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1章~石版の伝承~
17.~灼熱の洞窟~
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2人はある情報を得て灼熱の砂漠、レイストにきていた。
「…流石に熱い…」
汗が額を伝わり頬を流れて落ちていく。
「…」
涼しそうな顔をしているジンはフラフラしている麻衣に視線を向けて苦笑した。
「大丈夫か?少しやす‥」
「大丈夫」
言い終える前に麻衣が遮るように言った。
麻衣はその後無言で歩いていく。
「……」
「!」
麻衣は頭からかぶせられたマントに触れ見上げた。
「…きてろ、水獣の魔力が練りこんである、少しはましだろう‥」
確かに触れるとひんやりとして冷たい。灼熱の太陽の熱も多少遮断されているようだ。
「ありがとぅ‥」
人間は弱い、周囲の環境に適応できてないし、何と言っても脆い。
魔族は、体の構造が周囲に適応できるようになっている。温度や土地など様々で環境適応力が高い。
現にジンは汗ひとつ掻いてないどころか涼しそうな顔で息ひとつ切らしてない。
「みぅ!」
突然ジンの頭の上からひょっこりとリアンが顔を出した。
「ジン、その子何?!」
「ん?ああ、まだ紹介してなかったな」
リアンを頭の上から取り抱きかかえて麻衣に見せた。
「可愛い…」
真ん丸い円らな黒い目に、ふわふわの毛と背中の羽根、長い耳と尻尾。
「リアンだ、こいつには随分救われた…」
優しい笑みをリアンに向ける。
「私麻衣、よろしくリアン」
リアンの小さな手の前に手を差し出してみる。
「みッ!」
麻衣の手の上に小さな手をちょんと乗せて鳴いた。
しぐさが可愛い…。
「そういえば、レイストの何処に行くっていったっけ?」
「…灼熱の洞窟」
灼熱の洞窟、古くから火龍が棲むといわれている伝説の洞窟。
そんな噂が流れるから神聖で危険な場所として、誰も近付こうなどと考える愚かな者はいない。
その洞窟の火龍が石版を持っていると風の精霊たちが情報をくれた。
灼熱の洞窟…。
2日前に立ち寄ったレイストの町でその名を口にしたら、皆怯えたように信じられないものでも見るような視線を麻衣たちに向けた。
命を粗末にするな等とも強く言われた。
麻衣はどんなところか知らない、ジンは何も詳しく語ってはくれないし。
不安げにジンを見上げた。
「…何を怯えている?」
心を見透かしたように、ジンは振り向きもせずに麻衣にいった。
麻衣はドキリと心臓が跳ね上がった。
「な、何も怯えてなんか…ッ」
内心を沈めるように、隠すように強気に言う。
不の感情や怒りなどは気が淀むから見てなくてもすぐに感じてわかる。
「…そうか」
あえてそれ以上追求はしない。
ひたすら歩く事、レイストの町から3日。
日陰で夜は休んだりもしたけど、熱い日中はほとんど歩きっぱなしだ。
「まだ着かないの?」
「もう少しだ」
流石に…限界が近い。喋る気力さえなくなってきた。
何かやたら熱くなってきた、立っているだけで汗が止まらないし、肌がヒリヒリする。
「ジン…」
「…みえた、あそこだ」
指を刺す先に暗くて大きな口をあけたような洞窟が見えた。
洞窟に行く手前に、今にも壊れそうな木の古い橋がある。
橋に近付くにつれ麻衣は血の気が引いていく気がした。
橋がまたぐ大地の裂け目の下を真っ赤な溶岩が流れている、時折噴き出す炎の溶岩を含んだ火柱。
「…‥ちょ、本気で此処わたる気なの?!」
「他に道は無い」
スタスタと前を行くジン。
「…ま、待って!」
慌てて追いかけてジンの後ろを震える足に鞭をうって橋の上を歩いた。
「ふぇッ?!」
「?!」
真ん中あたりを歩いていた時いきなり足元の木の板が壊れて、下に体が投げ出された。
咄嗟に反応したジンが溶岩に落下する麻衣の手を取り橋の上に引き上げた。
「…驚かすなよ…」
「お、驚いたのはこっちだもん…」
涙目でジンを見上げた。
「……」
