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第三章
アルの実家訪問
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週末。
遂にアルの実家に行く日が来た。
シルに起こされ、俺は眠い目をこすりながらしぶしぶ起き上がった。
興奮しすぎてよく眠れなかったのだ。
「うう……目が腫れていそうだ……。どうだ、シル。大丈夫か?」
しょぼしょぼする目を頑張って開こうと格闘していると、ブハッとシルが吹き出した。
「ミ、ミル!すげえ目になってるぞ?」
顔を拭くために温めてくれていた濡れタオルをそのままぎゅうっと目に押し付けられる。
「しばらくそうしてろ」
「うん、気持ちいい。ありがとうシル」
大急ぎで準備を整え、ああでもないこうでもないと言いながら今日の衣装を選んだ。
だって、アルのご実家に紹介してもらうんだぞ?
気に入られたいじゃないか。
「ほら、十分かわ、カッコいいって!」
「そうか?一瞬言いよどまなかったか?」
「気のせい気のせい。マジですんごくよく似合ってるぞ?」
今日の俺の衣装はシルバーグレー。
ネクタイを濃紺にして、シックに仕上げてみた。
どうにも落ち着かず、室内をうろうろしながらああでもないこうでもないと考える。
「前髪は上げたほうが信頼できる感じがしないか?」
「そのままが一番だって!アルだってそのままのミルを気に入ったんだ。
アルの家族だってそのままのミルを気に入るさ」」
「そうだろうか?何かおかしなことをしたら言ってくれよ?
合図でも決めておいた方がいいか?そうだ、右手を三回……」
「いいから落ち着け!」
動けないように腕ごとシルの胸に抱え込まれてしまった。
「俺のミルは完璧だ!公爵家当主としてふさわしいマナーが身についているだろう?
王族の婚約者にふさわしい品格もある。おまけに学年首席の知性もある。
何も問題はない。分かったか?」
「………分かった」
すったもんだの末にアルの店に迎えに行けば、アルはもう店の前で待っていてくれた。
今日のアルはスッキリとしたスーツ姿。
ボルドーの生地はストライプの織が入っており、遊び心満点だ。
ネクタイではなくループタイを遊ばせたお洒落なアルらしい装いである。
「おはよう。アル。待たせてしまったようだな、申し訳ない」
「おはよう、ミル、シル!大した時間じゃねえよ」
「ところで、俺の服はどうだろうか?ご家族の趣味にはあっているか?
おかしなところがあればそこの店で……」
言いかけたところで爆笑されてしまった。
「あはははは!ミルでもそんなになるんだな。大丈夫、ミルは完璧だよ!」
そう緊張すんな。大丈夫、取って食われたりしねえから!
ウチの連中も二人に会うのを楽しみにしてるみたいだぞ?」
ぽんぽんと背を撫でられてしまった。
俺はそんなに挙動不審なのだろうか?
馬車の中でアルがいろいろと教えてくれた。
アルの実家であるマージェス伯爵家は、肥沃な領地に恵まれており、農業と産業で発展してきた。
そして領地で採れた野菜や、製造された商品を販売すべく、商会を運営している。
マージェス一族は代々商才に長けており、ものの価値を見抜く目を持っていた。
商会で扱うものは、いつの間にか他国から買い付けた美術品や宝石、工芸品と多岐にわたるようになる。
効率化のためその種別に商会を分け、結果的にいくつかの商会を持つ商会ギルドとなっていたのだそう。
今回俺たちがお世話になるのは、薬草や薬品、茶などを扱うミンティア商会だ。
この商会を運営するのは偶然にもアルの弟、オルフェウス・マージェス。
彼は大の紅茶好きで、嗜好品に過ぎない紅茶に効能をプラスしてはどうかというのでハーブに興味を持ち、ついには薬草にまでその手を広げるようになったのだそう。
アルといい、趣味に没頭する血筋のようだ。
「オルフェはさあ、なんつーか……可愛いものに目がないんだよ。
だからミルにちょっとおかしな態度を取るかもしれない。先に言っておくな?」
「ミルは可愛いから気をつけろってさ」
アルの言葉を誤解しかけると、すかさずシルが通訳してくれた。
「そ、そういう……!俺はてっきり、嫌われるかもしれないから覚悟しておけということかと……」
「まーたミルはそんなことを!ミルは可愛いって言ってんじゃん!
