あの子の花に祝福を。

ぽんた

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閑話「ある家の没落3」

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 結果は、母が1年の懲役、俺が7年、長男は…15年の懲役となった。

 母と俺は心からの反省が見られたようだが、長男は何故己が悪いのか全く理解できなかったらしい。
 俺と長男は同じ傷害罪が適用されたが、長男は一番重い15年。
 ずっと、『あいつが悪い、瑠夏が生まれたからだ!あいつさえ生まれなければ…』その繰り返しだったようだ。
 俺の育て方が悪かった。

 あの警官が以前面会で来たとき、心から面白そうに言っていたことがある。

『いやぁ、見ものでしたねぇ…。あそこまで魂がどす黒い人間、そういませんよ。あっ、別に貴方が育て方間違えたとかはないですよ。あれは天性のものですねぇ。ふふふ…あぁ…楽しみです。あ、貴方の息子なのに、よろしいんですかね?』

『もしかして、地獄に送る云々のやつですか。』

『ええそうです。
 ……あの子は。あの子は、あなたの奥さんが愛していただけでなく、神も愛するような子でね。
 まああの神は奥さんを愛したからその子をも愛するようになった、が正しいですけど。
 だからあの子を傷つけたのがよほど許せなかったようで。』

『はい…。』

『ふふ、だから、あの長男は懲役よりも、もっと重い、あの子が味わった地獄よりも、精神が崩壊しても、壊され続ける地獄へ放り込みます。』

『そう、ですか……。何から何まで、申し訳ありません。』

『いいえいいえ!いいんですよぉ。まあ、そういうことなのでね。ちゃんと償ったら、僕と一度どこかへ出かけましょうか。』

『はい…?』

『ふふ、それじゃあ、お元気で。
 ……あ、そうだ!最後に。こちらの世界と、あの子のいる世界は、時間軸が違います。
 こちらの世界のほうがあちらより時間短いらしいんですよねぇ。
 ま、それだけです。じゃあ今度こそ、さようなら。』

 そう言って振り向きざまに蛇の舌を出して去る彼は、どこか美しいと感じられた。

 それからの7年。俺はただ只管黙々とあの子への贖罪を続けた。
 たまに瑠衣に会うことがあるが、その時あの子に酷く暴力を受けた。

「あんたが俺をこう育てたのが悪いんだろう!!なんでお前だけが反省してるように見せてるんだよ!!」

 たしかに、俺が、瑠衣を、こう、育てたから……。

『あれは天性のものですねぇ。』

 彼の声が聞こえたような気がした。みぞおちを殴られ、顔を蹴られて視界が悪くなる中、周りの人間が駆け寄ってくる音が聞こえるけれど、俺ははっきりと言ったように思う。

「たしかに俺の育て方が悪かったのかもしれない。だが自分で物事を考えずにいた結果がこれだろう。考えることを放棄したのはお前だ。」

 それでも尚殴ろうとしてくる愚息は、駆け寄ってきた人たちによって捕らえられ、更に懲役が延びたらしい。

 俺がそれを聞いたのは、病院で目が覚めた時だった。

 俺は本当に、育て方を間違えたんじゃないのか?本当に天性のものなのか?
 色々と疑問は残ったし後悔もあるが、これもあの子の受けたことに比べたらマシな方だ。

「刑務所に、戻ります。」

 ベッドから降りようとすると、看護師が慌てて近づいて鬼の形相で叱ってきた。

「駄目ですよ!!あなたまだ安静にしてなきゃいけないの!!ほら、ベッドに戻りなさい!」

 あまりの剣幕に俺はタジタジだった。俺の傷は全治2週間だと。それまでは極力動かないようにと言われた。

 そして傷が治れば再び刑務所に戻って仕事をし、ある程度他の人と心置きなく喋るようになった頃に、俺は出所した。因みに、母は去年心労で亡くなったらしい。俺は本当に、何をやってるんだろうな。母と話すこともほとんどなく別れてしまった。

