津山が礼を言い、瑞樹はただ首を傾げた。
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