あの子の花に祝福を。

ぽんた

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番外編『37話のとき、もしルカ救出に間に合わなかったら』

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 ※作者がただ書きたかっただけです。
 めっちゃ苦しいので見たい方だけ見てください。
 ちなみに万が一でも助からないことは無かったです。

 そこは愛の力なのでね。

 だから今からの話は、世界線が違うとでも思ってもらえたら良いですね。

 ―――――――――――――――――




「ルカッ!!!」

 水飛沫をあげて湖に沈むルカ。私は急いでそこへ飛び込み、あの子の姿を探した。

 ルカのいた場所の一歩前は、急に深くなっていて底があまり見えないほど。そこにルカの姿を見つけた。

 我武者羅に泳いで身体を掴み、水面へと行く。そこには影達が待機していて。

 地面にずぶ濡れのルカを横たわらせ、胸骨圧迫で水を出そうとした。

「ふっふっふっ、ルカッ、起きて…!」

 けれど、何一つ反応はなく。

 ずっと、ずっと。心臓マッサージを。

 影がもう無理ですと、言ったが。

 私は止まれなかった。続けていたら、目を覚ますかもしれない。あの美しい宝石のように輝く瞳で、再び私を見つめてくれるかもしれない。その一心で動いていた。

「もうやめてくださいっ!殿下!!これ以上はルカリオン様の身体が壊れますっ!!」

 影の一人が私を引きずってルカから引き離した。

 なぜ離す、私の運命から、なぜ離すんだ。

 私とルカは、一つなのに。

 あの日に照らされ雪のように煌めく髪が、肌に張り付いて口の中へ入りそうだ。取ってあげないと。あの子は、よく髪が口の中に入ってしまうから。

 いつも取ってあげると、照れたようにはにかんで、ありがとうと可愛く言ってくれるんだ。

 ああ、身体が濡れて、冷えるだろう。可哀想に。

 身体が弱いから、きっと帰ったら風邪をひくだろうな。

 私が側にいて、看病してあげないと。

 ずるずるとルカの元へ近づくと、今度は影達は私達を引き離さなかった。

「ルカ…、帰ろうか。風邪を引いちゃうね。暖かくしないと。ヨン、タオルを。」

「……っはい…。」

 ふわふわのタオルで、この子を優しく包む。

 可愛い、私の…。

 私の、愛しい、薔薇。

 眠っている姿も美しいなんて、君は神に愛されているんだろうか。いや、愛さないほうがおかしいね。

「帰ろう、皆が待ってる。…ルカ、目が覚めたら、沢山お話しようね。謝らなきゃいけないことが、沢山あるんだよ。」

 額にキスを落とし、馬へと跨る。この子に振動がいかないように、速すぎないスピードで公爵家へ向かった。










 公爵家へ着くと、既に屋敷の者が沢山出て来て。
 影が伝えたのだろう。仕事ができるなぁ、後で報酬をあげようか。

「ルカ、ほら、みんな迎えに来てくれたよ。」

 抱えてクリス殿とアレク殿の近くまで寄る。
 あれ、何故だ?ルカは帰ってきたのに、なぜ屋敷の者皆泣いている?

