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第二章 僕が彼女を『護』る理由
第37話 『何度でも』君と出会う。見つける。信じ続ける。
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「接吻したところで、心が通じ合うわけが無いでしょうっ!」
は!? そうだよ。なにハウアさんの口車に乗っているんだ。
グディーラさんが止めてくれなかったら、危うくアルナの唇を訳の分からない理由で奪ってしまうところだった。
「ごめんなさいね。二人が【共震】出来たらそれに越したことがないけど。最悪の事態の対策は用意してあるから安心して。とりあえず二人の息を合わせることから始めましょう?」
そりゃぁアルナみたいな綺麗な子と出来たらって思うよ。
でもこういうことはお互いの中がもっと深まってからじゃないと――。
アルナはまだ俯いていたまま。きっと不快感を覚えたよね。はぁ……。
「気を悪くさせてごめんね? アルナ」
首を横に振る。あ、違うんだ。
「ゴメン。無理だよ……だって……だって私に信頼される価値なんてないっ!」
アルナは協会を飛び出した。あまりにも突然のことに、どうしていいか――なんて考えている場合じゃない!
「待って! アルナっ!」
「ちょっと待てミナト」
「なんだよ!?」
こっちが追いかけようと焦っているのに、なぜかハウアさんが引き留めてくる。
「【共震】の時はな。何でも鈴の音が聞こえるんだとよ」
はぁ? なんなんだよ。いったい……と、とにかく急いでアルナを追いかけないと!
アルナを見ていて分かったことがある。
自己否定してもなんもいいことがない。毒にしかならない。
だからといってハウアさんのように慢心するのも良くないとは思うけど。
「結局アルナは自分のこと認められないんだ。僕も他人のこと言えないけど……」
なにぶつぶつと呟いているんだ僕は。
アルナを探して奔走した。道行く人に奇異の目に晒され、笑われたりしたけど気にしている余裕なんてない。
いない。何処いったんだ。いったい……するとやっぱり、あそこか!?
いつかハウアさんが僕とアルナが似ているって言っていたなぁ……うん、そうかもしれない。
くよくよするところとかそっくりかも。
息を切らせ走り回った末ようやく彼女を見つけた。
「はぁ……はぁ……やっぱりここにいたんだ……」
「……ミナト」
アルナは公園のベンチに座っていた。そこは初めてアルナと出会った場所。
今日は晴れていたけど、気分はあの時と同じ雨模様。
そして一人悲しそうに佇んでいた過去の光景が、現在と重なって映る。
「ごめんなさい。どうしても私には出来ないよ。だってっ! ミナトを橋から突き落としたり、肋骨を折ったり、思いっきり殴ったりしたんだよっ!」
雷撃を浴びせられたのは抜けているけど、この際どうでもいいや。
「なんだ……そんなことで悩んでいたんだ。気にしていないよ」
「どうして!? 普通嫌いになるでしょっ!?」
なんでそうなるんだ?
う~ん、多分何もかも悲観的に考えるから、きっと全部信じられなくなってしまうんだ。
「別にそんなことで嫌いになったりしないよ。もう〈仲直り〉したじゃないか。あの時殴ったのだって助けるためでしょ? 感謝している。そもそも僕は〈友達〉を早々嫌いになったりしないよ」
それに自分はアルナのことが……。
「本当に?」
アルナが宝石のような青い目で上目遣いしてきた。
更に小首を傾げながらされたら、胸が高鳴ってしょうがない。だけど今はぐっと堪える。
「うん。だから、やるだけやってみようよ」
「できるかな……私に……」
どうすればアルナを納得させられる? ん、待てよ。さっきハウアさんが……そういえば《黒蠍獅》と対峙したとき――。
「ねぇ、アルナ。地下道で鈴の音がしなかった?」
「え? うん、もしかしてミナトも?」
「うん、ハウアさんが言っていたんだ。【共震】をしている場合には鈴の音が聴こえるって、多分あの時、僕達は一度成功しているんだ。だから大丈夫。練習すればもう一度出来るようになるよ」
アルナが頷いてくれて、ほっとした。
一悶着あったけど、翌日から無事修行に入ることになった。修行場所は協会の地下。
以前ハウアさんが自分をタコ殴りにした曰く付きの場所。
最初にやらされたのが、【密続】という向かい合い、呼吸を合わせ、象気を全力で練るという修練だった。
やっぱりアルナは凄い。纏う象気の総量はハウアさんと同じぐらい。
アルナの周りを無数の稲妻が迸っている。
「流石だな。嬢ちゃんの方の象気が、ミナトより強ぇ。でももう少し抑えろ」
「こんな感じですか?」
隣で佇むアルナの象気が落ち着きを見せる。
「おう、そのぐらいで丁度いい。その感覚を覚えておけ。じゃあそのまま1時間維持な」
「はぁっ!?」「えぇっ!?」
「じゃぁ俺様は寝るからよ」
普通に練るのだって体力を消耗するのに、それを1時間って。
師匠との修行の時だってしたことがない。ハウアさんもう鼾掻いているし、3秒も経っていないよ。
「アルナ。今まで最長どれくらい練ったことがある?」
「う~ん……30分ぐらい、かな。でもすごく調子が良かったときだよ」
ヤバイ、その半分も持たないかもしれない。どうしよう。
は!? そうだよ。なにハウアさんの口車に乗っているんだ。
グディーラさんが止めてくれなかったら、危うくアルナの唇を訳の分からない理由で奪ってしまうところだった。
「ごめんなさいね。二人が【共震】出来たらそれに越したことがないけど。最悪の事態の対策は用意してあるから安心して。とりあえず二人の息を合わせることから始めましょう?」
そりゃぁアルナみたいな綺麗な子と出来たらって思うよ。
でもこういうことはお互いの中がもっと深まってからじゃないと――。
アルナはまだ俯いていたまま。きっと不快感を覚えたよね。はぁ……。
「気を悪くさせてごめんね? アルナ」
首を横に振る。あ、違うんだ。
「ゴメン。無理だよ……だって……だって私に信頼される価値なんてないっ!」
アルナは協会を飛び出した。あまりにも突然のことに、どうしていいか――なんて考えている場合じゃない!
