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2章~時の契約~
23.~再会と別れ~
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「ねぇ、闇雲に探すより確実なところとかないわけ?」
唐突に真紀が口を開いた。
「あッ・・・ねぇジンあそこなら待ち合わせに良いんじゃない?」
リアンが嬉しそうにジンの周りを飛びながら口を挟んだ。
「あそこ?」
これにはラディオスが尋ねた。
「行けばわかるよ」
リアンが答える。
「ああ・・・あの場所か」
ジンにはそれで伝わったようだ、流石に長い時間一緒に居ただけはある。
「もしかしたら別の次元のジンも同じ事考えて連れて行ってるかもしれないね?」
「そうだと良いが・・・」
そう言いながらジンは次元の扉を開いた。
真紀とラディオス、リアン、ジンの順で扉を潜った。
一面光と緑に覆われた森。
「此処は?」
「世界の支柱の森だよ、一般人はけして入れない聖域なんだ」
リアンが言う。
「支柱の森・・・命の、転生の輪の具現化した姿をこの目で拝めるのですね・・・」
ラディオスは目を輝かせながら辺りを見回していた。
暫く歩くと開けた場所に出た。
「ベルゼアス・・・結衣はきているか?」
ジンが大樹の前に居た深紅の巨体をもつ龍に声をかけた。
真紀とラディオスは黙ったままそれを見守る。
自分たちより遙かに大きい体の龍に普通ならあんな台詞吐けない。
『待っていたぞ、ジン』
ベルゼアスの方も何も気にした様子もなくジンに視線を向けた。
「結衣は、無事か?」
もう1度確認するようにジンが言う。
『ああ、無事だ今は静かに眠っている、時期に目を覚ますだろう』
球体の空間を示しながらベルゼアスはジンとその後ろの真紀とラディオスに視線を向けた。
『本当に珍しく客が多いなぁ』
クスクスと笑いながら大樹を見上げる。
神木の根元に居た少年にジンが気づいた。
「あいつは?」
『結衣の護衛をガディから任された者だ、しっかり此処まで守ったようだ』
「そうか・・」
ジンはゆっくりとジェロに近付いていく。
「綺麗だな・・・」
ジェロは神木を見上げたまま呟いていた。
「お前が、結衣を守ってくれたんだってな?」
「・・・・・」
ジェロの視線は神木から外れない。
魅せられたのだろうか・・・。
放っておいたら神木に触れてしまいそうなジェロにジンは眉を顰めた。
「結衣が世話になったな、すまなかった」
そういってジェロの肩にぽんと手を置いた。
一瞬青い光が散らばりジェロは、はっとしたようにジンを振り向いた。
「あ・・・」
「あまり近付くな、魅せられて命を食われるぞ」
ジェロの肩から手を退かしジンはジェロに背を向ける。
「結衣が世話になったな」
もう1度小さく呟く。
「・・!お前が結衣の・・・探していた?」
「ああ・・迷惑をかけたな」
「・・・・・」
「ガディの縛めの術は解いておいた自由にするといい」
ジンが言うとジェロは目を細めてジンを凝視した。肩に触れただけのあの一瞬で・・?
