星の守護龍 ~覚醒と混沌へのカウントダウン~

雪月 光

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1章~石版の伝承~

16.~レットル神殿の戦い~

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1章は何か駆け足で冒険が進んでいく印象がじぶんでもあるんですが、色々と申し訳ないです。
色々トラブル引っ張ってるイメージで@@;



**************************


朝ガイトたちに礼をいい、まだ寝ているリアンを抱え歩き出した。
羽根はまだ痛むけど、それほどしんどくは無い。
急いでレットル神殿に向かう。
神殿に近付くに連れ生い茂った木々の間に古代から存在するという、遺跡の残骸が目立つようになってくる。
森を更に奥へと足を踏み入れていく。
崖のような突き出た岩肌に、大きな蒼いつくりの壊れた扉。全盛期はとても立派だったに違いない。
精霊はもうすんではいないのだろう、気配がしない。
扉をくぐり中に入ると、ひんやりとした冷たい空気が包んでいた。

「…」

何かに導かれるように奥へと入っていく。
所々の崩れた遺跡の内部に射す日の光がなんとも美しい。
1番奥の広い部屋に出ると、麻衣の姿が見えた。

「麻衣!」

声に反応して麻衣はジンを振り返った。けどすぐに戸惑ったような表情になった。

「…麻衣?」

静かにゆっくりと近付いていく。
敵の罠だろうが何だろうが、関係ない。
麻衣に触れると、麻衣は黒い影となってきえた。

「?!」

「本当に引っかかるとは…随分と、情けなくなったねぇ?」

声のほうを睨むようにして振り返った。
赤い短髪の女が、愉快そうに遺跡の像の上に座って、罠に嵌ったジンを見据えていた。

「…麻衣は何処だ?」

「…他人より自分のこと心配したらどうだい?」

女は不適に笑いながら、パチンと指を鳴らした。

「私はユシカってんだ、よろしく。まぁ、覚える必要無いよ?此処であんた死ぬんだからねぇ」

2人の男がジンの前に立ちふさがる。
1人の男は手に刃物を持っているようで、ジンに歩み寄ってきた。

「…」

人間…のようだけど、人間じゃない。
魔族でもない、こいつらなんだ?
男はジンに刃物を向けるどころか自分の手首をナイフで切りつけた。

「?!」

鮮血があたりに飛び散り、ジンにも掛かった。

「…なんのつもりだ?」

ジンは顔についた血を服の袖で拭いながら、男を睨んだ。
ユシカはクスクス笑いながら戦いの結末を見据える。
何の感情も読み取れない目に、嫌気が差す。
人形を相手にしているようで腹が立つ。
男はなおも自分を切りつけてはその血をジンにかける。

「…いいかげんにしろ‥」

空間から剣を取り出し男を切りつけた。
剣は深々と腹部に突き刺さり、男の体を貫いていた。
ゴボッと音を立てて口から血が溢れた。

「!」

「気付いたかい?そいつの血は触れたものの分質を変化させるのさ」

ユシカが口を挟んだ。
持っていた剣は錆びて砕け地に落ちた。
剣を握っていた手も、血だまりに立っていた足も、自分の体ではないように重みを感じる。

「…‥ッ‥」

「石版を入れた人間は面白い力を持っているだろう?」

「!」

「ただ、石版に飲まれて自我を無くすのが多くてね、ほとんど使い捨てだけどね」

ユシカは床に転がっている男の死体に視線を向けて笑いながら言った。

「…最悪だな、お前ら」

「最高のほめ言葉だよ、魔王様」

ユシカが言うとジンは僅かに眉を顰めた。
魔王と知る者は少ない、確かに噂はこの世界中に広がっている。

”6枚翼の深紅の双眸を持つ魔族が魔王”と、だけど今は翼も出してなければ、深紅の双眸でもない。この姿で魔王と呼ぶのは、城で雇っていたものと信頼できる側近たちだけ…。

「…何故、俺が魔王だと?」

「おっと、お喋りが過ぎたようだね」

わざとらしくユシカは口元に笑みを浮かべて肩を竦めて見せた。
もう1人の男がジンに襲い掛かってきた。
どんな攻撃を持っているのか分からない以上迂闊に攻撃できない。
男の攻撃をかわしながら、観察するようにジッと男からは目を離さない。
男の左手がジンの服のすそに触れると服は一瞬で溶けておちた。

「…‥なるほど…」

左手に注意すればいいのか、触れると溶けてしまうようだ。
用心しながら、魔力を無駄に使わないように短剣を形成して応戦した。

「!?」

左手に用心しすぎていて注意力が散漫になっていたのだろう、男の右手がジンの首を掴んだ。
一瞬目の前が真っ白になった。

「がは…ッ」

一瞬何が起こったのか理解できなかった。
大きく目を見開いて、喉を掴んで離さない右手を退かそうと左手で男の右手を掴んだ。

「!?」

目の前で白い火花が激しく散った。

「あははは。そいつの右手は1000万ボルト以上の電気を瞬時に発生させるのさ」

ユシカはそうだねぇと考える素振りを見せてから面白そうに口を動かした。

「その目、あの方のために…潰しちゃいな!」

ユシカが言うあの方とは?
考える隙も与えずに男の左手がジンの視界にはいった。
右手は首を掴んだまま動けないように固定されて、体も痺れて指先一つろくに動かない。
男の左指が3本ジンの右目に深々と押し込まれていく。

