【本編完結】悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。

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第五章

新世代

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こうして公爵家は一新された。
「一番の被害者はご長男のミルリース様なのでは?」など貴族の間では様々に噂された。
が、もう俺は関係ない。
新たな世代が公爵家を盛り立ててくれればそれでいい。

学校の仲間は公爵家の醜聞など気付かぬふりをしてくれた。
なぜ養子を迎えて当主代理を任せたのかなど、聞きたいことは多々あるだろう。
だが、これまでどおり俺を「公爵家の長男、ミルリース・スノーデン」として扱ってくれる。
本当に良い仲間に恵まれたものだと思う。




だが、一方で、うちはなぜか騒がしくなってしまった。
ルディアスと婚約したアレックスが、なぜかしょっちゅううちに顔を出すようになったのだ。

「いいだろ?寂しい兄さんを癒してくれよ」

そう言って、手土産持参でやってくる。
ときにはルディアスまでひきつれて。

「………すまんな、ミル。迷惑をかける」

そんな風にいいながらもまんざらでもない様子。
というか……

「うちはデートスポットじゃないんだぞ?デートの度に当たり前のような顔でウチに寄るのはやめろ。
俺は一応ルディアスの元婚約者なんだが?婚約者に悪いとは思わないのか?
王家の護衛もなにも言わないのか?」

「父上の許可は得ている」

「あ、ちなみに兄さんは気にしてないぞ?」

「アレックス兄さんに言ってるんじゃない!ルディアスに言っているんだ。
こう頻繁に元婚約者の家に来ては外聞が悪いだろう!」

「いや、仲良くしてるところを見せれば『お互い円満に婚約解消した』とわかりやすいだろう?公爵家とMS商会の後援しやすくなるぞ?」

「だから、アレックスに言っているんじゃない!ルディアスに言っているんだ!」

「ルディ」

「は?」

「俺のことはルディと呼んでくれるんじゃなかったのか?
アレクがアレックス兄さんなら、俺のこともルディと呼べ。アレクばかりズルい」

拗ねたようにいうルディアス。なんだ、こいつ。子供返りでもしているのか?
アレックスといるようになってから、プライベートのこいつは妙に子供じみた態度をとるようになった。

「お前、おかしなものでも食べたのか?
シル!こいつらをなんとかしてくれ!」

「変なのに懐かれたもんだなあ、ミル。まあいいじゃねえか。今は害はないんだから。
それにルディはお得意さんだぞ?」

こんなはずではなかった。
ルディアスを捨て、公爵家とは縁を切って、シルやアルや仲間と楽しくやっていくはずだったのに……。
なぜこんな余計なオマケがついてきたんだ?

「アレックスはともかく、ルディ。お前俺に何をしてきたのか忘れたのか?」

とたんしょぼんと肩を落とすルディアス。
しおれた犬の尻尾が見えそうだ。

「……もちろん忘れてなどいない。だから今後はMS商会のために尽力しようと……!」

「それは気にしなくていいから。アレックス兄さんは卒業までは名目上の兄弟だからいいとして、お前は来るな。
どう考えてもおかしいだろう」

「……俺とアレクが結婚すれば、俺とお前も義兄弟ということになるのではないか?」

「いや、実際はもう廃嫡してるんだから無関係だろう」

にべもない俺の返事にルディアスが目に涙を浮かべた。

「やはり、まだ俺を許してはもらえないのだな……」

「あああ、もう!ルディ、お前そんな奴ではなかっただろう?!いつも俺を見下して偉そうにしてたじゃないか!
あのルディアスはどこにいった!」

「俺も王族なのだと必要以上に肩肘を張っていた。だがもうやめたんだ。いいだろう?
どのみち公爵家の嫁になるのは決まってるんだし」

「開き直った馬鹿は怖いな……」

「馬鹿ではない!お前、不敬だぞ!」

「もうやめたんだろう?馬鹿に馬鹿と言って何が悪い!」

「「こらこらこら!ミル、ルディ、やめろ!お前ら子供みてえだぞ?」」

「「こいつと一緒にするな!」」

わあわあとお互いに言いたい放題だ。
これまでの10年お互いに距離を取り合ってきたのに、婚約解消してからなぜだかまるで兄弟のような距離。
そもそも、お前は俺のことが好きだったんじゃないのか?俺はお前を振ったんだぞ?しかも完膚なきほど!
なのに懐くとかおかしくないか?


