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第二章 パッショナートな少女と歩く清夏の祭り
第22話 砂漠の薔薇は大層お怒り
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は? 一体何を言い出すんだ? 泣いていたんじゃなかったのか?
アリスも僕も愛花が一瞬何を言っているのかわけ分からず狼狽した。
「愛花? 何を言っているんだ?」
「だって、こんな優しい言葉を掛けられたら誰だって惚れちゃうでしょっ! アリスさんの事『あざとい』とか思っていた自分が恥ずかしいっ!」
そんなこと思っていたのか?
まぁ確かに分からない事もないけど。
言われてみれば警戒心全快の人や、人間不信に陥っている人からすれば『あざとい』って感じるかもしれない。
「もしかしたら宙人を誑かしているんじゃないかって疑って、アリスさんごめんっ!」
愛花は一方的に疑いの目を向けていたことを深々と謝罪する。
それにしても誑かしたって……
「よく分からないけど、貰ってくれるってことでいいのかな? 愛花ちゃん」
「うん、ありがとう。アリス」
「わぁっ! 愛花ちゃんがさん付けじゃなく、アリスって呼んでくれたっ! 嬉しいっ!」
手を握り合い微笑み合う二人、愛花のアリスへ抱いていた疑心は晴れたようで何よりだ。
「それはそうと、宙人?」
「ん? 何?」
鬱陶しく肘で小突き、卑しい笑みを浮かべて愛花が僕の耳元で囁いてくる。
「頑張んなさいよ。アリスって綺麗な容姿だし、もたもたしていると他の誰かに取られちゃうよ」
「は? 意味がよく分からないんだけど?」
「誤魔化さなくても大丈夫だって、長い付き合いなんだから私は分かっているよ。陰ながらサポートしてあげるから、私に任せなさい」
「いやいや、お願いだから何もしないで欲しいんだけど……」
どうも愛花は僕がアリスに抱いている感情を男女が抱くそれだと勘違いしている。
確かにアリスは美人だけど、専ら僕がアリスに頂いている感情は尊敬や憧れといった類いのものだ。
「ねぇ? 愛花ちゃん?」
「うん? なにアリス?」
「『あざとい』って何? ごめんね。まだ地球の言葉ちょっと分からないところがあって」
「「知らなくていい」」
「ふぇ~なんで~教えてよ~」
どうかアリスには純粋のままでいて欲しいというのが僕と愛花の願い。
本当ならあまり地球人と関わらない方がいいかもしれない。
「なんか少し肩の荷が下りた感じ、ねぇ、アリスさん次はどこ行く?」
「う~ん、そうだねぇ~ 地元の人もなかなか知らない素敵な場所を見つけたいんだけど、ねぇ? 雑貨屋のお兄さんっ!」
アリスに尋ねられた雑貨屋の店主は困ったように唸る。「そうだなぁ~」と考えあぐねるように視線を天井にさ迷わせていたが、ふと何かが店主の目に止まった。
「あっ! あの子に聞いてみるといい。あの子はリシェーラと言って、この町と周辺の山に凄く詳しいんだ」
「山ですか? この近くに山があるんですか?」
向かいで買い物をしているリシェーラさんという女性を指して雑貨屋の店主は話してくれた。
なんでも彼女はヴィスルの町で山岳ガイドをしているらしい。
僕の記憶が正しければ観光パンフレットには付近の山岳について特に書かれていなかったはずだ。
だとしたら期待が膨らむ。
「ああ、あるよ。スッタクング谷を越えた先にギャスパルト峡谷がね」
「じゃあ、私ちょっと聞いてくるぅっ!」
渓谷の話を聞くや否や意気揚々と飛び出していったアリスはリシェーラと呼ばれた女性に話しかける。
いつもの様に身振り手振りを交えて話すアリスはとても楽しそう。
「初対面の人に良くあそこまでフランクに話しかけられるね」
「そうだね。だから僕は悪い人に引っ掛からないかちょっと心配だ」
誰に対しても物怖じしないのはアリスの良いところだが、警戒心の無さには正直僕は心配になる。
リシェーラさんという人は、徐に僕と愛花の方へ振り向いた。
フードの中からは露になったのは毛先が少しカールかかった銀髪に琥珀色の瞳、艶やかで健康そうな褐色肌で目鼻立ちのきりっと凛々しい顔立ちをした女性だった。
アリスと同じで耳は長いけど、アリスの淡く金色に光る真っ直ぐな髪と透き透る白い肌からは純真無垢な明るさを感じるに対して、リシェーラさんからは妖艶な魅力と熱ようなもの感じる。
交渉は成功した模様でアリスは僕等へと大きく手を振ってくる。
「リシェーラさん話を聞いてくれるってっ! とりあえずあっちでお茶しないかってっ!」
ありがたい。もう暑さの限界で、どこか涼めるところが無いかと思っていたところだ。
リシェーラさんに案内の元、僕等は白いレンガ造りのレストランへと足を踏み入れる。
レストランの中は冷房の程よくひんやりとした空気と一緒にスパイスの香ばしい香りが漂ってくる。
「こんにちはっ! ようこそっ! レストランバルテファンへ 四名様ですね? どうぞこちらへっ!」
賑やかな店内の中、和やかな給仕さんの声で迎えられた僕達。日本並みのおもてなしに僕は驚きを感じた。
「さて、その耳……そっちの達二人は地球人ね?」
テーブルに着いて早々、リシェーラさんは僕と愛花を見て難しく眉を顰める。
本気で迷惑そうな顔で、僕らも少し当惑した。
リシェーラさんが地球人と面識があるのは理解できたけど、どうして不快な顔をしているのか分からない。
「何しに来たの? ここには貴方達が欲しいものなんて何もないわ」
「えっ! ちょっと待って下さい。言っていることがよく――」
「だから、ベンレウム。アンタ達の言う『セキユ』なんて無いって言っているのっ!」
アリスも僕も愛花が一瞬何を言っているのかわけ分からず狼狽した。
「愛花? 何を言っているんだ?」
「だって、こんな優しい言葉を掛けられたら誰だって惚れちゃうでしょっ! アリスさんの事『あざとい』とか思っていた自分が恥ずかしいっ!」
そんなこと思っていたのか?
