キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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高等部

184、完全勝利

ミノくんの言葉に今度こそリョウは絶句。

「……え?だってここ……ゆうと僕のための世界のはず……」

「「……は?」」

ボクとミノくんの声が被ってしまいました。

「あの……ごめんなさい。意味が分かりません。何を言ってるんですか?」



うつろな目でリョウが語ったことを何とか纏めると、こういうことだった。




前世でボクに出入り禁止&ブロックされてから、リョウは引っ越しを余儀なくされた。
リョウは母一人子一人で、母親はいわゆるバリキャリ。
リョウが中学生になると「もうひとりで大丈夫でしょ」と子供一人を置いて長期出張に平気で言ってしまうような人だった。
外聞を気にする人だったから、自分の息子がストーカーまがいなことをしていることを問題視。
物理的に息子を引き放すことにした。

でもリョウは諦めきれず、なんと電車を乗り継ぎ休みのたびに僕の家の近くをうろつき情報を集めていた。
部屋の窓に飾られていたグッズから僕が「ラブ☆レボ」にはまっていると知り、リョウもやりはじめたらしい。
僕が良く書き込んでいた提示版も見ていて、僕がジル様推しで「ジル様を救いたい」「どうしたら救えるの!」と語っているのも知っていたのだという。
提示版の書き込みから、僕とミノくんが会うことを知ったリョウ。
あの日、リョウも僕に会おうと待ち合わせ場所近くにいたのだという。


ここまで聞いてボクとミノくんは思わず叫んだ。

「気持ち悪っ!完全にストーカーじゃん!!なにやってんの?!」
「うわっ!ヤバッ!本物かよっ!」

腕にできた鳥肌をせっせとさする。
怖い!怖すぎる!!


「だって、しょうがないじゃん!ゆうに会いたかったんだもん!なのに、なのにさああ!!
なんで僕と再会する前に死んじゃってんの?ダメでしょ!
慌ててゆうの所に行ったら僕も死んじゃったみたいでさ。
気付いたら『ラブ☆レボ』っぽい世界にいたから、これはゆうと僕のための世界なんだって思って、それでゆうのためにジル様を救ってあげようとしてたんじゃん!
可愛く生まれたから主人公に成り代わって僕がアイク様かジル様を攻略して、ジル様を断罪させなければいいと思って!
髪をピンクにして、クソ親父を誑し込んで頑張ったんだよ?
そしたら、ゆうがいたんだもん!
だから、僕とゆうのための世界なんだよ、ここは!
ジル様はどうだっていいけど、僕から有を取るなら敵でしょ!」


やけになったみたいに持論を語るゆうに、ミノくんが冷静に突っ込んだ。

「いや。俺も来てるし、どう考えてもお前はジャマモンだろ。
いわゆる……巻き込まれ転生ってやつ?お前ははなから対象外なんだよ」


自分中心に考えて生きて来たリョウだから、まさかの「巻き込まれ転生」扱いに愕然。
それを否定しようにも、ミノくんという第三者がここにいる以上「ゆうとリョウの世界」説はありえませんからね。
なんども「おかしい」と思いつつ否定してきたのでしょうが……そろそろ年貢の納め時です。

「先ほども言いましたよね?
ボクはお兄様をお救いするためにここに来たのです。で、ミノくんはボクのためにきてくれたの。
あなたは呼んでいません。
居たらいいなと思ったこともありませんし、むしろあなたが居なくて嬉しいと思っていました。
つまり、この世界はあなたとボクの世界ではなく、お兄様のための世界なのです。
お兄様が正義なのです。
ボクもミノくんもお兄様もあなたを必要としていません。
あなたはあなたで勝手に生きてください。
ボクたちとあなたは無関係です。単なる同郷の敵にすぎません。
せっかく伯爵家の養子になったのですから、貴族として真っ当に生きればいいのでは?」




完全にリョウの抵抗が止んだ。
パタリと腕が力を無くし、その顔に絶望が浮かぶ。

「……ゆう……ゆう……!」

ボタボタボタッ

リョウの両眼から滝のように涙が零れ落ちた。

「ゆう……!!」



「あのね。リョウ。
僕、一緒に秘密基地を作って遊んだリョウのことは好きだったよ?
変わったのは僕じゃない、リョウだよ。
リョウが僕を『自分の』だって言い始めたとき、僕を孤立させ僕の苦しみを『これでゆうには僕だけだね』って喜んだとき、僕の大好きな幼馴染のリョウは消えたの。
二人の道は離れたんだよ。それを選んだのは僕じゃない。リョウなの。
これからは単なる同級生。ボクたちとは関係のないところで幸せに生きて。
バイバイ、リョウ」




と。

ぴょーいっとブリードさんが上からリョウの上に飛び降りてきました。

ベチッ!

「わああ!な、なになになにーーー!!………え?と、トカゲ……?」

ブリードさんはその指の先でリョウを「てち」と叩きます。
そして何事のなかったかのようにてちてちとボクの所にやってきて、ちょこんと止まりました。

リョウには見えなかっただろうけど、ボクには見えました。
ブリードさんが「てち」としたとき、黒い靄のようなものがすうっと消えていったのが。

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