【本編完結】魂の輪廻により出会う番は再び愛を乞う

ぽんた

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それから

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 僕が再びロイドに会えてから、20年経った。

 竜族は15歳で成人で、誕生日を迎えたその日に僕たちは本当の意味で番になった。

 互いの逆鱗を飲ませ今世もオメガだった僕は、項を噛まれる。初めて愛しい人に噛んでもらえたのだ。

 今彼は王兄として現竜王の補佐をしている。

 そう、ロイドの次に王となったのは、彼の弟のロア。

 僕のお兄様が宰相としてロア様を支えているのだ。

 長年の牢屋生活と、僕を失ったことによる喪失感で、ロイドはかつての輝きを無くしてしまった。

 けれど、再び僕に会えたことでリハビリだと笑い仕事をばりばりとこなしている。

 城の騎士たちとも次々手合わせして、この間全員を5分以内に叩きのめしてやったぞ!と満面の笑みで帰ってきていた。

 先に言っておくが、この国に住むものは全員竜人である。

 竜人は身体能力が遥かに高く、たとえ力が弱い、虚弱だとされているオメガでさえそこらの人間より体力がある。

 小さい時の僕がいい例だ。

 オメガで幼かった僕でも息切れすることなく、直立の壁をスイスイ登れるのだ。

 そしてそれが鍛えられた大人たち数十名を相手に、たった5分。

 さすが元竜王。

「…様、奥様!そろそろ中に入って下さいまし。風が冷えてきましたわ、お体にもお腹の子にもよくありません!」

 おっと、もうそんな時間か。

 侍女のアンリが焦りながら忠告をしてくれたおかげで、やっと空気が冷たくなってきたことに気がついた。

 そして…

「もうそろそろで会えるもんね、ありがとうアンリ。」

「いいえ、屋敷の者全員楽しみにしておりますから!」

 僕のお腹の中には、新しい命が芽生えている。もう数週間で生まれる予定の子だ。

 はち切れんばかりの大きさになったお腹を、ロイドはいつも愛おしそうに撫でる。

 彼は、再び僕を失うことを恐れてほとんどこの屋敷から出すことはない。けれど、侍女か執事、護衛の誰かをつけるなら庭まで出ても良いと言われているのだ。

 なんでも、この屋敷にいる人間は全員、ロイドによって直接しごかれ…鍛えられた竜人ばかりなのだ。

 だからただの侍女に見えても普通の騎士より強い、なんてことはこの屋敷では当たり前だ。

 軟禁されてはいるけれど、それで彼が安心するなら僕はそれでいい。家族に会えないわけじゃないし。

 ……いまだに不思議なのだけど、どうして前世の僕の記憶がロイドに流れたんだろう?
 それに、あのとき僕が前世を思い出したことも。

 なんか、仕組まれてた…?って思っちゃう。

 まあ、過ぎたことを今考えてもどうにもならないけれど。

 自室に戻って温かいミルクを飲ませてもらうと、少しうつらうつらとしてきたので、侍女の『少しお眠りになられては?』という言葉に甘えさせてもらった。

 ほんの少しだけ、ロイドが帰って来る前には起きておくから…そう自分に言い訳をして夢の中へと飛び立った。























 ✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿























 ああ、これは夢だ。


 こんなにも自由に空を飛び回ってるなんて。


 僕の隣にはロイドがいて、美しい漆黒の鱗が太陽に照らされて朝露に濡れたかのように輝いている。

 僕も彼よりは小さいけれど、銀の翼をはためかせて青い空を彼と微笑みながら飛んでいた。

 よく見ると、彼の背中にはちょこんと何かが乗っていて、僕たちはそれを愛おしそうに見つめている。

 そうか、君は一足先に僕たちに会いに来てくれたんだね。

 僕たち家族は、それから色んな国を旅して、山を越えて、空を飛んで。

 幸せな…夢。






















 ✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿























 柔らかく頬を撫でる感触で僕は目を覚ました。

 すると目の前に、眦を下げて微笑むロイドがいたのだ。

「あれ…ろい…?おかえりぃ…。」

「ああ。ただいま。ずいぶん幸せそうに寝ていたが、何か良い夢でも見たか?」

 ロイドが帰る前に起きようと思ってたのに…。

「うん、ぼくたちがねぇ、このこといっしょにねぇ、そらをとんでたの…。そらをとんで、いろんなところをたびして…。ろいのりゅーかしたすがた、かっこよかったなぁ…。」

 寝起きでぽやぽやしながらそう伝えて、ハッと気がついた。

 彼が困ったようにこちらを見ていたのだ。

「あっ、別に空を飛びたいわけじゃなくて…!お腹の子とロイで一緒にいられたことがうれしかっただけなの…!」

 慌てて弁明するが、彼は苦笑して僕の口に指を当て黙らせた。

「いいよ、わかってる。…私が無理矢理君をここに閉じ込めて…私達の一族は空を飛ぶことに生を見出す種族だから、君にとっては辛いだろうということはわかってるんだ…。」

「ぷはっ、違うよ!僕は前世は人間だからそういう欲はあまりない。でも今世は竜人だから、番を外に出したくないのもわかってる!
 それに、ここにいるのは僕が決めたことなの!
 決してロイに閉じ込められてるつもりなんて無い!」

 僕が大きな声を出したからだろうか、彼は目を大きく開いて驚いているようだった。

 そして…やっぱり困ったように微笑んで、

「我が番には敵わないな。」

 そう言ってベッドから起き上がった僕を優しく抱き締めた。





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