正直、あいつのツボなんだよな……。あいつ子猫とか大好きだからさあ」
「俺は子猫か?」
「ミルは子猫だな。血統書付きのアビシニアン」
「俺はペルシャだと思うぞ?」
「と、とにかく、いきなり抱き着いたりはしないと思うけど、まあ……気を付けてくれ」
俺の代わりにシルが答えた。
「分かった。ミルは俺がしっかりとガードしとく」
車窓をよぎる風景が、下町の喧騒を外れ徐々に牧歌的な光景に代わっていく。
「窓を開けていいか?」
許可を取って外の風を入れてみる。
少しの土と、草の香り。空気にも匂いがあるんだな。
「シル、アル!羊の赤ちゃんがいるぞ!」
「ああ、そんな時期か。毎年この時期に生まれるんだよ。
実家の領地にもいるぞ?抱っこしてみるか?」
「!!いいのか?ぜひお願いしたい!」
「あとなあ、子牛もたぶん生まれてるだろうし、きっとあちこちに子猫もいるぞ?」
「なんだよそれ!天国か?」
想像しただけでうっとりする光景だ!
興奮する俺をアルが微笑ましそうに見つめていた。
「ミルは動物が好きなのか?貴族には汚いし臭いって触れるのを嫌うヤツもいるだろ?」
「好きに決まっているだろう!少々汚くても断固として触れたい!
絶対に抱っこするからな!約束だぞ!」
「あー、ミル、先に言っとく。可愛いからって連れ帰り隊とか駄々こねるなよ?」
「いくら俺でもそんなわがままは言わない!撫でるだけだ!」
そうはいっていたのだが……。
通り掛けに農場により、ふわふわの羊を抱かせてもらった俺は思わず叫んだ。
「シル!この羊を飼いたい。連れて帰ろう。大丈夫、ちゃんと世話をするから!!」
「こうなると思った!!」
シルがガックリとうなだれる。
農場主にも爆笑されてしまった。
「アハハハハ!また好きな時に撫でに来いよ!変わったお貴族様だなあ!
まあ坊ちゃんの知り合いだもんな。当たり前か」
俺は自由に農場に遊びに来る許可をもらうことに成功したのだった。
遂にアルの実家に行く日が来た。
シルに起こされ、俺は眠い目をこすりながらしぶしぶ起き上がった。
興奮しすぎてよく眠れなかったのだ。
「うう……目が腫れていそうだ……。どうだ、シル。大丈夫か?」
しょぼしょぼする目を頑張って開こうと格闘していると、ブハッとシルが吹き出した。
「ミ、ミル!すげえ目になってるぞ?」
顔を拭くために温めてくれていた濡れタオルをそのままぎゅうっと目に押し付けられる。
「しばらくそうしてろ」
「うん、気持ちいい。ありがとうシル」
大急ぎで準備を整え、ああでもないこうでもないと言いながら今日の衣装を選んだ。
だって、アルのご実家に紹介してもらうんだぞ?
気に入られたいじゃないか。
「ほら、十分かわ、カッコいいって!」
「そうか?一瞬言いよどまなかったか?」
「気のせい気のせい。マジですんごくよく似合ってるぞ?」
今日の俺の衣装はシルバーグレー。
ネクタイを濃紺にして、シックに仕上げてみた。
どうにも落ち着かず、室内をうろうろしながらああでもないこうでもないと考える。
「前髪は上げたほうが信頼できる感じがしないか?」
「そのままが一番だって!アルだってそのままのミルを気に入ったんだ。
アルの家族だってそのままのミルを気に入るさ」」
「そうだろうか?何かおかしなことをしたら言ってくれよ?
合図でも決めておいた方がいいか?そうだ、右手を三回……」
「いいから落ち着け!」
動けないように腕ごとシルの胸に抱え込まれてしまった。
「俺のミルは完璧だ!公爵家当主としてふさわしいマナーが身についているだろう?
王族の婚約者にふさわしい品格もある。おまけに学年首席の知性もある。
何も問題はない。分かったか?」
「………分かった」
すったもんだの末にアルの店に迎えに行けば、アルはもう店の前で待っていてくれた。
今日のアルはスッキリとしたスーツ姿。
ボルドーの生地はストライプの織が入っており、遊び心満点だ。
ネクタイではなくループタイを遊ばせたお洒落なアルらしい装いである。
「おはよう。アル。待たせてしまったようだな、申し訳ない」
「おはよう、ミル、シル!大した時間じゃねえよ」
「ところで、俺の服はどうだろうか?ご家族の趣味にはあっているか?
