玻璃色の世界のアリスベル

朝我桜(あさがおー)

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第二章  パッショナートな少女と歩く清夏の祭り

第23話 強欲者からのとばっちり

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第23話 強欲者からのとばっちり

【本文】
「ちょ、ちょっと待ってリシェーラさんっ! ここに地球人が来たの?」

 リシェーラさんと僕らへ今にも掴みかかってきそうだったので、アリスが間に割って入ってきてくれた。

「ええ、そうよ。ちょっと前にね。さんざん振り回して、アイツらは石炭紀が地球の四分の一しかない事を知って、埋蔵するセキユなんてないことを知った途端、舌打ちして帰っていったわっ!? 何なのっ!? あんな不快な思いしたのは初めてだわっ!」

 リシェーラさんの話によれば、僕等のような人種の地球人と、アリスのようなヴィドに似た容姿の地球人がそれぞれやってきて、ヴィスル付近に埋蔵する資源が無いかどうか聞きに来たらしい。

 まぁ、それぞれどこの国の人間か、僕にはだいたい想像が付くけど……

 リシェーラさんは惑星の地質や鉱物などに精通していて、国の依頼でその地球人を案内した。

 そこまでは良かったが、その地球人たちは事もあろうことか、折角案内してくれたリシェーラさんに不満を漏らして帰っていったという。

 完全にとばっちりなのは確かだけど、非常に温厚なスペクリムの人達を怒らせるなんて……

「本当に申し訳ありませんっ!」

「本当にごめんなさい、リシェーラさん」

 僕は同じ地球人として謝らずにはいられなかった。

 愛花も同じ気持ちだったようで一緒に謝ってくれた。

 本当に何してくれちゃってんのっ! って感じだ。

 実はここ数週間宇宙センターの絢さんの下で、愛花と一緒に勉強して分かったことだけど、スペクリムの人達は人種問わず非常に温厚だ。

 それにはスペクリムの世界が炭素通貨によって回っていていることが大きく関係しているって絢さんは言っていた。

 スペクリムの人々は自然環境へ奉仕することを喜びとしていて、環境を壊そうものなら偏見と損失を抱えることになる。

 更に絢さんの補足よれば、地球と同じように金儲けしようとすると大損するとか。

 なので通商条約の締結に手間取っているとか。

「こっちこそごめんなさい。勘違いして、あの人達とはまた別の国の人だったのね。早とちりするのは私の悪い癖なのよ。あはは」

「でも疑いが晴れて良かったです。折角会えた生命体同士仲良くなるのが一番ですよね」

「本当貴女の言う通りだわ」

 アリスの説明のお陰で、リシェーラさんの誤解は晴れ、気まずそうにしながらも笑顔で謝ってくれたのは良かった。本当は謝るのはこっちの方なのに……

「改めて自己紹介するわ。私の名前はリシェーラ=インドルシア=ソーラ=フォーコ。気軽にリシェーラって呼んでくれると嬉しいわ」

 リシェーラさんから求められた握手にアリスは笑顔で応じた。

「改めて、自己紹介します。私はアリス=ソノル。今日はよろしくお願いします。えっとこっちは……」

「僕はソラト。よろしくお願いします」

「アイカって言います。よろしく御願いします」

「ええ、こちらこそっ! それじゃあ、お詫びっちゃなんだけど、私のとっておきの場所に案内してあげるっ! このリシェーラお姉さんに任せなさいっ!」

 どんと胸を張ってリシェーラさんは陽気に引き受けてくれた。

 リシェーラさんからはアリスとまた違った陽気さだ。

 リシェーラさんは姉御肌で懐が深さい人なのかもしれない――

 ぐ~

 ――と僕が思っていると、アリスのお腹から情けない音が鳴る。

「えへへ、お腹空いちゃった」

 お腹を押さえてアリスははにかんで見せる。

 トレードマークの長い耳を真っ赤に染めていてとても恥ずかしそうで、僕は不覚にも胸の高鳴りを覚える。

「じゃあ、その前に食事にしましょうか? もちろん私のおごりよっ!」
 

 ヴィスルの町でリシェーラさんから昼食をご馳走になった僕らは、彼女の運転する車で、現在スッタクングダールという辺り一面荒野の中を走っている。

「まさか異世界のカレーを食べることになるなんてね。すんごく美味しかったっ!」

「スパイスのような香りがするからもしかしたら思っていたけど、あれは癖になりそうだね」

 ヴィスルで食べたカレーは、見た目こそ真っ黄色だったり、ヴァイオレットだったり奇抜な色ばかりで、インドカレーのように水分が多く、それでいて脂っこくなくて、スパイスが酸味やピリッとして癖になる味だった。

「だよね? 私は地球のイルマリグとはまた違って、こっちのも美味しいでしょ? 元気になるよね?」

 アリスの言う通り、食べた途端に活力が漲ってくるような感じがした。

 スペクリムではカレーの事をイルマリグと言うのだそうだ。

「みんな外を見てみなさい」

 荒野を走ること寸刻、リシェーラさんに言われ窓の外を眺めると、僕は息を飲んだ。
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