とはいえ、俺がこんな風に遠慮なく怒鳴ったりできるのもルディくらいだ。
言いたいことを言ってやりあったからか、ルディには遠慮せず言いたいことが言えるようになった。
ルディもきっと同じなのだろう。
俺もルディも子供らしくは居られなかったから。
だからお互いにそんなことからやり直しているのかもしれない。





ちなみに、アルもうちに入り浸っている一人だ。
ルディと鉢合わせ、大変なことになった。

止める間もなくアルの口から不敬しかない言葉が飛び出していた。

「はあ?!ミルいじめてたヤツじゃねえのかよ?!なんでここにいるんだ?!」

あまりの驚きでとっさに出てしまったようだ。
しかもそれで開き直った。

「ちょうどいい。もう不敬ついでだ!この際だから言ってやる!
お前さあ、好きな子をいじめるとかガキかよ!
婚約者をクソと比べまくって貶して、焼きもちやかせようと弟といちゃついてみせて!そのあげく婚約者の悪評をばら撒くって、どういうつもりだ?!馬鹿すぎないか?お前、いくつだよ!
ミルは許したかもしれないが、俺は許さないからな!
俺の可愛いミルをいじめやがった奴は出入り禁止だ!!」

ハッキリきっぱりと言い放ったアルに、ルディアスが固まる。
何一つ間違ったことを言っていないのだから反論のしようもない。

ようやくひねりだしたのが、これだったようだ。
か細い声で反論を試みる。

「……お前だって、お前だってミルとは無関係じゃないか!お前に言われたくはない!」

するとアルが渾身のドヤ顔を披露。

「俺はMS商会と提携してんの。つまり、俺とミルは仲間なわけ。分かるか?坊ちゃん。
それに俺はミルから『アル兄』を許されてるんだよ。つまり、兄弟分って扱いなわけだ。
ここのは俺の部屋だってあるんだぜ?ここは俺のセカンドハウスなの!
だから俺にはお前を出入り禁止にする権利がある!!」

ルディアスはあえなく撃沈した。
正直スカッとしてしまった。さすがはアルだ。啖呵のキレが最高にいい。

ところがルディには最強の味方がいた。

「まあまあまあ!俺はアルフレッド・スノーデン。
スノーデン公爵家の養子で、ルディアスの婚約者だ。
俺は一応ミルの兄貴ってことになる。ミルも『アレックス兄さん』と呼んでくれているしな。
で、俺は当主代理として正式にMS商会の後援になろうと思っている。もちろん、公爵家としてミルリースへの詫びでもあるから、出資したからといって無理難題を言うつもりはない。安心してほしい。
これは君にとっても悪い話じゃないだろ?高位貴族の後ろ盾はあるにこしたことはないからな。
こういうわけで、提携するか出資するか相談する必要があるんだ。だから俺にはここに出入りする権利がある。
その俺の婚約者であり将来の伴侶なんだから、ルディアスを連れてきてもいいはずだ。違うか?」

ここまで一息だった。
アレクの強引さと人好きのする笑顔、率直な態度はアルのお眼鏡にかなったようだ。

「ああ、あんたが公爵家の養子か。ふん!聞いてた通りやり手だな!
俺はアルフレッド・マージェス。マージェス伯爵家の三男で、マージの店主だ。
でもって、シルとミルの仲間!よろしく」

握手の手を差し出した。

「あなたがマージか!光栄だ!よろしく!」

お互いに笑顔で手を握り合う二人。
だが、マージは一枚上手だった。

「あ、よろしくするのはアンタだけだぜ?」

「おいおい!ルディも反省しているし、変わろうと努力している。
王族が後ろ盾についたのだって、ルディのおかげだろ?
側妃の子、しかも正妃の息子と同学年だっていうんで、学ぶことが命の危険につながるような環境だったんだ。
こいつが愚かだったのはこいつだけの責任じゃない。
ミルリースへの償いは俺も一緒にしていくつもりだから。な?
今後は俺がしっかりと教える。許せとは言わんが、ここに来ることは認めてやってくれ。
こいつには……本音が言える相手が必要なんだ」

「…………ミルを二度と傷つけるなよ?もしまたしでかしたら容赦しねえからな」

「分かった。肝に銘じよう」


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