孤高の愛の傍らで…。

礼三

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8 不必要な公女

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 父は初恋を拗らせていた…。
 母から何度も聞かされた話だ。

「お父様は昔から王太后様、一筋だけど…。本来、人の気持ちは移ろいやすいものなの…。だから、貴女も今は無邪気に私を大好きって言ってくれるけど…。噂を聞いて、お兄様のように私を嫌いになるかもしれないわね…。それでも、少しでも長く…。貴女には私の娘でいて欲しいわ…。ふふ…。いつか必ず子供は親元を離れていくのにね…」

 深い愛情を持って育ててくれた母のことが私は大好きだ…。

 私はグラジオラス公爵家で「不必要な公女」と蔑まれた。
 父の子供は後継者である兄だけで良かったのに、母が私を産んだからだ。
 私の存在は王太后様を苦しめるのだとか…。父と王太后様の想いが報われるためにも、私は必要なかったらしい…。
 そこに父の責任はないのだろうか?母一人では子供は作れない。
 王太后様を可哀想だと思うならば父が母を抱かなければ良い話なのだ。
 だが、この手の抗議したならば、王太后様に嫉妬した母があらゆる手段で父を誘惑したのだとか有りもしないことをでっちあげられるだろう…。
 この王国では母は悪女と言われている。
 そして、それを誰もが信じている。鼻で笑っちゃう話だ。あり得ない…。
 だから私は母を悪女に仕立てあげた愚かな人々の話をしようと思う。
 母から離婚を言い渡されたとき父は呆然とした。
 父は父なりに母を愛していた。
 後継者のために否応なく結んだ縁だったが、母の朗らかな笑顔へ惹かれ、人となりに小さな好意が芽生え、それが幾つも重なり、いつしか大きな愛情へと変わった。
 父曰く、母と結婚して以来、女性と不貞を働いたことはないらしい…。
 王太后を愛していた過去はあったようだが、王太后は王家に嫁いだ身、迎えた妻を大事にしようと心に決めていたのだそうだ。
 擁護するつもりは全くないが、父は根は途轍もなく真面目な男なのである。
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