無冠のエース

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序章

強豪横浜海林高校入学セレクション

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「これより横浜海林高校サッカー部入団セレクションを行う。」


本編主人公神風 雷人は今、横浜海林高校の入団セレクションを受けに、海林高校二軍のグラウンド、通称スカイウォーズに来ていた。

高校のサッカー部のグラウンドにスカイウォーズなどと名前がついている…

その理由はこの海林に入りたいと考えたことがなくても、サッカーをしていれば一度は耳にする理由だった。

二軍グラウンドスカイウォーズは横浜にある円海山という山の中にある。
標高は150Mくらいの鎌倉などにつながる山道の中にある。

学校校舎は桜木町にあるが、このグラウンドはそこから電車とバスで1時間はかかる場所だった。

風人は、「無冠のエース」と神奈川の中学サッカーでは有名な選手だ。
物心ついた頃には兄がしていたサッカーに触れ、気づけば自分もボールを蹴ることを覚えていたのだ。

「ここが、スカイウォーズ」
別名天空の戦場だ。

なぜ、高校のサッカー部のグラウンドにこんな名前がついたのか、神奈川県下強豪の海林高校は部員総勢150名を超えるマンモス校だ。
その中で一軍に入れるメンバーは20人しかいない。
入学者が入ったばかりのころは、入部希望だけでも150名はくる。
そのためセレクションを行うのだが、練習生の枠もあるのだ。
だから毎年あふれんばかりの入部希望者が入ってくる。
一軍に上がるために何人もの部員が競い合い、そして脱落していく。
夏の大会の前には、150人前後に毎年落ち着くのだ。


海林高校の一軍に、1年生は過去に数えるほどしか入ったことがない。
必ず下積みの時期が1年はあるという事だ。

例外はこのセレクション。
入部希望者と言えど、このセレクションには、海林高校の強力なスカウトが各県から選手を呼んでくる。
スカウト組織としては抜け目がない。
各都道府県を1チーム10人で回るのだ。それが5チームある。
どんな弱小チームでも視察を欠かさず、必ず選手の分析と特性によるチーム適切を徹底して調べ上げる。
それが、海林高校サッカー部スカウトチームだ。

風人はそこでスカウトを受けた。
中体連の県リーグにはトップリーグから1部から3部までのリーグがある。

風人は1部リーグに所属のBANFY横浜にいた。

中体連合同の高円宮杯、クラブチームのみのクラブユース。
どちらも全国につながる大会だが、県予選ベスト8が最高だった。

それでも海林高校スカウトチームは抜かりなく風人をチェックし、スカウトしたのだ。

「よぉ~風人じゃんよ、おまえも海林受けるんだ。」
 聞き覚えのある声だった。
誰だかもわかってる。
わかってるからこそ振り向きたくないやつだった。

「ふ~う~と~くん」
茶化すようにさっきからからむのは…
「なんだようっせーな」
風人のイラつき混じりの返答に肩をすくめ、手をやれやれと開く少年。
「相変わらずつれないねぇ~、俺の事忘れちゃったぁ?」

相変わらずちゃらいこいつ。
反射的に風人がイラついてしまうのはこいつの話し方だ。
神奈川トップリーグ、東急レイズFCの点取り屋「神谷 力」だ。
風人はこいつが嫌い。ただ喋り方がうざいから嫌いなわけではない。
こいつ上手いのだ。シンプルにサッカーが上手い。そして屈辱的な負けを負わされた過去があった。
「勝者が敗者に歩み寄るのはNGじゃないか?失せろ」
風人の物言いに呆れた力。
「相変わらず負けず嫌いだな。しかも相変わらず他人行儀、いい加減昔の事は忘れろよ」
昔の事…、力は風人のライバルであり、従兄弟なのだ。そして風人は負けず嫌い。
物心ついた頃から力は天才だった。天才ゆえに自分の親にも力と比べられ、風人にとってそれが1番嫌だった。
力を嫌いな要因の1番の理由は、力が天才であり、何をしても勝てない。
嫉妬であり、嫉妬でしかないが、それが理由でまともに話してこなかった。
自分が惨めになるからだ。
「別に、お前と比べられることに今更とやかく言うつもりはない。
ただ、お前には負けねぇ。それだけの話だ。」
風人の言葉を鼻で笑う力、「んなこと言ってけど風人、お前はいつもそうやって強がる。まぁいいけど、お互い頑張ろうや。」
そんな力の言葉を尻目に、風人はセレクションの説明始まる輪に集まっていった。
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