魔神を、その名を・・・・様もつけずに呼び捨てたことと、その魔神の術をいとも簡単に解いたと言った。
常識からしてあり得ない。
「何だ、お前・・・・!?」
警戒するように牙を剥き出しながら姿勢をかがめて威嚇しながらジンを睨み付けた。
「・・・・・俺はジン」
「名を聞いてるんじゃない俺様は・・・ッ」
「何を知りたいんだ?」
溜息混じりにジェロに視線を戻した。
『おいおい、喧嘩は止めてくれないか?森が傷ついてしまうだろう』
ベルゼアスが慌てて仲裁に入った。
「そうだよ、ジン結衣も見つかったんだし戻ろうよ?」
リアンも口を挟んだ。
「俺様は認めないぞ!?お前が結衣の契約者だなんて・・!!」
「・・・・・・お前に認められる筋合いもないが・・・」
もっともな事をいわれジェロに火が付いたようだ。
「勝負だ!!」
「・・・やれやれ・・・」
「あはは、随分血の気の多い人をガディ様も選んだねぇ」
リアンが人事のように笑いながらまた口を挟んだ。
『此処での戦いは認めない!他所でやってもらおうか?』
「とりあえず、次元の狭間でいいか?この辺一体を切り取り移動させるぞ」
いとも簡単そうに口にするジン。
「?!」
ジンが両手を広げて円を描くように動かしただけで簡単にその場の次元がぐにゃりと歪んだ。
其処は真っ白い何も存在しない空間だった。
『次元世界構成の基となる空間か・・此処なら暴れても平気だな』
「・・・・・いくぞ!覚悟しろ!」
ジェロは変化し巨大な獣へと姿を変え、鋭い爪と牙を剥き出してジン目掛けて飛びかかった。
楽々とそれを躱しながら、ジンは何処から出したのか黒い刀を手にしている。
軽く刀を一振りしただけで無数の風が刃となってジェロの体を傷つけていく。
辺りには夥しいほどの鮮血が飛び散っていた。
魔力を纏った刀のたった一振りで。
「・・・・・それがお前の本気か?違うだろ?!見せてみろよ!!?」
ジェロが挑発するように叫ぶ。
圧倒的に不利なこの状況でよくそんな虚勢を張れたものだとジンは呆れながら苦笑した。
「今俺に、本気を出せと言ったのか・・・本当に?」
冷たい気が辺りを包み込んでいく。
翠だった瞳が深紅の双眸へと変わり背中に現れ大きく広げられた6枚の漆黒の翼。
何だ・・・これ・・・体が・・・・動かない・・・。
ジェロは目の前のジンから目が離せなかった。
強ばって石のように動けない自分の体。
この威圧的な重い魔力・・・魔神クラスと同格・・・もしかしたら・・・それ以上・・。
その場に居た全ての者が凍り付いたように動けずに居た。声すら出せずに。
「どうして欲しい?もう少し痛い目にあいたいか?」
黒い刀に付いた血を舐めとりながら妖艶の視線をジェロに向けた。
「・・・ッ・・・ぁ・・ぅ・・・」
声もでない。殺される・・・。助けを求める声すら乾燥して張り付いた喉からは漏れない。
息さえも忘れさせるほどの重圧に押し潰されそうだった。
ジンも本気で殺そうだなどとは考えてないだろうけれど、今この場でジンを止められる者など存在しなかった。
「ぅーん・・・良く寝たー」
突如そんな声が静まりかえった空間に響いた。
「あれ?ジンとジェロ何してるの?」
けろっとした表情の結衣が何事もなかったようにジンとジェロの前に歩いてきた。
「ジン・・本物?」
疑うように目を細めてジンを見据える結衣。
「・・・・・全くお前は・・・・」
呆れたようにジンは結衣に優しい視線を向けていた。
あの状況で。
絶妙すぎるあのタイミングで。
「・・・凄いね、結衣は」
真紀が呟くとリアンとラディオスが素直に頷いた。
ジンはもう刀も持っていなければ深紅の双眸でもなかった。
翼も初めから無かったかのようにその背にすらない。
ジェロはその場に力なくへたり込み、一気に空気を吸い込んだのか咳き込みながら涙目でジンと結衣に視線を向けていた。
「・・・」
今まで見てきたどの次元のジンたちをも遙かに凌ぐ強すぎる力を感じた。
これが本物の・・・。
「気は済んだの?」
結衣がジェロのもとへ来ると小さく囁きかけた。
「え・・・?」
ジェロは吃驚して結衣を見上げたまま固まった。死を覚悟して助けを求めた声でも聞こえたのかと思った。
「ジンと戦いたがっていたでしょう?」
「・・・・あ、ああ」
これには素直に頷いた。
確かに本物とは1度戦ってみたいと思っていた。
「強かったでしょ?ジンは」
「ああ・・・・」
「・・・結衣・・・お前、あの時・・・・」
言いかけてジェロは台詞を飲み込んだ。
あのタイミングを計れるはずがない・・・。
別の空間に隔離状態で寝ていた結衣にそんなことが・・・不可能だ。
「何?」
「・・・何でも無い」
「そう?」
へたり込んでいるジェロに結衣は手を差し出した。
「・・・すまん・・・」
素直にその手を取り立ち上がった。
そんな様子をジンとリアンは黙ったまま遠目に見据えていた。
「ジン・・どうかしたの?」
「いや・・・」
「あの人に結衣を取られるんじゃないかって嫉妬?!」
茶化すようにリアンが笑いながら言った。