「ルカを返せ。」

 険しい表情のクリス殿が言い、私はルカを渡しながら早く医者を呼んでくれと伝えた。

「早くしないと、風邪を引いてしまう。まだ身体が冷たいままなんだ。」

 そう言うと、何故か可哀想なものを見る目で見られた。

「もう、必要ない…。」

「え?どうして。私はこの子が苦しむ姿を見たくない。医者を呼んで、なるべく苦しまないように薬を処方してもらわないと。」

「わからないのかっ!!もう、この子の心臓は……!動いてないんだよっ!!」

 クリス殿は涙を流しながら大声をあげた。隣でアレク殿は膝から崩れ落ち、ジークフリードは声を上げて泣いている。

「何を言っている?質の悪い冗談は笑えない。」

 彼からルカを再び渡されて、胸に耳を当てるが…

「ほら、やっぱり動いてるじゃないか。驚かせないで。それよりも、早く医者を。」

 全てを諦めたような表情で、彼は使用人に医者を呼ぶよう指示を出していた。

 私はルカを抱いて、この子の部屋へと進む。

 もう何年になるだろうか。

 ずっと長い間、この子といるけれど。

 愛しいが募るばかりで。

 この子の可愛らしいぬいぐるみがたくさん置かれたベッドに下ろし、頬を撫でる。

「早く起きて、私とお話しようね。ずっと1人にして、ごめんね…。もう、1人にはしないし、酷いこともしないから。だから…起きて…。」

 すぐに医者は来て、胸のあたりを確認している。

「………っル、ルカリオン様は…。日々の疲れが原因で…、しばらくは目を覚ましそうにありません…。」

「風邪薬は?」

「大丈夫でしょう…」

 なんだか、あまり納得はできないが。まあ医者がそういうのならそうなのだろう。

「そうか…。わかった。ではしばらく待つよ。ありがとう。」

 そう言うと医者は下がって、クリス殿は何か小さなアクセサリーを持ってきた。

「それは?」

「これは……いつまでも美しくいられるように、という願いを込めたイヤーカフだ。着けたら外さないようにしてくれ。」

 どうしてか、ルカに合わない茶色の地味な物を付けさせたクリス殿。まぁだが、そんな願いが込められているなら、きっとルカも喜ぶだろう。

「すまないが、ルカとルカの大切なものを持って王宮へ行ってくれないか。」

 突然の申し出に、私は内心驚きながらも理由を尋ねる。

「きっとルカは、起きたとき君の部屋にいたら喜ぶだろうと思ってな。」

「そうか…。ふふ、わかったよ。この子が起きたら知らせるから、迎えに来てあげてね。この子は家族が大好きだから。」

「っああ…。そうしよう…っ…。」

 再びクリス殿は涙を零し始めて。内心よく分からなかったが、シーツに包んだルカを抱えて王宮へと帰った。









 王宮は、いつも賑やかだというのに、今は皆静かだな。
 まるで誰かが死んだ時のようだ。
 まあ今はこの静かさが丁度良いのかもしれない。ルカには辛いだろう。

 すると、前から兄上達がやってきて。

「兄上、父上、母上も。どうなさいましたか。あ、ルカとともに来ることがもう知らされていたんですね。」

 そうにこやかに微笑むと、皆辛そうに顔を伏せた。

 ただ、父上は滅多に見ないくらい優しく微笑んで、

「さあ、ルカくんを早くベッドへ運びなさい。いくらお前の腕の中とは言え、寝づらいだろう。」

 そう言われてみればそうだと思い、彼らに別れを告げて己の部屋へと向かう。

 そっとルカを横たえると、寒くならないようにとシーツをかけ、隣に部屋から持ってきたぬいぐるみたちを置く。

 ああ、私も少し眠い。そういえば身体がまだ濡れていたな。着替えてからルカと共に眠ろう。

 さっと服を脱ぎ、出してあったさらさらの服へ。

 ゆっくりベッドへ入ると、幸せそうに目を閉じるルカが。

「おやすみ、ルカ。私の愛しい運命。」












 今日、ある貴族令息の葬式が執り行われたらしい。
 誰かは何故か聞かされなかった。
 父上達が皆その葬式に出ているというのに、私は出なくてもよいのだろうか。
 そう聞くと、皆揃えたようにこう言う。

「ルカくんの側にいてやりなさい。いつ目が覚めるのかわからないのだから。」

 今日も私は目覚めぬルカを撫でる。
 早く目覚めるように、と。








 あれから数年。ルカはまだ目が覚めない。

「もう…栄養をとってないから全然背が伸びてないよ?
 ルカ……私の運命…。君はいつになったら目が覚めるんだい?お寝坊さんだね。

 そうそう、ジークフリード。子供ができたって。君に似てるらしいよ。綺麗な子だって。ふふ、見てみたいね。
 私達の子も、きっと美しいだろうね。
 早く君との子に出会いたいよ。

 あと、あのトイルズ伯爵令息も、フースカの第三王子と結婚したみたいだよ?今、蘇生の研究を共にしているらしい。凄いね、ルカ。

 ……ねぇルカ。ずっと君は美しいままだ。私はきっと…ヨボヨボのおじいちゃんになっても君を好きでいる。でも君は…、いや、そんなことありえなかったね。
 私達は運命なんだから。今日も愛してる、ルカ。」

 眠り続けるルカの唇にキスを落とした。










 数十年後。

「あの狂った王弟殿下が、とうとうお亡くなりになったって。」

「ああ、最後まで遺体保存の魔法がかけられた、運命の体を側に置いて愛を囁いていた人か。」

「自業自得な部分はあったとはいえ、辛いよね…。」

「まあ、本人は最後まで幸せそうだったらしいから、いいんじゃないか?」

 国を挙げて行われた葬儀には、王弟殿下の棺と。

 ――小さな、子供用の棺があったそうだ。

 隣に並べられ、来世でも2人が共にいられるように、そう願われながら、土の中へと埋められた。

 殿下の棺の中は見ることが出来たらしいが、運命の相手の棺は固く閉じられていたそう。

 大層美しい少年だったらしい。アーバスノット公爵家の、現当主の伯父。若くして自死し、そのまま殿下の側で眠った人。
 外見だけでなく、心根までが美しく、会う人すべて彼に魅了されたらしい。

 後に、歴史書にはこうかかれるようになった。

『運命から離れるな、運命を逃すな、運命を囲え。』

 運命を死なせてしまったらこうなるよ、という例にゼイン・アントス第二王子の名前が使われ、教訓としてその言葉が載せられた。





 2人の墓石は少しの隙間だけあって隣同士に設置されている。

 いつからか、墓石2つを纏めるようにして赤い薔薇が咲き始めた。

 まるで、死んでも離れないというように。








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