「それではお気をつけて。」

「後藤さんに会えたら俺たちのこと話してくださいね!もうすぐ俺達もでられるって!」

「はい。お世話になりました。」

 まだ人生は長い。これからもあの子の為、花の為に、贖罪を続けていこうと思う。

 そうして刑務所から出た俺は、ある人を見つけて薄く微笑んだ。

蛇穴さらぎさん。」

 あのヘビ警官である。

「ああ、昇太さん。おめでとうございます。いやぁ、長かったですねぇ。」

「ええ。まだまだ続きますけどね。」

「いい心がけですよぉ。それじゃあお祝いに僕の行きつけに行きましょうか。人間界は美味しいものがたくさんあって良いですねぇ。」

「はい、ありがとうございます。」

「ふふふ……随分嬉しそうな顔ですねぇ。」

「そりゃあ、蛇穴さんに会えましたから。」

「これはこれは……。」

「どうしましたか?」

「いいえ、なんでもありませんよ。じゃあ車できたので、助手席、どうぞ。」

 俺は女じゃないのに、と思いながらもエスコートされて向かったのは、老舗の高級旅館。 
 



「え、旅館?ですか?」

「ええ。」

 なぜ…と疑問に思いながらも旅館に入ると、女将さんや中居さんがズラッと並び、

「蛇穴様、田嶋様、お待ちしておりました。さあどうぞ。」

 女将さんに案内されたのは、海を一望できる豪華な和室。
 荷物やら何やらを部屋に運び込まれて、俺は暫く呆然としてたと思う。

「あ、俺……!そんなにお金持ってないですよ?!しかも泊まりだと思ってなかったから、着替えも殆ど無いし…!」

「ふふ、お金は大丈夫です。僕が払いますからねぇ。お祝いだって言ったでしょう?
 それから、ここは浴衣を着ていろんなところを歩けますから、近くに服屋さんもありますからね。
 あ、もちろんそこも僕が払います。お祝いですから!」

 そこからまた俺は呆然としてて。意識がはっきりしたのは、露天風呂に入ったところだったと思う。

「わ…………凄いですね。夕日が沈んでいくのが、わかります。」

「ふふ、人間界も良いところ、たくさんありますよねぇ。
 …………昇太さん。あなた、僕と共に天界へ行きませんか?もう、十分償ったと僕は思いますよ。」

 何を言っているのかわからなかった。天界?天界って、神様や天使がいるところのことか?え、俺が?!

「ふふ、わからないって顔ですね。
 天界は、神とその眷属、そしてその伴侶が住まう処です。
 本来、魂が穢れた者は入ることはできませんが、貴方は穢を自力で浄化しました。
 ならば、僕の伴侶として連れて行っても良いかなと。」

「は、伴侶…?」

「ええ。この僕、蛇穴ノ神の伴侶として、です。」

 え……神…?この人、神様の眷属みたいなものだって、言ってたじゃないか!てことは、普通、神使とか、それこそ、天使みたいな…!!え、神?!

「僕はね、この世界の創造神、深影様の部下なんですよぉ。
 だから強ち眷属も間違ってはないです。こき使われてますし。 

 ね、昇太さん。貴方、僕のこと少なからず好意を持っているでしょう。
 でも奥さんに操を立てて自制している。
 ですが、あの方は既に深影様の伴侶となられました。

 ねぇ、もういいでしょう?僕は待ちましたよ、7年間。
 贖罪するのは天界でもできます。
 でももう貴方は十分苦しみましたし、罪も償った。だから魂が輝いている。

 ね、昇太さん。僕の伴侶に……あ、あれ?昇太さん?!
 あああ、逆上せてしまいましたか…!人間とはなんと脆弱なんでしょうねぇ…!」

 後半は何を言っているのか、全くわからなかった。

 彼の優しく真綿で締められているような、蛇の体をぐるぐる巻きつけられているような、もう逃げられないという彼の執着が、何故か心地よかった。

 彼の本来の姿は、アルビノのように真っ白で、瞳だけは赤い。まさに神と声を大にして言いたいほど。
 そして天界は、人間の、しかも子供を虐待した俺を快く受け入れてくれる心の広いところだということは、この時はまだ知らない。
















 ※※※※※※※※※※※








 閑話は一応ここで終わりです。

 さて、夫は改心しましたが、長男は……。どうなるのでしょうね。
 もっとざまあが見たかった人は申し訳ありません。
 私もコテンパンにします!と言っていたのに思っていたより1000倍生温かったです。
 まあその分長男甚振りますよ。あいつは純粋な悪ですからね。
 取り敢えずその話は後日…。消化不良で申し訳ないです!

 また今度からは本編始まりますよ。

 長男はいずれ出てきます。閑話とかまた書くので。

 それでは引き続き

『あの子の花に祝福を。』

 をお楽しみください。

 ついでに!私の他の作品も!!お願いします!!!

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