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新しい世界の始まり
リチェリーの秘密
しおりを挟む陽の光で目を覚ましたゼノン。
「んん・・・・」
ベットの上で寝たまま軽く体を伸ばす。
ふにゃりと柔らかい何かに指先が触れた。
狐の毛並みにして随分・・・・
「ん?」
反対側の手でそっと毛布をどかしてみる。
「え・・・・・」
丸まってベットの上で寝ていたのは銀狐でも、昨日のナイスバディな女性もなく・・・。
「・・・・・・」
そのまま固まるゼノン。
毛布を剥がされ外気が寒かったのかその子はもぞりと身じろぐ。
『のぅ、ゼノンよ、取り敢えず毛布・・・掛けておいた方が良いと思うのじゃが・・・』
少女の声が聞こえ、ゼノンは慌てて毛布を戻し、ベットから離れた。
「・・・・・・・」
(僕は何も見なかった・・・何も見てない・・!僕は・・ッ)
『ゼノン、また出ておる・・“俺”ではなかったのかの?』
(ぁ・・・そうだった・・・つい・・・・)
屈強な冒険者の中にいて、“僕”なんて言ってたら嘗められるから一人称を“俺”に治す努力をしている最中だ、しかし慣れとは恐ろしい物で、ついつい気付くと出てしまっていたりする。
(・・・・って、違うよ!これ!・・・どういう事だろう?!)
『まぁ。そういうことなのだろうさ』
(え?そういうことって、どういう事?!!訳が分からないよ?!)
ゼノンの隣で気持ちよさそうに寝ていたのは見た目が10代くらいの少女・・・いや幼女だったのだ。しかも全裸。
勿論狐耳とふさふさの尻尾はついていた。
(化かされてるの?)
「・・・・・・・」
取り敢えず、着替えを済ませ、すぐ出かけられるように準備はしておく。
暫くするとムクリと起き上がったリチェリーは、んーっと背伸びをしてから、思い出したように相部屋していたゼノンに視線を向けた。
「ぁ・・・・あー・・・・」
「・・・・・おはよう・・・」
「・・・おはよう・・・・えっと・・・・・・」
(どうしよう?!いきなり見たでしょ?!とか言われたら?!!)
内心バクバクだが、表面上ではゼノンは冷静を装っていた。
しかし帰って来た答えは予想外な物だった。
「ごめんね・・・悪気はなかったんだけどね」
「?」
「子供のこの姿、これが本来の私なんだ・・・・」
「え?」
リチェリーの方に目を向けてから、ゼノンは慌てて再び視線を外した。
リチェリーは裸のまま、隠す素振りもなく話を続けていた。
「お金無いと何も出来ないでしょう?こんな子供じゃ登録もダンジョンへの冒険も出来ないからさぁ」
苦笑しながらリチェリーは続ける。
「大人の女性の姿になって、一緒に冒険してくれる人を探してた時に・・・ゼノンを見つけたわけ」
「・・・・・・」
「失望した?本当はこんな幼い姿で・・・・・騙してて・・・パーティーも解散する?」
「しない・・・姿は関係ない・・・」
ゼノンは答える。
「・・・・どうして・・・騙してたのに・・・本当に・・・いいの?」
(僕も騙しているようなもんだし・・・中身はこんなにも・・・臆病で弱いし)
「これから、信頼しあえる仲間になっていけばいい・・・」
「!!は・・・初めて言われた!!ありがとう!ゼノン!」
駆け寄って抱きつこうとするリチェリーを気配で察知したゼノンはヒラリとそれを躱す。
「ッまずは!服を着ろ!!」
(幼女とは言え、流石に全裸の女の子に抱きつかれたら自分を保てそうにない・・・)
「あ、ごめんね・・・つい嬉しくてッ」
リチェリーいそいそと戻り、クローゼットから新しい下着や服を取り出してから着替える。
再び視線を戻すと昨日出会った時の美女の姿で、着替え終わっていた。
ゼノンの視線に気付いたリチェリーが照れくさそうに微笑みながら答える。
「この姿の方が、何かと便利なのよ」
まぁ、確かに冒険に行くのに子供連れ回してるように見えるのは頂けない。むしろ色々不味い。
「意識が途切れちゃうと、変化も解けちゃうんだけどね」
「・・・・・」
つまり昨晩寝る段階でこうなることは分かっていたと言うことだろう。
試していたのだろう。幼女の姿を受け入れてくれるか拒絶するのかを。
「姿は関係ないと、言ったはずだ・・・・俺はどちらでも気にしない」
(出来れば狐になってて欲しいけど・・・・)
「・・・・ゼノンって・・・まぁいいわ、朝食を食べてダンジョンへ行こう!」
「ああ」
(何を言いかけたんだろう?!凄い気になるんだけど!!)
『ゼノン、気にしたら負けなのじゃ!』
2人は宿の1階で軽く食事を済ませて、湿地の泥沼ダンジョンへ向けて歩き出した。
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