「・・ッ違う!!」
リアンをギッと睨んでからジンは逃げるようにベルゼアスの方へ早足で歩み寄った。
『素直ではないなぁ、ジン?』
聞こえていたのだろう。ベルゼアスも笑いながら言う。
「・・・うるさい・・・」
ジンは俯いたまま小さく吐き捨てた。
『さて、話題はかわるが・・・』
急に真面目な口調になったベルゼアスにジンも身構えベルゼアスを見上げた。
「ああ・・次元の破壊者のことだな?」
『それも問題だが、これも問題だ』
「?」
『魔界各地で突如魔族達が姿を消している事件が多発している・・・魔王も必死で原因を調べさせているようだが・・』
ジンはすぐにある人物の姿が脳裏に浮かんだ。
「・・・・・人間界の、あいつか?」
ベルゼアスは静かに頷いた。
「何のために・・・」
『・・・・理由は何であれ、世界の均衡を崩しかねない・・・』
「・・・やめさせれば良いのか?」
『ああ、そして送り返して欲しい・・彼らを、こちら側に来る前に』
仕事が増えると言わんばかりに言う。
「出来る限り、やってみるが・・・」
『無理にとは言わんよ、その命こそが”全世界の鍵”なのだから・・』
尊いものでも見るようにベルゼアスはジンを見据えていた。
「全員そろったし、そろそろ戻ろうよ?ジン?」
リアンがジンの前に飛んできた。
その後ろを結衣と真紀とラディオス、そしてジェロが付いてきた。
「・・・・お、俺様は・・・」
契約もしてないジェロは戸惑うようにベルゼアスとジンを見据えていた。
『人間は一生に1度しか契約は出来ぬからな・・・お前は魔界へ送り届けよう』
結衣は先にジンと契約している、更にジェロとも契約を交わしたら短い命が更に短くなりかねない。
「・・・あ、ああ」
「ジェロ、今までありがとう」
結衣が口にする。
「またいつか会おうね?」
「ああ、元気でな・・・結衣」
「またね」
リアンと真紀も言い、扉を潜った。皆潜って扉が閉まるとジェロは俯いた。
結衣たちを見送った後のジェロにベルゼアスは苦笑した。
『別れとはそういうものだ、出会った偶然に良い経験をしたと思えば良い、その悲しみの分だけ大きな何かを与えられたということだ』
「ああ・・」
『さあ、行くがいい』
ジェロは頷き涙で一杯の目のまま魔界への扉を潜った。
唐突に真紀が口を開いた。
「あッ・・・ねぇジンあそこなら待ち合わせに良いんじゃない?」
リアンが嬉しそうにジンの周りを飛びながら口を挟んだ。
「あそこ?」
これにはラディオスが尋ねた。
「行けばわかるよ」
リアンが答える。
「ああ・・・あの場所か」
ジンにはそれで伝わったようだ、流石に長い時間一緒に居ただけはある。
「もしかしたら別の次元のジンも同じ事考えて連れて行ってるかもしれないね?」
「そうだと良いが・・・」
そう言いながらジンは次元の扉を開いた。
真紀とラディオス、リアン、ジンの順で扉を潜った。
一面光と緑に覆われた森。
「此処は?」
「世界の支柱の森だよ、一般人はけして入れない聖域なんだ」
リアンが言う。
「支柱の森・・・命の、転生の輪の具現化した姿をこの目で拝めるのですね・・・」
ラディオスは目を輝かせながら辺りを見回していた。
暫く歩くと開けた場所に出た。
「ベルゼアス・・・結衣はきているか?」
ジンが大樹の前に居た深紅の巨体をもつ龍に声をかけた。
真紀とラディオスは黙ったままそれを見守る。
自分たちより遙かに大きい体の龍に普通ならあんな台詞吐けない。
『待っていたぞ、ジン』
ベルゼアスの方も何も気にした様子もなくジンに視線を向けた。
「結衣は、無事か?」
もう1度確認するようにジンが言う。
『ああ、無事だ今は静かに眠っている、時期に目を覚ますだろう』
球体の空間を示しながらベルゼアスはジンとその後ろの真紀とラディオスに視線を向けた。
『本当に珍しく客が多いなぁ』
クスクスと笑いながら大樹を見上げる。
神木の根元に居た少年にジンが気づいた。
「あいつは?」
『結衣の護衛をガディから任された者だ、しっかり此処まで守ったようだ』
「そうか・・」
ジンはゆっくりとジェロに近付いていく。
「綺麗だな・・・」
ジェロは神木を見上げたまま呟いていた。
「お前が、結衣を守ってくれたんだってな?」
「・・・・・」
ジェロの視線は神木から外れない。
魅せられたのだろうか・・・。
放っておいたら神木に触れてしまいそうなジェロにジンは眉を顰めた。
「結衣が世話になったな、すまなかった」
そういってジェロの肩にぽんと手を置いた。
一瞬青い光が散らばりジェロは、はっとしたようにジンを振り向いた。
「あ・・・」
「あまり近付くな、魅せられて命を食われるぞ」
ジェロの肩から手を退かしジンはジェロに背を向ける。
「結衣が世話になったな」
もう1度小さく呟く。
「・・!お前が結衣の・・・探していた?」
「ああ・・迷惑をかけたな」
「・・・・・」
「ガディの縛めの術は解いておいた自由にするといい」
ジンが言うとジェロは目を細めてジンを凝視した。肩に触れただけのあの一瞬で・・?