溜息を吐き麻衣をどうにか立たせて橋を渡りきり、洞窟の中に足を踏み入れた。
洞窟の中は、意外に明るくて、そしてとても熱い。外の砂漠の比じゃなかった。
この洞窟は溶岩が固まって出来たものだ、とジンは辺りを見回しながら言った。
奥に進むにつれ、息が苦しくなるほどの熱を含んだ風、麻衣は苦痛そうに顔を歪めて咳き込んだ。
この熱風、吸い込むと喉や肺が焼けそうだ。
「麻衣」
「?」
「これを口に入れておくといい」
そういわれて手渡された青い小さな宝石。言われるままに口に入れてみると、喉が焼けそうだった熱風が嘘の様に冷たく感じられた。
「これって?」
「水精霊の涙だ、飲み込むなよ?」
貴重なんだからなと釘を刺されて、麻衣は静かに頷いた。
洞窟の奥へ行くと大きな窪み、裂けた剥き出しの大地からは溶岩が流れている。
『何用だ?』
声のするほうに視線を向けると、巨大な赤い体の龍が2人を観察でもするように首を上げ、赤い目を向けていた。
「石版が此処にあると聞いた、渡してもらいたい」
龍は僅かに目を細め、クククと喉を鳴らして笑った。
『何のために?あれは集めてはならないものだ』
「…だろうな」
『知っていて何故、わざわざ命を捨てに来たのだ?』
「この命、くれてやる気は無い」
ジンの左目がスゥと細められた。
龍も睨むような視線でジンと麻衣を見据えていた。
『ならば、チャンスをやろう』
「…チャンス?」
訝しげな表情でジンは龍を睨みつけた。
『そこの、女、これを飲み込めるか?』
麻衣の前に赤い小さな宝石が落ちた。
「?」
拾い上げてジッとそれを見つめてみると、宝石の中で赤い何かが渦を巻いているように見えた。
「…」
麻衣はそれを躊躇なく口に入れ飲み込んだ。
「!!」
大きく目を見開いて、口の端から唾液と共に青い宝石が転がった。
「麻衣?!」
様子のおかしい麻衣にジンが駆け寄った。
震える体、視線が定まらない目、激しい動悸。
「ッは‥ぁ…ッ」
「…貴様、麻衣に何を飲ませた?」
『チャンスを与えるといっただけだがな?』
「答えろ…」
腕の中で苦しむ麻衣の姿に、ジンは怒りの宿る深紅の瞳で龍を睨んだ。
バサッと6枚の漆黒の翼が大きく広げられ、熱い空気をも震撼させる魔力の渦があたりを取り巻き始めた。
「…もう1度問おう、麻衣に何を飲ませた?」
明らかな怒りの殺気があたりの魔力を更に増大させていく。
普通の魔物や人間なら、居るだけで押しつぶされて死んでしまうだろう。
『…火龍の宝玉だ』
渋々答えた龍にジンの怒りはいまだ収まらない。
火龍の宝玉、龍の力そのもので同時に力を引き出すものだ、命の次に龍が大切にしている物。
「人間に、火龍の宝玉なんて飲ませて、殺す気か?」
『…試したいだけだ、我の宝玉を使えし者かどうか…』
「……」
ジンは静かに麻衣のほうに視線を戻し、羽根で覆い外気を遠ざける。
「麻衣…」
意識があるかどうか名前を優しく呼んでみる。
「は…ぁ…ぅッ…」
どうやらまだ意識があるようだ。あまり時間が無い、このままだと体中焼かれて、その魂までも消えてしまう。
「麻衣…これを飲み込め、その苦痛が和らぐはずだ」
そう言って先ほどの青い宝玉を麻衣の口に入れたが、飲み込まれずにすぐに口から零れ落ちた。
「……」
仕方ない、ジンは自分の口にそれを入れて、麻衣の唇を塞いだ。舌を使って宝玉を麻衣の喉の奥へ押し込む。
「ぅッ…ん…ッ」
「…」
ゴクリと喉が音を立てて宝玉を受け入れた。
塞いでいた唇を離し、ぐったりした麻衣をそっと寝かせ、再び龍に視線を向けた。
「…さぁ、石版を渡してもらおうか?」
『…‥いいだろう、取れるのならな』
そういってジンの前に置かれたのは、赤い気泡のようなものに包まれた石版の欠片。
「これは?」
『悪用するものが触れれないように封印してある』
「…‥悪用する気は無い、封を解け」
『我には出来ない、先代がかけた封印だ』
ジンは黙ったまま龍を睨みつけ、溜息を吐いた。
これ以上何を言っても無駄なのだろう。
「…」
気泡のようなものに指を少し入れてみた。
「‥ッ!?」
