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第三章
オルフェウスは猫が好き
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そうこうするうちに、オルフェウス様が戻られたようだ。
「遅くなってしまい申し訳ございません!
荷が届くのが少々遅れまして……!」
あわただしく駆け込んできたのは、アルよりいくつか年若い男性。
アルはどちらかと言えば女性的な少し近寄りがたいほど整った容貌なのだが、こちらはご夫人によく似た茶髪に、伯爵譲りの紺色の瞳と恵まれた体格。たとえるなら大型犬を思わせる人物だった。
長身の部類に入るだろうアルよりも数センチは高いので驚いた。
アルとはある意味対照的な容貌だ。
彼は客間に入ったとたん、俺を見て固まった。
「?」
挨拶してしまってよいのだろうか?
「お初にお目にかかります、スノーデン公爵家が長男、ミルリースです。ミルとお呼びください。
お話を聞かせて頂けるというので、図々しくお邪魔してしまいました。ご無礼をお許しください」
「……」
「?」
聞こえなかったのだろうか?首をかしげてアルを窺えば、アルが「あーあ、やっぱなあ」と苦笑。
「オルフェ」と声をかける。
「!!あ、ああ。す、すまない!アルフレッドの弟、マージェス伯爵家が次男、オルフェウスです。
どうぞオルフェと。
ようこそいらっしゃいました、お待たせしてしまって申し訳ない」
言いながらも俺から目を離さないオルフェ。
じいいいいい、という言葉が聞こえてきそうだ。
これが来る前に聞かされていた「おかしな態度」というやつなのだろうか?
オルフェは俺から目を離さずツカツカとこちらに歩み寄り、そのままなんと俺の横に腰かけた。
他にもたくさん席が空いているにもかかわらず、だ。
ちなみに、俺とご夫人はソファ席に。シルたちはテーブル席の方にいる。
ソファ席にはさっきまでシルたちが座っていた二人がけソファ、一人がけのソファも開いている。
それなのにわざわざ、俺が座っている二人掛けソファの俺の横に腰かけてきたのだ。
思わず立ち上がりかけるシルに、目で「大丈夫」だと合図を送る。
シルは不承不承また椅子に腰かけた。
じいいいいい。
真横から突き刺さる視線。
俺はどうすべきなのだろう。
「ごめんなさいねえ。この子ったら可愛いものには目がなくって!」
それは来る前にアルから聞いた。この場合「可愛いもの」というのは俺のことだろうか?
ずうっと黙りこくったまま俺を見つめていたオルフェがようやく口を開いた。
「あの……撫でさせて頂いてもいいでしょうか?」
「はあ?!」
この「はあ?!」は俺ではない。シルだ。
「よくありません!!」
これもシル。
「………どういった理由でしょうか?」
これは俺。別に撫でる分には構わないが、オルフェにそれで徳があるとも思えない。
するとオルフェは非常にいい笑顔でこうのたまった。
「私は実は子猫が大好きでして!」
「………はあ」
「特にアビシニアンには目がありません。見つけると撫でずにはいられないのです」
「……………はあ」
いったい何の話が始まったのだろうか。
「ですから、撫でさせていただきたいのですが………」
ですから、の意味が分からない。
この流れからすると、俺がアビシニアンに見えている?
「私はアビシニアンではなく人間ですが、よろしいのでしょうか?」
「かまいません!こんなに可愛い子猫……失礼、人間に初めて会いました!
ぜひ!!撫でさせてください!!」
向こうでアルが「害はないから!純粋に猫好きなんだって!!」とシルを宥めているのが見える。
そうか。純粋に猫好きなのか。
世話になるのだしな。うん。ここは仕方ない。
俺はそっと頭を差し出した。
「ミル?!」
シルの絶叫が響く。まあ、そう怒るなシル。
恐る恐る俺の頭に手が伸ばされた。
伸ばす前に一瞬「チッチッチッ」と猫を呼ぶように舌を鳴らされたのには目をつぶることとしよう。
ふわ。
ことのほか優しい手が俺に触れる。
そうっとそうっと俺の頭を撫でる大きな手。
シルの手とも、クラウスたちの手とも違う。
大きな大きな男らしい大人の手だ。
…………悪くない。
思わず、すり、と頭を寄せればまた向こうから「ミル?!」という悲痛な叫びが聞こえた。
オルフェはそうっとそうっと俺の頭を撫でてくれる。
撫でながら無意識なのか穏やかな声で「いい子だなあ」「よーし、よーし、ミルはいい子」と口にしながら。
会話にもなっていないというのに、それだけで「受け入れられている」と感じる。
…………本当に悪くない。
俺は大人しく撫でられていると、しびれを切らしたシルからストップがかかった。
「はい、ここまで!!ミルは終了です!!離れて離れて!」
脇の下に両手を突っ込まれ、しゅぽん、とまるでソファから引っこ抜かれるように上に持ち上げられた。
そのままさっさと俺を抱え、向かいのソファに移動してしまうシル。
ぽすん、と俺をソファに下ろすとその横に陣取った。
「この子猫は俺の子猫ですので。飼い主は俺ですから!!」
いや、お前まで何を言い出したんだ?!
「仕方ありません。諦めます」
しょんぼりとそれを受け入れるオルフェ。
もう一度言おう。俺は猫ではない。人間だ。
ぎゃはは!とアルが大爆笑し、伯爵と夫人が「オルフェがすまないな」「ごめんなさいねえ」と苦笑していた。
「遅くなってしまい申し訳ございません!