魔神を、その名を・・・・様もつけずに呼び捨てたことと、その魔神の術をいとも簡単に解いたと言った。
常識からしてあり得ない。
「何だ、お前・・・・!?」
警戒するように牙を剥き出しながら姿勢をかがめて威嚇しながらジンを睨み付けた。
「・・・・・俺はジン」
「名を聞いてるんじゃない俺様は・・・ッ」
「何を知りたいんだ?」
溜息混じりにジェロに視線を戻した。
『おいおい、喧嘩は止めてくれないか?森が傷ついてしまうだろう』
ベルゼアスが慌てて仲裁に入った。
「そうだよ、ジン結衣も見つかったんだし戻ろうよ?」
リアンも口を挟んだ。
「俺様は認めないぞ!?お前が結衣の契約者だなんて・・!!」
「・・・・・・お前に認められる筋合いもないが・・・」
もっともな事をいわれジェロに火が付いたようだ。
「勝負だ!!」
「・・・やれやれ・・・」
「あはは、随分血の気の多い人をガディ様も選んだねぇ」
リアンが人事のように笑いながらまた口を挟んだ。
『此処での戦いは認めない!他所でやってもらおうか?』
「とりあえず、次元の狭間でいいか?この辺一体を切り取り移動させるぞ」
いとも簡単そうに口にするジン。
「?!」
ジンが両手を広げて円を描くように動かしただけで簡単にその場の次元がぐにゃりと歪んだ。
其処は真っ白い何も存在しない空間だった。
『次元世界構成の基となる空間か・・此処なら暴れても平気だな』
「・・・・・いくぞ!覚悟しろ!」
ジェロは変化し巨大な獣へと姿を変え、鋭い爪と牙を剥き出してジン目掛けて飛びかかった。
楽々とそれを躱しながら、ジンは何処から出したのか黒い刀を手にしている。
軽く刀を一振りしただけで無数の風が刃となってジェロの体を傷つけていく。
辺りには夥しいほどの鮮血が飛び散っていた。
魔力を纏った刀のたった一振りで。
「・・・・・それがお前の本気か?違うだろ?!見せてみろよ!!?」
ジェロが挑発するように叫ぶ。
圧倒的に不利なこの状況でよくそんな虚勢を張れたものだとジンは呆れながら苦笑した。
「今俺に、本気を出せと言ったのか・・・本当に?」
冷たい気が辺りを包み込んでいく。
翠だった瞳が深紅の双眸へと変わり背中に現れ大きく広げられた6枚の漆黒の翼。
何だ・・・これ・・・体が・・・・動かない・・・。
ジェロは目の前のジンから目が離せなかった。
強ばって石のように動けない自分の体。
この威圧的な重い魔力・・・魔神クラスと同格・・・もしかしたら・・・それ以上・・。
その場に居た全ての者が凍り付いたように動けずに居た。声すら出せずに。
「どうして欲しい?もう少し痛い目にあいたいか?」
黒い刀に付いた血を舐めとりながら妖艶の視線をジェロに向けた。
「・・・ッ・・・ぁ・・ぅ・・・」
声もでない。殺される・・・。助けを求める声すら乾燥して張り付いた喉からは漏れない。
息さえも忘れさせるほどの重圧に押し潰されそうだった。
ジンも本気で殺そうだなどとは考えてないだろうけれど、今この場でジンを止められる者など存在しなかった。
「ぅーん・・・良く寝たー」
突如そんな声が静まりかえった空間に響いた。
「あれ?ジンとジェロ何してるの?」
けろっとした表情の結衣が何事もなかったようにジンとジェロの前に歩いてきた。
「ジン・・本物?」
疑うように目を細めてジンを見据える結衣。
「・・・・・全くお前は・・・・」
呆れたようにジンは結衣に優しい視線を向けていた。
あの状況で。
絶妙すぎるあのタイミングで。
「・・・凄いね、結衣は」
真紀が呟くとリアンとラディオスが素直に頷いた。
ジンはもう刀も持っていなければ深紅の双眸でもなかった。