あまりの熱と痛みに慌てて引き出し、触れた手を見ると、爪が溶け皮膚が一瞬で黒く焼けおち形が見る影も無くなっていた。
「…‥確かに、魔族や人間には有効な封印だな」
苦笑して石版が入っている気泡から目を離し、龍を見上げた。
痛めた指を舐め、周囲の魔力を取り込んで回復する。
指は元に戻ったが、これでは石版は手に入らない。片腕を失ってまではちょっと・・・
無駄足だったか…。
「う‥ん」
意識を取り戻した麻衣がジンと龍を見上げた。
「…ジ…ン?」
「大丈夫か?」
「あのね…青い石なくなってたんだけど…」
「……」
「私、飲み込んじゃった?貴重だって言ってたのに…ごめんね?」
これには溜息しか出ない、あんなに心配させて、第一声がこれか。
「…無事ならそれでいい、命よりは貴重じゃない」
溜息混じりに、照れくさそうに俯きながらジンは口にした。
「‥え‥ッ…あ、ありがとぅ…」
麻衣も照れくさそうに礼を言ってから、目の前の石版に目を向けた。
「石版、とらないの?」
「…少し問題があってな…」
「問題?」
不思議そうに麻衣はジンを見据えた。
「!」
『!』
ふーん?と鼻を鳴らしながら、麻衣は赤い気泡にズボッと手を入れ石版を手に取り引き抜いた。
「…取れたけど?」
麻衣は首を傾げながらジンと龍に視線を投げかけた。
「何とも、ないか?」
「え?」
入れた腕を引きよせ、ジンは確認するようにジッと見据えた。
傷1つ無い。
さっきの宝玉2つを飲み込んだからだろうか?
「はい」
石版をジンに差し出し、にっこり微笑んだ。
「……すまない」
石版を受け取り、その力を奪いまた麻衣に石版を渡した。
『用は済んだのだろう?』
龍が口にした、早く此処から消えろとでも言わんばかりに。
「…ああ、騒がせて悪かったな」
「ごめんね?」
『……気にすることは無い、ただ…女…』
「麻衣よ、女って呼ばないで、ちゃんと名前があるの」
『それは、すまなかった…我が宝玉をその身に宿しし者よ、麻衣汝が求めれば力を貸そう』
「?」
麻衣を連れジンは洞窟を後にした。
水と火の加護の宝玉をその身に宿して麻衣は再びジンと共に旅に出る。
「…流石に熱い…」
汗が額を伝わり頬を流れて落ちていく。
「…」
涼しそうな顔をしているジンはフラフラしている麻衣に視線を向けて苦笑した。
「大丈夫か?少しやす‥」
「大丈夫」
言い終える前に麻衣が遮るように言った。
麻衣はその後無言で歩いていく。
「……」
「!」
麻衣は頭からかぶせられたマントに触れ見上げた。
「…きてろ、水獣の魔力が練りこんである、少しはましだろう‥」
確かに触れるとひんやりとして冷たい。灼熱の太陽の熱も多少遮断されているようだ。
「ありがとぅ‥」
人間は弱い、周囲の環境に適応できてないし、何と言っても脆い。
魔族は、体の構造が周囲に適応できるようになっている。温度や土地など様々で環境適応力が高い。
現にジンは汗ひとつ掻いてないどころか涼しそうな顔で息ひとつ切らしてない。
「みぅ!」
突然ジンの頭の上からひょっこりとリアンが顔を出した。
「ジン、その子何?!」
「ん?ああ、まだ紹介してなかったな」
リアンを頭の上から取り抱きかかえて麻衣に見せた。
「可愛い…」
真ん丸い円らな黒い目に、ふわふわの毛と背中の羽根、長い耳と尻尾。
「リアンだ、こいつには随分救われた…」
優しい笑みをリアンに向ける。
「私麻衣、よろしくリアン」
リアンの小さな手の前に手を差し出してみる。
「みッ!」
麻衣の手の上に小さな手をちょんと乗せて鳴いた。
しぐさが可愛い…。
「そういえば、レイストの何処に行くっていったっけ?」
「…灼熱の洞窟」
灼熱の洞窟、古くから火龍が棲むといわれている伝説の洞窟。
そんな噂が流れるから神聖で危険な場所として、誰も近付こうなどと考える愚かな者はいない。
その洞窟の火龍が石版を持っていると風の精霊たちが情報をくれた。
灼熱の洞窟…。
2日前に立ち寄ったレイストの町でその名を口にしたら、皆怯えたように信じられないものでも見るような視線を麻衣たちに向けた。