荷が届くのが少々遅れまして……!」
あわただしく駆け込んできたのは、アルよりいくつか年若い男性。
アルはどちらかと言えば女性的な少し近寄りがたいほど整った容貌なのだが、こちらはご夫人によく似た茶髪に、伯爵譲りの紺色の瞳と恵まれた体格。たとえるなら大型犬を思わせる人物だった。
長身の部類に入るだろうアルよりも数センチは高いので驚いた。
アルとはある意味対照的な容貌だ。
彼は客間に入ったとたん、俺を見て固まった。
「?」
挨拶してしまってよいのだろうか?
「お初にお目にかかります、スノーデン公爵家が長男、ミルリースです。ミルとお呼びください。
お話を聞かせて頂けるというので、図々しくお邪魔してしまいました。ご無礼をお許しください」
「……」
「?」
聞こえなかったのだろうか?首をかしげてアルを窺えば、アルが「あーあ、やっぱなあ」と苦笑。
「オルフェ」と声をかける。
「!!あ、ああ。す、すまない!アルフレッドの弟、マージェス伯爵家が次男、オルフェウスです。
どうぞオルフェと。
ようこそいらっしゃいました、お待たせしてしまって申し訳ない」
言いながらも俺から目を離さないオルフェ。
じいいいいい、という言葉が聞こえてきそうだ。
これが来る前に聞かされていた「おかしな態度」というやつなのだろうか?
オルフェは俺から目を離さずツカツカとこちらに歩み寄り、そのままなんと俺の横に腰かけた。
他にもたくさん席が空いているにもかかわらず、だ。
ちなみに、俺とご夫人はソファ席に。シルたちはテーブル席の方にいる。
ソファ席にはさっきまでシルたちが座っていた二人がけソファ、一人がけのソファも開いている。
それなのにわざわざ、俺が座っている二人掛けソファの俺の横に腰かけてきたのだ。
思わず立ち上がりかけるシルに、目で「大丈夫」だと合図を送る。
シルは不承不承また椅子に腰かけた。
じいいいいい。
真横から突き刺さる視線。
俺はどうすべきなのだろう。
「ごめんなさいねえ。この子ったら可愛いものには目がなくって!」
それは来る前にアルから聞いた。この場合「可愛いもの」というのは俺のことだろうか?
ずうっと黙りこくったまま俺を見つめていたオルフェがようやく口を開いた。
「あの……撫でさせて頂いてもいいでしょうか?」
「はあ?!」
この「はあ?!」は俺ではない。シルだ。
「よくありません!!」
これもシル。
「………どういった理由でしょうか?」
これは俺。別に撫でる分には構わないが、オルフェにそれで徳があるとも思えない。
するとオルフェは非常にいい笑顔でこうのたまった。
「私は実は子猫が大好きでして!」
「………はあ」
「特にアビシニアンには目がありません。見つけると撫でずにはいられないのです」
「……………はあ」
いったい何の話が始まったのだろうか。
「ですから、撫でさせていただきたいのですが………」
ですから、の意味が分からない。
この流れからすると、俺がアビシニアンに見えている?
「私はアビシニアンではなく人間ですが、よろしいのでしょうか?」
「かまいません!こんなに可愛い子猫……失礼、人間に初めて会いました!
ぜひ!!撫でさせてください!!」
向こうでアルが「害はないから!純粋に猫好きなんだって!!」とシルを宥めているのが見える。
そうか。純粋に猫好きなのか。
世話になるのだしな。うん。ここは仕方ない。
俺はそっと頭を差し出した。
「ミル?!」
シルの絶叫が響く。まあ、そう怒るなシル。
恐る恐る俺の頭に手が伸ばされた。
伸ばす前に一瞬「チッチッチッ」と猫を呼ぶように舌を鳴らされたのには目をつぶることとしよう。
ふわ。
ことのほか優しい手が俺に触れる。
そうっとそうっと俺の頭を撫でる大きな手。
シルの手とも、クラウスたちの手とも違う。
大きな大きな男らしい大人の手だ。
…………悪くない。
思わず、すり、と頭を寄せればまた向こうから「ミル?!」という悲痛な叫びが聞こえた。
オルフェはそうっとそうっと俺の頭を撫でてくれる。
撫でながら無意識なのか穏やかな声で「いい子だなあ」「よーし、よーし、ミルはいい子」と口にしながら。
会話にもなっていないというのに、それだけで「受け入れられている」と感じる。
…………本当に悪くない。
俺は大人しく撫でられていると、しびれを切らしたシルからストップがかかった。
「はい、ここまで!!ミルは終了です!!離れて離れて!」
脇の下に両手を突っ込まれ、しゅぽん、とまるでソファから引っこ抜かれるように上に持ち上げられた。
そのままさっさと俺を抱え、向かいのソファに移動してしまうシル。
ぽすん、と俺をソファに下ろすとその横に陣取った。
「この子猫は俺の子猫ですので。飼い主は俺ですから!!」
いや、お前まで何を言い出したんだ?!
「仕方ありません。諦めます」
しょんぼりとそれを受け入れるオルフェ。
もう一度言おう。俺は猫ではない。人間だ。
ぎゃはは!とアルが大爆笑し、伯爵と夫人が「オルフェがすまないな」「ごめんなさいねえ」と苦笑していた。
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