キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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高等部

187、リョウの秘密

さあ、お兄様の所に、と思ったらブリードさんから待ったが入りました。

「まあ待て。先にあのジェシー、いや、リョウとやらについて言っておかねばならんことがある」

「!!そういえば、ブリードさんがてちってしたとき、何か黒いのがリョウからもわってしていたんです。
アレは何だったのですか?」

ボクの言葉にミノくんもコクコク。

「俺はそれ見えなかったけど、なんかあの後、急にリョウのやつ大人しくなったのは分かる。
……なんかに憑りつかれてたとか? 」

ひえ!だからそうゆうのはダメなんですってばあ!
慌ててひしっとミノくんにくっつくボク。
ミノくんも自分で言って怖くなったとみえて、身をブルリと震わせてちょっとだけボクに寄り添ってきた。

そんなボクたちにブリードさんは呆れ顔。

「そんなものが憑いているのなら、とっくの昔に命を失っておろうが。あれは……そうよな、前世の未練のようなものだ」

ん?んん?

「奴に触れた際、なぜあ奴がああなったのか見えたゆえ、話しておこうと思ってな。
主らは前世を覚えておるのだろう?」

お見通しでしたか、ブリードさん。
まああれだけ目の前で話していたらそうなりますよねえ……。

「……えっと、お兄様には『夢でみた』ということにしているので、内緒にしてくださいね?」

「うむ。兄御もうすうす気づいておるとは思うがな」

ですね。お兄様の様子からすると、ボクが自ら言い出すのを待っていてくださるのでしょう。
無理にせかそうとはせず、ボクの意思を尊重してくれる、お兄様はそういう方だもの。

「それでも。きちんとお話したいと思いますので、もう少しだけお願いします」

「……難儀よのう。だが承知。
それもあったゆえ、あれのおらぬ場で話しておこうと思うたのよ」



ブリードさんが教えてくれたのは、なぜリョウがああなったのか。

それはリョウの生い立ち、家族ゆえだった。

ああ、思い出した。
前世のリョウは、母一人子一人のおうちだった。
お隣の家だったから、ゆうももちろんリョウのママには会ったことがあった。
礼儀正しくて、きちんとした人だという印象だった。
ただ、いわゆるキャリアウーマンでお仕事が忙しく、リョウは良く一人で留守番をしていた。
その分お金持ちではあったみたいで、お手伝いさんみたいな人が食事を作ってストックしてくれているみたいだった。

でも、リョウは本当はゆうの家に憧れていたんだって。
パパとママがいて、みんなで一緒に食卓を囲む。
何かしたら褒めてくれて、悲しいときには抱き締めてくれる、そんな家族。

リョウの一番側にいたのは、ゆうだった。
ゆうはリョウが何かできるとリョウを褒め、リョウが辛いときにはリョウを抱きしめて慰めた。
リョウの存在意義は、いつしかゆうになっていたらしい。

でも、ゆうの存在意義はリョウではなかった。ゆうには他の世界があった。
小学校にあがると、当たり前だけど、リョウ以外の友達もできた。
行動範囲も広がって、友達と遊びに行くことも増えた。
リョウは徐々にそのことを不満に思うようになっていたみたい。

「おぬしがヤツの母が埋めるべき隙間を埋めてしまっておったのだ。
母に求めるような無償の愛を、アレは無意識のうちにお主に求めるようになった。
しかしお主は母などではない。だから徐々にずれていったのよ。
そのせいで鬱屈としたものを抱え、主に執着するようになっていったのだ。
子が何をしようと絶対的な愛を与えてくれる母親、そんな幼子の求める理想の母を、血の繋がった母親にではなく主に求めてしまっておったのよ。
ヤツの心は子供のまま、幼子のように母を自分に縛り付けようとし、それがままならず、暴走した。
そういうことだ。
憐れなものよのう。アクアたちがあやつに付いて行ったのも、あやつの中の子供の部分を感じ取ったのだろうな。
精霊は幼子の味方ゆえ」

ミノくんとボクは絶句。
まさかまさかの、お母さん! リョウってば、ボクに母親のような愛を求めていたの?!
それは無理でしょう! だってボク、リョウと同じ子供だったんだもの!

ブリードさんはそんなボクたちに同情するような眼差しを向けた。

「うむ。無理がある。どうしたって満足できるわけがないのだ。
生まれたての雛が初めて見たものを親だと思い込む。
リョウも同じように主を追うようになってしまっておった。
我はその拗れた糸を断ち切ったのだ。
これからは徐々に本来あるべき形となっていくだろうよ」

かなり驚いたけれど、言われてみれば納得できることが多々あった。
リョウはことあるごとに「自分だけを見て」「他の子を見るな」「ゆうは僕のものでしょ」と言っていた。
これを母親に置き換えてみると「お母さん、僕だけを見て」「他の子を見ないで」「お母さんは僕だけのお母さんでしょ」。
ああ。そうか。
リョウの中には「親友としてのゆう」とは別に「母親、家族としてのゆう」が居た。
その片方が、ボクが外に目を向けたことで満たされなくなった。
だからリョウは変わったんだ。
リョウの行動は大好きな母親を自分だけにつなぎとめておくためのものだったのか。

「…………いや、無理だよ。そんなんおかしい。絶対体にゆうのせいじゃない。
でも……だけど……切ないな……」

うん。
ゆうに非はない。リョウのお母さんも悪い人じゃなかった。
ただ……たぶん子供よりも自分のことが大事な、仕事の方が大事な、そういう人だったんだ。
それでもきちんとリョウの世話はしていたし、食事だって用意していた。
世間体を気にしてのことだったのかもしれないけれど、リョウよりも酷い家庭環境の子だってたくさんいる。
ただ、リョウのすぐ近くにはボクの家族がいた。
普通の家族。
子供を大好きなお母さんがいて、お父さんがいるような、そんな家族。
リョウは知ってしまった。
自分のお母さんは、自分のことが一番じゃないんだって。
そんな小さなリョウに、ゆうは子供特有の無邪気さで言ったんだ。
「リョウ、大好き!リョウが一番好きだよ」って。
リョウは頬を赤らめて、「僕も」と笑った。「ゆうは特別。僕の大事な家族ものだもん」って。

魚が水を求めるように、子供は母の無償の愛を求めた。リョウはゆうの愛を求めた。

そうか。
そうだったんだ。

「……知らないって、怖いね」

「まさか友達に母親を求めてるなんて思わねえだろ。……しょうがねえよ」

「うん。でも、僕も残酷だった。
知らなかったとはいえ、リョウの欲しいものを持ってて、それを与えて奪ったんだもん」

なんだかすごく納得できた。
これまで「どうして」「許せない」って思っていた気持ちが、するするとほどけていく。
代わりに無邪気に僕と笑っていたリョウの顔が次々と浮かんできた。
「ゆう、大好き!」「僕が守ってあげるから!」「ずっと僕と一緒にいるんだよ、ゆうは!」









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