命を粗末にするな等とも強く言われた。
麻衣はどんなところか知らない、ジンは何も詳しく語ってはくれないし。
不安げにジンを見上げた。
「…何を怯えている?」
心を見透かしたように、ジンは振り向きもせずに麻衣にいった。
麻衣はドキリと心臓が跳ね上がった。
「な、何も怯えてなんか…ッ」
内心を沈めるように、隠すように強気に言う。
不の感情や怒りなどは気が淀むから見てなくてもすぐに感じてわかる。
「…そうか」
あえてそれ以上追求はしない。
ひたすら歩く事、レイストの町から3日。
日陰で夜は休んだりもしたけど、熱い日中はほとんど歩きっぱなしだ。
「まだ着かないの?」
「もう少しだ」
流石に…限界が近い。喋る気力さえなくなってきた。
何かやたら熱くなってきた、立っているだけで汗が止まらないし、肌がヒリヒリする。
「ジン…」
「…みえた、あそこだ」
指を刺す先に暗くて大きな口をあけたような洞窟が見えた。
洞窟に行く手前に、今にも壊れそうな木の古い橋がある。
橋に近付くにつれ麻衣は血の気が引いていく気がした。
橋がまたぐ大地の裂け目の下を真っ赤な溶岩が流れている、時折噴き出す炎の溶岩を含んだ火柱。
「…‥ちょ、本気で此処わたる気なの?!」
「他に道は無い」
スタスタと前を行くジン。
「…ま、待って!」
慌てて追いかけてジンの後ろを震える足に鞭をうって橋の上を歩いた。
「ふぇッ?!」
「?!」
真ん中あたりを歩いていた時いきなり足元の木の板が壊れて、下に体が投げ出された。
咄嗟に反応したジンが溶岩に落下する麻衣の手を取り橋の上に引き上げた。
「…驚かすなよ…」
「お、驚いたのはこっちだもん…」
涙目でジンを見上げた。
「……」
溜息を吐き麻衣をどうにか立たせて橋を渡りきり、洞窟の中に足を踏み入れた。
洞窟の中は、意外に明るくて、そしてとても熱い。外の砂漠の比じゃなかった。
この洞窟は溶岩が固まって出来たものだ、とジンは辺りを見回しながら言った。
奥に進むにつれ、息が苦しくなるほどの熱を含んだ風、麻衣は苦痛そうに顔を歪めて咳き込んだ。
この熱風、吸い込むと喉や肺が焼けそうだ。
「麻衣」
「?」
「これを口に入れておくといい」
そういわれて手渡された青い小さな宝石。言われるままに口に入れてみると、喉が焼けそうだった熱風が嘘の様に冷たく感じられた。
「これって?」
「水精霊の涙だ、飲み込むなよ?」
貴重なんだからなと釘を刺されて、麻衣は静かに頷いた。
洞窟の奥へ行くと大きな窪み、裂けた剥き出しの大地からは溶岩が流れている。
『何用だ?』
声のするほうに視線を向けると、巨大な赤い体の龍が2人を観察でもするように首を上げ、赤い目を向けていた。
「石版が此処にあると聞いた、渡してもらいたい」
龍は僅かに目を細め、クククと喉を鳴らして笑った。
『何のために?あれは集めてはならないものだ』
「…だろうな」
『知っていて何故、わざわざ命を捨てに来たのだ?』
「この命、くれてやる気は無い」
ジンの左目がスゥと細められた。
龍も睨むような視線でジンと麻衣を見据えていた。
『ならば、チャンスをやろう』
「…チャンス?」
訝しげな表情でジンは龍を睨みつけた。
『そこの、女、これを飲み込めるか?』
麻衣の前に赤い小さな宝石が落ちた。
「?」
拾い上げてジッとそれを見つめてみると、宝石の中で赤い何かが渦を巻いているように見えた。
「…」
麻衣はそれを躊躇なく口に入れ飲み込んだ。
「!!」
大きく目を見開いて、口の端から唾液と共に青い宝石が転がった。
「麻衣?!」
様子のおかしい麻衣にジンが駆け寄った。
震える体、視線が定まらない目、激しい動悸。
「ッは‥ぁ…ッ」
「…貴様、麻衣に何を飲ませた?」
『チャンスを与えるといっただけだがな?』
「答えろ…」
腕の中で苦しむ麻衣の姿に、ジンは怒りの宿る深紅の瞳で龍を睨んだ。
バサッと6枚の漆黒の翼が大きく広げられ、熱い空気をも震撼させる魔力の渦があたりを取り巻き始めた。
「…もう1度問おう、麻衣に何を飲ませた?」