「待って! アルナっ!」
「ちょっと待てミナト」
「なんだよ!?」
こっちが追いかけようと焦っているのに、なぜかハウアさんが引き留めてくる。
「【共震】の時はな。何でも鈴の音が聞こえるんだとよ」
はぁ? なんなんだよ。いったい……と、とにかく急いでアルナを追いかけないと!
アルナを見ていて分かったことがある。
自己否定してもなんもいいことがない。毒にしかならない。
だからといってハウアさんのように慢心するのも良くないとは思うけど。
「結局アルナは自分のこと認められないんだ。僕も他人のこと言えないけど……」
なにぶつぶつと呟いているんだ僕は。
アルナを探して奔走した。道行く人に奇異の目に晒され、笑われたりしたけど気にしている余裕なんてない。
いない。何処いったんだ。いったい……するとやっぱり、あそこか!?
いつかハウアさんが僕とアルナが似ているって言っていたなぁ……うん、そうかもしれない。
くよくよするところとかそっくりかも。
息を切らせ走り回った末ようやく彼女を見つけた。
「はぁ……はぁ……やっぱりここにいたんだ……」
「……ミナト」
アルナは公園のベンチに座っていた。そこは初めてアルナと出会った場所。
今日は晴れていたけど、気分はあの時と同じ雨模様。
そして一人悲しそうに佇んでいた過去の光景が、現在と重なって映る。
「ごめんなさい。どうしても私には出来ないよ。だってっ! ミナトを橋から突き落としたり、肋骨を折ったり、思いっきり殴ったりしたんだよっ!」
雷撃を浴びせられたのは抜けているけど、この際どうでもいいや。
「なんだ……そんなことで悩んでいたんだ。気にしていないよ」
「どうして!? 普通嫌いになるでしょっ!?」
なんでそうなるんだ?
う~ん、多分何もかも悲観的に考えるから、きっと全部信じられなくなってしまうんだ。
「別にそんなことで嫌いになったりしないよ。もう〈仲直り〉したじゃないか。あの時殴ったのだって助けるためでしょ? 感謝している。そもそも僕は〈友達〉を早々嫌いになったりしないよ」
それに自分はアルナのことが……。
「本当に?」
アルナが宝石のような青い目で上目遣いしてきた。
更に小首を傾げながらされたら、胸が高鳴ってしょうがない。だけど今はぐっと堪える。
「うん。だから、やるだけやってみようよ」
「できるかな……私に……」
どうすればアルナを納得させられる? ん、待てよ。さっきハウアさんが……そういえば《黒蠍獅》と対峙したとき――。
「ねぇ、アルナ。地下道で鈴の音がしなかった?」
「え? うん、もしかしてミナトも?」
「うん、ハウアさんが言っていたんだ。【共震】をしている場合には鈴の音が聴こえるって、多分あの時、僕達は一度成功しているんだ。だから大丈夫。練習すればもう一度出来るようになるよ」
アルナが頷いてくれて、ほっとした。
一悶着あったけど、翌日から無事修行に入ることになった。修行場所は協会の地下。
以前ハウアさんが自分をタコ殴りにした曰く付きの場所。
最初にやらされたのが、【密続】という向かい合い、呼吸を合わせ、象気を全力で練るという修練だった。
やっぱりアルナは凄い。纏う象気の総量はハウアさんと同じぐらい。
アルナの周りを無数の稲妻が迸っている。
「流石だな。嬢ちゃんの方の象気が、ミナトより強ぇ。でももう少し抑えろ」
「こんな感じですか?」
隣で佇むアルナの象気が落ち着きを見せる。
「おう、そのぐらいで丁度いい。その感覚を覚えておけ。じゃあそのまま1時間維持な」
「はぁっ!?」「えぇっ!?」
「じゃぁ俺様は寝るからよ」
普通に練るのだって体力を消耗するのに、それを1時間って。
師匠との修行の時だってしたことがない。ハウアさんもう鼾掻いているし、3秒も経っていないよ。
「アルナ。今まで最長どれくらい練ったことがある?」
「う~ん……30分ぐらい、かな。でもすごく調子が良かったときだよ」
ヤバイ、その半分も持たないかもしれない。どうしよう。
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