キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

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高等部

189、クリスの秘密

パニックなボクにブリードさんが笑う。

「これまでの話はジルには筒抜けだったのよ。
我は眷属と念話で話ができるとゆうたであろう?
ここの会話をジルにも隣室で聴いてもらった」

「!ブリードさん!な、な、なんで!
え?お、お兄様、ボクが転生者だってこと……」

「うむ。気付いていた。私がクリスのことに気付かぬ訳がなかろう。
クリスが昔から言っていただろう?『お兄様を守るためにこの世界にきた』のだと。
転生者というものはよくわからぬが、クリスはどこから来たと言っているのだろうか、とずっと考えていた。
初めて会ったときから、クリスは私を慕ってくれていた。それはなにぬえなのか、とも。
それと……不思議なことに、私も幼い頃からある夢を見ていた。
夢の中の私は、一人で暗闇の中にいる。
その闇の中で温かな声だけが私を癒してくれた。
『僕がお側におります』『あなたを助けたい』『あなたが大好きです』と。
その声に私は救われていたのだ。
あれは……クリスの声だった。いや、ゆうの声だったのだろう?
ゆうとリョウ、ミノの居た世界から、クリスは私の元に来てくれた。
そういうことなのだろう?」

「な、な、な……!」

言葉を失い、ただ口をパクパクすることしかできないボク。
そんなボクに代わって、ミノくんがこの場に似合わぬ明るい声で応じる。

「はは!ぜーんぶお見通しか!さすがジル様!
ああ、俺とクリスの居た世界には……そうだな、こっちの世界のことが物語になっていた。
俺もゆうも、その物語のジルのファンだったんだ。
その物語ではジルは悪役として断罪されて僻地に贈られちまう。
俺もゆうもそれをなんとかしたいとずっと願っていたんだ。
特にゆうは、お前を救うことだけを考えてた」

で、気が付けばこっちにいた、とミノくんが笑う。
向こうで死んだことなどには触れずに。なんでもないことみたいに。
お兄様に僕たちの死を知られたくないっていうボクの気持ちをそうやって守ってくれたんだ。

「と言っても俺がそのことを想いだしたの、最近なんだけどな。
知ってるよな?」

茶化すように言うミノくんのウインクを受け、お兄様が苦笑い。

「ふ。リョウとやらに会ったから、だろう?
何故クリスと会ったときではないのかという不満はあるが、まあアイクだからな」

お兄様らしくない軽口は、ボクの気持ちを軽くするためなんだろう。

「あはは!あのピンク頭が強烈すぎてな!」

笑いあってるけど……でも、なんで?
なんで平気なのですか?
気付いたのでしょう?それなのに、どうしてボクを守ろうとするの?

「お兄様、ボク、ずっとお兄様を騙していたのですよ?
何が起こるのか知っていたのに、内緒にして……。
なのにボクを責めないのですか?」

ボクの言葉をお兄様は一笑に付した。

「何もかも言わねばならぬと誰が決めた?
クリスはずっと私を救おうと頑張ってくれていたのだろう?
黙っていたのも私のだめだったのだろう。
感謝こそすれ、何を責める必要がある?」

お兄様が不遜な表情で笑う。
私が正しいのだと。私を信じていればいいのだと。

「言っただろう?私はクリスを愛している。
過去のゆうも、私の元へ来てくれたクリスも、全てを含めて私のクリスなのだ。
なぜだかわからぬが、出会う前から君は夢の中で私を励ましてくれていた。
私の心を救ってくれていた。
そして出会ってからも、私は君に救われている。
生きているのが楽しいと、毎日が幸せだとそう思わせてくれたのは君だ。
過去も未来も含めて愛している。理解したか?」

アイク様が後ろ手をひらひらと振りながらそっと部屋から出て行った。
ああ。

ああ。

ボクの何もかも。前世のことも、リョウとのことも、隠していたことを全部知ってしまったのですね。
最初から何かに気付き、ボクが言わないからとずっと知らないふりで居てくれたお兄様。
それでも、そのうえでボクの全部を愛してくれていた。

「お兄様……お兄様っ、ボク、ボク、お兄様のこと……っだ、大好きいいいっ!!」

どっかーんと体当たり。
胸の所にぐりぐりと顔を埋め、ぎゅうぎゅうと抱き着く。

ジル様。
ボクの大好きなジル様。
愛してくれてありがとうございます。
ボクを待ってくれていてありがとうございます。

泣きながら抱き着いたボクの顎をそっとお兄様の手が持ち上げる。
近づくお兄様の……


「おい!我を忘れてはおらぬか?
ミノは出て行ったが、我はまだここにおるのだぞ?」

は!ブリードさん!

「ちっ!黙っていて下さればよいものを……」

お兄様?!舌打ちなさいました?!

「クリス、少し待て」

優しくボクの頬を撫でたお兄様は、ブリードさんの元へ行くと存外優しい手つきでブリードさんを抱き上げ、そっと廊下に出した。

「散歩でもしていてください」

パタン。

「さあ、続きを。クリス、大人しく待っていた私に褒美をくれぬか?」

固まったまま動かないボクの唇に、そっとお兄様の唇が落とされた。

「……少し……嫉けるな。私もクリスを閉じ込めてしまえたらいいのにと思うことがある」

「ふえ?!な、なにを……?!」

お兄様はそのままボクの肩にその額を埋めてしまった。

「あれは……形は違うが、私の分身のようなものだ。
唯一のぬくもりに執着し、自分のものにしようとする……。
そんな浅ましい思いを私も持っている。
どうだ?呆れたか?」

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