明らかな怒りの殺気があたりの魔力を更に増大させていく。
普通の魔物や人間なら、居るだけで押しつぶされて死んでしまうだろう。
『…火龍の宝玉だ』
渋々答えた龍にジンの怒りはいまだ収まらない。
火龍の宝玉、龍の力そのもので同時に力を引き出すものだ、命の次に龍が大切にしている物。
「人間に、火龍の宝玉なんて飲ませて、殺す気か?」
『…試したいだけだ、我の宝玉を使えし者かどうか…』
「……」
ジンは静かに麻衣のほうに視線を戻し、羽根で覆い外気を遠ざける。
「麻衣…」
意識があるかどうか名前を優しく呼んでみる。
「は…ぁ…ぅッ…」
どうやらまだ意識があるようだ。あまり時間が無い、このままだと体中焼かれて、その魂までも消えてしまう。
「麻衣…これを飲み込め、その苦痛が和らぐはずだ」
そう言って先ほどの青い宝玉を麻衣の口に入れたが、飲み込まれずにすぐに口から零れ落ちた。
「……」
仕方ない、ジンは自分の口にそれを入れて、麻衣の唇を塞いだ。舌を使って宝玉を麻衣の喉の奥へ押し込む。
「ぅッ…ん…ッ」
「…」
ゴクリと喉が音を立てて宝玉を受け入れた。
塞いでいた唇を離し、ぐったりした麻衣をそっと寝かせ、再び龍に視線を向けた。
「…さぁ、石版を渡してもらおうか?」
『…‥いいだろう、取れるのならな』
そういってジンの前に置かれたのは、赤い気泡のようなものに包まれた石版の欠片。
「これは?」
『悪用するものが触れれないように封印してある』
「…‥悪用する気は無い、封を解け」
『我には出来ない、先代がかけた封印だ』
ジンは黙ったまま龍を睨みつけ、溜息を吐いた。
これ以上何を言っても無駄なのだろう。
「…」
気泡のようなものに指を少し入れてみた。
「‥ッ!?」
あまりの熱と痛みに慌てて引き出し、触れた手を見ると、爪が溶け皮膚が一瞬で黒く焼けおち形が見る影も無くなっていた。
「…‥確かに、魔族や人間には有効な封印だな」
苦笑して石版が入っている気泡から目を離し、龍を見上げた。
痛めた指を舐め、周囲の魔力を取り込んで回復する。
指は元に戻ったが、これでは石版は手に入らない。片腕を失ってまではちょっと・・・
無駄足だったか…。
「う‥ん」
意識を取り戻した麻衣がジンと龍を見上げた。
「…ジ…ン?」
「大丈夫か?」
「あのね…青い石なくなってたんだけど…」
「……」
「私、飲み込んじゃった?貴重だって言ってたのに…ごめんね?」
これには溜息しか出ない、あんなに心配させて、第一声がこれか。
「…無事ならそれでいい、命よりは貴重じゃない」
溜息混じりに、照れくさそうに俯きながらジンは口にした。
「‥え‥ッ…あ、ありがとぅ…」
麻衣も照れくさそうに礼を言ってから、目の前の石版に目を向けた。
「石版、とらないの?」
「…少し問題があってな…」
「問題?」
不思議そうに麻衣はジンを見据えた。
「!」
『!』
ふーん?と鼻を鳴らしながら、麻衣は赤い気泡にズボッと手を入れ石版を手に取り引き抜いた。
「…取れたけど?」
麻衣は首を傾げながらジンと龍に視線を投げかけた。
「何とも、ないか?」
「え?」
入れた腕を引きよせ、ジンは確認するようにジッと見据えた。
傷1つ無い。
さっきの宝玉2つを飲み込んだからだろうか?
「はい」
石版をジンに差し出し、にっこり微笑んだ。
「……すまない」
石版を受け取り、その力を奪いまた麻衣に石版を渡した。
『用は済んだのだろう?』
龍が口にした、早く此処から消えろとでも言わんばかりに。
「…ああ、騒がせて悪かったな」
「ごめんね?」
『……気にすることは無い、ただ…女…』
「麻衣よ、女って呼ばないで、ちゃんと名前があるの」
『それは、すまなかった…我が宝玉をその身に宿しし者よ、麻衣汝が求めれば力を貸そう』
「?」
麻衣を連れジンは洞窟を後にした。
水と火の加護の宝玉をその身に宿して麻衣は再びジンと共に旅に出る。
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