天才鬼才が集う世界で

凍銅つらら

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天才鬼才の集う世界で

凡人

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ーー零、何かひとつに集中して打ち込めば上手くなるはずだ。


ーー零、お前はすぐ諦める。だからいつまでも中途半端なんだ。


ーー零、お前にも何かやりたいことがあるだろう?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 夕暮れに差しかかる学校の教室、チャイムの音と同時に草薙零は机に付けていた顔を起き上がらせる。



「はぁ、嫌な夢を見た……」


 眠気を押さえ込んだ虚ろな瞳を軽く擦りながら、学生は呟く。



「……帰るか」


 何の部活にも入っていない零は当然ながらチャイムが鳴り終わると自宅への帰路へ着く。この学校で部活に入っていない者は結構珍しい。

 どの部活も力を入れており、各々毎年優秀な成績を修めている。その代わり学業の偏差値はそれほど高くない。



「おぅ、草薙。そろそろ陸上部に入らないか?」


 学校の校門を抜けようとしているとき、校門の横に立っていた陸上部の顧問の先生に声を掛けられる。


「何度も断ってるはずっすよ。俺はどの部活にも入りませんから」


 零はしつこいなと内心悪態吐きつつ、断る。何度も断っているはずなのになかなか諦めてくれない。


「そうか……お前はそこそこ出来る奴だと思うんだがな……」


 陸上部の顧問はそう言いながら、グラウンドの方へと歩き去っていく。


 「そこそこしか出来ないんだよ……俺は……」


 そんな零の呟きは去っていく陸上部の顧問には聞こえなかった。







 夕暮れの帰り道、零はいつものように思いふける。
 これまで幼いときから英才教育を受けてきた。勉学はもちろんのことピアノにサッカー、野球、もちろん陸上もやったことはある。しかし、その何れも平均並みであり、突飛する所は何一つ無かった。

 そして高校に入り少し経ったとき、全て悟った。


ーー俺には才能がない。


「才能が無いやつはどんなに努力しようと天才には勝てない」


 これが零が見つけた最終的な答えだ。確かに才能を持つ者が努力していないとは思わない。しかし、最終的に各々の頂点へ登れるのは才能があるやつだけだ。


「はぁ…つまんねぇな」


 そんな呟きを吐いた時、不意にクラクションがなる。零は驚きその音がした方向を見ると、トラックが自分目掛け突っ込んでくるのが分かった。


「……っ!」


 本当に死が突然やってくるとき、人は何も言えず硬直するしかできないらしい。零は何を思うことなく真っ白な頭で突然の死を迎えたのだった。





 気が付くと知らない天井が目に映った。目線の先には蛍光灯のような灯りではなく、球体のような物体が光を放って宙に浮いていた。

 なんだよこれ……と驚き、零は声を放とうとするが上手く喋れない。言葉の代わりに産声のような声を発してしまう。


「はぅばぁ~」 


 ーーちょっと待て、これは精神的にきついぞ……


「どうしたんですか~レイ様」


 自分の発した声を聞き付けたのか、扉が開きそこからメイド服姿の女性が入ってきた。

ーー猫耳だと……


 そう入ってきた女性の頭の上には到底飾り物には見えないほどリアルな猫耳が生えていた。


 そして零は思考を巡らす、宙に浮かんだ光を放つ球体、赤子の姿になった自分、猫耳を生やしたメイド。


ーー異世界……転生……だと


 たどり着いた答えに零は情緒が不安定となり、高ぶった感情を押さえることが出来なくなり、大声で泣き叫ぶのだった。
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