星の守護龍 ~覚醒と混沌へのカウントダウン~

雪月 光

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1章~石版の伝承~

31.~罪人~

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気がつくともう城の中で、手足には鎖の錠がつけられていて、大きな兵士2人に両腕を掴まれ長い廊下を移動していた。
そのまま王と元老院の待つ大広間に両手を後ろで縛られ、身動きができない状態のまま連れて行かれ、判決が下される。
黙って俯いたまま王と元老院の話に耳を傾ける、話し合いなんて口実で、どうせ・・・見せしめに刑を行うのだろう・・・。
第1級重犯罪・・・同胞の命を数千万奪った者と同じ罪。
ああ・・・確か、魂石に烙印を刻むんだったな・・・俺が王のときはそんな重罪人なんていなかった・・・。

「ジン・・・君の今の魔力量だと階級は…確か上級だったね?」

王が口を開いてジンを見据えた。

「・・・・・・は、い・・・」

掠れる声、喉に張り付いて、うまく声が出ない。

「規則を破った君には、階級などいらないね?」

そういいながら、ジンの喉下を掴むと、焼けるような痛みが襲った。

「ッう…!」

階級まで剥奪するというのか・・・。無階級者は人とさえ扱われない・・・。家畜や奴隷・・・がそうだ。

「・・・・・・」

「元老長!彼の罪はなんと言ったかな?」

王がわざとらしく元老長に視線を向けた。

「第1級重犯罪です・・・」

「そういうことだ、彼を地下牢につれていってくれたまえ」

両わきに立っていた大きな兵士がジンの腕を掴み上げ引きずるように歩いていく。

「あ、そうだ、刑は明日・・・公開で町の中央広場で行うからね!」

そういう王の口元には笑みが刻まれていた。

「・・・・・・・・・」

誰も逆らうものはいない。
地下の暗い牢獄に投げ込まれ、静かに目を瞑り、唇を噛んだ。
何の抵抗も出来ない・・・あまりの無力に腹が立ち、悔しくて仕方が無い。
何故魔神はあんなのを王と選んだのだろうか・・・?やはり彼の考えはわからない。
黴臭く冷たい石畳に横たわりながら静かに眠りにつく。

 
大勢の民が城の設立祭を祝い、中央広場に集まる。

「これより、無階級のこの者の処刑を行う!」

ざわざわとざわめく民を静まらせ王は続ける。

「空間を歪め、危機を招く行為・・・第1級重犯罪を犯した!よく見ておくがいい!罪を犯したものの成れの果てを!」

王は黒いフードをすっぽり被った2人の執行人に”やれ”とだけ告げ離れた。
体は鎖で締め付けられ、身動き一つ出来ない。
目だけを執行人に向ける。
魂石を引き出せる特殊な大きな鎌を振り上げ、一気に下ろし、体から巨大な魂石を引きずり出す。

『!』

ジンの意識は今、体を離れ透けた精神体の状態だ、執行人を見据えた。まだ魂石と体は細い鎖1本で繋がっている。これはすぐに意識を失わさせないためだろう。
フードの隙間から冷たい紫色の目が見えた。
何の感情も読み取れない・・・。
もう1人の執行人が引きずり出した魂石を片手で掴み、もう片方の異質な形をした手を精神体のジンの胸にズボッと突き刺していく。次第に胸に広がる赤い烙印。蒸発してしまうと思わせるほど熱くて焼けそうで、耐え切れずに悲痛な叫び声を上げた。

『!ぐッ・・う゛ぁ・・ああぁぁぁぁぁぁッ・・・・!!』

目を見開いて苦痛にもがく。
執行人が胸から手を抜くと同時にジンは意識を手放した。

「・・・・・・」

執行人は魂石を体に戻しその場を静かに去った。
あまりの出来事に辺りは静まりかえっていた。人々には精神体は見えないから、大きな魂石を取り出して何かした、程度しかわからなかったはずだ。

「さて・・・祭りだ!記念すべき設立祭だ!盛大に祝おう!!」

王が叫ぶ。
ジンは再び地下の牢獄に放り込まれた。
冷たい石の感触、縛られたままだから動けない。
時折激しい痛みに体を丸めて耐える、これの繰り返し・・・。
魔力も存在しない空間、飢えを耐えて静かに呼吸をする。魔力は殆んど失い生命の存続すら危うい。

「!」

暫くしたある日小さな光がふよふよと目の前を横切った。
ろうそくを持った見回りの兵士だろう。

「ぉ、い・・・」

「・・・・・・?」

「頼む・・・水を・・・」

兵士は暗い牢の中を覗き込むようにしてジンを見た後、喉下のところにある無階級者の印を見てから吐き捨てるように言う。

「無階級に与えるものは何もない」

「・・・1杯…いや、ほんの少しだけでも!」

「くどい!!」

兵士は歩き去って行ってしまった。それからどのくらいの時が流れたのか分からない。真っ暗でかび臭く硬くて冷たい無機質の石畳、そんな環境の中その身を預けぐったりとしたまま抵抗も出来ずにその命を確実に削っていく。
気が狂いそうだ・・・。
激しい痛みと飢えに耐えてどの位此処に居れば、許されるのだろうか。
理性が段々消えていくような気がする、飢えに負けそうだ・・・。
手を縛る鎖に噛み付くが、硬くて丈夫なそれはビクともしない。翠色の左目は暗闇でも狂気を秘め妖しく光る。

「うう、がぅっぅう・・・ッ」

やせ細った自分の腕に噛み付き、流れる血を舐め、喉を潤す毎日。
時間の感覚がもうわからない・・・どの位此処にこうしているのか・・・あんなに苦しかった痛みもいつのまにかもう感じない。
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