暗殺少女を『護』るたった一つの方法

朝我桜(あさがおー)

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第二章 僕が彼女を『護』る理由

第36話 以心伝心!? 『心』を通じ合わせるためのメソッド

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「そ、それは?」

「それはね……ヒミツ、よ」

 悪戯っぽく微笑み、グディーラさんは勿体ぶって結局教えてくれなかった。

「そんなぁ~」

 突然バチっと視界の端に火花スパークが飛できて背筋が凍る。

「えっと……アルナさん?」

「~~~~~……………ッ!!!」

 恐る恐る振り返ると、何故か分からないけど、アルナお嬢様は僕の手を握ったまま、頬を膨らませいる。

 それはもう大層ご立腹であらせられて……。

 そして白くて可愛い尻尾から雷の象気が漏れ――あっ……マズい。

「ミナトのぉ……ミナトのバカぁっ!!」

「ギャァァァァァーーーーーっ!!」

 僕の身体を静霊気の何倍もの衝撃が貫いた。

 そういえば師匠が言っていたっけ? 一人と決めたら他の女に目移りするな、さもないと痛い目見るぞって。

 多分あれってこういうことだったのかも……。

 雷撃を喰らってほどなくして、ハウアさんが目を覚まし、今後について話し合った。

 正直あまり時間がない。

 ヴェンツェルが姿を消した当日から儀式を始めているとなると残り今日合わせて6日しかない。

 それに加えて《黒蠍獅》の強さは圧倒的だ。

「アルナの嬢ちゃん。良い判断だった。お陰で助かったぜ」

「は、はい、ありがとうございます……」

 起き上がって早々、突然ハウアさんがアルナをしっかりと褒めだした。

 いったいどうしたんだ? 槍でも降るの? それとも天変地異の前触れ?

 あの理不尽大王のハウアさんが、だ。ありえない。僕は開いた口が塞がらなかった。

「ミナトっ! 貴様っ! なんだそのつらはぁっ!?」

 なんて思っていたら、ハウアさんに胸倉を掴まれた。

「だ、だってハウアさんが急に人を褒めるからっ!」

「んだと!? じゃあお望み通りのことをいってやる!! この――」

 スパンっとハウアさんの頭がいい音する。

 グディーラさんが丸めた紙でひっぱたいて止めてくれて助かった。

「やめなさい馬鹿。話が進まないでしょうがっ!」

 気を取り直して再び話始める僕達。

 ハウアさんの予想だと《黒蠍獅》もヴェンツェルが作り出した吸血種で、儀式の間の守護が目的。

 故に必要以上に追ってこなかったんじゃないかという結論だった。

 それについては皆も同意見。恐らく接近しなければ攻撃はしてこない。

 けどこのままだと儀式は止められないから、結局《黒蠍獅》をなんとかしなきゃいけない。

 問題はどうやって倒すかだ。

「とりあえず、そうなぁ……お前等二人〈接吻キス〉するか」

「「はぁっ!?」」

 二人ほぼ同時に声を上げた。この人はなんの脈絡もなく何を言い出すんだ?

「な、なんなのさっ! いきなりっ!」

「楽しみなのは分かるけどよ、興奮すんなって、ちゃんと意味があんだよ」

 興奮とか、楽しみとか、別にそんなこと思っているわけじゃ……。

 それはきっとアルナも同じ筈。やば……目が合った。

 そんな……俯き加減で顔を逸らして、恥ずかしそうにされたら、僕だってまともに見られないじゃないか。

「まず、お前等の象気はよく似た性質をしている」

 それなら先週の〈大喧嘩〉のときに気付いている。考えてみれば【光】と【雷】なのだから当然だ。

「そんで、二人とも【共震きょうしん】って知っているか?」

 共震? 初耳だ。師匠からそんなこと聞いたことがない。

 アルナも知らないみたい。二人して首をかしげる。

「その様子じゃ知らねぇようだな。あの師匠ババア教えなかったのか……まぁ、伝えられなかったというのもあるかもな。師匠と【共震】が出来る奴なんてそういねぇし」

 ハウアさんの話だと、【共震】とは両者の象気が自乗化される現象だという。

 ただし【共震】が起こるのは二人の象気の性質が非常に近い時だけ。

 それが本当なら凄いことだ。

「共震には単に呼吸を合わせるだけじゃ駄目だ。互いの心が通わせねぇといけねぇ、そこでっ! 接吻ってわけだ」

 うん、よく分かった。

 【共震】と接吻になんも関係性も無いことに。

「その話だと全く関係ないよね? 互いの心が通じ合っていればいいわけだし、僕達なら心配ないんじゃないかな。ねぇアルナ?」

 わざわざそんなことしなくたって。きっとアルナだって同じことを思っている筈。

「う……うん……」

 え? 何? アルナの今の反応? 苦笑いされた。

 仲良いって思っているの自分だけ?

「嬢ちゃんはそうは思ってねぇみてぇだぞ? これはもうするしかねぇなぁ? 本当はベッドの上で身も心も繋がっちまったほうが手っ取り早ぇんだけどよぉ。まぁヘタレミナトに期待したところで無理だしなぁ~」

 悪魔のような下卑た笑みを浮かべ、ハウアさんが迫ってくる。

 嘘? するしかないのかっ!?

 いくら必要だからって、そんな簡単に唇を奪ってしまっていいのっ!?

 そもそも僕のことを本気で好いてくれているかどうか!?

 だとしたら、好きでもない人とするなんて、アルナが可哀想じゃないかっ!?

「いい加減にしなさい!」

 スパンっ! と再びハウアさんの頭がいい音が鳴る。

 さっきまで静かに話を聴いていたグディーラさんが丸めた紙で、ハウアさんの後頭部をひっぱたいた。
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