おかしなところがあればそこの店で……」
言いかけたところで爆笑されてしまった。
「あはははは!ミルでもそんなになるんだな。大丈夫、ミルは完璧だよ!」
そう緊張すんな。大丈夫、取って食われたりしねえから!
ウチの連中も二人に会うのを楽しみにしてるみたいだぞ?」
ぽんぽんと背を撫でられてしまった。
俺はそんなに挙動不審なのだろうか?
馬車の中でアルがいろいろと教えてくれた。
アルの実家であるマージェス伯爵家は、肥沃な領地に恵まれており、農業と産業で発展してきた。
そして領地で採れた野菜や、製造された商品を販売すべく、商会を運営している。
マージェス一族は代々商才に長けており、ものの価値を見抜く目を持っていた。
商会で扱うものは、いつの間にか他国から買い付けた美術品や宝石、工芸品と多岐にわたるようになる。
効率化のためその種別に商会を分け、結果的にいくつかの商会を持つ商会ギルドとなっていたのだそう。
今回俺たちがお世話になるのは、薬草や薬品、茶などを扱うミンティア商会だ。
この商会を運営するのは偶然にもアルの弟、オルフェウス・マージェス。
彼は大の紅茶好きで、嗜好品に過ぎない紅茶に効能をプラスしてはどうかというのでハーブに興味を持ち、ついには薬草にまでその手を広げるようになったのだそう。
アルといい、趣味に没頭する血筋のようだ。
「オルフェはさあ、なんつーか……可愛いものに目がないんだよ。
だからミルにちょっとおかしな態度を取るかもしれない。先に言っておくな?」
「ミルは可愛いから気をつけろってさ」
アルの言葉を誤解しかけると、すかさずシルが通訳してくれた。
「そ、そういう……!俺はてっきり、嫌われるかもしれないから覚悟しておけということかと……」
「まーたミルはそんなことを!ミルは可愛いって言ってんじゃん!
正直、あいつのツボなんだよな……。あいつ子猫とか大好きだからさあ」
「俺は子猫か?」
「ミルは子猫だな。血統書付きのアビシニアン」
「俺はペルシャだと思うぞ?」
「と、とにかく、いきなり抱き着いたりはしないと思うけど、まあ……気を付けてくれ」
俺の代わりにシルが答えた。
「分かった。ミルは俺がしっかりとガードしとく」
車窓をよぎる風景が、下町の喧騒を外れ徐々に牧歌的な光景に代わっていく。
「窓を開けていいか?」
許可を取って外の風を入れてみる。
少しの土と、草の香り。空気にも匂いがあるんだな。
「シル、アル!羊の赤ちゃんがいるぞ!」
「ああ、そんな時期か。毎年この時期に生まれるんだよ。
実家の領地にもいるぞ?抱っこしてみるか?」
「!!いいのか?ぜひお願いしたい!」
「あとなあ、子牛もたぶん生まれてるだろうし、きっとあちこちに子猫もいるぞ?」
「なんだよそれ!天国か?」
想像しただけでうっとりする光景だ!
興奮する俺をアルが微笑ましそうに見つめていた。
「ミルは動物が好きなのか?貴族には汚いし臭いって触れるのを嫌うヤツもいるだろ?」
「好きに決まっているだろう!少々汚くても断固として触れたい!
絶対に抱っこするからな!約束だぞ!」
「あー、ミル、先に言っとく。可愛いからって連れ帰り隊とか駄々こねるなよ?」
「いくら俺でもそんなわがままは言わない!撫でるだけだ!」
そうはいっていたのだが……。
通り掛けに農場により、ふわふわの羊を抱かせてもらった俺は思わず叫んだ。
「シル!この羊を飼いたい。連れて帰ろう。大丈夫、ちゃんと世話をするから!!」
「こうなると思った!!」
シルがガックリとうなだれる。
農場主にも爆笑されてしまった。
「アハハハハ!また好きな時に撫でに来いよ!変わったお貴族様だなあ!
まあ坊ちゃんの知り合いだもんな。当たり前か」
俺は自由に農場に遊びに来る許可をもらうことに成功したのだった。
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