キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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高等部

172、決戦前夜2

一瞬の静寂のあとの、衣擦れの気配。
訪れる痛みを予想してぎゅむっと目を瞑るボク。

と。

ガジッ!

「ひゃあああっ!!」

訪れた痛みは、ボクの想像していたものとは違うものでした。

「お、お、お、お、お兄様?!」

噛んだ!
お兄様が、ボクの首筋を噛みましたっ!!
軽くですけれど!

首筋を押さえ、陸に挙げられた魚のように口をパクつかせることしかできません。
首筋に一瞬だけ感じたお兄様の吐息。
触れた唇の熱。
そして、硬質な感触……。

死の前には走馬灯のように一瞬でこれまでのことが頭の中を駆け巡るといいます。
一秒が何時間にも感じられる瞬間。
理解してしまいました。理解できてしまいました。
この一瞬の情報量の多さたるや!
あまりのことに頭がクラクラします。

「は、はわわ!なんてこと!なんてこと!!」

パニックのボクにお兄様は悪戯そうにその目の奥を光らせました。
額を合わせ、鼻が擦れるような距離で甘く囁きます。

「クリスをぶつなどできるわけがなかろう。で、どうだ?夢ではないと信じてもらえたか?
まだならばもう一度……」

言いながらまた僕の首筋にその美しい唇を……

「わああ!だ、ダメですっ!し、信じましたっ!現実でしたっ夢ではありませんっ!」

両手でしっかりと首筋をガードしながら叫んだボク。
ふと、自分の口から出た言葉で改めて自覚してしまいました。

「……夢ではない………?え?……あの…………。お兄様は、ボクのことが、あの………弟としてではなく好き?」

だんだん声が小さくなってしまいます。最後なんてまるで囁き声のようになってしまいました。
それでもお兄様の耳にはしっかりと届いたようです。
甘やかに微笑み、そっとボクの頬を撫でるお兄様。

「そうだ。私はクリスとこのベッドの天井の星を眺めたときから、いや、その前にクリスがそのキラキラと輝く瞳で真っすぐに私を見つめたときから、クリスが好きだ」

え?そ、それって……

「ボクとお兄様が出会った日?!えええーっ?!」

今度こそびっくり仰天したボクに、お兄様がおかしそうにクスクスと笑う。

「私としては分かりやすかったと思うのだがな?クリス以外にはバレバレだったようだぞ?」

「はあ?!え?な、なんてことっ!なんてことっ!」

絶賛ボクの頭は噴火中です。もしかしたら、熱で髪の毛がくるんくるんになってしまっているかもしれません。
わああ!大声で叫びながら走り回りたい気分です。
嬉しい!恥ずかしい!なんてこと!

まさか8年も!ボクの推しがボクのことが好きだった!!

わああ!
わああああ!!

「あの、あの、ボク、お兄様のことが大好きなのですが、それは最初はそういう好きとは違って敬愛と尊敬と全世界全ての幸福を捧げたいという想いだったのですが、あの、もしかして、もしかして、ボク、ボクも……その頃からお兄様をそう言う風に好きだったのでしょうか?お兄様も周りのみなさまも、ボクがそうだって気付いて……?」

涙目で問えば、返ってきたのは最高に輝ける笑顔だった。

わああ!知らなかったのはボクだけ!
気付いていなかったのはボクだけだったのですね!

ということは、ボクは周り中にボクがお兄様をそう言う風に大好きだって自ら口にして回り、かつ行動で示し、かつ生温かく見守られて………

なんてこと!嬉しいのと恥ずかしいがすぎる!!

情緒がおかしくなったボクは、もぞもぞと下に下がるとくるうりと丸くなりました。
無理です。恥ずかしすぎます。
これまでアイク様たちに言われたように、ボクは人前で堂々とイチャイチャ……わあああ!
余りのいたたまれなさに身の置き所がありません。穴があったら入りたいのですが、穴がないので手足をぎゅうっと丸め小さく小さく身を縮めます。

ボク明日からどんな顔をして歩いたら良いのでしょうか?
は!お父様やお母様はどう思っていたのでしょう?

「お父様に申し訳ないっ!!」

ガバリと顔をあげ突然叫んだボク
恥かしさも忘れ、驚いた顔のお兄様の胸元をぎゅうっと握ります。

「あの、あの、ボクはお兄様が大好きなのですが、お兄様がボクを好きだと言ってくださるのも大変うれしく、でも推しに愛されるのは解釈違いというか、モブなのに申し訳なさすぎて鼻血が出そうになるのですが、それよりもなによりも!!」

目から何かがびゃあっと吹き出てしまいました。

「ボクとお兄様は入籍済みの兄弟なのですっ!アウトですっお兄様っ!ど、ど、ど、どうしましょう!!」

近親相姦、ダメ!絶対!
同性婚はありとしても、兄弟でそれは道徳的にアウトですっお兄様!!



この段階でもうボクの頭からはリョウのことなんてすっ飛んでおりました。
お兄様とボクの……に比べたら、そんなことは些細な問題です。
ハッキリ言って、富士山と土手。ライオンとミジンコ。
例えが変なのは許してください。だってまだ情緒が迷子なのですもの。
とにかく、リョウがどう介入してきても、今のボクなら何とも思わない自信があります。
周りの人だってそうでしょう。
だってボクとお兄様が……ですよ?!
その衝撃にくらべたら、些細な事です。

今のボクたちの最大の敵は、リョウジェシーではありません。
それは世間の常識。モラル。
兄弟で好き同志だったらどうしたらよいのか。
推しに好意を持たれるモブがありかどうか。
この壮大なテーマに比べたら、あざと令息、偽の主役なんぞどうでもいい!



「お兄様。ボクがお兄様を大好きで世界一大好きで、なんでしたら宇宙を超えて大好きなことに間違いは無いのですが………兄弟では結婚できません。そういう決まりなのです………」

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