星の守護龍 ~覚醒と混沌へのカウントダウン~

雪月 光

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2章~時の契約~

4.~日常~

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家を出てからすぐに、いつもと違うと結衣は感じた。
近所の犬に吼えられないし、電車で人ごみにつぶされることも無ければ、階段で転ぶことも無い。
ジンは黙ったまま結衣の後ろを歩いているだけだが、こうもいつもと違うと変な感じがする。

「何か、変な感じ」

ボソリと呟く。

「・・・・これが普通だろう」

「!」

辺りを慌てて見回したが誰もジンには気付いてないようだ、姿だけではなく声も聞こえないようだ。

「心配要らない、よっぽど力があるもの以外には俺の存在は今は空気と同じ」

それは、よっぽど力がある人にはジンが見えるということになる。
学園で魔物を使役してる人はその分類に入るのではないのだろうか。急に不安になってきた。
不安を抱きつつも学園に無事着いた。ほんとに何事もなく。

「おはよう、結衣」

「あ、おはよう真紀」

廊下で声をかけられ、結衣はすぐに振り向きながら挨拶を返した。
親友の真紀だ、薄い茶色の肩位までの髪と淡い灰色の瞳を持つ元気な女の子で、誰からも慕われている。
教室に入り、辺りを見回してみるが誰一人してジンの存在に気付くものはいない。

「はい、静かに・・!」

教室に入ってくるなり、ざわつく教室を一声で静かにさせた厳しそうな長い黒髪の女の先生。
魔術や呪いに対抗する術を教える先生で、名を狩谷坂真有里。

「・・・・」

「結衣さん!」

「ッひゃい?!!」

いきなり名前を呼ばれて結衣は吃驚して変な声が出た。

「・・・何ですか、その返事は・・・それよりも、どうしたんですか?」

ジンのことがばれたのかと思った。

先生が言うが、結衣の左手の甲の赤い傷のようなジンとの契約の烙印のことだと気付くと安堵の息が出そうになった。

「え、えっと・・・転んで怪我しただけです」
痛い言い訳だけど、周りの人は皆結衣を知ってるいるからすぐに納得していた。これはこれでちょっと傷つくよね・・・皆私をどんな目でみてるんだろう?

「そうですか、気をつけてくださいね」

「はい、ありがとうございます」

普通に授業が始まり、何事も無く平穏に普通に終わっていく。
しかし平穏は突然破られる。魔法の授業のとき、1人の男子生徒がふざけて力をこめ過ぎて暴発し、教室のガラスが一斉に割れて降り注いだ。
一瞬で教室はパニックになる。

「!!」

いつもは殆んどのガラス片を浴びて大怪我をしてそうなこの状況、ジンが結衣を庇うように立っていて、見えない壁にでも遮られてたように辺りにガラスが散っていた。
窓際にいたのに無傷なのは結衣だけで、周りの生徒は皆負傷していた。

「大丈夫か?」

結衣は静かに頷いた、けれど自分だけ無傷で周りの皆がガラスで体中傷だらけだ。

「結衣さんは無事みたいね」

声のほうを振り返ると、火月がそこにたっていた。その横には呼び出したグロアルスが体中にガラスを浴びて血を流している。

「そのこを盾にしたの?」

「・・・何か問題があるかしら?身を守るための捕縛でしょう?」

悪びれもせずに火月は口にした。

「可愛そうだよ・・・」

「・・・それよりも、落ち零れの貴方は、どうして無傷なのかしら?」

棘のある嫌な口調、上から弱者を見下ろすような冷たい目。

「・・・・」

俯いて黙ってしまった結衣に火月は面白くもなさそうに鼻を鳴らしその場を去っていった。
殆んどの生徒が保健室に担ぎこまれて教室は結衣とジンと離れた席にいた真紀と数人の生徒達だけが残された。
こんな時何も出来ないのが悔しい。

「結衣さん・・・ほんとに何処にも怪我は無いの?」

不思議そうに先生達が駆け寄ってきた。
窓際で1番被害を受けそうなのに無傷だったのが余程おかしいのだろう、火月のように捕縛も出来てない身で。

「・・・はい」

「・・先生何ですか?結衣が何かしたとでもいうんですか?」

厳しい口調で結衣を庇って先生に詰め寄る真紀。

「いいえ、そういうわけではないの・・・一応上には報告しとくわ」

「・・・・」

先生達はそういって教室を後にした。

「大丈夫?」

「真紀、ありがとう・・・」

「いいの、先生達のあの態度が何か赦せなかったのよ」

こういうとき心強い友達がいることを凄い感謝した。

「・・・・・」

複雑そうな表情でジンは結衣と真紀を見据えた。
午後の授業は無くなって結衣と真紀は一緒に学園の門をくぐった。
元気の無い結衣を気遣ってか真紀は結衣の家の前まで送ってくれた。

「折角だから、あがっていかない?」

「そうね、久しぶりにお邪魔しようかな」

家に入ろうとした結衣にジンが口を開いた。

「・・・その人間は信用できる人間か?」

結衣は静かに頷いた。

「そうか」

真紀が家に入るなり飛び込んできたのは白っぽいドラゴンの姿。

「何かいる!!」

「・・そのこは、リアンていうの」

「ふぇッ!結衣?・・・僕、まずかった?」

やってしまった?という訴えるような視線を結衣と結衣の後ろのジンに向けた。

「大丈夫・・・リアン親友の真紀よ」

結衣が答える。

「な、何?結衣捕縛成功してたの?!」

「結衣とは契約した」

「!!」

結衣の後ろから突然姿を現したジンに真紀は驚いて腰を抜かしそうになった。

「ジン・・・」

「真紀といったな?よろしく」

銀色の長い髪に、白い肌、翠の左目、凛とした美しい透き通った水のような声。
見惚れてしまって差し出された手には気付かなかった。

「真紀、私が契約したジン」

「契約?・・・・凄い綺麗・・・」

結衣が作った食事を取りながら、色々会話が弾んだ。
やはり聞かれるのは、捕縛と契約についての質問。

「ジンさんは、上級の魔族なんですか?」

不思議と敬語になる真紀。頬は赤く目は伏せ目がちだ。

「・・ああ・・・一応・・・そうなるな」

「今日は焦がさなかったのよ!」

自慢げにリアンに見せ付ける結衣にリアンは笑いながら結衣を見上げていた。
あっという間に時間は過ぎて、日は傾いた。

「もうこんな時間・・・」

真紀が呟いた。

「泊まっていく?」

「んーん、帰るわ」

「外凄く暗いよ?」

リアンが窓から外を眺めながら呟いた。

「・・・・・・・・・」

「・・・途中まで送っていこうか?」

ジンが沈黙を破るように申し出てくれた。

「いいの?」

「かまわない」

暗い夜道、横を静かについてくるジンに真紀は気になっていたことを聞いた。

「昼間、結衣をガラスから守ったのもジンさん?」

「ああ」

「ずっと傍に居たんだ?」

「そのほうが都合がいいからな、結衣は危うすぎる」

それには真紀も笑いながら頷いた。

「周りの人から見えなくする術まで使えるのね」

「俺の存在を認識したものにしか見えない」

「えっと、それじゃあ、私には見えるの?」

その質問にジンは苦笑した。

「現に今、見えているだろう?」

「!」

姿を隠していたということは、周りからは真紀がずっと独り言を言っているように見えるということだ。
凄い恥ずかしい。

「こ、此処でいいわ」

「そうか」

「ありがとう・・・又明日ね?」

「ああ」

真紀がバスに乗ると、ジンは翼を広げてもと来た道を戻っていった。
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