【本編完結】悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。

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第八章 ベジカフェ参入

マックスは有能

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到着早々、ウチのキッチンで料理を始めたマックス。
手伝いは不要だと手際よく包丁を振るい右に左にと動き回っている。


気付けば客人を働かせ、ソファでくつろいでいた俺たち。
我に返ったアルが不思議そうに首をひねった。

「あれ?なんでこんなことになったんだ?」

なんというか、俺たち揃ってあまりに自然体なマックスに流されたな?

「うむ。手紙をやりとりしていたとはいえ、よく考えたら初対面なのだぞ?出会った早々マックスにこんなことをさせてしまってよいのだろうか……」
「レオリースが懐いたってのも納得だぜ。人見知りのミルまであっという間に懐いたもんな。マックス、マジでミルと同い年か?俺らと同年代じゃないか?」

シルがぎゅむっと俺を抱き寄せながら呟いた。こら、マックスもいるんだぞ!やめないか!

「下に弟たちがいるからか、兄が板についてる感じがするんだよな。俺と違ってシルたちは下だろ?だからじゃねえの?」
「それを言うなら俺だって一応兄だが?」

俺の言葉にアルが「しまった」という表情になった。

「ほ、ほら、なんつーか、ミルにはシルがいただろ?こいつが兄貴面してガッツリ世話妬いてたから、実質弟みたいなもんじゃね?」
「ミルは弟気質だとおもうぜ?レオリースとは兄弟だという育てられ方じゃなかったからなあ」

そうかもしれない。レオリースは俺のことを兄というよりも「引き立て役」として馬鹿にしていたからな。
公爵たちは俺にレオと関わらせなかったし、いつしかレオリースと会話するのを諦めてしまっていた。
俺もレオリースも同じ家に住んでいたのに、俺は家族ではないような扱いをされていたから……。

知らずに気分が下がったのを察したのか、シルがそっと俺の顔を覗き込んだ。

「俺はミルが可愛くてたまらなくてな。クソみてえな家族の分も俺がミルを可愛がって大事にしてやるって決めて世話を焼きまくったから、そのせいだろう。ちなみに、兄貴としてじゃなくて恋人として甘やかしてやりたいってずっと思ってたんだがな?」
「うっわ!怖っ!お前そんときミルはいくつだよ?」
「ん?5つだな。すぐにルディアスと婚約が決まって落ち込んだぜ……。ルディがヘタレでよかった」
「ミル、こんなヤベエのずっと側においてよく今まで無事だったな?」
「シルが側にいてくれたから、今まで無事だったんだ。シルが居なかったらとっくにおかしくなってたぞ?」
「ミルにまで堂々とノロケられた!あれ?そういう話だっけ?なんで俺ノロケられてんだ?」
「マックスが年齢よりも大人びているという話だったな」



ワイワイやっているうちに料理が完成したようだ。

「えー?俺がなんだって?呼んだか?」

皿を片手にマックスがやってきた。

「いや、マックスはすごいという話だ。なんというか……出会った早々料理までさせて申し訳ない」
「ははは!気にするな!好きでやってんだからな。ほら、熱いうちに食ってみてくれ!」

朗らかに笑いながら次々とテーブルに皿を置いていく。

「ビーツとオニオンとトマトのサラダ。オリーブオイルと塩コショウ、レモン汁であっさりと味をつけてある。
で、こっちは温野菜な。芽キャベツとラディッシュをコンソメで軽く煮込んで黒コショウを振った。蒸してクルミソースを掛けようか迷ったんだがな。
カリフローレはブロックベーコンとキノコと合わせてアヒージョに。ニンニクが効いてるからな。パンにのせても旨いぞ?」

思わず絶句した。
あの短時間で3品も作ったのか?
一応ウチのキッチンには各種スパイスなどはそろえてあった。とはいえ……手際が良すぎないか?

「意外と簡単なんだぜ?そもそも、調理はビーツ以外は皮も剥かずにざく切り程度だから手間がかからないんだよ」

俺たちの心の声にこたえるように胸を張るマックス。
いやいや、君が言うほど簡単ではないぞ?

「マックス……マジで畑はレオリースに任せてこっちに出てこないか?俺はお前が欲しい」

あまりの有能さにアルがまるでプロポーズのようなことを言い出した。気持ちはとてもよくわかる。
誠実で人当たりがよく、段取りよく物事を進める能力まであるのだ。

「あははは!お世辞でも嬉しいよ。だが、アルは俺の作った野菜が欲しいんだろ?レオリースの野菜はまだまだ俺の野菜にはほど遠いぜ?」

確かに!それなりに美味しかったのだが、マックスの野菜と比べると弟子、というよりも弟子候補、というレベルだ。

「ほらほら。座って座って。バジルソースも作ってみたからよかったらアヒージョと一緒に使ってみてくれ」

すっと俺の椅子まで引いてくれた。マナーまで完璧か!
こんな人材が田舎にくすぶっていていいのか?ウチだってマックスが欲しい!

「シル!」
「了解。マックス、将来的に弟に畑をまかしてこっちに出てくることはできないか?俺たちもお前が欲しい!」
「ズルいぞ!俺が先に声をかけたのに!」

「うーん……俺ってばモテてる?でも、ごめんな?俺がいないとダメな弟子がいるから。拾ったんだから最後まで面倒をみないとな?」

そうだった。レオリースがいた!拾ったんだから面倒を見ろといったのは俺だった。
レオリースはどう考えてもあちらに居る方がいいだろう。そして明らかにマックスからいい影響を受けている。今マックスが居なくなればまた元に戻ってしまうかもしれない。

「…………だな。レオリースの面倒をみてくれてありがとう。すまないがよろしく頼む」

俺とシルは渋い顔でため息をついたのだった。


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