翼も初めから無かったかのようにその背にすらない。
ジェロはその場に力なくへたり込み、一気に空気を吸い込んだのか咳き込みながら涙目でジンと結衣に視線を向けていた。
「・・・」
今まで見てきたどの次元のジンたちをも遙かに凌ぐ強すぎる力を感じた。
これが本物の・・・。
「気は済んだの?」
結衣がジェロのもとへ来ると小さく囁きかけた。
「え・・・?」
ジェロは吃驚して結衣を見上げたまま固まった。死を覚悟して助けを求めた声でも聞こえたのかと思った。
「ジンと戦いたがっていたでしょう?」
「・・・・あ、ああ」
これには素直に頷いた。
確かに本物とは1度戦ってみたいと思っていた。
「強かったでしょ?ジンは」
「ああ・・・・」
「・・・結衣・・・お前、あの時・・・・」
言いかけてジェロは台詞を飲み込んだ。
あのタイミングを計れるはずがない・・・。
別の空間に隔離状態で寝ていた結衣にそんなことが・・・不可能だ。
「何?」
「・・・何でも無い」
「そう?」
へたり込んでいるジェロに結衣は手を差し出した。
「・・・すまん・・・」
素直にその手を取り立ち上がった。
そんな様子をジンとリアンは黙ったまま遠目に見据えていた。
「ジン・・どうかしたの?」
「いや・・・」
「あの人に結衣を取られるんじゃないかって嫉妬?!」
茶化すようにリアンが笑いながら言った。
「・・ッ違う!!」
リアンをギッと睨んでからジンは逃げるようにベルゼアスの方へ早足で歩み寄った。
『素直ではないなぁ、ジン?』
聞こえていたのだろう。ベルゼアスも笑いながら言う。
「・・・うるさい・・・」
ジンは俯いたまま小さく吐き捨てた。
『さて、話題はかわるが・・・』
急に真面目な口調になったベルゼアスにジンも身構えベルゼアスを見上げた。
「ああ・・次元の破壊者のことだな?」
『それも問題だが、これも問題だ』
「?」
『魔界各地で突如魔族達が姿を消している事件が多発している・・・魔王も必死で原因を調べさせているようだが・・』
ジンはすぐにある人物の姿が脳裏に浮かんだ。
「・・・・・人間界の、あいつか?」
ベルゼアスは静かに頷いた。
「何のために・・・」
『・・・・理由は何であれ、世界の均衡を崩しかねない・・・』
「・・・やめさせれば良いのか?」
『ああ、そして送り返して欲しい・・彼らを、こちら側に来る前に』
仕事が増えると言わんばかりに言う。
「出来る限り、やってみるが・・・」
『無理にとは言わんよ、その命こそが”全世界の鍵”なのだから・・』
尊いものでも見るようにベルゼアスはジンを見据えていた。
「全員そろったし、そろそろ戻ろうよ?ジン?」
リアンがジンの前に飛んできた。
その後ろを結衣と真紀とラディオス、そしてジェロが付いてきた。
「・・・・お、俺様は・・・」
契約もしてないジェロは戸惑うようにベルゼアスとジンを見据えていた。
『人間は一生に1度しか契約は出来ぬからな・・・お前は魔界へ送り届けよう』
結衣は先にジンと契約している、更にジェロとも契約を交わしたら短い命が更に短くなりかねない。
「・・・あ、ああ」
「ジェロ、今までありがとう」
結衣が口にする。
「またいつか会おうね?」
「ああ、元気でな・・・結衣」
「またね」
リアンと真紀も言い、扉を潜った。皆潜って扉が閉まるとジェロは俯いた。
結衣たちを見送った後のジェロにベルゼアスは苦笑した。
『別れとはそういうものだ、出会った偶然に良い経験をしたと思えば良い、その悲しみの分だけ大きな何かを与えられたということだ』
「ああ・・」
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