まぁ確かに分からない事もないけど。
言われてみれば警戒心全快の人や、人間不信に陥っている人からすれば『あざとい』って感じるかもしれない。
「もしかしたら宙人を誑かしているんじゃないかって疑って、アリスさんごめんっ!」
愛花は一方的に疑いの目を向けていたことを深々と謝罪する。
それにしても誑かしたって……
「よく分からないけど、貰ってくれるってことでいいのかな? 愛花ちゃん」
「うん、ありがとう。アリス」
「わぁっ! 愛花ちゃんがさん付けじゃなく、アリスって呼んでくれたっ! 嬉しいっ!」
手を握り合い微笑み合う二人、愛花のアリスへ抱いていた疑心は晴れたようで何よりだ。
「それはそうと、宙人?」
「ん? 何?」
鬱陶しく肘で小突き、卑しい笑みを浮かべて愛花が僕の耳元で囁いてくる。
「頑張んなさいよ。アリスって綺麗な容姿だし、もたもたしていると他の誰かに取られちゃうよ」
「は? 意味がよく分からないんだけど?」
「誤魔化さなくても大丈夫だって、長い付き合いなんだから私は分かっているよ。陰ながらサポートしてあげるから、私に任せなさい」
「いやいや、お願いだから何もしないで欲しいんだけど……」
どうも愛花は僕がアリスに抱いている感情を男女が抱くそれだと勘違いしている。
確かにアリスは美人だけど、専ら僕がアリスに頂いている感情は尊敬や憧れといった類いのものだ。
「ねぇ? 愛花ちゃん?」
「うん? なにアリス?」
「『あざとい』って何? ごめんね。まだ地球の言葉ちょっと分からないところがあって」
「「知らなくていい」」
「ふぇ~なんで~教えてよ~」
どうかアリスには純粋のままでいて欲しいというのが僕と愛花の願い。
本当ならあまり地球人と関わらない方がいいかもしれない。
「なんか少し肩の荷が下りた感じ、ねぇ、アリスさん次はどこ行く?」
「う~ん、そうだねぇ~ 地元の人もなかなか知らない素敵な場所を見つけたいんだけど、ねぇ? 雑貨屋のお兄さんっ!」
アリスに尋ねられた雑貨屋の店主は困ったように唸る。「そうだなぁ~」と考えあぐねるように視線を天井にさ迷わせていたが、ふと何かが店主の目に止まった。
「あっ! あの子に聞いてみるといい。あの子はリシェーラと言って、この町と周辺の山に凄く詳しいんだ」
「山ですか? この近くに山があるんですか?」
向かいで買い物をしているリシェーラさんという女性を指して雑貨屋の店主は話してくれた。
なんでも彼女はヴィスルの町で山岳ガイドをしているらしい。
僕の記憶が正しければ観光パンフレットには付近の山岳について特に書かれていなかったはずだ。
だとしたら期待が膨らむ。
「ああ、あるよ。スッタクング谷を越えた先にギャスパルト峡谷がね」
「じゃあ、私ちょっと聞いてくるぅっ!」
渓谷の話を聞くや否や意気揚々と飛び出していったアリスはリシェーラと呼ばれた女性に話しかける。
いつもの様に身振り手振りを交えて話すアリスはとても楽しそう。
「初対面の人に良くあそこまでフランクに話しかけられるね」
「そうだね。だから僕は悪い人に引っ掛からないかちょっと心配だ」
誰に対しても物怖じしないのはアリスの良いところだが、警戒心の無さには正直僕は心配になる。
リシェーラさんという人は、徐に僕と愛花の方へ振り向いた。
フードの中からは露になったのは毛先が少しカールかかった銀髪に琥珀色の瞳、艶やかで健康そうな褐色肌で目鼻立ちのきりっと凛々しい顔立ちをした女性だった。
アリスと同じで耳は長いけど、アリスの淡く金色に光る真っ直ぐな髪と透き透る白い肌からは純真無垢な明るさを感じるに対して、リシェーラさんからは妖艶な魅力と熱ようなもの感じる。
交渉は成功した模様でアリスは僕等へと大きく手を振ってくる。
「リシェーラさん話を聞いてくれるってっ! とりあえずあっちでお茶しないかってっ!」
ありがたい。もう暑さの限界で、どこか涼めるところが無いかと思っていたところだ。
リシェーラさんに案内の元、僕等は白いレンガ造りのレストランへと足を踏み入れる。
レストランの中は冷房の程よくひんやりとした空気と一緒にスパイスの香ばしい香りが漂ってくる。
「こんにちはっ! ようこそっ! レストランバルテファンへ 四名様ですね? どうぞこちらへっ!」
賑やかな店内の中、和やかな給仕さんの声で迎えられた僕達。日本並みのおもてなしに僕は驚きを感じた。
「さて、その耳……そっちの達二人は地球人ね?」
テーブルに着いて早々、リシェーラさんは僕と愛花を見て難しく眉を顰める。
本気で迷惑そうな顔で、僕らも少し当惑した。
リシェーラさんが地球人と面識があるのは理解できたけど、どうして不快な顔をしているのか分からない。
「何しに来たの? ここには貴方達が欲しいものなんて何もないわ」
「えっ! ちょっと待って下さい。言っていることがよく――」
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