あのヒマワリの境界で、君と交わした「契約(ゆびきり)」はまだ有効ですか?

朝我桜(あさがおー)

文字の大きさ
41 / 48
終章 ずっと一途に。

第41話 白熱に染める秘技が終止符を打つ!

しおりを挟む
 我に返ったようにクローディアスは距離を取る。むなしく残った柄を無造作に投げ捨てた。

「四の五の言わず全力で来い、時間の無駄だ」

「――ふ、ふははははっ! 手加減は無用ということか、では望み通り己の愚かさをその身に刻み付けてやろう!」

「ようやく【狂咲】か?」

「……愚か者め、今さら私が【狂咲】なぞするものか。もっと素晴らしい力があるというのに!」

 突然クローディアスの右腕がふくれあがった。

 胸の中心から目がくらむ閃光と一緒に、さっきまでとは比べ物にならないほどの霊象気が、津波となって押し寄せる。

 中年紳士の姿が変貌していく。

 肌は若々しさを通り越して、陶器を思わせるほど白く無機質に。

 胸の中央には青白いひし形の霊象石が悠然と輝き、目も髪も青く蛍光する。

 情報がそれだけであれば、人間の姿を保っている風に思うかもしれない。

 指はかぎ爪のように鋭くなり、肩や頭、肘や背中から角を生やしていたら、もう人間を捨てている。

 息を吐きながら、ゆっくりと身を起こすと奴は俺を見て、空へ手を掲げ――。

「っ!」

 振り下ろされた瞬間、頭上に落雷が直撃した。

 とっさに俺は腕を交差して防いだが、生まれて初めて受けた衝撃に地へ叩きつけられる。

 反応はできる。あまりの唐突さに半歩遅れた。

 見えてもいたし、受け身も取れた。少しあっちこっち焦げているけど何とか動く。
 流石に何回も食らったら、ヤベぇけど。

『今のを食らって起き上がってこれらるとはな。まったく忌々しい』

 声も重なって聞こえる。雷で耳がやられたってわけじゃないみたいだ。

「そんなことをしたら体内にケガレが回って死ぬと思うけどな」

『フッ……教えてやろう。蒼血人の血はケガレに耐性があるのだよ』

 長年の研究で血清を作りあげたとクローディアスは言った。移植をしてもケガレに侵されないのはそのためだと。

『とはいってもコントロールできるのは腕一本分だけだがね。しかし残念だ。【天血】を持つものならその10倍の効果が期待できるのだがな』

「……アセナを狙う本当の理由はそれか」

 答えない。答えなくていい。最初から許さないと決めている。

「まぁ、確かに少し侮っていたみたいだ」

 決して遊んでいたわけじゃない。機が熟すのを待っていた。ちょうど正午になるこの瞬間を。

「相手が本気で戦ってきているのに、こっちも本気でやらないのは失礼ってもんだ」

 フン、といって鼻で俺の言葉をあしらった。

『今の私は相手の霊象気を見ることができる。まだかなりの量だが私には到底及ばない。強がりはやめたまえ』

 へぇ~知らなかったよ。【皇帝級】にはそういう力があるのか。

「ちなみに聞きてぇ、あんたのその姿――人をやめたのか?」

 高笑いの後、桟橋の時のように両手を広げ徐に語り始める。

「やめたとは少々不適切だな。これは進化! 私は人間という下等な種族から神へ昇華の道を歩み始めたのだ!」

 誇大な物言いに、そうか、と一言告げる。

「人間じゃねぇなら安心した。忍びなかったんだよ。【守護契約士】は人を殺せないしな」

『――言葉を慎め、神となりうる存在の私にいささか無礼だ』

 人が変わった、いや実際に人を辞めているか、おごり高ぶった男のどうでもいい話を無視して息を整える。

「俺から話しかけておいて悪りぃが、やっぱ聞くにたえねぇ」

 拳を中段に構える。

「この後デートの約束があって予定が押しているんだ。秒で終わらせる」

『なんだと?』

「霊象気が見えるんだったよな。よく見ておけ」

 眼前に拳を構える。一気に霊象気を解放し、左腕の龍紋が金色に輝いた。

『なんだ、それは……』

 体内の隅々まで潤沢な霊象気が駆け巡り満ちていく。

 次第にその流れは加速し、やがて光の速度へと到達する。

「【青輪滅火ディジェネレイト】――説明している時間はねぇ……行くぞ!」

 大地を蹴り、奴の胸の中心にある【霊象石】へ左拳をねじり込んだ。

「【角宿蒼炎アルシマクアズール】」

 青い炎の爆発が【霊象石】が打ち砕いて世界を飲み込む。






 ――残されたのは胸に穴の開いたクローディアス。それを背中から倒れていく身体を流し目で俺は見つめた――終わった。

 見上げると立ち込めていた暗雲が晴れて日差しが差し込んできた。

 踵をかえし、同じく倒れているフェイの元へと向かおうとしたその時。

『……う』

 クローディアスがうめく。まさかあれを食らって生きているなんて!

 ――いや、でも起き上がってこない。

 ゆっくりと奴へ俺は近づいた。辛うじて息はあるものの、文字通りの虫の息。なんていう生命力。これも【皇帝級】の力か?

「……しぶといな」

 力なく開いた目。焦点はあっていない。静かに口を開く。

『……まさか……霊象気を体内で……光速……循環……させる……とは……な』

 ナキアさんと特訓で習得した技、名前は【星炉クライン】と付けた。【継約術】で生じた大量の霊象気を体内で高速循環させる。

 これにより身体能力は大幅に向上した。

 最初からまともに戦えたのはその公算が大きかったんだと思う。

 さらに俺の霊象気の性質が【太陽】だったこととで特異な事が起きた。

 循環速度が光速に近づくにつれ、体は重くないのに体重が増加したんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】 それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。 剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず… 盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず… 攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず… 回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず… 弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず… そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという… これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。 剣で攻撃をすれば勇者より強く… 盾を持てばタンクより役に立ち… 攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが… それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。 Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに… 魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし… 補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に… 怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。 そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが… テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので… 追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。 そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが… 果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか? 9月21日 HOTランキング2位になりました。 皆様、応援有り難う御座います! 同日、夜21時49分… HOTランキングで1位になりました! 感無量です、皆様有り難う御座います♪

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!

虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん>< 面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...