あの子の花に祝福を。

ぽんた

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40.僕思いのお兄様。

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 体調ももとに戻って、やっと学園に通えるようになった。友人達は体調がもとに戻って良かったと喜んでくれたけど。
 ゼインとまたお別れしなきゃいけないのは辛い…と思っていると、思いもしなかった朗報がやってきたのだ。

「え!いいんですか!母様、父様!」

「うん。トーリ医師がそう言ってたしね…。会おうと思ったら王宮で会えるから、いいんだけど…。」

 なんと、まだ結婚はできないけど王宮で暮らしてもいいとのことだった!
 お医者さんが、これ以上離してはお互いに良くないと言ってくれたらしい。
 お医者さんありがたや…。

 父様は、僕と離れるのをすごく嫌がっていて。でも母様にお医者さんに言われたでしょっ!って。

 お兄様は…寂しそうな笑顔を見せるだけで、何も言ってこなかった。父様みたいに、泣くのかと思ってたけど。

「でもね、父様、母様、お兄様。僕、寂しくないわけじゃないんですよ?凄く寂しい。

 もっとこのお屋敷で、メイドさんとか料理長さんとか、色んな人と遊びたかったし、お兄様たちともいたかった。
 だけど、ゼインとずっと一緒にいられるのが、僕の願いだったから。

 ふふ、ちょっと家から出るのが早くなるだけですよ。それに、ここに帰ってこないわけじゃないですし、さっきも言ってましたけど王宮でも会えます。

 それからね?週末はゼインとここにお泊りしてもいいんでしょう?ちょっとだけ家で過ごす時間が短くなっただけですから!」

 そう答えると、皆何故か涙ぐんじゃって。

「大きくなったなぁ…」

「まさか13歳を目前にして家を出ちゃうなんて…」

「母様、父様、お兄様、みんな、みーんな大好きですよ!」

 そう言って1人ずつぎゅーぎゅー抱き締めると、お兄様がぼそりと言ったのが聞こえた。

「私のせいで…ごめんね…」

 お兄様の腕の中から見上げると、辛そうな表情でいるのが気にかかった。

「お兄様…?」

「ルカ、後でお兄様の部屋においで。王宮に引っ越すのは来週だけど、たくさん話さないといけないことがあるんだ。」

「は、い…。わかりましたよ?」

 少しのモヤモヤを胸に抱いたまま、家族会議?は終了して、ルイスと共に荷造りをするために部屋へと戻る。

「ルイス…お兄様のお話って、何だろうね…?」

 すると、侍従は思い当たるフシがあるのだろうか、眉根を下げて答えた。

「私には…お答えできません。申し訳ございません。」

 ルイスがそんな事を言うのは珍しく、お話、というのはあまり良くないことなのだろうなというのは何となくわかった。








「よく来たね。そこにお菓子を用意してもらったから。寝る前だから少しだけね。」

 夜、お兄様の部屋へ行くとテーブルの上には僕の好きなお菓子がずらりと並んでいた。これだけあって少ししか食べちゃいけないの…?と思いながらじーっと彼を見つめると…。

「うっ………じゃあ5つだけだよ…?」

「少ない……。」

「うぅっ………じゃあ6つ…。」

「むーー………」

「………じゃあ7つ…。」

「……1種類ずつはだめ?」

「ぐっ……可愛いけど…うぅん……仕方ない…1種類ずつ…。」

「やったあ!お兄様大好き!」

「ぐふっ…お兄様も…♡」

 フィナンシェ…マカロン…チョコクッキー…バタークッキー…ミニケーキに…あと…

「選び終わったかい?」

「んふふ、うん!ありがとうお兄様!」

 今まで朗らかだった雰囲気が、徐々に硬くなっていく。
 お兄様の決心が伝わってくるようだった。

「あのね…これから言う事で、お兄様を嫌いになるかもしれない。けれど、それも仕方ないことだと思う。
 …その……あの騒動のとき。殿下がルカに無体を強いたとき、私は…運命が離れると心身を壊すことを知っていたのに…。
 殿下に、ルカの前から消えろと言ってしまったんだ…。
 あまりにも、頭に血が上ってしまって…。」