熱い…深々と差し込まれた指が、まるで業火の炎でも押し付けられているかのようだ…。

「ッあ゛…ぁぁぁぁ‥ッ!!!」

熱い血の涙が頬を伝った。あまりの激痛に悲痛な悲鳴をあげる。
引き抜かれた男の左手には溶けて形の無くなった嘗ては目玉だっただろう残骸。
男の右手が光を帯びたのが見えた。

またあの電撃が来るのか…
ジンは持っていた短剣を自分の首を掴む男の右手に突き刺した。
痛みなど感じてないのだろう、男は顔色一つ変えずにその剣を抜き投げ捨てた。

「…これならどうだよ?」

男の目の前に痺れが取れてきた左手を翳した。
どっちの攻撃が早いか…先に仕掛けたほうが勝ちだろう。
赤い炎が舞うのとほぼ同時に白い火花が散った。

「ぐっ…」

ぐらぐらする頭を抱えてユシカを睨んだ。

「…なかなかやるじゃないか、そうだねぇ、褒美に教えてやるよ」

「?」

「あんたが探していた子は、この神殿の地下で寝ているんじゃないかい?」

麻衣…!ジンは思わず、床に視線を向けた。
もう1度ユシカがいた場所を見るとそこにはもうユシカの姿は無かった。

2人の男が倒れていたところには石版が2つ落ちているだけで、死体は跡形もなく消えていた。
石版を拾い、力を吸収してから、神殿の地下へ向かって足を進める。視界が片方だけだと平衡感覚がうまく定まらない。

ふらふらする足取りで階段を下りていく。
体の一部が体を離れたとしても形があれば、いくらでも修復はできる。例外もある、心臓や脳などの内臓腑は体から離されたら形があってもほとんど治らない。
そしてこの目もいくら魔力を補充しても、もう右目に光が戻ることは無い。

「…ぅッ…」

ズキズキと失ったはずの右目が疼く。耐えられずに足を止め右手を顔の右半面を覆うように乗せた。いまだ流れ出る血は止まっていない。

「…」

そのまま、ふらふらと長くて暗い階段を下りていく。
暫くすると広い部屋に出た。
祭壇が見える、此処で何かを祀っていたのだろう。

「!」

その祭壇の奥で横たわる影がみえた。
慌てて近付き、見慣れたその者の名を口にした。
僅かに身動ぎして閉じていた瞼を開けジンを見据えた。

「…ジン?」

「怪我は無いか?」

麻衣は静かに頷いた。
ジンはほっと安堵の息を吐きその場にしゃがみ込んだ。

「ジンの方が怪我してる…」

そう言いながらしゃがみ込むジンの前に座り込んだ。
顔の右半面を覆う赤い血と、体中の擦り傷。
麻衣はそっとジンの長い前髪をかき上げ、覗き込んでみる。

「…‥どうしたの?その右目」

硬く閉じられた瞼、流れるまだ温かい血。

「…心配要らない」

「‥みえてるの?」

その問いには静かに首を横に振り、苦笑してジンは立ち上がり、そしてそのまま麻衣に手を差し出す。
麻衣は黙ったまま素直にその手をとり立ち上がる。

「此処にくる途中に拾っておいた」

そういって差し出された3つの石版。
なぜか素直に喜べないけど、麻衣は黙ったままそれを受け取りバックに仕舞った。

「ジン」

「?」

「何か、私に言いたいことあるんじゃないの?」

「え?」

唐突に言われて戸惑ったような困惑した表情を麻衣に向けた。

「石版これ、あの人たちただの石だって、これでは使えないって言ってた」

ああ、なるほど…その話か。
契約は守る、両方とも…・。

…説明すれば納得してくれるだろうか?話すだけ話してみる価値はあるだろうな。

「…俺は同時に2つの契約をしている」

「今関係ある話?」

ジンは静かに頷く。

「1つは石版を、封印もしくは破壊すること‥」

「え、それじゃあ…」

言いかけたところで困惑した表情の麻衣がジンを見据えた。

「…石版は、破壊する、そしてもう1つの契約も遂行する」

「え…どうやって?」

「…石版の力が無くても、何とかしてみせるさ」

僅かに微笑んで麻衣の頭を撫でた。

「…大丈夫?」

「俺を誰だと思っている?」

「…魔王」

「信用するに値すると思うが?」

ニヤッと口元に笑みを刻んで麻衣を見据える。
それに力を奪わない石版なんか渡したら、あっという間に取り込まれてさっきの奴等みたいに心を無くした人形と成り果ててしまう。
不の感情に敏感だから、此処の世界のものは…。
さて、探し物は見つかった、このまま石版を集めに再び出かけようか…。
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