 頭を鈍器で殴られたような衝撃が僕を襲った。
 まさか、お兄様がそんなことを言っていたなんて。

「だから……だから、ゼインは…僕に近づかなくて…婚約破棄の話も…出てたの…?」

 お兄様の顔をみることができなかった。僕を思ったが故の発言だったんだろうけど…。ゼインが近づかなくなった理由がお兄様にあると思うと、目を合わせることができなくて。

「それは…わからない。
 私が殿下の所へ謝罪しに行ったとき、彼は酷く自分の行いを後悔していて、ルカの側にこれ以上いたら再びルカを傷つけるのではないかと怯えていらっしゃった。
 これ以上ルカを傷つけるのなら自分は側にいないほうが良いと思い込んでいたんだ。
 だけど…少なからず私の言ったことを気にしてはいたと思う…。」

 そんなことがあったんだ…。

「本当に、申し訳のないことをした。ルカを思うあまりとは言え、2人を引き裂くような事を言ってしまった。
 謝罪してもしきれない。」

 そう言って頭を下げるお兄様。
 お兄様はいつだって僕のためを思って行動していることを、僕は知っている。
 それが行き過ぎることだって、過去にはあった。
 今回は、簡単には許せそうにない。

「……お兄様。」

「はい。」

「お兄様がしたこと、すぐには許せそうにありません。」

「……ああ…。」

「でも、ちゃんと僕を守りたかったからそう言ったというのは、わかってるつもりです。」

「ああ。」

「……だから、僕とゼイン用に、新しい魔道具を作ってくれませんか。」

「……は?」

 俯いていたお兄様の顔が、驚きと混乱でちょっと間抜けになってる。ふふ、可愛い。

「まだ結婚式は出来ないから、指輪は無理だけど。
 おそろいの腕輪が欲しい。僕の色と、ゼインの色の。
 内容は…そうだな…。ずっと離れられないように、心が離れないように、どこにいてもゼインを感じられるような…。
 そんな物が欲しい。
 それで許してあげます。あ、でもゼインにももう一度だけ謝りに行きましょ?
 ………お兄様?どうして泣いて……」

 困ったように笑って、それでいて泣いてる。

「ふはっ……ルカは…優しいなぁ…。
 わかった。とびきり良いのを作ろう。母上達にも負けないくらい素晴らしいものを、だ。
 それから、ゼイン殿下にもう一度謝りに行くよ。
 ありがとう、ルカ。」

 頭を撫でてもらって、お休みの挨拶をして。
 部屋に戻ると、ずっと我慢していた涙が出てきた。

「ふっ……うぅっ……おうちからっ……でたくない……!みんなとっ……はなれたく、ないっ……!」

 でも、ゼインとずっと一緒にいたいのも本当で。
 だけど彼が王宮から出て暮らすのは、今は出来ないということも理解している。

「ぜいん……っ…」

 その日の夜は、なかなか寝付けなかった。











 ※※※※※※※






 作者的感想なんですが…

 ルカちゃんって不幸にしたくなりませんか?

 そこらの悪役より不幸にしてる気がする…。

 んでそのあと世界一幸せにするのが私の役目なんですけども。

 本日Twitterで見かけたんですが、自分が作った子に人権は無いんですよ。その子を生かすも殺すも作者次第。

 もちろん幸せにしますよ?!でも、なんていうか、こう…

 世界一幸せになりたいなら同等の不幸を味わって欲しいというジレンマ

 私のプロフィールに書いてありますが、私の性癖がね…

 トラウマ持ち受けがトラウマ刺激されて錯乱してるところを攻めに愛で宥めてほしい。

 この作品内で2回そのシーンがありますよね。
 もう少し増やしたいなと思ってます。

 じっくり長い年月をかけてゼインくんにはトラウマ排除してほしいですね…(*^^*)

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